18 / 85
18自由の言葉
しおりを挟む
「とりあえず、荷物置きにいこ……」
置いてけぼりになったジュリは渡された鍵をぎゅっと握ると用意された自室に向かった。
ゆっくり鍵を差し込みそっと、金色のドアノブを回す。
「えっ、これなに……」
部屋の中を見て驚いた。
ショウの部屋よりも部屋の中が豪華だったからだ。
自分は金で契約した男娼。いくら勇者直々に呼ばれたからといって、あてがわれるのはどうせ粗末な部屋だろうと思っていた。それがだ、アンティーク調で出来た猫脚の鏡台に、それと同じ木材で出来たローテーブルにふかふかのソファ。ベッドはショウの部屋と同じサイズのベッドで違うといえば、シーツの色が赤色じゃなくて白色だったということだけだった。
「これ本当に僕の部屋?でも鍵あいたしな……」
まだ信じれないジュリだったがここに立っていても何もはじまらない。
しょうがない、とソファにバッグを置くと中を整理しだした。
抑制剤は忘れないように鏡台の上、その横に男娼を始めてからずっと使っているヘアブラシ。
最後にショウの部屋より大きいだろうクローゼットの前に立つ。
持ってきているのは今着ている普段着の黒と茶の色違い2着。それと白、黒、薄紫のベビードール3着だけだ。
「洗濯……は、さすがにさせてもらえるよね」
ジュリは持ってきている服の少なさに少し不安になりながらクローゼットを開ける。
「え、えぇ……やっぱ部屋間違った!?」
ジュリは驚き持っていた服を全部落としてしまった。
それもそうだろうクローゼットの中には色鮮やかな服が大量にかけられていたからだ。
ショウは渡すカギを間違えたんじゃないか、と思ったジュリは急いでクローゼットの戸を閉めようとした。
ー-これなに?ー-
ちょうどジュリの目の前、白い襟元がフリルになっているブラウスの胸元に赤いカードが金色のピンで留められているのを見つけた。
吸い寄せられるようにそれを手に取るジュリ。簡単に取れたその赤いカードをひっくり返すと文字が書いてある。
『ジュリへ
気に入ってくれる服があればいいんだが。
この部屋のものは全て君の自由にしてほしい。
ショウより』
「なんで、ただの男娼の僕にここまでしてくれるわけ……?」
ジュリは信じられないという顔で何度もそのカードを読み返す。
『自由』というたった2文字。
それはジュリが今までの人生で一番欲しくて一番手に入らなかったものだった。
ジュリは胸がキュウ、と苦しくなるのを感じながらそのメッセージカードを胸に抱きしめた。
ー---
「あの、ショウはどこにいるの……?」
ジュリはショウに貰ったフリルのブラウスとそれに合う黒いパンツに着替えると1階まで来ていた。
ちょうど、すれ違ったメイドにショウの居場所を尋ねると、メイドは一瞬目を見開いた後、咳ばらいをした。
「……どうぞこちらです。勇者様は今、騎士団員と訓練をしている最中です」
「あ、ありがとう……」
どこか棘のある態度に少し苛立ちを覚えたが、これが普通の人の対応だよ、と思い直すとジュリはおとなしくメイドの後ろをついていった。
「こちらの広場で実技演習中です。決して邪魔にならないようにしてくださいね」
中庭に繋がるドアの前でメイドは立ち止まった。ここから自分で行けということなのだろう。
じゅりは「ありがとう」と言うとドアノブを握りドアを開けた。
「男娼ごときが……」
すれ違いざまに聞こえた声。小声でボソッとしか聞こえなかったが確かにあのメイドはそう言ったのだ。
ー-確かに男娼だけど!あんたに言われる筋合いはない!ー-
カッとなりドアノブを握る手に力がこもった。
その時だ。
「ジュリ!来てくれたんだな!」
前方からショウが走ってきたのだった。
置いてけぼりになったジュリは渡された鍵をぎゅっと握ると用意された自室に向かった。
ゆっくり鍵を差し込みそっと、金色のドアノブを回す。
「えっ、これなに……」
部屋の中を見て驚いた。
ショウの部屋よりも部屋の中が豪華だったからだ。
