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練習試合③
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第2セットでは流石にMB1人はきついのか酒瀬川と僕が入れ替わった。
先取した流れのまま第2セットも取ってこの練習試合で初めてストレート勝ちをした。
「なぁ、只野さんって今日時間あんの?」
「さぁ、取りあえず俺ちょっと只野さんの所行ってきていい?」
佐藤さんの問いに淡々と飯田さんが答える。
「ん、あぁ、ついでにどんくらい時間あんのか聞いといて」
本人が直接話をするのに佐藤さんも何か話があるのだろうか、まぁ進路の決まった一番身近な先輩だから何かと話したいこともあるんだろう。
僕たちの試合はストレートで終わったが隣のコートではまだ練習試合が繰り広げられていて、第3セットが始まった頃に飯田さんは戻ってきた。
「只野さん、今日は特に予定無いから終わるまで応援してくれるって」
「あ、そうか」
「俺はやっぱり専門の4組希望出すよ」
「ん、俊が決められたならそれがいいや」
「悪いな、主将」
そういって飯田さんと佐藤さんは穏やかに笑い合っていた。佐藤さんが飯田さんの事気にしていたのを飯田さんも気付いていたのだろう。
「あ、あの」
「どした?」
「僕も、ちょっと観客席行ってきていいですか?」
「只野さんのとこ?」
「はい……」
「……まぁ、いいけど……」
何故か佐藤さんは躊躇してから許可をくれた。
「あら、ソルト、どした?」
「…あの、只野さんは進路っていつから決めてました?」
僕が来たことがよほど驚いたのだろうが横に座るように促してくれた。
「美容師になりたいってのは小学生の頃からの夢だったからなぁ」
「1組なのに最初から専門に行くつもりだったんですか?」
「そうだよ?」
「あ…の…1年から1組だったんですか?」
「いや?1年は2組だったよ?」
「じゃあ……」
「学生のうち位好きな奴と一緒のクラスなりたいじゃん?」
「えっ!?」
「好きな奴がさ、1組志望だったんだわ」
「それで一緒のクラスなんですか?」
「そーよー?まぁ美容師の仕事もパーマ剤とかカラー剤とか薬剤使うしね理系の奴との人脈は持っておきたいじゃん?」
「彼女さんのために1組に居て、今只野さんだけ先に進路決まって…その教室に居づらいとかは無いんですか?」
「あ?あ――彼女じゃないわ、片思い」
「へっ!?」
この百戦錬磨みたいな雰囲気出しておきながら片思いだなんて……
「案外一途っしょ?俺」
「は、はい……」
「はいかよ!!あっはっは」
つい正直に答えてしまったが只野さんは笑って許してくれた
「まー俺はさ、専門行くつもりだったけど、ちょい勉強頑張れば同じクラスになれるチャンスがあるなら頑張るっしょ?」
「そういうものなんですかね……」
「あらら?ソルトは片思いの経験とか皆無?まぁほっといても寄ってきそうだもんな」
「寄ってきませんよ、木下じゃあるまいし……」
「まぁさ、進学すれば離れ離れになるの分ってるんだから学生で居るうち位は少しでもあいつのそばに居たいからね、あいつの記憶にすこしでも残りたいのさ、大人になったら馬鹿だなぁとか思うかも知んないけどさ」
そういって笑った只野さんの顔は専門が決まったと報告に来た時と同じ少し曇った笑顔だった……
「まぁ理系大学を今から受験するって奴らの中にとっとと専門に進路決めた俺が居るのははっきり言って空気悪いよなぁ」
「え……」
「まぁ俺はそれも覚悟して1組希望してっからそんなこと気にしないけど、あいつが気にしてくれるのは予想外で嬉しい誤算だったけどな」
そういって笑った只野さんは、なんというか恍惚としていると言うか凄く色っぽかった。
恋する女は綺麗だとか昔の歌にあったけど、あれは嘘だ、男でも綺麗だと思った。
