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中編

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ハイパーセクシーなリュウジくん

【イラスト:SF様(@SF30844166)】




 ――それから、オレとヤマトさんはサバゲー以外でも会うようになった。

ミリタリーショップ巡りしたり、シューティングバーへ行ったり、普通にご飯を食べにも行ったし、カラオケにも行った。もちろんサバゲーにも。ヤマトさんは大らかで、オレの愚痴なんかもうんうんと聞いてくれた。オレの出た番組を見たよって、感想をくれた。そういう時はこう考えてみたら?、すごいがんばってるんだね。その時々に応じて優しい言葉をくれる。そんなヤマトさんに惚れるなって方が無理だろ。オレは、ますますヤマトさんが好きになった。

『今度ドライブ行かない?』
そうメッセージが来たのは、オレが、 ヤマトさんへの想いを隠せなくなってきた頃だった。
『いつですか?』
『次の非番は一週間後だけど、リュウジくんの休みに合わせて申請するからさ。』

わざわざ休みを取ってくれるんだ……。些細なことにもどきどきしてしまう。

『次の休みは二週間後の――』


◇◇◇


 約束の日、アパートの玄関前で、迎えに行くよと言ってくれたヤマトさんを待っていると、高そうな車が目の前に止まった。窓が開いて、ヤマトさんが「乗って」と言ってくる。あれ?ヤマトさんってこんな車に乗ってたけっけ……?ちょっと不思議に思いつつ、助手席に乗り込む。

「ごめんね、待たせちゃって。」
「いや、むしろわざわざ迎えにきてもらってすいません。」
「車だし、全然。」

ヤマトさんの雰囲気がいつもと違って、なんとなく、黙る。車が動き出して、オレは沈黙に耐えられなくて、口を開く。

「あの……今日って、どこに?」
「んー、リュウジくんって、明日も休み?」
「え?あ、はい。」
「そっか、じゃあちょっと遠くまで行こうか。」
「え……。」

それって……、その、え?もしかして、いや、でも。唐突にいろんなことを意識して、顔が熱くなる。いや、でも、そんなつもりじゃないかも……と、運転するヤマトさんの横顔を見る。

ぁ、耳が、赤い。

……え、やっぱり、そういうことなのか!?どきどきして、俯く。そういえばヤマトさん前に言ってた。自衛官は休暇を取るのが大変だって。あのサバゲー場の常連なのも、同じ場所なら同じ書類で届出ができるからだって言ってた。遠出なんて、たぶん、めちゃくちゃ大変なはず……。

「ど、どこにいくんですか?決めてるんですよね?」
「え゛!?あ、あー、うん。でも、着いてからのお楽しみ、かな。」
「……泊まりですか?」
「勝手でごめんね?」
「いえ。」

また、沈黙。不思議と気まずくはない。ぽつぽつとたわいもない話をしつつドライブを楽しんだ。


 ――そうして、着いたのは有名な温泉地。

「ベタかなぁ……と、思ったんだけど、その。」

少し照れたようにヤマトさんが言う。フロントでチェックインして、向かった部屋は、二間続きの豪華な部屋で、窓の外に海が見える。

「リュウジくん。俺と――、付き合ってください。」

呆然とするオレの後ろから声が掛けられる。ズルい。そんな、不意打ちみたいに、しかも、顔も見ずに言うなんて、ズルい。振り返って、ヤマトさんの顔を見る。眉が下がって、へにゃっと自信のなさそうな顔。キリッとしてるとカッコいいのに。ふっと、笑ってしまう。

「……せめて、オレの顔を見て言ってくれませんか?」
「っ!……リュウジくん。俺と、付き合って。」
「はい、お願いします。オレも、ヤマトさんが好きです。」

ヤマトさんは目を見開いた後、オレをすごい力で抱きしめた。筋肉の圧がすごい。むぎゅってなる。べしべしと肩を叩くと圧が減る。

「こんな、いい部屋、高かったんじゃないですか?」
「――リュウジくんと、温泉、入りたくて。」
「へ?」
「リュウジくん、サバゲーの後の温泉、いつも断るでしょ?その割に行きたそうだったから……」

バレてた。いや、うん、たしかに行きたかったけど。なんか恥ずかしい。

「なんか事情があるのかなぁって。内風呂なら大丈夫でしょ?それに――。あ、そうだ荷物置いたら近くを観光しようか。」

ヤマトさんは途中で言葉を切って、あからさまに話を変える。ただ、言おうとしたことはなんとなくわかった。

「はい。」


***


 リュウジくんと、恋人同士になった。いや、勝算はあった。だからこそ、こんな無茶な計画を立てた。初めては海の見える良いホテルで、なんてあまりにも過ぎる気がしたけど、リュウジくんは喜んでくれたようだ。

ホテルの近くを観光して、ホテルに戻ってくる。ホテルの豪華な夕食に、俺もリュウジくんもテンションが上がって、つい食べ過ぎた。ふくれた腹をさすりながら、提案する。
「ねぇ、少し散歩しない?」
いいですね。と言う言葉で、俺たちはホテルの外へ出る。

砂浜を歩きながら、先を歩くリュウジくんのことを考える。リュウジくんは、結構謎だ。スーツアクターという珍しい職業もそうだけど、温泉に入れない理由を含め、私生活は全然知らない。それに、元から俺を慕ってくれていたと思うけど、そもそも俺のどこを気に入ってくれたのかもわからない。最近ようやく変化に気づけるようになったけど、感情の変化がわかりにくくて、いつも割とクールだ。昼間に俺が言いかけたこと、リュウジくんはきっと気付いてる。でも、気にしてなさそうだった。温泉、一緒に入りたい、って意味わかってるよね?考えているうちにだんだんともやもやしてくる。俺がそういうつもりって気づいてるよね?意識してんのは俺だけか?

