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前編・セイジ発進セヨ!
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科学の力が格段に上がり、ロボットの開発が進み始めている。
いつか人間とロボットが共存する日も近いだろうーーと言われている世の中だが、共存どころか仲良くなれる訳がねえだろ。
何しろ、この俺。セイジ・シルバーホワイトは人と接するのが大嫌いだから。
人間でさえ、どう接して良いのか分からないのに、ロボットという鉄クズの塊なんてどうしたら良いのかもっと分からないだろう。
そういう意味では、ロボットは人間よりも大嫌いだ。
そう思いながらも俺は、テレビでたまたま放映されていたロボットのバラエティー番組を見ていた。
「けっ! 鉄で出来ているだけで、チヤホヤされやがって。良い身分だなオイ」
そんな嫌いな物を見る俺は、よっぽど暇だったのだろうか。
暇な理由は友達がいないから。何もしないのはさすがに寂しいので、テレビを点けるしか無いのだった。
バラエティー番組をひととおり見終わると、何もする事が無い俺は大人しく寝る事にしたのだった。
***
目が覚めると、見覚えの無い真っ白な天井だった。
体を動かすと昨日まで寝ていたベッドとは明らかに違うベッド。見渡すとこれ以外には何も置かれていない。
生活感を感じさせない見知らぬ空間。その殺風景が日常から離れさせられた事を思い知らせてくるように感じて、心臓の鼓動が早まり、俺は冷や汗をかいた。
いつもなら起きた時間に安心し、バイト前まで二度寝する俺の生活リズム。しかし今回ばかりは目を覚まさずにはいられない。
「どこだよ⁉︎ 俺ん家じゃねぇ……あれ?」
身体に違和感を感じたので起き上がってみる。
「えええーー何じゃこりゃあああーーっ!」
俺はつい大声を上げるほどに驚愕した。昨日まで柔らかいはずだった俺の皮膚が、硬いボディに変わっていたからだ。
自分が皮肉にも、昨日テレビを見てあれほど存在を否定していたロボットになっていた。
誰かが俺の家に盗聴器を仕掛けたのだろうか?
もし、そうだとしたら相当な悪趣味な奴だ。
いったい誰が何のために、こんな事をしたのか?
白い密室の向こう側から音をたてて、ドアがゆっくりと開いた。
「目が覚めたようね」
白衣を身にまとった女性がこちらにゆっくりと近づいてくる。
ウェーブのかかった赤髪に、眼鏡のアクセント。白衣のボタンが全開で、胸の谷間をシャツで隠しきれていない。
というか隠す気なんてさらさら無いだろう。ミニスカートにヒールが、さらに色気を増徴させている。
「初めまして、セイジ・シルバーホワイト君。突然だけど、貴方には地球を救ってもらうわ」
「はあああーーーー⁉︎」
いきなりこんな所に連れてきて、厚かましいお願いしやがって。
普通じゃねぇよ! 拉致、誘拐、監禁……。慰謝料を請求出来るレベルだ。
「ーーって、ちょっと待て。なんで俺の名前を知ってるんだよ⁉︎」
「失礼ながらセイジ君の事は、色々と調べさせてもらったわ。あたしの名は、アリス・ナルカミ。見ての通りの科学者よ」
その見ての通りの科学者が、世の男性を虜にする攻撃的な制服の着こなし方をしてんだよ。
「その、アリスさん……。どうして俺をここまで連れて、改造されたんですか?」
自分の身体中をべたべた触りながら、ロボットにされた俺を改めて知る。
そして、アリスと名乗る女性に対して、気になっていた疑問をぶつける。
「そんなにあちこち触らないように。特に背中のボタンを触ったら危険よ」
「え……?」
アリスさんが発するとっさの一言に、俺は凍りついた。
「宇宙怪人から地球の侵略を阻止するため……そして君は、その宇宙怪人と戦ってもらうわよ!」
おいおい、いきなりにも程があるぞ。地球を守るヒーローってヤツか? 心底くだらねえ。
今まで孤独を貫いてきた俺には地球を守る意味なんて無いのに。
「そのために君が選ばれたの。この漆黒のエクスカリバーでね!」
彼女の背後に、真っ黒なスーパーコンピューターが図々しい程に大きく立っていた。
