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29 お母様の前で妄想を楽しんではいけません!
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「何も情報がないのであれば、当家から接触するのはやめましょう。【アタラッシ】の店の様子については、【カフェ ボルドガボルド】の人間に監視と報告をさせます。本邸にはその結果を知らせるようにします。アーリエアンナは、休暇が終われば仕事でまた忙しくなるのでしょうから、関わることはないと思いますが、問題は休暇中の今ですわね。」
奇行の激しい宇宙人とはいえ、格上の公爵家、そして、他家のことでもあるので、実際に何かあってからでないと苦情は言えない。
元婚約者やボーボルドの者が、ピンクアータがアーリエアンナに接近することを好ましく思っていないのは、問題行動を起こす宇宙人に関わらせたくから。と、アーリエアンナやレーリスは認識している。アーリエアンナに関しては、ピンクアータからの執着を危険視しているからでもあるのだが、アーリエアンナ本人は身を守れる自信に溢れているので、そういった危機感はない。
「まだ休暇日は残っていますので、王都の街には滞在していますが、少し変装して、周囲を警戒していれば、あちら様は目立ちますし、接触は避けられると思います。大丈夫ですわ。」
ピンクアータもリードルも、強面でムキムキなイカす男ではないから、基本的に、彼らのことはどうでも良いアーリエアンナである。
面倒なので会いたくない相手なピンクアータと、折角お別れできたのだから、仕事以外では会いたくないリードルを避けることは、アーリエアンナ的には当然の行動だ。
絶対に避けてみせると、自信満々の顔で、母に頷いてみせた。
同時に、これは堂々と変装を楽しむチャンスではと思うアーリエアンナである。
お母様セレクトのこの“貴族令嬢らしい品のあるお忍び服”を脱いで、私のお気に入りの平民服に着替えても良いけど、私の好みを把握している宇宙人に気づかれない様にするなら、やはりここは男装に挑むべきかしら?
細身だけど、ちょっとマッチョな冒険者………ではなく、街で目立たない平民の男性ね。
イケてても、平民の男なら、ピンクアータ様の目には映らない筈!
イケてる平民の男に、俺はなる!
今こそ、出よ、筋肉!
妄想が楽しすぎて、令嬢としての顔が崩れそうになったアーリエアンナだが、前方からの冷気を感じ、楽しい妄想を即座に中断。淑やかににっこり微笑みながら、母からのお言葉を待つ。
「街での仕事に関しては、あとでゆっくり話しましょう。レーリス、マリアンナが貴方に新作菓子を試食してほしいそうよ。菓子工房のスタッフ用のカフェに用意してくれるそうだけど………」
マリアンナは、母のお気に入りの菓子職人で、この王都街屋敷内にある菓子工房で、数店舗の菓子の開発を担当している女性だ。小さい頃はアーリエアンナも、マリアンナの新作試食という名のお菓子食べ放題を楽しませてもらっていた。レーリスも何度か体験しているが、今日の誘いは、この会議室から彼を出し、今からの話を聞かせないためである。
母の視線が、テーブルの上の空になった皿に向いている。先程まで、様々な焼き菓子が美しく、沢山盛られていた大きな皿に上に。
「マリアンナの新作菓子!試食したいです!僕、まだまだ幾らでも食べられます!今ちょうど、お腹が空いていますし!」
母と話をする姉の横に座り、嬉しげに菓子を食べていたレーリスは、5枚の大皿の菓子を平らげていた。それに気づかない筈がないここの侍女なので、追加で菓子を出さなかったのは、レーリスの試食の予定を把握していたからなのだろう。
「そ、そう。それじゃあ、今から行ってらっしゃい」
「はい!!では、お母様、お姉様、行ってきます!」
「マリアンナの美味しい新作を楽しんでらっしゃい!」
侍女の1人に案内されて、レーリスが部屋を出る。
レーリスが所持するブラックホールに驚いたのか、若干母が引き気味だ。兄達に比べればまだ小さいが、兄達だって、レーリスの年齢の成長期には食欲を爆発させていたと思うのだが、今のレーリスの食べっぷりの方が兄達より凄いのかもしれない。
あのブラックホールっぷりには流石のお母様も驚くわよね!あれだけ食べて、満腹にならず、お腹がポッコリすることもないなんて、ミステリーだもの。
本当に、どこに消えたの、飲み込んだ大量の飲食物は!謎すぎる~。
