初恋

咲良

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文化祭⑤

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体育館でまた実行委員が用意した衣装に着替える。只野さんはずっと衣装を着たままだったらしく控室でのんびりとしていた。
「繁盛してたな」
「そうですね」
「なんか俺正田さんとのツーショ多かったんだけどぉ」
「一定数いるからな」
含みを持たせた只野さんの言葉に僕も木下も違和感を持つ。
「夢女ってやつだな、自分の写真じゃなく推しCPの絡みのが欲しいんだろ」
「夢女?」
「シュガソルはもう一定数に認知されてるだろ?」
「いや……それやめてくださいよ…佐藤さん彼女居るじゃないですか」
「え?じゃあ俺正田さんとカップリングされてるんですか?」
「あぁ、目玉焼き抗争な」
「目玉焼き?」
「そそ、目玉焼きに醤油かソースかってCP」
「え?じゃあ各務さんと峯川のツーショも結構多かったよね?」
「あぁ酢味噌も人気だな。お前ら見事に調味料だからなぁネタにされやすいんだろ」
シュガソルから派生したカップリングで一部に人気が出ていたらしい。
そんな話をしながら着替えていたら女装のままの正田さんが控室に入ってきて一瞬みんなが驚く。そりゃそうだ、背が高いだけでドレスを完璧に着こなしパッと見女の人にしか見えないんだから男子生徒の控室に女装のまま入ってきたら痴女と勘違いしたっておかしくないのに只野さんは正田さんが来るとのんびりしていたのに急に動きだし荷物を取り出した。正田さんにウイッグを被せ、メイクまでする。
素でも可愛らしかった正田さんが一段と綺麗になった。
「ん~いい練習台」
と満足げな只野さんに鏡を見た正田さんは「なんで朝からメイクしてくれなかったんですか?」と逆切れしていた。
実行委員から声がかかりステージに向かう。
予選で選ばれていた男女30人がステージに立ち当日参加枠で8人追加で並んだ。
正田さんが女装でステージに上がったときは男女ともに歓声が上がった。多分予選組の歓声より大きかったと思う。
当日参加枠から賞を発表されていき正田さんは当日枠でグランプリとなっていた。観客側の一部で大騒ぎをしている。
そっちをみるとバレー部の連中だった。みんなコスプレしたままステージを見に来てくれていた。
まぁ背が高い連中が集まっているから見つけやすくはあるんだけど、魔王扮する佐藤さんの隣に例の彼女を見つけてしまい、僕はバレー部の連中の方を見れなくなった。
TOP5の発表で真っ先に僕が呼ばれた。まぁこんなコンテストに僕がエントリーされているだけでもおかしいのに5位だと言うので申し訳なくなる。バレー部の連中たちの方が騒がしいが僕はそちらへは一切視線を向けない。真っ直ぐ正面だけを向く。
続いて3位に只野さんが呼ばれ、1位は木下だった。
木下はステージの中央でくるっと回って大きく手を広げて挨拶をしていた。
女子の黄色い声が体育館に響く。
女子の方も結果発表されて盛り上がっているが僕は早くステージを降りたくてたまらなかった。見ないようにしてるのに、見たくないのに視線の端に佐藤さんとその彼女の姿が映ってしまう。


ようやくステージから控室に戻るが只野さんのお姉さんが控室の入り口で立っていた。
「んっはぁ!!いい!王道!サイズ的に君だと思ったけどやっぱり白は君だったのねぇ」
どうやら実行委員もお姉さんの店で衣装をレンタルしてきていたようだった。
「あら?魔王はどうしたの?」
「ん?佐藤はエントリーされてねぇから居ないよ」
「ちょっと!!呼んで!撮りたい!」
お姉さんが只野さんに興奮して何やら指示をだしてる。
「呼ぶのは良いけど塩田への交渉先しなよ姉ちゃん」
そう言われたお姉さんは僕にしがみ付いてきて興奮を隠せない怖い顔をして言った。
「お願い。私の個人的趣味だから!!絶対流出しないから白王子と魔王バージョンも撮らせて!!」
「チェキとか色々お姉さんには借りてるんだからもちろん良いよな?」
と、只野さんのメイクで一段と綺麗になった正田さんがにっこりと笑って言うがこれは有無を言わせないときの顔だともう僕は知っていた。
「その……声…っ!!そのドレス!!~~っ~~~~っ!!」
今度はお姉さんは正田さんを掴んで声にならない悲鳴を出していた。
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