異世界で最強の魔導士になるために

第13話 深淵の導き

遺跡の内部に足を踏み入れたダンテたち。外の世界から切り離されたかのような静けさが、彼らを包み込んだ。石造りの廊下は冷たい空気に満ち、わずかに湿り気を帯びている。壁には古代の言語が刻まれ、謎めいた光が点々と浮かび上がっていた。

「まるでここだけ時間が止まってるみたいだな…」カイルが呟き、周囲を警戒しながら歩を進めた。

リーナは壁に刻まれた文字を注意深く観察していた。「これは…古代の魔法陣の一部ね。何かの封印が施されているわ。」

「封印って…俺たちが触れちゃまずいものがあるってことか？」フィンが不安げに言う。

「ええ、慎重に進んだ方がいいわ。ここにある力は私たちがこれまで出会ったものよりも、はるかに強大かもしれない…」

遺跡の奥へと進むにつれ、次第に廊下は広がり、巨大なホールにたどり着いた。そこには、天井から吊り下げられた無数の鎖が、不気味な音を立てて揺れている。中央には、黒い水晶のようなものが浮かんでおり、その周囲をぐるりと囲むように奇妙な石像が並んでいた。

「これが何かの鍵になるのか？」ダンテが水晶に近づこうとすると、突然、ホール全体が震え出した。

「気をつけろ、何かが来る！」カイルが剣を構え、周囲を警戒する。

その瞬間、水晶が輝きを放ち、周囲の石像が目を覚ましたかのように動き始めた。石像は不規則な動きを見せながら、ゆっくりとダンテたちに近づいてくる。

「また石像かよ…！」フィンが叫び、手早く魔法の準備を始めた。

しかし、これまでの石像とは違い、動きが奇妙に滑らかで、まるで生きているかのような意識を感じさせた。

「これ、ただの守護者じゃない…！」リーナが驚きの声を上げた。「この石像たち、何かに操られている…！」

「操られてるだと？」カイルが困惑する。

「この水晶が原因よ。これが全ての中心で、石像たちを動かしている…！」リーナが叫びながらも魔法の力を集中させ、封じ込める手段を考えようとしていた。

「なら、まずはその水晶を破壊すればいいってことか！」フィンが素早く動き出し、風の刃を水晶に向かって放った。しかし、その刃は水晶に届く前に、何か見えない壁に弾かれた。

「くそっ！防御されてる…！」フィンが舌打ちをした。

ダンテは冷静にその場を見渡し、策を考えていた。「リーナ、あの水晶の防御を解く方法はあるか？」

「少し時間が必要だけど…できるかもしれない！」リーナが必死に呪文を唱え始める。

「じゃあ、俺たちはその間、この石像たちを引きつける！」ダンテはそう言って剣を抜き、カイルとともに石像に向かって突進した。

石像たちはその大きさに反して素早く動き、鋭い攻撃を繰り出してくる。しかし、ダンテとカイルは互いに連携しながら、その動きをかわし、反撃の隙を伺った。

「ダンテ、こいつら硬すぎる…！」カイルが息を切らしながら叫んだ。

「少しでも時間を稼げればいい。リーナが防御を解くまで持ちこたえるんだ！」

一方で、リーナは水晶を封じる魔法陣を描きながら、焦ることなく呪文を紡いでいた。その顔には緊張が走りながらも、強い決意が見えた。

「もう少しで…！」

その瞬間、ホール全体に強烈な光が放たれ、リーナが完成させた魔法陣が水晶を包み込んだ。

「今よ！水晶の防御が消えたわ！」

ダンテはその言葉を聞くや否や、剣を握りしめ、フィンの援護を受けながら一気に水晶に突進した。

「これで終わりだ！」ダンテが全力で剣を振り下ろすと、水晶は粉々に砕け散り、周囲の石像も動きを止め、まるで命を失ったかのように崩れ落ちた。

静寂が戻ったホールで、ダンテたちは肩で息をしながら立ち尽くした。

「ふぅ…これでやっと進めるな」とフィンが笑みを浮かべた。

「でも、これが終わりじゃないわ。この先には、もっと強力な存在が待っているはずよ…」リーナが険しい表情で言った。

ダンテは深く息をつき、前方に広がるさらに暗い遺跡の奥を見つめた。

「ここからが本当の戦いだな…」