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ギャラリーの脳内で「お前、誰だよ」と謎の人物に分類された少年ユーリに抱きつき、彼の胸元にある虹色のネクタイを撫でる少女の胸元には、ワンピースからはみ出た生胸はあれど、生徒の証のネクタイは見えない。
(と言うか、その服にネクタイつけたら、変態にしか見えないよね!学園記念サロン内ドレスショップ勤務 N女史談)
だがそれでも、もしかしたらもしかしたら、彼女は学園の生徒なのか。
あと、他の男に奪われそうな、愛らしく疑いを知らないアンリタンとは誰のことなのか。
ちょっとギャラリーの頭は混乱中。
(いや、その娼婦の様な格好でいつも過ごしている、貴女は、絶対に王立学園の生徒さんなんかじゃないよね?ギャラリー大多数談)
「………(コクリ)」
無言少女がもう一度、ギャラリーに向けて頷いた。彼女も、アンリタンは生徒さんじゃないに一票らしい。
生徒ではないと疑われているアンリタンはと言えば、そんなことはどうでも良く、やっと掴んだ勝利を確実なものにする為、普段はあまり使わない脳みそをフル稼働させていた。
「ねぇ!ユーリ!誰にも引き裂かれない様に、今すぐ、結婚の手続きを済ませてしまいましょう!えぇーとぉ!えぇーとぉ!て、手続きって、どうすればよいのよぉ~!あっ!そうだ!ミスティーナ!そうよ!手続きは、貴女が全部してちょうだい!ほらほら、早く!今すぐに!」
ユーリとアンリタンのイチャイチャタイムに移り、本日の絡まれ相手からお役御免になった筈の被害者少女、今初めてその名前を呼ばれたミスティーナは、その場で気配を消し、銅像の様になっていたのだが、まだ彼女の災難の時間は続くらしい。アンリタンからのご指名が入ってしまった。
だが、ミスティーナと呼ばれた被害者少女は、特に動揺することもなく、黙ったまま、学園記念サロン内にある「こちらで婚姻申請ができます」という看板の下にいる女性に目配せを送った。
それに即座に反応した女性は、1枚の書類を持って、ユーリとアンリタンの前に出る。
「初めまして、私は、こちらにある王都中央役所婚姻課出張ブースの責任者でございます。隣の本局に行かなくともこちらで婚姻届の提出ができます」
「学園記念サロン」では、美しい屋内広場や別にある貸切ホールで、婚約や結婚パーティができる。出席者に見守られながら婚姻届を出したいという希望が多く届いたため、屋内広場に王都中央役所婚姻課の出張受付ブースが設置されたのだ。
カップル対応に慣れた婚姻課出張ブースの責任者は流れる様に、スムーズに、バカップル相手に、結婚の手続き案内を繰り広げてくれる。流石プロである。
「こちらのペンでこの書類にサインしていただくと、交流の途絶えていたお互いに把握していない兄弟などと結婚しない様に血縁関係と、結婚詐欺や重婚などを避けるための婚姻の有無を確認できます。問題があれば、文字が書けなくなりますので、直ぐにわかります。この箱に記入済みの書類を入れていただけば、そのまま自動で隣の王都中央役所に転送され、婚姻届の受付完了となります」
数年前に隣国から輸入された、血筋戸籍確認システムの凄まじい便利さに密かに慄きながら、再び銅像に戻ったミスティーナは、自称元婚約者と自称姉の婚姻手続きを見守る。
「思っていたより簡単なのだな。うむ、今すぐに済ませてしまおう!このペンでここに名前を書けば良いのだな。ユーリクン ノブシルと。よし、書けたぞ!アンリタンもこのペンで書いてくれ!」
ユーリからペンを受け取ったアンリタンは、ペンを握りしめながら満面の笑みをみせる。
「私、ユーリと今ここで結婚できちゃうのね!嬉しい!帰ったら、お祝いしなくちゃ!ユーリはうちのお婿さんになるのだから、一緒に我が家に帰りましょう! そして、明日は夫婦でお買い物に行きましょう!私、ほしいものが沢山あるの!うふふ!」
嬉しげにクルリと身体を回せば、裾が異常に短いワンピースから、色々見えてしまうが、ギャラリーと責任者は見ないふりをし、ユーリはデロンとだらし無く鼻の下を伸ばす。
「そうか!そうか!今日から、アンリタンの家が私の家になるのだな!在学中は、この施設までしか自由に出歩けない規則があったが、卒業した今日からは自由だ!ただ、荷物持ち込み禁止の学園寮から出たばかりの今は、着替えも何も持っていないのだよ。今着ている制服はあるが、教科書や下着などは処分を頼んでしまったのだ。」
「着替えとかなら、以前遊びにきたオトモダチが忘れて行ったのが結構あるから、心配ないわ!部屋着と普段着ぐらいだけど、パーティに出るわけじゃないから、問題ないでしょ?新婚なんだから、今日は絶対に一緒に過ごさないとダメよ!」
ユーリが荷物を取りに実家に帰った際に、王族の親が用意した婚約を破棄し、“アンリタンと結婚”したことを話せば、親は絶対に怒る。そして、王族の力で婚姻をなかったことにされてしまうかもしれない。その前にユーリと夫婦として男女の関係になり、妊娠したことにしよう!と考えたアンリタンは、ユーリにしがみ付き離れない。
王立学園に通うことを許された数少ない生徒は、全員学園敷地内にある寮住まいなので、卒業すれば、実家に帰るか、嫁入り先婿入り先に向かうか、就職先の寮に入るかなので、ユーリが学園を卒業した今日から婿入り先に滞在するのもおかしなことではない。
ユーリは大して迷うことなく、即アンリタンの家に向かうことを決めた。
