24 / 35
影響は意外に大きい…?
しおりを挟む考え事をしていると、さっきの案内の軍人さんが、コンコンと控えめにノックして、声をかけてきた。
「あの……、」
「ん?あぁ、もういいですよ。ちゃんと服着たんで。」
「あ、はい……先程はし、失礼を……。あの、その、」
と、ごにょごにょ言っている。面倒くさくなったのと、魔法の効果を確かめたかったので、直球で聞いてみた。
「この建物の中、きれいになりました?」
「え、あ……はいっ!!ではやはりウタ様が――」
と、いたく感動したみたいな感じで距離を詰められ、手を取られる。
――と、にわかに部屋の外が騒がしくなる。
「ウタ!だいじょう、ぶ、か……っ、貴様!」
デジャヴ!この展開もうやったじゃん!
「ちょ!ワル様!ストップ!!」
「し、かしだな、……ワル様?」
やっべ。つい言ってしまった。
「あ、えっと……その、ワルター様って転移者的にはちょっと呼びづらくて、その、愛称、的な?」
言い訳が苦しい!でも、ぎりぎり何とか許して!
「愛称……。そうか。本当に何もないのか?」
「はい、なんかこう感動を伝えてくれてただけですよ。」
「感動を…?」
「准将閣下!!教会内の患者全員が治ったようです!!それから、汚物や汚れが全て消えたと…っ!」
「何……?」
え?なんか大事になってる?ワル様は俺の方を振り返って口を開いた。
「まさか――」
俺は苦笑いしかできなかった。
***
会議は大揉めに揉めた。1日では到底終わりそうもない。ただの魔力タンクとして連れてきたはずの転移者が、教会を丸ごと浄化したのだ。当事者の彼はとりあえず部屋に軟禁してある。教会や、病人だった者、その家族たちからは「この奇跡を起こした方をもてなしたい」という要望がひっきりなしにやって来るが、そもそも彼は特区の住人で、人との接触を制限されている。
「はぁ……」
臨時の執務室で目頭を揉見ながら、ため息をつく。問題は山積みだ。まさかこんなことになるとは……。一続きの部屋でもうすでに寝ているであろう彼のことを考えながら、会議の内容を思い出す。
『特区の住人は自由に魔法を使えないよう枷をつけられているはずだろう!』
『いや、あれは……たしか肌を寄せ合えば行使可能なはずだ……おそらく教会を対象にして……』
『まさかそんなはず……』
『アレは自分が特区一魔力があると豪語しておりましたよ。』
『ではやはり……。』
『問題はそこではない! これからどうするかだ!』
今はまだ広まっていないこの出来事が広まれば、特区の住人の扱いが変わる可能性がある。すでに彼を「救世主」扱いする者も出始めているようだ。……彼の言動から伺い知る特区での生活は、決して良いものとは言えないように思う。だから、これはいいことなのかもしれない。上層部の頭の硬い者たちが聞けば反感を買うだろうことを考えながら、身体を休めようと執務室替わりの部屋を出て寝室へ向かう。二つあるベッドルームのうち一つは彼が寝ている。ふと彼のことが気になって、不安になったりしてないだろうかと、そちらへ足を向けた。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。


悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。

囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!
かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。
その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。
両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。
自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。
自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。
相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと…
のんびり新連載。
気まぐれ更新です。
BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意!
人外CPにはなりません
ストックなくなるまでは07:10に公開
3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる