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第四章 討伐依頼
第61話 償うための選択
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一瞬の沈黙の後、ヘスラーがこちらを振り返り、声を発した。
首は繋がったままだ。
「な、何をした?」
みんなもヘスラー自身も驚いている。
「確かに我が首が切断されたはずだ。幻術か?」
「幻術じゃない。確かに切ったよ。そして切った直後から治していった」
「そんなことが出来るのか!?いや、それよりもなんでそんなことを……?」
「お前を倒すという依頼を達成しないといけないからね。ところでさっき言ったことは図星なんだろ?」
「……そうだ。信じてはもらえないかもしれないが、ヒト族もクロウリーも傷つけるつもりはなかった……」
観念したようにヘスラーはこちらに来てからの不安と葛藤を語り始めた。
概ね予想した通りだったが、一つ予想外だったのは、へスラーがこちらで生活していく覚悟を決め、人と仲良くなろうとしていたことだった。
八つ当たりではなく、自身としては普通に出ていったらしいが、予想以上に怖がられてしまった。
それに慌ててしまい、バタバタしている内にあんなことになってしまったと、本当に申し訳なさそうに語っていた。
「どんな理由であれ、お前が人を殺し、傷つけたのは確かだ。でも、言ってみればお前も被害者なんだから償うチャンスがあってもいいと思うんだ。ただ、それは死んだらお終いというものでもないと思うんだ」
「この命以外でどうやって償えというのだ……」
「まず、オレと召喚契約を結ぼう。そして、お前が殺した両親の代わりに、子どもたちを守るために命を使うんだ。初めは拒絶されるだろうな。なんせ親の仇なんだから。でも、陰ながらでもいいから、傷つけた以上に命を懸けて守るんだ。守るのは奪うよりも大変だぞ」
魔物だから討伐して終了というのも違うと思った。
あの子たちが納得してくれるかはわからないけど、今後起こりうる事態を考えると、強力な護衛がいる事はあの子たちにとってメリットがあると思った。
「しかし、そんなことは……。いや、一度捨てて拾われた命だ。従おう。召喚契約をすれば、主の許可なく危害を加えることが出来ないし、再び同じことをする心配がないというわけか」
「それだけじゃないぞ。召喚契約をしたら多分フォーステリアに帰れるんじゃないかと思うんだ」
「なにっ!? 本当か!?」
リーベラさんは召喚する魔法と帰還させる魔法が使えるようになると言っていた。
ただ、今回は召喚する前からミリテリアにいる状態で契約するので、フォーステリアに帰還させられるか分からない。
でも、帰還させる魔法が使えるようになれば、それを“魔法創造”でいじれば何とかなりそうな気がしていた。
もし納得してもらえなければ、殺したことにしてフォーステリアに送還しようと思っている。
「やってみないとわからないけどね。クロウリーも契約しない? もちろん嫌じゃなければだけど」
「それはありがたいが、大丈夫なのか?」
「えっ? 何が?」
「我ら同時に契約を結ぶとなると、かなり負担が大きいと思うが……」
「あ、そうなの? じゃあまずヘスラーで試してみてから考えよう。召喚契約自体は問題ないかい?」
「問題ない。むしろ、命の恩人の力になれるならば、喜んでこの命差し出そう」
「いや、差し出さなくていいから。なんかあった時に手伝ってくれれば」
こいつらは何かあれば死ねばいいと思っているのだろうか?
命はそんなに安いものじゃないと教えてやらなければ。
先程一瞬とはいえあっさりと命を奪った自分が言うのもなんだけどね。
「とりあえず、ヘスラーからやってみよう」
プラントさんから教わった“契約”を使用すると、幾何学模様の魔方陣が現れ輝き始めた。
ヘスラーの意思が契約に同意すると、魔方陣の光がヘスラーの身体に取り込まれていき、額に模様のようなものが現れ、その模様が光ると魔方陣が消えた。
「これで成功?」
「我が主よ、成功の様だ。召喚契約を結んだのは初めてだが、なんだこれは……。力が、魔力が溢れてくるようだ」
「へーそんな効果もあるんだ。その模様は契約を結んだという証なのかな?」
「そのようだ。我が主の僕である事を示す言葉の様だ」
「それにしてもお腹とかもうちょっと目立たない所に出てもいいのに。額のど真ん中はやりすぎでしょ……」
「いや、我は気に入っております。命を頂いたばかりか、素晴らしき力と紋様も与えて頂き光栄です。主の名を汚さぬよう尽力してまいります!」
「あ、あぁ、気に入ったならいいんだけど。よろしくね」
契約を結んだら急に堅苦しくなった。
暑苦しいのが増えてしまったかもしれないという懸念が生じたが、契約成功により、ヘスラーとどこにいても会話が出来るようになった。
そして “送還”も使えるようになったので、早速試してみる。
「ちゃんと向こうに帰れるかな? “送還”!」
先程とは違う魔方陣が出現し、ヘスラーが魔方陣に沈んでいった。
自身の内側にヘスラーの魔力を探し、頭の中で話しかけてみる。
(ヘスラー、聞こえるか? どこにいる?)
