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前書き
厄介な相手に絡まれちゃうお話、第二弾。こちら、書いたあと忘れていたものですが、短編としては、無駄に長いです。「然様然らば是にて御免!愚かな貴方達とは、もう会うことはないと思うけれど、まあ、頑張って!」からタイトル変更しました。
****
「お前との婚約は破棄する!」
花壇や噴水もある、広々とした屋内広場の高い天井に響くのは、左腕に娼婦の様な装いの少女をぶら下げた、十代後半に見える少年の、少し甲高い声。
「理由はわかっているだろう?婚約した時は僻地の出とは言え伯爵令嬢だったから仕方がないが、今現在のお前は、親から縁を切られているそうじゃないか!ということは、お前は今、平民だ!全く!お前が平民になった瞬間にこの私との婚約の話など綺麗さっぱり消滅させて当然なのに、私に何も知らせぬまま、今日まで婚約を継続させていたとは!」
「そうよ、そうよ!」
「………」
「昨日、このアンリタンがお前と親との縁切りの話を教えてくれなければ、王子の婿入り先が消失したと大変な騒ぎになっているところだったのだぞ!」
「そうよ、そうよ!」
「………」
ブシデア王国の王都中央にある王立学園の敷地に隣接している、通称「学園記念サロン」と呼ばれる公共施設では、今日も本人曰く王族であるらしい少年が喚いていた。
彼の左側にピッタリとくっつき、彼の言葉に頻繁に合いの手を入れているのは、日中の公共施設には相応しくない、肌の露出過剰なワンピースを着た少女で、少年はその少女を守る騎士の如く、胸を張り………偉そうに叫んでいた。
少女の装いでは、施設の入り口で警備員に注意を受ける筈なのだが、毎回入場者が多いタイミングを見計らって、人混みに紛れて入り込むらしい。巡回警備員に見つかった際には、「ちゃんとした服に着替えてから来なさいといつも言ってるでしょう!」と叱られながら、摘み出されている。
ここ、「学園記念サロン」は、名前から受け取るイメージに反し、学園内にある施設ではないし、学園の創立の記念として建築されたものでもない。
王宮に次いで大きな規模を誇る図書館とちょっとした催し物を行うことができるホールやカフェ、洋服屋等のお店が多数入った、大変便利な複合施設の建築を計画した際に、隣の敷地に建つ、「ほどんどの王国民が立ち入りを許されない閉鎖空間である学園内にあり、極少数の人間にしか利用されない、無駄に蔵書数を誇る学園図書館」を閉鎖、移転させる方便として、施設名に学園記念という名前が付けられただけなのだ。
無駄を嫌う、この国の敏腕宰相の強引なアイデアであったが、何故か学園関係者に喜ばれ、採用される運びとなった。
そうして建築された複合施設を挟む形で、王立学園と、学園記念サロンと渡り廊下でつながっている全王国民のためにある中央役所があるため、施設内で働く者、図書館や役所に勤める役人の他、それぞれの利用者など、日々大勢の民がこの「学園記念サロン」を訪れ、利用している。
ちなみに、王立学園内にかつてあった図書室は、「学園記念サロン」が出来る際に、教師専用の資料室と、歴史の古い家門出身の卒業生の家から「置き場所に困って、寄付されたっぽい」骨董品の数々の展示・保管場所へと、姿と機能を変えた。
かつては学園内に保管されていたほとんどの蔵書が、「学園記念サロン」の図書館に移されたので、現在では、王立学園の教師も生徒も、調べ物がある時には、一旦学園の敷地から出て、「学園記念サロン」に向かうのが当たり前になっている。
王立学園に所属する者からすれば、少しばかり移動が面倒になりはしたが、教師は勤務時間中でも学園の外に出る機会ができ、学園内に住み自由に外に出ることを許されなかった在学生達にとっては、例え学園の真横であっても、気晴らしに出かけられる「図書館」だけではない複合施設の存在は歓迎できるものであった。
そんな訳で、この便利な「学園記念サロン」の利用者には、王立学園の関係者や学生も、含まれることとなった。
随分前から、授業中である筈の時間帯にもこの施設内で目撃されていた、少年少女のカップルが、本当に王立学園の関係者かどうかは怪しいと思うとの意見もあるが。
(いや、あれはきっと学園に入りたくとも入れなかった偽学生でしょう!学園記念サロン内カフェ勤務 A氏談)
また、近隣には安くはないが高くもない、安心安全な宿泊施設も多くあるため、慣れない王都の中を歩き回るより、この施設周辺でなるべく全ての用事を済ませようとする旅人も多い。少年に絡まれている少女もそんな1人だ。
旅人かどうかの判断は簡単だ。見た目ですぐにわかる。様々な理由があり、荷物を抱えての長距離移動が難しいお国柄のため、旅人の持ち歩く着替えは最低限が当たり前。なので、旅人の服装は、性別問わず、頑丈なブーツとパンツルック、寝ている間に奪われない様に、上着と一体型になっているボディーバッグが、標準なのである。
土産等で洋服を買うことは勿論あるが、短期滞在の旅先でファッションを楽しむために購入し、身につける者は少ない。商売等で会う相手もお互い様なことなので、遠方から訪ねてくる相手に、「正装してこい」「余所行きの格好で来い」などと煩く言う人間はいない。それが長距離移動に苦労を伴うこの国の常識なのだ。
厄介な相手に絡まれちゃうお話、第二弾。こちら、書いたあと忘れていたものですが、短編としては、無駄に長いです。「然様然らば是にて御免!愚かな貴方達とは、もう会うことはないと思うけれど、まあ、頑張って!」からタイトル変更しました。
