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第19 小さな安らぎ
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「リュシェラ様、これどこに置けば良い?」
クルゥーバの息子である、アラルトと一緒に雑草の処理をしていたリュシェラは、声の方を振り返った。
「ティガァ、ありがとう。その辺りに置いてくれるかしら」
「分かった~」
頷いたティガァが、持っていた肥料の袋を、ドサドサと花壇の側に置いた。リュシェラでは1つずつ、両手に抱えて運ぶのがせいぜいな袋を、軽々と纏めて運ぶのだ。子どもとは言っても、ゴーレムの血が入っているティガァの力には、何度見ても驚いてしまう。
「こんなにいっぱい運んでくれたのね!すごいわね!」
目を丸くしながら褒めたリュシェラに「ゴーレムは強いからな、当たり前だ」と、ティガァが早口で返してくる。照れて乱暴な態度をとる所も可愛らしくて、リュシェラはフフッと微笑んだ。
そんな友達の姿を見て、子どもらしいライバル意識が生まれたのか。
「俺だって、早く走れるよ!」
リュシェラの近くにしゃがんでいたアラルトが、俺も俺も、と地面をバンバン叩いて訴えた。
「そうね、アラルトは走るのが上手だものね。じゃあ、おやつを食べたら、後で林まで競争しようかしら?」
「いいよ! そしたら俺が1番早いって、リュシェラ様も分かるね!」
自信があるアラルトが、始まる前から褒めてと言わんばかりにリュシェラの方を見上げてくる。得意気な姿はリュシェラにとっては愛らしく映る姿だが、主役の座を奪われたようなティガァにすれば腹が立ってしまったのだろう。
「やるまで分かんねーだろ!」
アラルトに詰め寄ったティガァの声は、だいぶ怒っているようだった。
「リザードの脚にゴーレムが適うわけないだろ!」
それに対して言い返したアラルトも、ばかじゃねぇの、と言外に言うような、小馬鹿にしたような声だった。
途端に始まりかけた喧嘩に、リュシェラは目を瞬かせて、2人を交互に眺めた。
苗を持ってきたクルゥーバに付き添って、荷物を持ってきてくれたのが、クルゥーバの旧友だというダイファだった。
その息子であるティガァは、アラルトの幼馴染みで、親友だと言っていた。確かに仲の良い2人だけど、歳と関係の近い子ども同士は、どうしたって互いに張り合いたがる。それはこの2人も同じようだった。
─── でも、ここまで酷くは無かったはずなのに。
最近どうしたのかしら。と困惑して首を傾げるリュシェラの前で、今日もまた口喧嘩を始めた2人に、リュシェラは領地でもよく見た子ども達とそれを窘める大人の姿を思い出した。
「こら、また喧嘩するなら、おやつはあげないわよ」
パンパンと大きく手を叩いて、こちらの方へ引きつける。2人の言い争いが止まった瞬間に、腰に手を当てながら「もうっ!」と顔を顰めれば、2人は途端に首をすくめた。
「ティガァのせいで、おやつがなくなるところだっただろ!」
「先に悪口言ったのは、アラルトの方だろう!」
それでもコソコソと、喧嘩を続ける2人に。
「あら? 本当におやつは要らないのね? せっかくこの前のアップリアを使って、プティングパイを焼いたんだけどな」
残念そうな声で言いながら、リュシェラは立ち上がって服をはたいた。リュシェラの後を追いかけるように、アラルトとティガァも立ち上がる。
本気でリュシェラが怒ってしまった、と思ったのか、パタパタと追いかけてきて、リュシェラの周りを2人で囲んだ。
クルゥーバの息子である、アラルトと一緒に雑草の処理をしていたリュシェラは、声の方を振り返った。
「ティガァ、ありがとう。その辺りに置いてくれるかしら」
「分かった~」
頷いたティガァが、持っていた肥料の袋を、ドサドサと花壇の側に置いた。リュシェラでは1つずつ、両手に抱えて運ぶのがせいぜいな袋を、軽々と纏めて運ぶのだ。子どもとは言っても、ゴーレムの血が入っているティガァの力には、何度見ても驚いてしまう。
「こんなにいっぱい運んでくれたのね!すごいわね!」
目を丸くしながら褒めたリュシェラに「ゴーレムは強いからな、当たり前だ」と、ティガァが早口で返してくる。照れて乱暴な態度をとる所も可愛らしくて、リュシェラはフフッと微笑んだ。
そんな友達の姿を見て、子どもらしいライバル意識が生まれたのか。
「俺だって、早く走れるよ!」
リュシェラの近くにしゃがんでいたアラルトが、俺も俺も、と地面をバンバン叩いて訴えた。
「そうね、アラルトは走るのが上手だものね。じゃあ、おやつを食べたら、後で林まで競争しようかしら?」
「いいよ! そしたら俺が1番早いって、リュシェラ様も分かるね!」
自信があるアラルトが、始まる前から褒めてと言わんばかりにリュシェラの方を見上げてくる。得意気な姿はリュシェラにとっては愛らしく映る姿だが、主役の座を奪われたようなティガァにすれば腹が立ってしまったのだろう。
「やるまで分かんねーだろ!」
アラルトに詰め寄ったティガァの声は、だいぶ怒っているようだった。
「リザードの脚にゴーレムが適うわけないだろ!」
それに対して言い返したアラルトも、ばかじゃねぇの、と言外に言うような、小馬鹿にしたような声だった。
途端に始まりかけた喧嘩に、リュシェラは目を瞬かせて、2人を交互に眺めた。
苗を持ってきたクルゥーバに付き添って、荷物を持ってきてくれたのが、クルゥーバの旧友だというダイファだった。
その息子であるティガァは、アラルトの幼馴染みで、親友だと言っていた。確かに仲の良い2人だけど、歳と関係の近い子ども同士は、どうしたって互いに張り合いたがる。それはこの2人も同じようだった。
─── でも、ここまで酷くは無かったはずなのに。
最近どうしたのかしら。と困惑して首を傾げるリュシェラの前で、今日もまた口喧嘩を始めた2人に、リュシェラは領地でもよく見た子ども達とそれを窘める大人の姿を思い出した。
「こら、また喧嘩するなら、おやつはあげないわよ」
パンパンと大きく手を叩いて、こちらの方へ引きつける。2人の言い争いが止まった瞬間に、腰に手を当てながら「もうっ!」と顔を顰めれば、2人は途端に首をすくめた。
「ティガァのせいで、おやつがなくなるところだっただろ!」
「先に悪口言ったのは、アラルトの方だろう!」
それでもコソコソと、喧嘩を続ける2人に。
「あら? 本当におやつは要らないのね? せっかくこの前のアップリアを使って、プティングパイを焼いたんだけどな」
残念そうな声で言いながら、リュシェラは立ち上がって服をはたいた。リュシェラの後を追いかけるように、アラルトとティガァも立ち上がる。
本気でリュシェラが怒ってしまった、と思ったのか、パタパタと追いかけてきて、リュシェラの周りを2人で囲んだ。
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