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45新たな出会い
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娼館を出て、一目散に施設へ向かう。
施設長は朝早く弟たちを迎えに来たジュリを見て大層驚いていたが、「自由になったから迎えに来ました」と伝えると快く出迎えてくれた。
案内された応接室で待っていると寝間着姿のまま双子ジュンとケイが息を切らしながら部屋に駆け込んできた。
「ジュリお兄ちゃん、本当に今日から一緒に住めるの?」
「もうどこにも行ったりないよな!?」
ジュンとケイが不安そうな顔でジュリの両腕にしがみつく。
ー-しばらく会っていないうちにずいぶん力が強くなったな。
そんな風に思いながら二人の目線に合うよう腰を屈めると頭を優しくなでた。
「うん、もう離れないよ。ずっと一緒にいよう」
右手でジュンを左手でケイを抱きしめると二人も満面の笑みでジュリの背中に腕を回した。
ー---
ボストンバッグに服を詰めこんだ後、三人は施設を出た。
「兄ちゃん、これからどこ行くんだよ。何かあてはあるのかよ?」
そういったのはサラサラの栗色のショートヘアにジュリと同じ紫色の瞳を持つ双子の弟・ケイ。
ケイは小さいポシェット一つしか持ってないジュリを不審そうに見ながら聞いた。
「ケイ、言い方!お兄ちゃん、僕たちはベータだから大丈夫だけどお兄ちゃんはオメガなんだから野宿は絶対ダメなんだよ?」
ケイとは反対に穏やかな声色でジュリを見上げたのは双子のジュン。ふわふわの栗色の髪にジュリやジュンとは違う青い瞳の少年だ。
「ありがとう、二人とも。うーん……実は行く場所はまだ決めてないんだ。だけど、お金はちゃんとあるから野宿はしないし馬車にも乗れる、ヒートも終わったばかりだから大丈夫。……ねえ、どうせならうーんと遠い所に行ってみない?」
にこりと笑いながら二人の顔を覗き込む。
ケイとジュンはお互いの顔を見合わせると「うん!」と声を合わせた。
時刻は朝五時半、朝日が昇る。まるで追い風がジュリ達を応援するかのように背中を押した。
三人はぎゅっと手を繋ぎ一歩を踏み出した。
「マルシャン村?ここから五日はかかるよ。悪いけどうちの馬車はそこまではいけないから他当たってくれるかい?……といってもそこまで行ってくれる馬車なんてあるのかねぇ……」
市場の近く、馬車が何台も止まる乗合馬車の停留所。御者の男は頭を掻きながら困ったように言った。
本来、馬車は貴族御用達の乗り物で一般市民は到底持つことのできない代物だ。
一般市民でも乗れるような乗合馬車はそれぞれの地域で走るエリアを決められていて村を越えることができる馬車などジュリも見たことがなかった。
「そうですよね……。でもどうしても行きたいんです!そこをなんとか」
「んー……そうは言ってもなぁ……」
そう言いながら御者の男は舐めるようにジュリの体を見ている。
首につけたチョーカーに美しい容姿、それに微かに漏れるフェロモン……いくらマントで隠していてもジュリがオメガだという事はまるわかりだった。
男はにやりと厭らしく笑い舌なめずりする。そしてその手がジュリの体にゆっくりと手を伸ばした時だった。
「おいおい、こんなところで可愛い子ちゃんに手だすんじゃないよ」
低い男の声が後ろから聞こえてきた。
施設長は朝早く弟たちを迎えに来たジュリを見て大層驚いていたが、「自由になったから迎えに来ました」と伝えると快く出迎えてくれた。
案内された応接室で待っていると寝間着姿のまま双子ジュンとケイが息を切らしながら部屋に駆け込んできた。
「ジュリお兄ちゃん、本当に今日から一緒に住めるの?」
「もうどこにも行ったりないよな!?」
ジュンとケイが不安そうな顔でジュリの両腕にしがみつく。
ー-しばらく会っていないうちにずいぶん力が強くなったな。
そんな風に思いながら二人の目線に合うよう腰を屈めると頭を優しくなでた。
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右手でジュンを左手でケイを抱きしめると二人も満面の笑みでジュリの背中に腕を回した。
ー---
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そういったのはサラサラの栗色のショートヘアにジュリと同じ紫色の瞳を持つ双子の弟・ケイ。
ケイは小さいポシェット一つしか持ってないジュリを不審そうに見ながら聞いた。
「ケイ、言い方!お兄ちゃん、僕たちはベータだから大丈夫だけどお兄ちゃんはオメガなんだから野宿は絶対ダメなんだよ?」
ケイとは反対に穏やかな声色でジュリを見上げたのは双子のジュン。ふわふわの栗色の髪にジュリやジュンとは違う青い瞳の少年だ。
「ありがとう、二人とも。うーん……実は行く場所はまだ決めてないんだ。だけど、お金はちゃんとあるから野宿はしないし馬車にも乗れる、ヒートも終わったばかりだから大丈夫。……ねえ、どうせならうーんと遠い所に行ってみない?」
にこりと笑いながら二人の顔を覗き込む。
ケイとジュンはお互いの顔を見合わせると「うん!」と声を合わせた。
時刻は朝五時半、朝日が昇る。まるで追い風がジュリ達を応援するかのように背中を押した。
三人はぎゅっと手を繋ぎ一歩を踏み出した。
「マルシャン村?ここから五日はかかるよ。悪いけどうちの馬車はそこまではいけないから他当たってくれるかい?……といってもそこまで行ってくれる馬車なんてあるのかねぇ……」
市場の近く、馬車が何台も止まる乗合馬車の停留所。御者の男は頭を掻きながら困ったように言った。
本来、馬車は貴族御用達の乗り物で一般市民は到底持つことのできない代物だ。
一般市民でも乗れるような乗合馬車はそれぞれの地域で走るエリアを決められていて村を越えることができる馬車などジュリも見たことがなかった。
「そうですよね……。でもどうしても行きたいんです!そこをなんとか」
「んー……そうは言ってもなぁ……」
そう言いながら御者の男は舐めるようにジュリの体を見ている。
首につけたチョーカーに美しい容姿、それに微かに漏れるフェロモン……いくらマントで隠していてもジュリがオメガだという事はまるわかりだった。
男はにやりと厭らしく笑い舌なめずりする。そしてその手がジュリの体にゆっくりと手を伸ばした時だった。
「おいおい、こんなところで可愛い子ちゃんに手だすんじゃないよ」
低い男の声が後ろから聞こえてきた。
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