(主よ! フォーステリアです! 我らが住んでいた森におります!!)
(お、よかったな! とりあえずもう一回こっちに戻していいかい?)
(畏まりました!)
クロウリーにヘスラーが故郷の森に戻れたようだと伝えながら、再度ヘスラーを“召喚”で呼び出す。
「これでいつでも行き来が出来るな。まぁ基本的にヘスラーはエイミーちゃんについていてもらう予定ではあるけど」
「戻れるとわかっただけでも僥倖です」
「まぁ今後の事は相談しながらだな。今の所何ともないし、クロウリーも契約しちゃおう」
クロウリーにも“契約”を使用すると、問題なく契約が出来、フォーステリアに送還も可能となった。
また、オレの魔力を介してだけど、契約したことによりクロウリーとヘスラーの間でも会話が出来る様になったようだった。
一先ず、このまま森にいて、もし人に見つかればまた面倒な事になりそうなので、フォーステリアに一旦戻ってもらうことした。
オレたちも村に戻り、サルトス村長には『魔物は2匹ともフォーステリアに送り返したので、もう心配ご無用』とだけ伝えた。
ギルドには討伐はもったいないので自分の召喚獣にしたと説明すれば大丈夫だろう。
問題はエイミーちゃんとリルファちゃんにはどうやって説明をしようかということだ。
みんなで話しながら、ティルディスへの帰路についた。
首は繋がったままだ。
「な、何をした?」
みんなもヘスラー自身も驚いている。
「確かに我が首が切断されたはずだ。幻術か?」
「幻術じゃない。確かに切ったよ。そして切った直後から治していった」
「そんなことが出来るのか!?いや、それよりもなんでそんなことを……?」
「お前を倒すという依頼を達成しないといけないからね。ところでさっき言ったことは図星なんだろ?」
「……そうだ。信じてはもらえないかもしれないが、ヒト族もクロウリーも傷つけるつもりはなかった……」
観念したようにヘスラーはこちらに来てからの不安と葛藤を語り始めた。
概ね予想した通りだったが、一つ予想外だったのは、へスラーがこちらで生活していく覚悟を決め、人と仲良くなろうとしていたことだった。
八つ当たりではなく、自身としては普通に出ていったらしいが、予想以上に怖がられてしまった。
それに慌ててしまい、バタバタしている内にあんなことになってしまったと、本当に申し訳なさそうに語っていた。
「どんな理由であれ、お前が人を殺し、傷つけたのは確かだ。でも、言ってみればお前も被害者なんだから償うチャンスがあってもいいと思うんだ。ただ、それは死んだらお終いというものでもないと思うんだ」
「この命以外でどうやって償えというのだ……」
「まず、オレと召喚契約を結ぼう。そして、お前が殺した両親の代わりに、子どもたちを守るために命を使うんだ。初めは拒絶されるだろうな。なんせ親の仇なんだから。でも、陰ながらでもいいから、傷つけた以上に命を懸けて守るんだ。守るのは奪うよりも大変だぞ」
魔物だから討伐して終了というのも違うと思った。
あの子たちが納得してくれるかはわからないけど、今後起こりうる事態を考えると、強力な護衛がいる事はあの子たちにとってメリットがあると思った。
「しかし、そんなことは……。いや、一度捨てて拾われた命だ。従おう。召喚契約をすれば、主の許可なく危害を加えることが出来ないし、再び同じことをする心配がないというわけか」
「それだけじゃないぞ。召喚契約をしたら多分フォーステリアに帰れるんじゃないかと思うんだ」
「なにっ!? 本当か!?」
リーベラさんは召喚する魔法と帰還させる魔法が使えるようになると言っていた。
ただ、今回は召喚する前からミリテリアにいる状態で契約するので、フォーステリアに帰還させられるか分からない。
でも、帰還させる魔法が使えるようになれば、それを“魔法創造”でいじれば何とかなりそうな気がしていた。
もし納得してもらえなければ、殺したことにしてフォーステリアに送還しようと思っている。
「やってみないとわからないけどね。クロウリーも契約しない? もちろん嫌じゃなければだけど」
「それはありがたいが、大丈夫なのか?」
「えっ? 何が?」
「我ら同時に契約を結ぶとなると、かなり負担が大きいと思うが……」
「あ、そうなの? じゃあまずヘスラーで試してみてから考えよう。召喚契約自体は問題ないかい?」
「問題ない。むしろ、命の恩人の力になれるならば、喜んでこの命差し出そう」
「いや、差し出さなくていいから。なんかあった時に手伝ってくれれば」
こいつらは何かあれば死ねばいいと思っているのだろうか?
