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45 蛙ですか?
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数日後、便箋と封筒を買う為に着替えると洋介は富士子に声を掛けた。平介と富士子は居間のテレビで最近お気に入りの旅番組を見ていた。お笑い芸人が外国の駅前で拙い現地語を操りながら歩き回り、現地の人に人気の食堂を探す番組だ。
平介はテレビの自動録画機能で気になる番組を予約しまくり、畑に行かない時は居間でずっとテレビを見ている。最近は、そこに手話通訳に行かなくなった富士子も加わった。
「ちょっと出掛けて来るから車貸して」
二人が出掛けない日である事は居間に貼ってあるカレンダーで確認済みである。通院の予定が書いてあるのだが、今日の予定は空欄だった。
「何処行くの?」
「駅の近くのショッピングモール」
「俺も行く!」
「私も!」
見ていたテレビをリモコンで消すと、テキパキと動き出す平介と富士子。
「えー、俺もう出たいんだけど」
「ちょっとくらい待ちなさいよ!」と隣の寝室へ着替えに行く富士子に、「母さんのちょっとは三十分だ」と平介がちゃちゃを入れながら廊下へ向かう。富士子のタンスは寝室にあるが、平介のタンスは新館一階の和室にあるからだ。
残された洋介は二人の飲み掛けの湯呑みに蓋をし、テレビのコンセントがちゃんと抜いてあるかを確認した。平介が節電に煩いのだ。
「三十分も待てないよ」
隣の寝室のドアは引き戸なのだが、経年劣化でガタがきている。二階の重みで開けにくいのだ。いつも半開きの状態にしているので、暖簾を掛けて見えない様にしているが、富士子が着替えている気配は感じられるし、此方の声も富士子に聞こえる。
別に急いではいないが、直ぐにでも出られる状態なのに三十分も待つのは嫌だ。損した気がする。
「十分……、十五分も掛からないわよ!」
「十五分じゃあんま変わんない気がする」
十分だったら待てそうだが、十五分じゃ三十分の半分じゃないか。
「直ぐ終わるわよ! 誰の車だと思ってるの? あたしの車よ!」
「はいはい」
それを言われてしまうと弱い。
「待ってる間に家の鍵閉めてよ。窓開いてるとことか。風ちゃん居たら出しといてね!」
猫の風太郎は、トイレは家の中ではしない。家の中に猫トイレは無く、したくなったら外に出せと家人にせがむので、短時間でも家族全員が留守にする時は外に出す決まりだ。近所に民家が少ない田舎だから出来る猫の飼い方である。
風太郎は二階の洋介の布団の上で丸くなっていた。
「出掛けるから、ふうも外に出せって。お袋が」
言い訳しながら網戸にしていた部屋の窓を閉める。風太郎は、薄目を開け煩そうにまた閉じた。動く気がないのだ。邪魔者が居なくなってぬくぬくとした布団を独り占めしているのだから。
「おーい、俺はもう行けるぞ!」
階下から平介が声を張り上げる。
「お母さんは置いて行こう」
「あともうちょっと!」
平介は揶揄った後、トイレに入ったらしくドアと鍵を閉める音が聞こえる。
「はあ。悪いな」
洋介は風太郎を持ち上げると階段を下り始めた。風太郎が嫌がって身を捩るが、階段の途中、それもかなり上の方なんかで落としたら幾ら身の軽い猫でも大惨事だ。
「待て待て」
撫でて宥めながら抱え直すと不満そうに唸っているが大人しくなった。
風太郎の体重は六キロ、人間の赤ん坊と同じ位だと富士子が言っていた。暴れられるとちょっと厄介だ。尻に手を当ててズタ袋でも抱える様に抱くと座りがいいのか大人しく抱かれる。
猫なら暴れられても怖くないのに、たとえ大人しくても人間の赤ん坊を抱くのはなんであんなに怖いんだろうと、洋介は姪のリンちゃんを初めて抱かされた時の事を思い出した。壊しそうで怖かった。何かあったら責任取れないと、ひたすら怖かった。首が据わっていない赤ん坊だったのもあるが、三歳になった今でも怖くて触れない。
玄関のドアを開けて下ろすと、風太郎は恨めしそうに洋介をひと睨みしてからツンと澄ました歩き方でチャップスの小屋へ向かった。チャップスは風太郎に遊んで貰えると喜んで飛び跳ねているが、風太郎はチャップスの小屋の中で寝直すつもりなのだろう。いつもながら相手にされず哀れな犬である。