結局僕は進路について『何がしたい』じゃなく『何が嫌か』『何なら出来るか』で考えてみれば?というアドバイスをもらった。
先取した流れのまま第2セットも取ってこの練習試合で初めてストレート勝ちをした。
「なぁ、只野さんって今日時間あんの?」
「さぁ、取りあえず俺ちょっと只野さんの所行ってきていい?」
佐藤さんの問いに淡々と飯田さんが答える。
「ん、あぁ、ついでにどんくらい時間あんのか聞いといて」
本人が直接話をするのに佐藤さんも何か話があるのだろうか、まぁ進路の決まった一番身近な先輩だから何かと話したいこともあるんだろう。
僕たちの試合はストレートで終わったが隣のコートではまだ練習試合が繰り広げられていて、第3セットが始まった頃に飯田さんは戻ってきた。
「只野さん、今日は特に予定無いから終わるまで応援してくれるって」
「あ、そうか」
「俺はやっぱり専門の4組希望出すよ」
「ん、俊が決められたならそれがいいや」
「悪いな、主将」
そういって飯田さんと佐藤さんは穏やかに笑い合っていた。佐藤さんが飯田さんの事気にしていたのを飯田さんも気付いていたのだろう。
「あ、あの」
「どした?」
「僕も、ちょっと観客席行ってきていいですか?」
「只野さんのとこ?」
「はい……」
「……まぁ、いいけど……」
何故か佐藤さんは躊躇してから許可をくれた。
「あら、ソルト、どした?」
「…あの、只野さんは進路っていつから決めてました?」
僕が来たことがよほど驚いたのだろうが横に座るように促してくれた。
「美容師になりたいってのは小学生の頃からの夢だったからなぁ」
「1組なのに最初から専門に行くつもりだったんですか?」
「そうだよ?」
「あ…の…1年から1組だったんですか?」
「いや?1年は2組だったよ?」
「じゃあ……」
「学生のうち位好きな奴と一緒のクラスなりたいじゃん?」
「えっ!?」
「好きな奴がさ、1組志望だったんだわ」
「それで一緒のクラスなんですか?」
「そーよー?まぁ美容師の仕事もパーマ剤とかカラー剤とか薬剤使うしね理系の奴との人脈は持っておきたいじゃん?」
「彼女さんのために1組に居て、今只野さんだけ先に進路決まって…その教室に居づらいとかは無いんですか?」
「あ?あ――彼女じゃないわ、片思い」
「へっ!?」
この百戦錬磨みたいな雰囲気出しておきながら片思いだなんて……
「案外一途っしょ?俺」
「は、はい……」
「はいかよ!!あっはっは」
つい正直に答えてしまったが只野さんは笑って許してくれた
「まー俺はさ、専門行くつもりだったけど、ちょい勉強頑張れば同じクラスになれるチャンスがあるなら頑張るっしょ?」
「そういうものなんですかね……」
「あらら?ソルトは片思いの経験とか皆無?まぁほっといても寄ってきそうだもんな」
「寄ってきませんよ、木下じゃあるまいし……」
「まぁさ、進学すれば離れ離れになるの分ってるんだから学生で居るうち位は少しでもあいつのそばに居たいからね、あいつの記憶にすこしでも残りたいのさ、大人になったら馬鹿だなぁとか思うかも知んないけどさ」
そういって笑った只野さんの顔は専門が決まったと報告に来た時と同じ少し曇った笑顔だった……
「まぁ理系大学を今から受験するって奴らの中にとっとと専門に進路決めた俺が居るのははっきり言って空気悪いよなぁ」
「え……」
「まぁ俺はそれも覚悟して1組希望してっからそんなこと気にしないけど、あいつが気にしてくれるのは予想外で嬉しい誤算だったけどな」
そういって笑った只野さんは、なんというか恍惚としていると言うか凄く色っぽかった。
恋する女は綺麗だとか昔の歌にあったけど、あれは嘘だ、男でも綺麗だと思った。
結局僕は進路について『何がしたい』じゃなく『何が嫌か』『何なら出来るか』で考えてみれば?というアドバイスをもらった。
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