初恋

文化祭⑦

祭りの余韻を残し文化祭は盛況のうちに幕を閉じた。
冷静に…顔に出さないように、誰にも気づかれないように、僕のこの気付いてしまった感情に……
正田さんの号令で打ち上げに行こう！となったが佐藤さんは彼女とこの後デートをすると先に抜けてしまった。
同じタイミングで僕も帰ってしまった方が良かったのか、騒がしい中に居た方が良かったのかもう何も考えられなかった。
ただただ流れに逆らわず身をゆだねる事しかできなかった。
バレー部のメンツでカラオケに来ていた。各務さんはお母さんの影響だと言って昭和アイドルの歌を選曲していてみんなテレビで名曲として紹介されていてもサビしか知らないので「これ、こんな曲だったのか」って新鮮な反応だった。
飯田さんは顔に似合わず洋楽を歌うし木下は安定の最新ヒット曲を歌う。玉井も結構最新の曲を選んでいた。酒瀬川は妹が好きだと言う女児向けアニメソングを歌っている。峯川は多分意味は分ってはいないのだろうが洋楽のバラードを歌って９８点も得点を出すものだからみんながどよめいていた。
梅谷は音楽に疎いようで歌っていなかったら正田さんに言われ高校生にもなって童謡を選曲していた。
…となると次は僕の番で、マイナーな曲が好きなのでカラオケに入っていないとごまかしたのだが某アイドルの誰でも聴いたことのある曲を無理矢理入れられてしまい歌わされてしまうことになった。
初っ端から峯川がコーラスでＷｏｗ　Ｗｏｗ　Ｗｏｗと、正田さんがＹｅａｈ　Ｙｅａｈ　Ｙｅａｈと見事に逃げ道を絶たれ断念して歌うことになった。
『頑なで意地っ張りな僕を変えた君の手』
うろ覚えだったので歌詞に一瞬驚いてしまった。いや…大人気国民的アイドルの歌だ……なんの含みもないはずだ、ただ僕の今の心情に近かっただけで、この歌のようにハッピーエンドにはならない。確か小学生位の時にやっていた恋愛映画の主題歌だったはずだ、どんな話かよく知らないが恋愛映画であればハッピーエンドだろう
そう言い聞かせるのに…僕の心臓はやたらうるさく騒いでいた。

こんなに好きだと思えることはきっと二度とないだろう。
それがかなわない恋だとしても…思いが届くことは無くても。
また、明日からいつも通りの後輩に戻るから…
僕が、誰か人を好きになるなんて…自分が一番驚いて、そしてすぐさま失恋確定ってバレー馬鹿たちを馬鹿に出来ないくらい、僕は大馬鹿だと思った。