命はそんなに安いものじゃないと教えてやらなければ。
先程一瞬とはいえあっさりと命を奪った自分が言うのもなんだけどね。
「とりあえず、ヘスラーからやってみよう」
プラントさんから教わった“契約”を使用すると、幾何学模様の魔方陣が現れ輝き始めた。
ヘスラーの意思が契約に同意すると、魔方陣の光がヘスラーの身体に取り込まれていき、額に模様のようなものが現れ、その模様が光ると魔方陣が消えた。
「これで成功?」
「我が主よ、成功の様だ。召喚契約を結んだのは初めてだが、なんだこれは……。力が、魔力が溢れてくるようだ」
「へーそんな効果もあるんだ。その模様は契約を結んだという証なのかな?」
「そのようだ。我が主の僕である事を示す言葉の様だ」
「それにしてもお腹とかもうちょっと目立たない所に出てもいいのに。額のど真ん中はやりすぎでしょ……」
「いや、我は気に入っております。命を頂いたばかりか、素晴らしき力と紋様も与えて頂き光栄です。主の名を汚さぬよう尽力してまいります!」
「あ、あぁ、気に入ったならいいんだけど。よろしくね」
契約を結んだら急に堅苦しくなった。
暑苦しいのが増えてしまったかもしれないという懸念が生じたが、契約成功により、ヘスラーとどこにいても会話が出来るようになった。
そして “送還”も使えるようになったので、早速試してみる。
「ちゃんと向こうに帰れるかな? “送還”!」
先程とは違う魔方陣が出現し、ヘスラーが魔方陣に沈んでいった。
自身の内側にヘスラーの魔力を探し、頭の中で話しかけてみる。
(ヘスラー、聞こえるか? どこにいる?)
(主よ! フォーステリアです! 我らが住んでいた森におります!!)
(お、よかったな! とりあえずもう一回こっちに戻していいかい?)
(畏まりました!)
クロウリーにヘスラーが故郷の森に戻れたようだと伝えながら、再度ヘスラーを“召喚”で呼び出す。
「これでいつでも行き来が出来るな。まぁ基本的にヘスラーはエイミーちゃんについていてもらう予定ではあるけど」
「戻れるとわかっただけでも僥倖です」
「まぁ今後の事は相談しながらだな。今の所何ともないし、クロウリーも契約しちゃおう」
クロウリーにも“契約”を使用すると、問題なく契約が出来、フォーステリアに送還も可能となった。
また、オレの魔力を介してだけど、契約したことによりクロウリーとヘスラーの間でも会話が出来る様になったようだった。
一先ず、このまま森にいて、もし人に見つかればまた面倒な事になりそうなので、フォーステリアに一旦戻ってもらうことした。
オレたちも村に戻り、サルトス村長には『魔物は2匹ともフォーステリアに送り返したので、もう心配ご無用』とだけ伝えた。
ギルドには討伐はもったいないので自分の召喚獣にしたと説明すれば大丈夫だろう。
問題はエイミーちゃんとリルファちゃんにはどうやって説明をしようかということだ。
みんなで話しながら、ティルディスへの帰路についた。
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