お前を愛することはない!?それより異世界なのに魔物も冒険者もいないだなんて酷くない?

白雪なこ

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11 少年は期待に胸を膨らませる

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 鬼畜上司リードルが仕事に追われている頃、アーリエリアンナは、こっそり屋敷を抜け出そうとしていた。



「ねぇ。本当に、ついてくる気?」

 屋敷内で飼われている馬の中で、一番地味に見えた、馬術の練習用の馬の背に、大きく膨らんだ背嚢と毛布をくくり付けたアーリエリアンナは、真横で自身と同じ行動を取っている同じ4つ年下の弟レーリスに、最後の確認をした。

「当たり前です!姉様だけ冒険の旅に出るなんて、ズルイです!!」

 家の中で最も、アーリエリアンナの影響を受けている弟のレーリスは、「前世のゲーム世界」への憧れが強い。

 まだ彼のお小遣いでは、大きな買い物は叶わないので、ボーボルド家の大人達が特注した自慢の冒険者服や大剣を見せてもらっては、キラキラとして目で「僕も大人になったら!」と、憧れを募らせてきた。

 姉に習い、“いつか”に備えて、武術も習っている。宙返りやらバク転は、兄達より上手いと思っている。無手でも剣でも、まだ姉に勝てないが、同い年の少年には負けない。

 未成年のうちに元婚約者にスカウト?された姉の就職年齢よりは遅れるが、長兄や次兄のように、成人した年にはリードル様の下で働くつもりだ。

 大人達の仕事の内容までは知らされていないけれど、冒険者みたいに楽しいだろうことは知っている。

 毎回ではないが、兄や一族の大人達は、仕事に行くと言って、ニヤけた顔で特注品を抱えて旅に出たりすることが多い。だから、きっと彼らの仕事は、夢みた冒険者のように、ワクワクするものに違いないのだ。

 姉に「レーリスは身軽ね、ちょっと部屋の天井の隅に張り付いてみて?」とか、「私がこう剣を振り回したら、バク転のあと、バク宙してみて?」とか言われ、実行する度に、「凄いわ、格好良い!レーリスってば、忍者になれんじゃないかしら?」と褒められてきた。

 姉に身の軽さを絶賛され、忍者とは何者か教えてもらったので、忍者になるのも良いかなと考えてことがある。だけど、折角カッコよく活躍しても、「誰にも気づかれず」に活動するのはちょっと悲しいなと思い直した。

 去年の誕生日に姉がプレゼントしてくれた、黒づくめの忍びの衣装はお気に入りだけど、顔まで隠していては、誰も僕を褒めてくれないことに気づいたのだ。正体不明な謎の男は格好良いイメージだけど、謎と思われるどころか、この世界に存在していないかのような、ずっと忍びっぱなしの存在はちょっと嫌だ。

 やっぱり、目指すなら、冒険者かなと思う。

 大剣より、弓やナイフを得意とするタイプの方が似合うかもと、姉様が言っていた。弓はそこそこ得意だ。今度、木の上から弓を射る練習とかしようかな。なんだか、格好良いでしょ?


 結構優秀なボーボルド家の面々。誰もが成人までに済ます予定の教育を早々に終えてしまうため、自由期間が長くなりがちだ。おかしな方向への暴走は暇な期間のせいかもしれない。

 つい最近教育を終えてしまったレーリスも、暇だった。なので、久しぶりに家でゴロゴロしていた姉に構ってもらいたくてたまらなかったが、「休暇」というものを邪魔をしてはいけないと我慢していた。

 そこに姉が、「貴方、結構小銭を持っていたわよね?ちょっと両替してくれない?」と、やってきたのだ。

 暇を持て余したレーリスが、食いつかない筈がない。
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