エクスカリバー。西洋の神話に出てくる伝説の剣だ。
そのエクスカリバーは、硬い岩に突き刺さっていて選ばれし英雄以外の人が抜き取ろうとしても抜けない剣らしい。
この機械の名前の由来であるエクスカリバーと同じく、選ばれし者は英雄になれるという噂と聞いた事がある。
実際にやるかどうかはともかく。俺は一目置かれる存在になった事を知り、鼻を高くする。
「そう、貴方は選ばれたのよ。地球を守る英雄として! この漆黒のエクスカリバーのアミダクジ機能によって」
「え、アミダクジ?」
よく見ると今までカッコいいと思っていたスパコンの画面には、子供達が遊ぶようなちゃっちぃアミダクジが表示されていた。
「しょ、しょうもねえ……」
このまま勝ち誇った気持ちでいつまでも浮いていたかったのに、一瞬にして見事に崩れ散った。それを機械化する意味はあるのか。地球を守る存在である深刻な問題を、そんな安直に決めて良いだろうか? 俺は、呆れてしまった。
「ちょっと待った! そんな無駄な機械造ってる資金あるなら、宇宙怪人に勝てそうな戦闘兵器造れよ!」
アリスさんは俺の質問に答えず、眼鏡を拭いていた。眼鏡を拭き終えると、アリスさんは答えた。
「いや、それは出来なかったわ。宇宙怪人に立ち向かわせたロボット達が、次々と皆スクラップにされてしまったからね」
「ちょ、俺だったらスクラップされても良いって事か⁉︎」
「大丈夫よ。この漆黒のエクスカリバーに選ばれたんだから」
アリスさんは自信あり気に言い切った。インチキ臭い機能を持つ機械に根拠の無い理由が、俺の心を奈落の底まで突き落とされたような最悪の気分だった。
「ーーで、やるの? やらないの?」
「いや、引き受けるどころの話じゃないですよ。ここまでしちゃってるのに聞く必要有りますか?」
「それもそうね。それじゃあ、やりなさい!」
命令形かよ。見た目は良くても、性格が見事に破綻してるな。
もし、ここで働く事になってもこんな先輩の元に付くと、過労死必至だ。
ここでいきなり警告音が大きく鳴り響いた。
「アリス博士! 宇宙怪人がイーストシティに襲来してきました!」
アリスさんの助手が、バタバタと慌てながらやってくる。
「ちっ、厄介ね。セイジ君、出撃よ!」
「そんなの嫌です」
即答すると、アリスさんが手元の小型スイッチを押す。
スイッチの音と共に、俺の背中から鋼鉄の翼が出てきた。
「え、何ですか? これは?」
「貴方の性格は把握済みよ。
人と関わったり、目立つのを嫌う。面倒と感じれば、すぐに逃げ出す。違うかしら?」
図星だ。調べたってのは伊達じゃねえみたいだな。
「流石ですね。アリスさん……ええーーーーっ!」
いつの間にか俺が宙に浮いていた。遊園地の絶叫マシーンよりも高く高く。
今、この翼が無くしたら落下して死んでいるであろう所まで飛んでいる。ここまで空中を満喫したのは、人生で初めてだ。普通では味わえないスリル。
いや……こんな体験ツアーは、もう二度とごめんだ。
「強制出動システムよ。目的地に着いたら自由だから、それまで辛抱なさい」
遠くにアリスさんの声が聞こえた。
「ああああーーーーっ!」
そのままエンジン音を轟かせながら俺の意志に反して、ひたすら飛ばされていく。
イーストシティ。普段は沢山の人で、にぎわっている都会。孤独を貫く俺は、当然ここに訪れる事は無い場所だ。
コンクリートの地面からそびえ立つ数々のビル、車、信号、電柱……と言い出したらきりがない。
それらが粉々に破壊されている。人は皆、悲鳴を上げながら流れるように走り去っていく。
きっと、これはアリスさんが言っていた宇宙怪人の仕業だろう。
そう思いながら崩れた背景を見ながら俺は恐る恐る進んでいく。
すると奥の方から一匹の巨大の虫が、こちらに逃げる人の行列に向かって飛んでくる。
「ブハハハ! 宇宙怪人で一番イケメンの俺様ディアヴォアーラ様が、汚ねぇビルとかぶっ壊してやる。地球を俺様色に、綺麗に染めてやるぜ!」
蠅? いや、蠅にしては大き過ぎやしないか。そもそも言葉を喋るなんて有り得ないだろ。
自分でイケメンと言い放つ時点で寒気が走る。