自分は金で契約した男娼。いくら勇者直々に呼ばれたからといって、あてがわれるのはどうせ粗末な部屋だろうと思っていた。それがだ、アンティーク調で出来た猫脚の鏡台に、それと同じ木材で出来たローテーブルにふかふかのソファ。ベッドはショウの部屋と同じサイズのベッドで違うといえば、シーツの色が赤色じゃなくて白色だったということだけだった。
「これ本当に僕の部屋?でも鍵あいたしな……」
まだ信じれないジュリだったがここに立っていても何もはじまらない。
しょうがない、とソファにバッグを置くと中を整理しだした。
抑制剤は忘れないように鏡台の上、その横に男娼を始めてからずっと使っているヘアブラシ。
最後にショウの部屋より大きいだろうクローゼットの前に立つ。
持ってきているのは今着ている普段着の黒と茶の色違い2着。それと白、黒、薄紫のベビードール3着だけだ。
「洗濯……は、さすがにさせてもらえるよね」
ジュリは持ってきている服の少なさに少し不安になりながらクローゼットを開ける。
「え、えぇ……やっぱ部屋間違った!?」
ジュリは驚き持っていた服を全部落としてしまった。
それもそうだろうクローゼットの中には色鮮やかな服が大量にかけられていたからだ。
ショウは渡すカギを間違えたんじゃないか、と思ったジュリは急いでクローゼットの戸を閉めようとした。
ー-これなに?ー-
ちょうどジュリの目の前、白い襟元がフリルになっているブラウスの胸元に赤いカードが金色のピンで留められているのを見つけた。
吸い寄せられるようにそれを手に取るジュリ。簡単に取れたその赤いカードをひっくり返すと文字が書いてある。
『ジュリへ
気に入ってくれる服があればいいんだが。
この部屋のものは全て君の自由にしてほしい。
ショウより』
「なんで、ただの男娼の僕にここまでしてくれるわけ……?」
ジュリは信じられないという顔で何度もそのカードを読み返す。
『自由』というたった2文字。
それはジュリが今までの人生で一番欲しくて一番手に入らなかったものだった。
ジュリは胸がキュウ、と苦しくなるのを感じながらそのメッセージカードを胸に抱きしめた。
ー---
「あの、ショウはどこにいるの……?」
ジュリはショウに貰ったフリルのブラウスとそれに合う黒いパンツに着替えると1階まで来ていた。
ちょうど、すれ違ったメイドにショウの居場所を尋ねると、メイドは一瞬目を見開いた後、咳ばらいをした。
「……どうぞこちらです。勇者様は今、騎士団員と訓練をしている最中です」
「あ、ありがとう……」
どこか棘のある態度に少し苛立ちを覚えたが、これが普通の人の対応だよ、と思い直すとジュリはおとなしくメイドの後ろをついていった。
「こちらの広場で実技演習中です。決して邪魔にならないようにしてくださいね」
中庭に繋がるドアの前でメイドは立ち止まった。ここから自分で行けということなのだろう。
じゅりは「ありがとう」と言うとドアノブを握りドアを開けた。
「男娼ごときが……」
すれ違いざまに聞こえた声。小声でボソッとしか聞こえなかったが確かにあのメイドはそう言ったのだ。
ー-確かに男娼だけど!あんたに言われる筋合いはない!ー-
カッとなりドアノブを握る手に力がこもった。
その時だ。
「ジュリ!来てくれたんだな!」
前方からショウが走ってきたのだった。
1
お気に入りに追加
226
あなたにおすすめの小説
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。



【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

花婿候補は冴えないαでした
いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜
車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第2の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる