異世界は転移者管理社会でした。〜性犯罪者呼ばわりされてもめげないぜ〜

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影響は意外に大きい…?

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 考え事をしていると、さっきの案内の軍人さんが、コンコンと控えめにノックして、声をかけてきた。

「あの……、」
「ん?あぁ、もういいですよ。ちゃんと服着たんで。」
「あ、はい……先程はし、失礼を……。あの、その、」

と、ごにょごにょ言っている。面倒くさくなったのと、魔法の効果を確かめたかったので、直球で聞いてみた。

「この建物の中、きれいになりました?」
「え、あ……はいっ!!ではやはりウタ様が――」
と、いたく感動したみたいな感じで距離を詰められ、手を取られる。

――と、にわかに部屋の外が騒がしくなる。

「ウタ!だいじょう、ぶ、か……っ、貴様!」

デジャヴ!この展開もうやったじゃん!

「ちょ!ワル様!ストップ!!」
「し、かしだな、……ワル様?」

やっべ。つい言ってしまった。

「あ、えっと……その、ワルター様って転移者的にはちょっと呼びづらくて、その、愛称、的な?」

言い訳が苦しい!でも、ぎりぎり何とか許して!

「愛称……。そうか。本当に何もないのか?」
「はい、なんかこう感動を伝えてくれてただけですよ。」
「感動を…?」
「准将閣下!!教会内の患者全員が治ったようです!!それから、汚物や汚れが全て消えたと…っ!」
「何……?」

え?なんか大事おおごとになってる?ワル様は俺の方を振り返って口を開いた。

「まさか――」

俺は苦笑いしかできなかった。


***


 会議は大揉めに揉めた。1日では到底終わりそうもない。ただの魔力タンクとして連れてきたはずの転移者が、教会を丸ごと浄化したのだ。当事者の彼はとりあえず部屋に軟禁してある。教会や、病人だった者、その家族たちからは「この奇跡を起こした方をもてなしたい」という要望がひっきりなしにやって来るが、そもそも彼は特区の住人で、人との接触を制限されている。

「はぁ……」
臨時の執務室で目頭を揉見ながら、ため息をつく。問題は山積みだ。まさかこんなことになるとは……。一続きの部屋でもうすでに寝ているであろう彼のことを考えながら、会議の内容を思い出す。

『特区の住人は自由に魔法を使えないよう枷をつけられているはずだろう!』
『いや、あれは……たしか肌を寄せ合えば行使可能なはずだ……おそらく教会を対象にして……』
『まさかそんなはず……』
『アレは自分が特区一魔力があると豪語しておりましたよ。』
『ではやはり……。』
『問題はそこではない! これからどうするかだ!』

 今はまだ広まっていないこの出来事が広まれば、特区の住人の扱いが変わる可能性がある。すでに彼を「救世主」扱いする者も出始めているようだ。……彼の言動から伺い知る特区での生活は、決して良いものとは言えないように思う。だから、これはいいことなのかもしれない。上層部の頭の硬い者たちが聞けば反感を買うだろうことを考えながら、身体を休めようと執務室替わりの部屋を出て寝室へ向かう。二つあるベッドルームのうち一つは彼が寝ている。ふと彼のことが気になって、不安になったりしてないだろうかと、そちらへ足を向けた。
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