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あれ、あなたは……?

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 コンコンコン
ノックの音がして、意識が浮上する。誰だろう?

「ふぁーい、どうぞ~。」

一瞬躊躇うようにドアノブが動いて、いつぞやの赤髪の俺様さんが入ってきて――固まった。昨日からこのパターン多いな。いや、ワル様は勝手に入ってきたけど。

「な!な、な、」
「なな?」
「なんて格好をしてんだ!」
「へ?」

俺は自分の格好を確かめる。デカいシャツとパンツ。と言うのも、他にマトモな服がなかったからである。と言うのも、この場所はどうもこの土地の領主の屋敷らしく、この部屋はオレ、つまり転移者が使うことを前提に用意されていた。たぶんその領主ってのが、転移者を引き取って飼う(もしくは飼いたいと思ってる)タイプのキモいおじさんなんだと思う。何というか、クローゼットの中がアレだった。なんていうの? ランジェリー? なんかそういうスケスケなやつばっかりだったんだよ。んで、仕方ないから隣のワル様のクローゼットからシャツを拝借してきたんだった。あ、ちなみにパンツはナニがあるかわからないからと持ってきてた。

「いや、仕方ないじゃないですか。そこのクローゼット見てくださいよ。それ着るくらいなら、この方がましでしょ?」
「……どういうことだ?」

赤髪のお兄さんは怪訝そうな顔をして、クローゼットを開き、またもや固まった。この世界の人みんな初心なの? ちょこちょこ固まってない?

「一応きくが、これはお前が――」
「ん?」
「お前が頼んで用意させたものではないよな?」
「当たり前ですよ! 命令されてもないのにこんなの着るわけないじゃないですか!」
「……わかった。ところで普段着はあるのか?」
「軍で支給されたやつはありますよ?」
「あれは一応制服だろう。用意させるからしばらく待っていろ。あと、腹は減っていないか?」

言われて思ったよりお腹が空いていることに気づいた。

「空いてます。」
「だろうな。もう昼だからな。」
「え!?」

そう言えば日が高い。赤髪さんはふふっと笑って、メシを持ってきてやる、と言うと部屋を出て行った。


◇◇◇


 しばらくしてまたもノックの音がした。どうぞ、というと外から開けてくれないか、と声がした。扉を開けると、片手に服を抱え、片手でワゴンを押した赤髪さんがいた。

「すまん、手が塞がって。」
「別に構いませんが……、分けて持ってくるとかすればよかったのでは?」
「あー、まぁ、そうなんだが。」

なんだか歯切れの悪い返事だ。赤髪さんはごにょごにょと口籠もった後、ぼそっと、

「食事が優先だと思ったんだが、目のやり場に困るからな……。」

と言った。目のやり場……俺のこの姿が?

「あの、それは、俺のこの姿に欲情するって話ですか?」
「は?」
「だから、目のやり場に困るって、この俺がこの格好してるのにムラムラするってことですか!?」
「ど、どうした?突然……。」

赤髪さんに詰め寄ると、なんか一歩引いて顔を背けられる。むらむらするわけではないのだろうか? ん?

「……反応してます?」
「う゛……」
「てことは、本当に俺を見てむらむらするということですね。」
「ぐ……」

赤髪さんの少し膨らんだ股間にそっと手を伸ばそうとして、手首を掴まれた。

「だめだ!」
「……なんでですか?」
「な、なんででもだ!」
「ぶー!」
「い、いいから早く着替えて、メシを食え!!」
「ちぇッ! はいはい、わかりましたよ~。」

そう言ってシャツのボタンを外し始めると、赤髪さんは「お前! ちょっと待て! 俺は扉の前にいるから!」と叫んで慌てて出て行った。本当になんなんだ一体……。






ーーーーー

ちなみにワル様が手配した人員は、当然ですがこの赤髪さんではありません。
赤髪さんもほどほどに偉いので、もともとの担当者を脅して交代しました。

ーーーーー
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