初恋

咲良

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夏合宿②

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寝床が決まり、合宿所の食堂へみんなで移動する。別にそうしろと言われた訳ではないがなぜか寝床の並びで食堂でも座っていた。
「1年、箸の使い方綺麗だな」
飯田さんが僕たちを見て言う。
「こっちの1年は違うけどなぁ~」
斜め後ろから正田さんが笑いながら声をかける。
「はははっそっちは勢いが良いな」
オバカトリオがガツガツとご飯を食べていた。同じ席の木下も山盛りのご飯だったが食べ方は綺麗だった。
「よく噛んで食べろよ~」
佐藤さんがオバカトリオ達のテーブルに向かって声をかける。
「飯食い終わった奴から風呂入って行けよ~」
―えっ?GW合宿では学年順に入っていたのに、食べ終わった順なの?まぁそれならどうせ僕は最後になるだろうからゆっくり食べてゆっくり入らさせてもらおう
そう思って正面の玉井に目配せをしたらさすが玉井、理解してくれたようだった。オバカトリオは勢いよくご飯を平らげて食器を返却していた。その中にしれっと各務さんが居た、峯川と同じくらいの量を皿に盛っていたしガツガツ食べている感じがなかったのにもう食べ終わったの?そんな事思っていたら木下が優雅に麦茶を啜り手を合わせてごちそう様と挨拶していた。
「塩田は一口が小さいんだな、体育会系のノリで無理しないで自分のペースで食べていいからな」
そう飯田さんが言いながら木下や正田さんと一緒に食器を返却して食堂から去ろうとしていた、佐藤さんも食べ終わっているのに席を立つ素振りがない
「あの……もしかして」
「あ?気にすんな、消化に悪いから自分のペースで食えよ」
―やっぱり…僕が食べ終わるの待ってるんだ
正面の玉井を見ても僕のペースに合わせてくれていたものの一口の量が違うので玉井も食べ終わりそうなので少し急いで食べた
「あーあー無理すんなよ?合宿始まったばっかなんだから」
佐藤さんから心配気な声が上がったが、玉井も食べ終わって待つのは嫌だろうと思って急いだ。

3人でいったん着替えを取りに部屋に戻るとオバカトリオと各務さんはもうお風呂も終わったようで布団の上で談笑していた。

3人で浴場へ向かう、脱衣所で着替えてると浴室の方から正田さんの笑い声が聞こえてきた。
「おいおい、勇作声響いてるぞ~」
佐藤さんが浴室の正田さんに注意しながら先に入っていった。
「なんかGWの時とは全然違うね」
玉井が声を落として話しかけてきた、そうだ、GWの時は部屋も2.3年と1年で分けられてたし、食堂も、お風呂も学年別でTHE体育会系といった上下関係をひしひしと感じられる窮屈なものだった。
「やっぱり……佐藤さんのおかげなのかもね」
「宗助の言う通り佐藤さんが主将になってくれたおかげなのかな」
「木下、まだ何か言ってた?」
「風通しのいい部になりそうって喜んでたよ」
そんな話をしてから2人で浴室へ入った
「木下は王子様って感じじゃねーだろ?どっちかって―と塩田のが王子様じゃん」
いきなり話題に上げられて木下と飯田さんと佐藤さんから注目を浴びる、いったい何の話だ
「ははは木下は童話とかに出てくる王子って感じだけど塩田はゲームとかに出てくる王子様って感じだな」
という飯田さんの言葉に
「あ――――!!なるほど!そういわれれば木下は誰にでもいい顔する童話とかに出てくる昔の王子様って感じだな」
「ちょっと!!昔のは余計じゃないっすか?正統派って言ってくださいよぉ」
自分で顔が良いと自覚してる木下はおかしな反論している
「乙女ゲーってやつの王子様って感じだよな、奏太は」
「それそれ!冷酷非道なのに超絶イケメンってやつな!」
佐藤さんと正田さんが訳の分からない話をしてるので無視してシャワーで体を洗う

「あれ?ていうか奏太、マジで細いな」
佐藤さんにいきなり腰を掴まれた
「ちょっと!!」
「おっワリーワリー、でもタッパある割に細いとは思ってたけどマジで細いのな」
佐藤さんとはそんなに身長差がないが、確かに体の厚みが違う
「ホント、塩田細すぎるんだよね!だから塩田のが王子様なんて言われちゃうじゃん!もっとウエイト増やしてよ!」
木下から意味不明なクレームが入る、仕方ないじゃないか筋肉つきにくいのは体質なんだし、王子様なんて言われたことない
「あはは、奏太は近寄りがたいから陰で王子様って呼ばれてるの知らなかったでしょ?」
「は!?」
玉井からのカミングアウトに僕が一番びっくりする
「え?だって僕木下みたいに呼び出されたり声かけられたことないし、大体女子近寄ってこないんだけど?」
なにかの間違いだろ?そう思った
「あはは、だから近寄りがたいんだって、前に自販機のミルクココアが売切れてたことあったでしょ?あれ、奏太が飲んでたから一部の女子が「王子と同じもの飲む」って買いまくったから売切れてたんだよ?」
前に3日も売り切れが続いてたことがあった、ちゃんと補給してくれって思ってたけど最近は売り切れになってないので意識してなかった
「嘘でしょ?」
「こんなことで嘘ついても俺になんの得もないよ」
「おいおい!王子が2人も居るって文化祭はバレー部圧勝じゃね?」
「良い出し物したら部費かせげそうだな」
正田さんが天使の皮脱いで悪魔のような顔で笑っている横で相変わらず飯田さんはマイペースにニコニコしているだけだったがある意味怖くて佐藤さんを見ると
「例年では体育会系の部は屋台出すんだけど、どっか空き教室借りて執事喫茶とかしたら儲かりそうだな、他の文化部とかと被ったら女装喫茶とかかな……」
なんて恐ろしい事を口走っている、なんで合宿初日でこんなに心にダメージを受けなくちゃいけないのか……出来るだけ会話に加わらないように無心で体を洗う。

「ぶっひゃっひゃっ!!それ!貫悟!文化祭の時はその頭しろよ!」
「その髪形で黒いスーツとか来たら素人さんじゃないよね」
「え?佐藤さん…そっちの筋の人っすか?」
「お前ら悪乗りし過ぎな」
どんな頭だ、と湯船に入ろうとしている佐藤さんを盗み見ると洗った髪を後ろにながしている、つまりオールバックのような髪型なのだが
「ぷっ……くっ」
いわゆるTVとかに出てくる暴力団のお偉いさんのようないでたちで思わず笑ってしまった。
「奏太ぁ…笑ったの聞こえたからな…まったく勇作はすぐ悪乗りすっかんなぁ~勇作だけ女装してもらおうか?」
「え?俺?やんのは良いけど女子に恨まれちまうかもなぁ」
「正田さん女装したらそこらの女子は負けちゃいそうですもんねぇ」
「そうそう、俺ってば母親似だからさぁ…って俊!突っ込んで!?」
木下と正田さんのやり取りに飯田さんがニコニコと聞いてるだけだったので突っ込み役になってよ!と捕まってる。
取りあえず僕に話が飛び火してこないことを祈るしかなかった。

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