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魔法チートの予感?

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 ――着いた先の街は活気がなかった。

 この世界は科学の大部分を魔法でカバーしている。医療だってある程度は発達している、と思う。俺は特区から出たことがないから、実際のところはよくわからない。でも、研究所を見る限り、結構発達してると思う。


 この世界において、転生者は割とチートである。と気づいたのはいつだっただろう。俺たち転生者は膨大な魔力があって、特殊な魔法が使える。この特殊な魔法ってのが、最初に鑑定された5つの魔法。でも、アレはなんというか……消費魔力がバカみたいに多いのと、この世界の魔法のシステム?と全然違うから、コッチの人には使えないだけで、その二つをクリアすればおそらくコッチの人でも使える。同じ理屈で、転生者もこの世界の魔法を使える。むしろ、システムの細かい所を魔力でゴリ押しすればふわっとした理解だけで、その現象を起こせる。

この世界では呪文もしくは魔法陣的なもので魔法を使う。その中で魔法の対象を定め、その対象に対して何をどうしてどんな効果を得たいのか事細かに盛り込んでいく。おそらくだけど、そうすることで消費魔力を抑えている、のだと思う。でも消費を気にしないなら、なんとなく指定した範囲に対して、なんとなくこんな感じの効果を!ってのができるってことだ。だから、俺がよく使う「洗浄クリーン」も、この世界の魔法とは少し違う。本来は指定した対象の汚れた部分の汚れの原因を分離して取り除く魔法だ。例えば服に落としたケチャップのシミに対して、ケチャップだけを取り除くみたいな? しかもこれでもこの世界の人は疲れるから普通はやらないらしい。けど、俺の場合は汚れの除去、邪魔なものの分解、あと細菌とかの消毒も兼ねてる。

 と、まぁ……つまりこの世界の魔法はほぼ万能と言っても差し支えない。ただ、なんかよく分からないけど道理というのか理? に反することはできないっぽい。時間を加減速(対象の体感時間を操作)とかはともかく、時間を巻き戻すとかそう言うことはできないっぽい。5年かけてこんなくらいのことがわかった。ただし、このアンクレットのせいで自分に対してしか使えないけどな!あーでも、なんか肌と肌が触れ合ってれば使えるんだったか?んー。



 などとうだうだ考えているのは、俺が今悩んでいるからだ。この高熱にうなされる人たちを回復させるために脱いで抱きついてもいいかと言う問題に。……多分ダメだよなぁ。うーん、どうすれば……。


◇◇◇


 ――少し前、街に着いた俺たちは、とりあえずこれからの拠点となる宿泊場所へむかった。部屋は何でかワル様と同じ……といっても階全体が同じ部屋で、そののうちの一部屋って感じ。スイートルームの一室?

「では、我々は状況の確認へ向かい、対応を検討してくるから、ウタ、君はしっかり休んでおきなさい。」
「ぁ、あの……でも、なんかできることがあればやりますよ?」

「――ふむ……、」
「きさ、お前の仕事はこの部屋で大人しくしてるこ――」
少し考える素振りをするワル様の一方で、不機嫌軍人さんが口を開いたが、さらにそれに被せるようにワル様が言った。

「では、救護班へ。あちらは人手が必要だろうからな。大尉、手配を。」
「なっ、准将!?」
「とりあえずここまで移動してきて特にコミュニケーションに問題はなかった。本人の希望だ。」
「そうではありますが……」

ワル様を呼びにきた不機嫌軍人さんは大変不服そうだ。まぁ転移者はんざいしゃだと思ってるんだもんな。けど、上司の命令だからきっと手配してくれるんだろう。

 ワル様たちを見送った後しばらくして、案内の人らしい軍人さんが来てくれた。フードを目深に被った俺に、「本当に行かれるんですか?」としきりに尋ねてくる。珍しい。案内の人って基本喋らないのに。

「……どうしてそんなことを言うんですか?」
「そ、それは……その、病院は、今、すごい有り様で……その、あなたのような方が行くのは……」

あなたのような、ね。色狂いが行ったって何の役にも立たないってことか。

「まぁ、自分にもできることがあるかもしれないので……。」
「…………。」

軍人さんは少し考え込んだあと、その後は何も言わずに大人しく案内してくれた。





ーーーーー

この案内の軍人さんは、主人公が俺様さんに唾つけられそうになった時に、同じ部屋にいた人で、演習場を走った人の一人です。

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