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29レミウスの訪問

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「ショウ、ただいま!」

「お帰り、ジュリ!」

王宮に戻るとジュリはショウの部屋に一目散に向かった。
ノックと同時に扉を開けるとそこにはバスローブ姿のショウがソファに座って寛いでいた。
シャワーに入ったばかりなのかまだ髪の毛の先から雫が落ちている。

「あっ休んでたんだよね。ごめん、突然来て……」

「いや、着替えたらジュリを迎えに行こうと思ってたから気にするな。……夕食はまだ?」

「うん。帰ってきたばかりだから」

「よかった。じゃあ一緒に食べよう。今から支度をするから、ジュリも着替えておいで」

わかった、と返事をし一旦自分の部屋に戻るジュリ。
クローゼットを開けると、来ていた服を脱ぎショウが用意してくれた上質なアイボリーのシャツとグレーチェックのパンツに着替えた。
アルファ性の強いショウを誘惑しないように一日二回に増やした抑制剤を鏡台の上から取るとごくんと飲み込み、最後にお気に入りのヘアブラシでサラサラの黒髪を梳く。

「髪、長くなってきたかなぁ。ショウは短いのと長いのどっちが好きなんだろ……」

独り言でショウの名前を呼んでいることに気付いたジュリは沸騰しそうなほど赤くなった顔を両手で覆った。

ー-これは、身だしなみ整えてるだけだからっ。ショウの為とかじゃないしっ!

自分の心の中で言い訳をしていると、コンコンと部屋のドアをノックする音が聞こえた。

ー-ショウだっ!

ヘアブラシを置き席を立つと勢いよくドアを開ける。

「ショウ早かったね……って、レミウスさん?」

「ジュリさん、お久しぶりです。……少し話があるのですがよろしいか?」

「あっ、はい。もちろん・・・・・・」

部屋の中にレミウスを通すとジュリはレミウスにソファに座ってくださいと促したが、レミウスはジュリの前に片手を差し出すとそれを拒否した。

「ジュリさん、手短にお話します。……まず私たちのお願いを聞いてここにきてくださり本当に感謝しています。勇者様が強引にあなたを連れてきた事、申し訳なかった。だから、今回の件が解決したらすぐにでもお金の方も必ず用意します。」

「そりゃちょっと強引かな、とは思ったけど今はもう……」

「それで、改めてあなたにお願いした事を確認したい。……あなたは勇者様がそういう行為ができるまでのサポートです。どうやらあなたには反応をできたみたいですし、期待しています」

「そんなのっ、わかってる……」

「……どうやら勇者様はあなたに好意があるらしい。ですが、あの方はそれ相応の方と結ばれなくてはいけません。変に期待してはいけませんよ」

「だからっわかってるから!・・・・・・ショウと付き合えるなんて思ってない。でも、すごく感謝してるからそれはちゃんと伝えたい」

レミウスは必死なジュリの様子に怪訝な表情を浮かべると、はぁ……と一つため息をついた。

「『感謝の気持ち』だけならどうぞ。ですが『あなたの役目』をよく考えて行動してください」

冷たくそう言い残すとレミウスは振り返りもせず部屋から出て行ってしまった。




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