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「婚約破棄は決定だ!お前はさっさと私の前から去るが良い!私は、このアンリタンと婚約、いや結婚する!幸い細かなしきたりが多い王家へではなく、婿入りでの婚姻だからな!」
「そうよ、そうよ!」
「………」
「私は今日の朝に、学園の者から、もう授業に出る必要はなく、退寮手続きも済んだと告げられた。きっと優秀だから、学園で学ぶ必要などないのだろう。凡人なら3年かかるところを、入学からたった1年で卒業できたらしい。流石は私だ!」
「凄い、凄いわ、格好良い!」
「だから、もうこんな場所でお前と会うこともないだろう。言っておくが、僻地にある領地に帰るのもダメだぞ!どこか遠くで平民として雑草でも食って生きていけばよい!」
「草ぁ!あははははは!」
(草はお前らバカップルが食え!好きなだけ食え!つーか、人間の食べ物はお前らには勿体ないからもう食うな!学園記念サロン案内所勤務 T氏談)
時折漏れるギャラリーの心の叫びはともかくとして、また新情報が出てきた。どうやら少年の方は、本当に、王立学園の生徒だったらしい。王立学園の生徒の証である虹色のネクタイを身につけてはいても、「学園記念サロン」施設内を彷徨っている姿を頻繁に目撃されている少年が、教師に認められる程、学園で熱心に学んでいたとは、現在のこの会話を見守るギャラリー達にはとても信じることが出来ない。
だから、1年で退寮と学園から言われたなら、それは………
「………(コクリ)」
流石の無言少女も、誰かにこの衝撃情報について、共感して欲しくなったらしく、少年にではなく、ギャラリーに向けて頷いた。勿論、無言で。
そんな、少女とギャラリーの間で取り交わされた「この少年、まともに学園に通わず、ついに退学になったのか!バカにしか見えないけれど、やっぱり正真正銘のバカだったんだね!」「うん、だよねぇ!」という無言の会話に気づくことなく、少年の自分劇場は続く。
(うん、今日も長いゾ。でも、みんなついて来てねぇぇぇぇ!)
見守りギャラリーの一部のテンションがおかしくなって来たが、少年の話に飽きてきたからではない。ただの気晴らしである。
(はい、気にしないでぇぇぇ!)
「生活に困っても王都にある両親の家に押しかけてきて、アンリタンに近づくなんてことは許さないからな!」「そうよ、家に入れてなんてあげないんだから!」
「………」
それにしても、常に彼に寄り添う少女…アンリタンの合いの手は、手抜きな様で、絶妙である。
少年が毎日、気持ちよく喚き続けることができるのも、もしかして、アンリタンのお陰かもしれない。そんなことをギャラリーが考えているうちに、本日の被害者少女の苦行タイムは終わった様だ。
カップルは互いに向き合い、イチャイチャし始めた。
「アンリタン、これで君の憂いは晴れただろう?私にはもう婚約者なんていない。すぐに結婚しよう!」
「ああ、ユーリ!」
また新情報!少年の名前は、ユーリと言うらしい。
(もしかしたら、以前から聞いていたかもしれないけど、君達ウザカップルの会話がウザくて、スルーしてたかも!ごめんねっ!いや、ウザ男に謝る必要はないな!学園記念サロン内ケーキショップ勤務 Y女史談)
「悔しいが、側室の子の私は、兄上たちに比べ王家の威光が弱い。今日婚約できたとしても、数ヶ月かけて結婚の準備などしていたら、愛らしく疑いを知らないアンリタンが他の男に騙されて奪われてしまうかもしれない!そんなこと許せるはずがないだろう?結婚して、この私にアンリタンを守らせてほしい!私がいなくなる学園もできれば結婚を機に退学してもらえると有難い!」
「まあ!ユーリ!嬉しい!うん!私、ユーリのお嫁さんになる!学園なんてどうでも良いじゃない!パパやママもユーリとの結婚を喜んでくれるに違いないわ!!」
どうやら、当人は、王族の側室の子供だと認識しているらしいが、ギャラリーの頭の中には、疑問だらけである。何故なら、この国に側室制度はないのだから。