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「お前との婚約は破棄する!」
花壇や噴水もある、広々とした屋内広場の高い天井に響くのは、左腕に娼婦の様な装いの少女をぶら下げた、十代後半に見える少年の、少し甲高い声。
「理由はわかっているだろう?婚約した時は僻地の出とは言え伯爵令嬢だったから仕方がないが、今現在のお前は、親から縁を切られているそうじゃないか!ということは、お前は今、平民だ!全く!お前が平民になった瞬間にこの私との婚約の話など綺麗さっぱり消滅させて当然なのに、私に何も知らせぬまま、今日まで婚約を継続させていたとは!」
「そうよ、そうよ!」
「………」
「昨日、このアンリタンがお前と親との縁切りの話を教えてくれなければ、王子の婿入り先が消失したと大変な騒ぎになっているところだったのだぞ!」
「そうよ、そうよ!」
「………」
ブシデア王国の王都中央にある王立学園の敷地に隣接している、通称「学園記念サロン」と呼ばれる公共施設では、今日も本人曰く王族であるらしい少年が喚いていた。
彼の左側にピッタリとくっつき、彼の言葉に頻繁に合いの手を入れているのは、日中の公共施設には相応しくない、肌の露出過剰なワンピースを着た少女で、少年はその少女を守る騎士の如く、胸を張り………偉そうに叫んでいた。
少女の装いでは、施設の入り口で警備員に注意を受ける筈なのだが、毎回入場者が多いタイミングを見計らって、人混みに紛れて入り込むらしい。巡回警備員に見つかった際には、「ちゃんとした服に着替えてから来なさいといつも言ってるでしょう!」と叱られながら、摘み出されている。
ここ、「学園記念サロン」は、名前から受け取るイメージに反し、学園内にある施設ではないし、学園の創立の記念として建築されたものでもない。
王宮に次いで大きな規模を誇る図書館とちょっとした催し物を行うことができるホールやカフェ、洋服屋等のお店が多数入った、大変便利な複合施設の建築を計画した際に、隣の敷地に建つ、「ほどんどの王国民が立ち入りを許されない閉鎖空間である学園内にあり、極少数の人間にしか利用されない、無駄に蔵書数を誇る学園図書館」を閉鎖、移転させる方便として、施設名に学園記念という名前が付けられただけなのだ。
無駄を嫌う、この国の敏腕宰相の強引なアイデアであったが、何故か学園関係者に喜ばれ、採用される運びとなった。
そうして建築された複合施設を挟む形で、王立学園と、学園記念サロンと渡り廊下でつながっている全王国民のためにある中央役所があるため、施設内で働く者、図書館や役所に勤める役人の他、それぞれの利用者など、日々大勢の民がこの「学園記念サロン」を訪れ、利用している。
ちなみに、王立学園内にかつてあった図書室は、「学園記念サロン」が出来る際に、教師専用の資料室と、歴史の古い家門出身の卒業生の家から「置き場所に困って、寄付されたっぽい」骨董品の数々の展示・保管場所へと、姿と機能を変えた。
かつては学園内に保管されていたほとんどの蔵書が、「学園記念サロン」の図書館に移されたので、現在では、王立学園の教師も生徒も、調べ物がある時には、一旦学園の敷地から出て、「学園記念サロン」に向かうのが当たり前になっている。
王立学園に所属する者からすれば、少しばかり移動が面倒になりはしたが、教師は勤務時間中でも学園の外に出る機会ができ、学園内に住み自由に外に出ることを許されなかった在学生達にとっては、例え学園の真横であっても、気晴らしに出かけられる「図書館」だけではない複合施設の存在は歓迎できるものであった。
そんな訳で、この便利な「学園記念サロン」の利用者には、王立学園の関係者や学生も、含まれることとなった。
随分前から、授業中である筈の時間帯にもこの施設内で目撃されていた、少年少女のカップルが、本当に王立学園の関係者かどうかは怪しいと思うとの意見もあるが。
(いや、あれはきっと学園に入りたくとも入れなかった偽学生でしょう!学園記念サロン内カフェ勤務 A氏談)
また、近隣には安くはないが高くもない、安心安全な宿泊施設も多くあるため、慣れない王都の中を歩き回るより、この施設周辺でなるべく全ての用事を済ませようとする旅人も多い。少年に絡まれている少女もそんな1人だ。
旅人かどうかの判断は簡単だ。見た目ですぐにわかる。様々な理由があり、荷物を抱えての長距離移動が難しいお国柄のため、旅人の持ち歩く着替えは最低限が当たり前。なので、旅人の服装は、性別問わず、頑丈なブーツとパンツルック、寝ている間に奪われない様に、上着と一体型になっているボディーバッグが、標準なのである。
土産等で洋服を買うことは勿論あるが、短期滞在の旅先でファッションを楽しむために購入し、身につける者は少ない。商売等で会う相手もお互い様なことなので、遠方から訪ねてくる相手に、「正装してこい」「余所行きの格好で来い」などと煩く言う人間はいない。それが長距離移動に苦労を伴うこの国の常識なのだ。
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3点リーダと鉤括弧の最後の、。については、そのうち訂正予定。
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