「で?あのリードル様のお仕事で1~2日ではないお休みをいただくなんてこと、どうしてできたのか、まだお母様は報告を受けていませんわよ?」
弟のブラックホール胃袋に想いを馳せるアーリエアンナに、レーリスの食べっぷりへの驚きから立ち直った母が問いかけた。
奇行の激しい宇宙人とはいえ、格上の公爵家、そして、他家のことでもあるので、実際に何かあってからでないと苦情は言えない。
元婚約者やボーボルドの者が、ピンクアータがアーリエアンナに接近することを好ましく思っていないのは、問題行動を起こす宇宙人に関わらせたくから。と、アーリエアンナやレーリスは認識している。アーリエアンナに関しては、ピンクアータからの執着を危険視しているからでもあるのだが、アーリエアンナ本人は身を守れる自信に溢れているので、そういった危機感はない。
「まだ休暇日は残っていますので、王都の街には滞在していますが、少し変装して、周囲を警戒していれば、あちら様は目立ちますし、接触は避けられると思います。大丈夫ですわ。」
ピンクアータもリードルも、強面でムキムキなイカす男ではないから、基本的に、彼らのことはどうでも良いアーリエアンナである。
面倒なので会いたくない相手なピンクアータと、折角お別れできたのだから、仕事以外では会いたくないリードルを避けることは、アーリエアンナ的には当然の行動だ。
絶対に避けてみせると、自信満々の顔で、母に頷いてみせた。
同時に、これは堂々と変装を楽しむチャンスではと思うアーリエアンナである。
お母様セレクトのこの“貴族令嬢らしい品のあるお忍び服”を脱いで、私のお気に入りの平民服に着替えても良いけど、私の好みを把握している宇宙人に気づかれない様にするなら、やはりここは男装に挑むべきかしら?
細身だけど、ちょっとマッチョな冒険者………ではなく、街で目立たない平民の男性ね。
イケてても、平民の男なら、ピンクアータ様の目には映らない筈!
イケてる平民の男に、俺はなる!
今こそ、出よ、筋肉!
妄想が楽しすぎて、令嬢としての顔が崩れそうになったアーリエアンナだが、前方からの冷気を感じ、楽しい妄想を即座に中断。淑やかににっこり微笑みながら、母からのお言葉を待つ。
「街での仕事に関しては、あとでゆっくり話しましょう。レーリス、マリアンナが貴方に新作菓子を試食してほしいそうよ。菓子工房のスタッフ用のカフェに用意してくれるそうだけど………」
マリアンナは、母のお気に入りの菓子職人で、この王都街屋敷内にある菓子工房で、数店舗の菓子の開発を担当している女性だ。小さい頃はアーリエアンナも、マリアンナの新作試食という名のお菓子食べ放題を楽しませてもらっていた。レーリスも何度か体験しているが、今日の誘いは、この会議室から彼を出し、今からの話を聞かせないためである。
母の視線が、テーブルの上の空になった皿に向いている。先程まで、様々な焼き菓子が美しく、沢山盛られていた大きな皿に上に。
「マリアンナの新作菓子!試食したいです!僕、まだまだ幾らでも食べられます!今ちょうど、お腹が空いていますし!」
母と話をする姉の横に座り、嬉しげに菓子を食べていたレーリスは、5枚の大皿の菓子を平らげていた。それに気づかない筈がないここの侍女なので、追加で菓子を出さなかったのは、レーリスの試食の予定を把握していたからなのだろう。
「そ、そう。それじゃあ、今から行ってらっしゃい」
「はい!!では、お母様、お姉様、行ってきます!」
「マリアンナの美味しい新作を楽しんでらっしゃい!」
侍女の1人に案内されて、レーリスが部屋を出る。
レーリスが所持するブラックホールに驚いたのか、若干母が引き気味だ。兄達に比べればまだ小さいが、兄達だって、レーリスの年齢の成長期には食欲を爆発させていたと思うのだが、今のレーリスの食べっぷりの方が兄達より凄いのかもしれない。
あのブラックホールっぷりには流石のお母様も驚くわよね!あれだけ食べて、満腹にならず、お腹がポッコリすることもないなんて、ミステリーだもの。
本当に、どこに消えたの、飲み込んだ大量の飲食物は!謎すぎる~。
「で?あのリードル様のお仕事で1~2日ではないお休みをいただくなんてこと、どうしてできたのか、まだお母様は報告を受けていませんわよ?」
弟のブラックホール胃袋に想いを馳せるアーリエアンナに、レーリスの食べっぷりへの驚きから立ち直った母が問いかけた。
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