(と言うか、その服にネクタイつけたら、変態にしか見えないよね!学園記念サロン内ドレスショップ勤務 N女史談)
だがそれでも、もしかしたらもしかしたら、彼女は学園の生徒なのか。
あと、他の男に奪われそうな、愛らしく疑いを知らないアンリタンとは誰のことなのか。
ちょっとギャラリーの頭は混乱中。
(いや、その娼婦の様な格好でいつも過ごしている、貴女は、絶対に王立学園の生徒さんなんかじゃないよね?ギャラリー大多数談)
「………(コクリ)」
無言少女がもう一度、ギャラリーに向けて頷いた。彼女も、アンリタンは生徒さんじゃないに一票らしい。
生徒ではないと疑われているアンリタンはと言えば、そんなことはどうでも良く、やっと掴んだ勝利を確実なものにする為、普段はあまり使わない脳みそをフル稼働させていた。
「ねぇ!ユーリ!誰にも引き裂かれない様に、今すぐ、結婚の手続きを済ませてしまいましょう!えぇーとぉ!えぇーとぉ!て、手続きって、どうすればよいのよぉ~!あっ!そうだ!ミスティーナ!そうよ!手続きは、貴女が全部してちょうだい!ほらほら、早く!今すぐに!」
ユーリとアンリタンのイチャイチャタイムに移り、本日の絡まれ相手からお役御免になった筈の被害者少女、今初めてその名前を呼ばれたミスティーナは、その場で気配を消し、銅像の様になっていたのだが、まだ彼女の災難の時間は続くらしい。アンリタンからのご指名が入ってしまった。
だが、ミスティーナと呼ばれた被害者少女は、特に動揺することもなく、黙ったまま、学園記念サロン内にある「こちらで婚姻申請ができます」という看板の下にいる女性に目配せを送った。
それに即座に反応した女性は、1枚の書類を持って、ユーリとアンリタンの前に出る。
「初めまして、私は、こちらにある王都中央役所婚姻課出張ブースの責任者でございます。隣の本局に行かなくともこちらで婚姻届の提出ができます」
「学園記念サロン」では、美しい屋内広場や別にある貸切ホールで、婚約や結婚パーティができる。出席者に見守られながら婚姻届を出したいという希望が多く届いたため、屋内広場に王都中央役所婚姻課の出張受付ブースが設置されたのだ。
カップル対応に慣れた婚姻課出張ブースの責任者は流れる様に、スムーズに、バカップル相手に、結婚の手続き案内を繰り広げてくれる。流石プロである。
「こちらのペンでこの書類にサインしていただくと、交流の途絶えていたお互いに把握していない兄弟などと結婚しない様に血縁関係と、結婚詐欺や重婚などを避けるための婚姻の有無を確認できます。問題があれば、文字が書けなくなりますので、直ぐにわかります。この箱に記入済みの書類を入れていただけば、そのまま自動で隣の王都中央役所に転送され、婚姻届の受付完了となります」
数年前に隣国から輸入された、血筋戸籍確認システムの凄まじい便利さに密かに慄きながら、再び銅像に戻ったミスティーナは、自称元婚約者と自称姉の婚姻手続きを見守る。
「思っていたより簡単なのだな。うむ、今すぐに済ませてしまおう!このペンでここに名前を書けば良いのだな。ユーリクン ノブシルと。よし、書けたぞ!アンリタンもこのペンで書いてくれ!」
ユーリからペンを受け取ったアンリタンは、ペンを握りしめながら満面の笑みをみせる。
「私、ユーリと今ここで結婚できちゃうのね!嬉しい!帰ったら、お祝いしなくちゃ!ユーリはうちのお婿さんになるのだから、一緒に我が家に帰りましょう! そして、明日は夫婦でお買い物に行きましょう!私、ほしいものが沢山あるの!うふふ!」
嬉しげにクルリと身体を回せば、裾が異常に短いワンピースから、色々見えてしまうが、ギャラリーと責任者は見ないふりをし、ユーリはデロンとだらし無く鼻の下を伸ばす。
「そうか!そうか!今日から、アンリタンの家が私の家になるのだな!在学中は、この施設までしか自由に出歩けない規則があったが、卒業した今日からは自由だ!ただ、荷物持ち込み禁止の学園寮から出たばかりの今は、着替えも何も持っていないのだよ。今着ている制服はあるが、教科書や下着などは処分を頼んでしまったのだ。」
「着替えとかなら、以前遊びにきたオトモダチが忘れて行ったのが結構あるから、心配ないわ!部屋着と普段着ぐらいだけど、パーティに出るわけじゃないから、問題ないでしょ?新婚なんだから、今日は絶対に一緒に過ごさないとダメよ!」
ユーリが荷物を取りに実家に帰った際に、王族の親が用意した婚約を破棄し、“アンリタンと結婚”したことを話せば、親は絶対に怒る。そして、王族の力で婚姻をなかったことにされてしまうかもしれない。その前にユーリと夫婦として男女の関係になり、妊娠したことにしよう!と考えたアンリタンは、ユーリにしがみ付き離れない。
王立学園に通うことを許された数少ない生徒は、全員学園敷地内にある寮住まいなので、卒業すれば、実家に帰るか、嫁入り先婿入り先に向かうか、就職先の寮に入るかなので、ユーリが学園を卒業した今日から婿入り先に滞在するのもおかしなことではない。
ユーリは大して迷うことなく、即アンリタンの家に向かうことを決めた。
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3点リーダと鉤括弧の最後の、。については、そのうち訂正予定。
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