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第24 会話の意味が分かりません 3
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「あぁ!もちろんだ!」
きっと根がとてもお優しいのだろう。何度も好意をはねのけてしまったはずなのに、向けられたリオネル様の笑顔は嬉しそうだった。
「必死だな、お前…」
クラウス様が何に対してそう言っているのか分からなかった。でもそんなクラウス様をリオネル様は一瞬だけにらみ付けて、そのまま言葉を促すように私の方へ笑みを向けてくる。
「リオネル様はオルスクレームという宝石をご存じですか?」
「オルスクレーム?見た事はないが、たしかヴァラハテール国の特産の宝石だったと覚えているが…」
想像していた内容とは全く違ったのかもしれない。リオネル様が突然の私の話に不思議そうな表情を浮かべていた。
「はい、そちらでお間違いございません」
「それがどうかしたのか?」
「…本日、拝見致しました」
私の言葉をどう捉えるのか。出しゃばっていると不快にさせてしまわないか、リオネル様の反応が心配だった。私は身体の前で組んだ両手をキュッと握りしめた。
「それをレナはどう思ったんだ?」
リオネル様とクラウス様が視線を交わし合い、その先を促してくる。その言葉にホッとして確認した事を伝えていった。
「そうか麦を……」
「はい、なぜヴァラハテール国が買い求めているのかは分かりません。ただ、麦は商会でも国の許可なく簡単に流通させることはできません」
市場に過剰に流通してしまって値崩れが発生すると困るのだ。だから一定量以上は国が買い上げ備蓄する。
「そうだな。余剰が生まれても買い上げか、各領地とも災害などへの備えとして備蓄するよう王室統治法で義務づけられているからな」
「はい…まさか法に触れる事をされているとは思えないのですが、すこし気になってしまっていて……」
王室統治法は貴族の領地に対する自治権さえも制約するものだ。違反をすれば罰は重く、下手をすれば死罪だってある国法だった。とは言っても各貴族とも力をそがれないようにこの法の制定を監視しているせいで、条文はそんなに多くない。
でも双子の処分を禁止したのもこの国法なのだから、私にとっては命を救ってくれた大切な法ではあった。
「それをレナはあのエディス嬢等との話の中で考えていたということか」
「出過ぎたマネをしてしまい、申し訳ございません……」
「そんなことはない。むしろちょうど良かったぐらいだ」
そう言って頭を下げた私の前で、リオネル様はニヤッと笑ってクラウス様の方を見つめていた。
「ちょうどよい、ですか?」
私はコテンッと首を倒した。
「これが資質ってことか、なるほどな」
その表情へ苦笑を返しながらクラウス様がなぜか私へ手を差し出してくる。さっきから何のお話をしているのか分からないまま、私は差し出された手に手を添えた。
「これからよろしく。あと朴念仁だが悪い奴ではないんだ、色々手加減してやってくれ」
「なんだ、それは!?」
「当たっているだろう。女性のエスコート1つろくにできてやしない。社交場は女性の戦場だぞ。そんなど真ん中に1人置いてくるなんて。マエリス様に後から説教でもされてろ」
クラウス様へなぜかどや顔を向けていたリオネル様の顔がその言葉に青ざめてくる。「いや、それは、ちょっと待て」と慌てた様子のリオネル様が助けを求めるように私の方をチラッと向いた。
「あの、我が家の爵位が低いことも、本日はただの奉公人としてご一緒していることも本当の事ですから、特に気にしておりませんので大丈夫ですよ」
私が言われたことなどを気にしてくれているのだろう。だが私のその言葉にお二人はますます眉を顰めてしまった。
「……素直に説教を受けてこよう…」
「あぁ、そうしろ」
そう言ったクラウス様の声は呆れたような声だった。
きっと根がとてもお優しいのだろう。何度も好意をはねのけてしまったはずなのに、向けられたリオネル様の笑顔は嬉しそうだった。
「必死だな、お前…」
クラウス様が何に対してそう言っているのか分からなかった。でもそんなクラウス様をリオネル様は一瞬だけにらみ付けて、そのまま言葉を促すように私の方へ笑みを向けてくる。
「リオネル様はオルスクレームという宝石をご存じですか?」
「オルスクレーム?見た事はないが、たしかヴァラハテール国の特産の宝石だったと覚えているが…」
想像していた内容とは全く違ったのかもしれない。リオネル様が突然の私の話に不思議そうな表情を浮かべていた。
「はい、そちらでお間違いございません」
「それがどうかしたのか?」
「…本日、拝見致しました」
私の言葉をどう捉えるのか。出しゃばっていると不快にさせてしまわないか、リオネル様の反応が心配だった。私は身体の前で組んだ両手をキュッと握りしめた。
「それをレナはどう思ったんだ?」
リオネル様とクラウス様が視線を交わし合い、その先を促してくる。その言葉にホッとして確認した事を伝えていった。
「そうか麦を……」
「はい、なぜヴァラハテール国が買い求めているのかは分かりません。ただ、麦は商会でも国の許可なく簡単に流通させることはできません」
市場に過剰に流通してしまって値崩れが発生すると困るのだ。だから一定量以上は国が買い上げ備蓄する。
「そうだな。余剰が生まれても買い上げか、各領地とも災害などへの備えとして備蓄するよう王室統治法で義務づけられているからな」
「はい…まさか法に触れる事をされているとは思えないのですが、すこし気になってしまっていて……」
王室統治法は貴族の領地に対する自治権さえも制約するものだ。違反をすれば罰は重く、下手をすれば死罪だってある国法だった。とは言っても各貴族とも力をそがれないようにこの法の制定を監視しているせいで、条文はそんなに多くない。
でも双子の処分を禁止したのもこの国法なのだから、私にとっては命を救ってくれた大切な法ではあった。
「それをレナはあのエディス嬢等との話の中で考えていたということか」
「出過ぎたマネをしてしまい、申し訳ございません……」
「そんなことはない。むしろちょうど良かったぐらいだ」
そう言って頭を下げた私の前で、リオネル様はニヤッと笑ってクラウス様の方を見つめていた。
「ちょうどよい、ですか?」
私はコテンッと首を倒した。
「これが資質ってことか、なるほどな」
その表情へ苦笑を返しながらクラウス様がなぜか私へ手を差し出してくる。さっきから何のお話をしているのか分からないまま、私は差し出された手に手を添えた。
「これからよろしく。あと朴念仁だが悪い奴ではないんだ、色々手加減してやってくれ」
「なんだ、それは!?」
「当たっているだろう。女性のエスコート1つろくにできてやしない。社交場は女性の戦場だぞ。そんなど真ん中に1人置いてくるなんて。マエリス様に後から説教でもされてろ」
クラウス様へなぜかどや顔を向けていたリオネル様の顔がその言葉に青ざめてくる。「いや、それは、ちょっと待て」と慌てた様子のリオネル様が助けを求めるように私の方をチラッと向いた。
「あの、我が家の爵位が低いことも、本日はただの奉公人としてご一緒していることも本当の事ですから、特に気にしておりませんので大丈夫ですよ」
私が言われたことなどを気にしてくれているのだろう。だが私のその言葉にお二人はますます眉を顰めてしまった。
「……素直に説教を受けてこよう…」
「あぁ、そうしろ」
そう言ったクラウス様の声は呆れたような声だった。
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