宇宙怪人は急降下し、逃げ遅れた女性を捕らえる。そして女性の口元に、宇宙怪人自らの触角を近付けようとする。
「女!この俺様にチューチューされると良い」
「いやあああーー‼︎」
いつか人間とロボットが共存する日も近いだろうーーと言われている世の中だが、共存どころか仲良くなれる訳がねえだろ。
何しろ、この俺。セイジ・シルバーホワイトは人と接するのが大嫌いだから。
人間でさえ、どう接して良いのか分からないのに、ロボットという鉄クズの塊なんてどうしたら良いのかもっと分からないだろう。
そういう意味では、ロボットは人間よりも大嫌いだ。
そう思いながらも俺は、テレビでたまたま放映されていたロボットのバラエティー番組を見ていた。
「けっ! 鉄で出来ているだけで、チヤホヤされやがって。良い身分だなオイ」
そんな嫌いな物を見る俺は、よっぽど暇だったのだろうか。
暇な理由は友達がいないから。何もしないのはさすがに寂しいので、テレビを点けるしか無いのだった。
バラエティー番組をひととおり見終わると、何もする事が無い俺は大人しく寝る事にしたのだった。
***
目が覚めると、見覚えの無い真っ白な天井だった。
体を動かすと昨日まで寝ていたベッドとは明らかに違うベッド。見渡すとこれ以外には何も置かれていない。
生活感を感じさせない見知らぬ空間。その殺風景が日常から離れさせられた事を思い知らせてくるように感じて、心臓の鼓動が早まり、俺は冷や汗をかいた。
いつもなら起きた時間に安心し、バイト前まで二度寝する俺の生活リズム。しかし今回ばかりは目を覚まさずにはいられない。
「どこだよ⁉︎ 俺ん家じゃねぇ……あれ?」
身体に違和感を感じたので起き上がってみる。
「えええーー何じゃこりゃあああーーっ!」
俺はつい大声を上げるほどに驚愕した。昨日まで柔らかいはずだった俺の皮膚が、硬いボディに変わっていたからだ。
自分が皮肉にも、昨日テレビを見てあれほど存在を否定していたロボットになっていた。
誰かが俺の家に盗聴器を仕掛けたのだろうか?
もし、そうだとしたら相当な悪趣味な奴だ。
いったい誰が何のために、こんな事をしたのか?
白い密室の向こう側から音をたてて、ドアがゆっくりと開いた。
「目が覚めたようね」
白衣を身にまとった女性がこちらにゆっくりと近づいてくる。
ウェーブのかかった赤髪に、眼鏡のアクセント。白衣のボタンが全開で、胸の谷間をシャツで隠しきれていない。
というか隠す気なんてさらさら無いだろう。ミニスカートにヒールが、さらに色気を増徴させている。
「初めまして、セイジ・シルバーホワイト君。突然だけど、貴方には地球を救ってもらうわ」
「はあああーーーー⁉︎」
いきなりこんな所に連れてきて、厚かましいお願いしやがって。
普通じゃねぇよ! 拉致、誘拐、監禁……。慰謝料を請求出来るレベルだ。
「ーーって、ちょっと待て。なんで俺の名前を知ってるんだよ⁉︎」
「失礼ながらセイジ君の事は、色々と調べさせてもらったわ。あたしの名は、アリス・ナルカミ。見ての通りの科学者よ」
その見ての通りの科学者が、世の男性を虜にする攻撃的な制服の着こなし方をしてんだよ。
「その、アリスさん……。どうして俺をここまで連れて、改造されたんですか?」
自分の身体中をべたべた触りながら、ロボットにされた俺を改めて知る。
そして、アリスと名乗る女性に対して、気になっていた疑問をぶつける。
「そんなにあちこち触らないように。特に背中のボタンを触ったら危険よ」
「え……?」
アリスさんが発するとっさの一言に、俺は凍りついた。
「宇宙怪人から地球の侵略を阻止するため……そして君は、その宇宙怪人と戦ってもらうわよ!」
おいおい、いきなりにも程があるぞ。地球を守るヒーローってヤツか? 心底くだらねえ。
今まで孤独を貫いてきた俺には地球を守る意味なんて無いのに。
「そのために君が選ばれたの。この漆黒のエクスカリバーでね!」
彼女の背後に、真っ黒なスーパーコンピューターが図々しい程に大きく立っていた。
エクスカリバー。西洋の神話に出てくる伝説の剣だ。
そのエクスカリバーは、硬い岩に突き刺さっていて選ばれし英雄以外の人が抜き取ろうとしても抜けない剣らしい。
