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44この子を守るには
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「ジュリちゃん、A定食一つにB定食二つね!」
「は、はい!」
ここは王宮から遠く離れたマルシャン村。
大都会ほどではないが商人が多く集まる都市なのに森や川など自然豊かな場所も多い人気の場所だ。
そんなマルシャン村のとある定食屋でジュリは少し膨らんだお腹を抱えながらキッチンに立っていた。
半年前、王宮を飛び出したジュリは恥も承知で娼館に戻っていた。
ー-王宮から逃げてきたなんて聞いたらオーナーなんて言うかな。それにお腹に赤ちゃんがいるなら……いや、もう僕は誰にも抱かれたくない。
秋が深まり肌寒く感じる朝。娼館の裏口、ゴミ捨て場の隣でうずくまりどうしようかと迷っていると、ガチャリと裏口の扉が開いた。
「うわっ!って……お前、ジュリか?」
ゴミ袋を片手に扉から出てきたのはオーナーだった。
オーナーは煙草を吹かせながら驚いた顔で座り込んでいるジュリを見つめていた。
「すいません、オーナー……。ちょっと、中に入れてもらえませんか……」
「おぉ……ちょうど今みんな休んでる頃だ。寒いだろ、とりあえず中に入りな」
異様な空気を感じたのだろう。オーナーはジュリの手を取り、急ぎ足で自室まで連れていった。
ふかふかのソファに座り、渡された厚手の毛布にくるまるとやっと呼吸ができるのを感じる。
「ジュリ、お前どうしたんだ。王宮に行かなくていいのか……?」
「……もう、無理になっちゃった。ショウは元の世界に帰っちゃうんだって……」
「そうなのか!?まぁお前も喜んで行ったわけじゃなかったからこれでよかったのかもな。そうだ……」
「オーナー、掃除でもなんでもするから置いてくれないかな……」
ジュリは俯き、聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。
涙が溢れぽたぽたと膝に涙のシミを作り、守るようにお腹を両手で包んだ。
「お前、もしかして……」
「好きだから!この子は絶対守りたいんだ……。だけど、僕は男娼だったからあそこに居たらこの子がどうなるか……!」
ジュリは唇を噛みしめ体を縮こませながら嗚咽をもらす。
しばらくそうしているとオーナーは無言で椅子から立ち上がり、備え付けの棚から茶封筒を取り出した。
「実はな、お前が王宮に呼び出されて出てった日にお前の借金、全部勇者様が払ってんだよ。だからお前がここにいる必要はないんだ。……それでな、ジュリはここで頑張ってくれてたからな。……ほら、これ」
オーナーがジュリに差し出した茶封筒。そこには三か月分の給料が入っていた。
その大金に目を丸くし驚いているとオーナーは困ったように微笑んだ。
「まぁ、退職金というか……お腹の子のために使ってくれ。ここにいたらいずれ王宮のやつらにも見つかるぞ。早く弟たち連れて安全なところに行きな」
「オーナー……」
「こんな事しかできなくてすまないな。お前がここに来た事は誰にも言わないから安心しろ」
「っ……!あ、ありがとうございます!」
ジュリは立ち上がると深く頭を下げ茶封筒を握りしめ娼館を後にした。
「は、はい!」
ここは王宮から遠く離れたマルシャン村。
大都会ほどではないが商人が多く集まる都市なのに森や川など自然豊かな場所も多い人気の場所だ。
そんなマルシャン村のとある定食屋でジュリは少し膨らんだお腹を抱えながらキッチンに立っていた。
半年前、王宮を飛び出したジュリは恥も承知で娼館に戻っていた。
ー-王宮から逃げてきたなんて聞いたらオーナーなんて言うかな。それにお腹に赤ちゃんがいるなら……いや、もう僕は誰にも抱かれたくない。
秋が深まり肌寒く感じる朝。娼館の裏口、ゴミ捨て場の隣でうずくまりどうしようかと迷っていると、ガチャリと裏口の扉が開いた。
「うわっ!って……お前、ジュリか?」
ゴミ袋を片手に扉から出てきたのはオーナーだった。
オーナーは煙草を吹かせながら驚いた顔で座り込んでいるジュリを見つめていた。
「すいません、オーナー……。ちょっと、中に入れてもらえませんか……」
「おぉ……ちょうど今みんな休んでる頃だ。寒いだろ、とりあえず中に入りな」
異様な空気を感じたのだろう。オーナーはジュリの手を取り、急ぎ足で自室まで連れていった。
ふかふかのソファに座り、渡された厚手の毛布にくるまるとやっと呼吸ができるのを感じる。
「ジュリ、お前どうしたんだ。王宮に行かなくていいのか……?」
「……もう、無理になっちゃった。ショウは元の世界に帰っちゃうんだって……」
「そうなのか!?まぁお前も喜んで行ったわけじゃなかったからこれでよかったのかもな。そうだ……」
「オーナー、掃除でもなんでもするから置いてくれないかな……」
ジュリは俯き、聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。
涙が溢れぽたぽたと膝に涙のシミを作り、守るようにお腹を両手で包んだ。
「お前、もしかして……」
「好きだから!この子は絶対守りたいんだ……。だけど、僕は男娼だったからあそこに居たらこの子がどうなるか……!」
ジュリは唇を噛みしめ体を縮こませながら嗚咽をもらす。
しばらくそうしているとオーナーは無言で椅子から立ち上がり、備え付けの棚から茶封筒を取り出した。
「実はな、お前が王宮に呼び出されて出てった日にお前の借金、全部勇者様が払ってんだよ。だからお前がここにいる必要はないんだ。……それでな、ジュリはここで頑張ってくれてたからな。……ほら、これ」
オーナーがジュリに差し出した茶封筒。そこには三か月分の給料が入っていた。
その大金に目を丸くし驚いているとオーナーは困ったように微笑んだ。
「まぁ、退職金というか……お腹の子のために使ってくれ。ここにいたらいずれ王宮のやつらにも見つかるぞ。早く弟たち連れて安全なところに行きな」
「オーナー……」
「こんな事しかできなくてすまないな。お前がここに来た事は誰にも言わないから安心しろ」
「っ……!あ、ありがとうございます!」
ジュリは立ち上がると深く頭を下げ茶封筒を握りしめ娼館を後にした。
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