「そうよ、そうよ!」
「………」
「私は今日の朝に、学園の者から、もう授業に出る必要はなく、退寮手続きも済んだと告げられた。きっと優秀だから、学園で学ぶ必要などないのだろう。凡人なら3年かかるところを、入学からたった1年で卒業できたらしい。流石は私だ!」
「凄い、凄いわ、格好良い!」
「だから、もうこんな場所でお前と会うこともないだろう。言っておくが、僻地にある領地に帰るのもダメだぞ!どこか遠くで平民として雑草でも食って生きていけばよい!」
「草ぁ!あははははは!」
(草はお前らバカップルが食え!好きなだけ食え!つーか、人間の食べ物はお前らには勿体ないからもう食うな!学園記念サロン案内所勤務 T氏談)
時折漏れるギャラリーの心の叫びはともかくとして、また新情報が出てきた。どうやら少年の方は、本当に、王立学園の生徒だったらしい。王立学園の生徒の証である虹色のネクタイを身につけてはいても、「学園記念サロン」施設内を彷徨っている姿を頻繁に目撃されている少年が、教師に認められる程、学園で熱心に学んでいたとは、現在のこの会話を見守るギャラリー達にはとても信じることが出来ない。
だから、1年で退寮と学園から言われたなら、それは………
「………(コクリ)」
流石の無言少女も、誰かにこの衝撃情報について、共感して欲しくなったらしく、少年にではなく、ギャラリーに向けて頷いた。勿論、無言で。
そんな、少女とギャラリーの間で取り交わされた「この少年、まともに学園に通わず、ついに退学になったのか!バカにしか見えないけれど、やっぱり正真正銘のバカだったんだね!」「うん、だよねぇ!」という無言の会話に気づくことなく、少年の自分劇場は続く。
(うん、今日も長いゾ。でも、みんなついて来てねぇぇぇぇ!)
見守りギャラリーの一部のテンションがおかしくなって来たが、少年の話に飽きてきたからではない。ただの気晴らしである。
(はい、気にしないでぇぇぇ!)
「生活に困っても王都にある両親の家に押しかけてきて、アンリタンに近づくなんてことは許さないからな!」「そうよ、家に入れてなんてあげないんだから!」
「………」
それにしても、常に彼に寄り添う少女…アンリタンの合いの手は、手抜きな様で、絶妙である。
少年が毎日、気持ちよく喚き続けることができるのも、もしかして、アンリタンのお陰かもしれない。そんなことをギャラリーが考えているうちに、本日の被害者少女の苦行タイムは終わった様だ。
カップルは互いに向き合い、イチャイチャし始めた。
「アンリタン、これで君の憂いは晴れただろう?私にはもう婚約者なんていない。すぐに結婚しよう!」
「ああ、ユーリ!」
また新情報!少年の名前は、ユーリと言うらしい。
(もしかしたら、以前から聞いていたかもしれないけど、君達ウザカップルの会話がウザくて、スルーしてたかも!ごめんねっ!いや、ウザ男に謝る必要はないな!学園記念サロン内ケーキショップ勤務 Y女史談)
「悔しいが、側室の子の私は、兄上たちに比べ王家の威光が弱い。今日婚約できたとしても、数ヶ月かけて結婚の準備などしていたら、愛らしく疑いを知らないアンリタンが他の男に騙されて奪われてしまうかもしれない!そんなこと許せるはずがないだろう?結婚して、この私にアンリタンを守らせてほしい!私がいなくなる学園もできれば結婚を機に退学してもらえると有難い!」
「まあ!ユーリ!嬉しい!うん!私、ユーリのお嫁さんになる!学園なんてどうでも良いじゃない!パパやママもユーリとの結婚を喜んでくれるに違いないわ!!」
どうやら、当人は、王族の側室の子供だと認識しているらしいが、ギャラリーの頭の中には、疑問だらけである。何故なら、この国に側室制度はないのだから。
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3点リーダと鉤括弧の最後の、。については、そのうち訂正予定。
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