「あの、ヤマトさん。」

どきっとした。リュウジくんの前では優しい奴でいたい。努めて優しく返事をする。
「ん?どうした?」
「そろそろ、帰りませんか?海風が、思ったより涼しくて。」
「あ、うん。じゃあ戻ろうか。」

いよいよだ。

 部屋に戻ったところで、意を決して、口を開く。
「体冷えたでしょ。温泉、入ろうか?」
「……はい。っ、あの――」
「『やっぱり無理』は無しね。」
「っ、いや、そう、じゃなくて……その、オレ……」
「どうしたの?」

俺は一世一代の勇気を出して、無言でリュウジくんの服に手をかけた。上着を脱がして床に落とす。シャツのボタンを外す。リュウジくんがされるがままなのをいいことに、シャツを脱がす。思っていた通りのものがそこにある。

「やっぱりか。」
「――え。」
「いや、なんかひどい傷痕か、タトゥーかだろうと思ってたよ?」
「えっと……」
「温泉に行きたくてもいけない理由。むしろ、傷痕じゃなくてホッとしてる。」

リュウジくんが絶句している。俺は、アンダーウェアの隙間から見えるタトゥーを見ながら、つぶやく。

「しかし、結構ガッツリ入れたねぇ。」
「――引かないんですか?」
「ん?別に。俺らは入れられないけどね。あーでももし、ヤクザとかと繋がりがあるならやばいかも?大丈夫だよね?」
「大丈夫です!」
「じゃあ、気にしないよ?それに……コレ、他の人には秘密なんでしょ?俺しか、知らないとか……」

すごい、良い。

最後の言葉は言えなかった。リュウジくんが俺に抱きついてきたから。心臓らへんに頭突きはいくら鍛えてても結構痛いのでやめて。なんて軽口を言って、頭を撫でてあげる。
「温泉、一緒に入ろうか?」
胸元の頭が上下した。


「や、なんか……その、普通に恥ずかしい、ですね。」
この子は、俺の理性を試しているのだろうか?
「オレ、こんななんで、人と風呂とか入ったことなくて……」
なんで君、そんな胸元まで隠してんの!?逆にエロいよ!?
「……そっか。」
「ヤマトさん、やっぱり筋肉すごいですね。腕とか、オレの倍くらいありそう。」

先に入っててくださいと言われ、俺はもんもんとしながら身体を洗い、先につかっていた。リュウジくんは、しばらくして浴室に入ってくると、身体を洗い、そんなことを言いながら俺の隣につかってきた。腕と腕が触れている。全体的に細いけど、筋肉もついてるしやっぱり男の腕だな。

色が白くて、滑らかな肌の上を、水滴が流れていく。無意識に唾を飲む。リュウジくんが何か話しているけど、いまいち頭に入ってこない。温泉で上気した頬が照れているように見える。体温が上がったからか、いつもより赤い唇に誘われて、思わずキスをした。

「――んっ!」

あぁ、やばい。止まれない。リュウジくんの口内をむちゃくちゃに貪る。歯、ちっちゃいな。口自体が小さいからかな?あ、八重歯とがってる。舌、意外に短いね。……ん?背中をどんどん叩かれて、口を離す。

「っ、ぷはぁっ、はぁっ、はっ……」
「え?」
「息、はあっ、できなくて……はっ、死ぬかと」
「鼻で、息するんだよ?」
「へ、あ、あぁ、そうですよね!いや、と、突然でびっくりして――っう、ん、ふ」

まさか初めてとか?うそでしょ?嬉しい。
二回目は、慣れたのか、俺の舌を追いかけてくる。俺の方に舌を伸ばそうとするけど、舌が短くて、上手くできないらしい。八重歯が俺の舌をかすって、ピリッと痛む。
「あ」
ぱっと唇が離れる。
「ごめんなさい!」
「ん?あぁ、いや、やばい。むしろ、興奮する。」
「え?」
顎を掴んで、また口づけようとして、静止される。

「あの、続きは、ベッドでしませんか?……準備、したので。」

興奮しすぎて、眩暈がした。リュウジくんを抱え上げて、ベッドへ向かう。水が滴るのなんかどうでもいい。まだ乱れていないベッドに、リュウジくんをなるべく優しく下ろす。そのまま覆い被さってキスをする。リュウジくんは目を白黒させていたけど、キスをすると、目を閉じて大人しくなった。

滑らかな肌を、手のひらでなぞる。首、胸、腹、わき腹……、わき腹はくすぐったかったのか、リュウジくんが身じろぎして、抵抗する。それを押さえつけて、尻を撫でる。あぁ、いい筋肉がついてる。気づけば揉んでいた。
「っ、う、ん……」
もぞもぞと居心地悪そうにするリュウジくんに、尋ねる。
「もっと、してほしい?」
両手で顔を覆ったリュウジくんが、小さく頷く。
「どこ、触ってほしい?」
今度はふるふると首を横に振る。言えない、ってことかな?
「じゃあ、ずっとお尻を揉んでようかなぁ。気持ちいいし。」
俺がそううそぶくと、リュウジくんは息を飲んで、うーだかあーだかうなった後、小声で、

「ヤマトさんの、好きなところ、触ってください。オレ、どこでも幸せですから。」

顔を覆っていた手をずらし、隙間から目だけみせてそう言う。ほんと、どこまで――。
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