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232人きりの夕食

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「これ、2人分なんだよね……?」

「そうだが……。足りないか?」

ショウの部屋に並べられた食事を見てジュリは絶句していた。
手を繋いで王宮へ帰った後、ショウはマーリンに夕食を2人分自室へ運ぶようお願いした。いつもは昼食は騎士団員と、夕食は王の側近たちと食べていたらしく「今夜は2人で食べる」と伝えたときマーリンは口をハクハクさせながら驚いていた。
そんな夕食。テーブルには見たこともない量と種類の料理が机から落ちそうなほど並べられていた。

「こちらにんじんのポタージュ、白いんげんのトマト煮込み、いのししのテリーヌ、子羊のソテートリュフソース添えになります。パンは各種揃えています。採れたての野菜はグリルにしてありますのでラクレットチーズも後でお持ちいたしますね。飲み物はシャンパンでよろしいでしょうか?」

「ジュリはお酒飲める?」

「あ、うん……」

料理人は2人に料理の説明をした後、グラスにシャンパンを注ぐとにっこりと微笑み部屋を出ていった。
2人きりになった部屋。ジュリはまるで呪文のような料理名にフォークとナイフを握ったままどれから手を付けていいかわからず動けないでいた。隣に座ったショウはそんなジュリの姿に気づくと自分のフォークに子羊のソテーを刺しそれをジュリの口に突っ込んだ。

「んんっ!……ふごっ、ぐぅ……」

「ははは、ジュリ美味しい?」

「んっ!もうっ、喉詰まっちゃうじゃん!……でも、美味しい。こんなのはじめて……娼館ではこんなのでないから」

勝手に口の中で溶けていく肉に感動したジュリは他の料理を見て目をキラキラ輝かせている。娼館では三食ちゃんと出るものの固い肉やくず野菜の炒め物やスープが多く、食事=腹を満たすもの、としか考えていなかったのだ。

「美味しかったならよかった。色々あるが好きに食べてくれ。……実は俺もマナーとかよくわかってないんだ。適当に切って食べちゃえばいいよ」

頭を掻きながら恥ずかしそうに笑うショウ。
その顔が面白くてつられてジュリも笑ってしまった。
それからは、始め緊張して中々食べられなかったジュリも「美味しい美味しい」と次々に口に入れ出された食事、全て完食した。

「はぁ~美味しかった。ショウはいつもこんなの食べてるの?」

ソファにもたれ、食後の紅茶を飲みながら、同じように隣で寛いでいるショウに尋ねた。
”異世界から来た”という情報はショウが魔族を倒した時に国中が知れ渡った情報だがそれ以上の事は誰も知らなかった。

「いや、こんな豪華な食事はここに来てからだ。俺は前にいた世界ではただの大学生だったからな」

「大学生……ってなに?」

「あー、社会に出る前に通う学校、というか……俺は警察官を目指していたんだが」

「なにそれ、警察官!?……ねぇ、ショウのいた世界の話、もっと聞かせて!」

ジュリはティーカップを机に置くとソファの上で正座しキラキラした瞳でショウを見つめた。

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