この機械の名前の由来であるエクスカリバーと同じく、選ばれし者は英雄になれるという噂と聞いた事がある。
実際にやるかどうかはともかく。俺は一目置かれる存在になった事を知り、鼻を高くする。
「そう、貴方は選ばれたのよ。地球を守る英雄として! この漆黒のエクスカリバーのアミダクジ機能によって」
「え、アミダクジ?」
よく見ると今までカッコいいと思っていたスパコンの画面には、子供達が遊ぶようなちゃっちぃアミダクジが表示されていた。
「しょ、しょうもねえ……」
このまま勝ち誇った気持ちでいつまでも浮いていたかったのに、一瞬にして見事に崩れ散った。それを機械化する意味はあるのか。地球を守る存在である深刻な問題を、そんな安直に決めて良いだろうか? 俺は、呆れてしまった。
「ちょっと待った! そんな無駄な機械造ってる資金あるなら、宇宙怪人に勝てそうな戦闘兵器造れよ!」
アリスさんは俺の質問に答えず、眼鏡を拭いていた。眼鏡を拭き終えると、アリスさんは答えた。
「いや、それは出来なかったわ。宇宙怪人に立ち向かわせたロボット達が、次々と皆スクラップにされてしまったからね」
「ちょ、俺だったらスクラップされても良いって事か⁉︎」
「大丈夫よ。この漆黒のエクスカリバーに選ばれたんだから」
アリスさんは自信あり気に言い切った。インチキ臭い機能を持つ機械に根拠の無い理由が、俺の心を奈落の底まで突き落とされたような最悪の気分だった。
「ーーで、やるの? やらないの?」
「いや、引き受けるどころの話じゃないですよ。ここまでしちゃってるのに聞く必要有りますか?」
「それもそうね。それじゃあ、やりなさい!」
命令形かよ。見た目は良くても、性格が見事に破綻してるな。
もし、ここで働く事になってもこんな先輩の元に付くと、過労死必至だ。
ここでいきなり警告音が大きく鳴り響いた。
「アリス博士! 宇宙怪人がイーストシティに襲来してきました!」
アリスさんの助手が、バタバタと慌てながらやってくる。
「ちっ、厄介ね。セイジ君、出撃よ!」
「そんなの嫌です」
即答すると、アリスさんが手元の小型スイッチを押す。
スイッチの音と共に、俺の背中から鋼鉄の翼が出てきた。
「え、何ですか? これは?」
「貴方の性格は把握済みよ。
人と関わったり、目立つのを嫌う。面倒と感じれば、すぐに逃げ出す。違うかしら?」
図星だ。調べたってのは伊達じゃねえみたいだな。
「流石ですね。アリスさん……ええーーーーっ!」
いつの間にか俺が宙に浮いていた。遊園地の絶叫マシーンよりも高く高く。
今、この翼が無くしたら落下して死んでいるであろう所まで飛んでいる。ここまで空中を満喫したのは、人生で初めてだ。普通では味わえないスリル。
いや……こんな体験ツアーは、もう二度とごめんだ。
「強制出動システムよ。目的地に着いたら自由だから、それまで辛抱なさい」
遠くにアリスさんの声が聞こえた。
「ああああーーーーっ!」
そのままエンジン音を轟かせながら俺の意志に反して、ひたすら飛ばされていく。
イーストシティ。普段は沢山の人で、にぎわっている都会。孤独を貫く俺は、当然ここに訪れる事は無い場所だ。
コンクリートの地面からそびえ立つ数々のビル、車、信号、電柱……と言い出したらきりがない。
それらが粉々に破壊されている。人は皆、悲鳴を上げながら流れるように走り去っていく。
きっと、これはアリスさんが言っていた宇宙怪人の仕業だろう。
そう思いながら崩れた背景を見ながら俺は恐る恐る進んでいく。
すると奥の方から一匹の巨大の虫が、こちらに逃げる人の行列に向かって飛んでくる。
「ブハハハ! 宇宙怪人で一番イケメンの俺様ディアヴォアーラ様が、汚ねぇビルとかぶっ壊してやる。地球を俺様色に、綺麗に染めてやるぜ!」
蠅? いや、蠅にしては大き過ぎやしないか。そもそも言葉を喋るなんて有り得ないだろ。
自分でイケメンと言い放つ時点で寒気が走る。
宇宙怪人は急降下し、逃げ遅れた女性を捕らえる。そして女性の口元に、宇宙怪人自らの触角を近付けようとする。
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