結局十分ちょい待たされて、やって来たショッピングモールは中々盛況だった。平日なのに結構駐車場が埋まっている。
「入り口の近くがいいぞ」
距離を歩きたくない平介が主張するが、空いていない。仕方ないので、入り口の前で二人を降ろしてから洋介だけで車を停めに行った。
「此処で待ってるわ」と富士子は叫んでたが、平介がさっさと店内へ入って行くので後を追って行くのがバックミラー越しに見えた。今はスマホがあるからいい。言った事と違う行動されても後でちゃんと連絡がつく。
車を停めてからメールを確認すると、案の定富士子から『ユニクロに居ます』とお爺さんとお婆さんの絵文字付きで連絡が来ていた。丁度良かった。これで一人で行動出来る。二人に合流する前に便箋を買って行こう。『了解。自分の買い物してから合流します。移動するならまたメールして』と返事を送った。
モールの中は女性客が多い。目に付くのは、年齢層の様々な女性が一人で居る姿か、若しくは老いた母とその娘らしき中年女性のペア。
若いカップルもちらほら。平介と富士子みたいな老夫婦も多い。
小学生くらいの子供を連れた家族連れは不思議だ。お父さんが休みだから家族で買い物に来たんだろうが、子供の学校はどうしたんだ? 自分に子供がいないから小学校の行事なんてまるで思い出せない。経験した事の筈なのに既に異次元の出来事だ。何かの休みなのだろうか。
いつか、自分が星と結婚したら子供を連れて買い物に来たりする事もあるのか。キョロキョロと見回してみたが、同性同士のカップルは見当たらない。この辺だと多分凄く珍しがられて目立つだろうな。東京だったら違うのだろうか? 目立つのが嫌かというとそうでもない。星と一緒なら人の目は気にならない気がする。ただ、実際にそうなってみないと分からないけど。
「まあ、その前に付き合ってみないと」
思わず口に出して呟いてしまった。俺も歳だな、往来で独り言なんて、と顔を赤くしていると「あれ? 岬?」と声を掛けられた。
「広田?」
「おう、久しぶりだなぁ。元気か?」
久しぶりなんてもんじゃない、大学卒業以来だ。中学の同級生だが、全然変わってない。相変わらず、蛙に似てる。だからずっと会ってなくても直ぐ分かった。本人に言った事はないが。
同級生達は自転車で通える近場の高校に進学する奴等が多くて段々と疎遠になっていった中、二人とも高校と大学が電車通学だったので、駅でよく会って話したっけ。
「おばさん元気か?」
「ああ」
広田は東京の大学を卒業した後、地元の市役所に就職した。富士子から何度か広田の名前を聞いた事がある。手話通訳で市役所に行ったら、向こうから「もしかして岬君のお母さんじゃ?」と話し掛けられたそうだ。ちゃんとしてる。洋介なら絶対知らんぷりする。言わなきゃ分かんないのに。だが言えば円滑に人付き合いが回る。そう言えば中学の頃もそんな感じだった。
就職後、洋介は東京で一人暮らしを始めたので、駅で広田に会う事もなくなった。だから市役所の同僚と結婚したのも富士子から聞いた。
「広報の時はお世話になったからなあ。そうか、元気か。良かった。今は部署が変わっちゃってさ、全然お会いしてないから」
「そうか、お前に会ったって伝えとくよ」
「おう。よろしくな! お前一人か?」
「いや」
お袋達と……、と続けようとして、急に洋介は我に返った。
ヤバイヤバイ。
広田は私服だ。ポロシャツにジーパン。仕事は休みなんだろう。一人だが、結婚してるんだから子供もいるかも。就職して割と直ぐに結婚した筈だから、結構大きな子供がいるんじゃ? それって今、何歳くらいなんだ? 中学? 高校? いや、大学生か? それか、子供作るのは遅くてまだ小さいとか? いや、どうなんだ? 富士子からその辺は聞いてないぞ。家族も一緒なのか? そもそも今日は平日なのに市役所は休みなのか? え? どうしよう。仕事は休みなのかって訊いたら、絶対お前は?って訊かれるよな。そっち方面に話を持っていきたくない。仕事も結婚の話もダメだ。いや、今の俺は結婚のアテがないわけじゃないけど、第三の性を持つ男性が相手とか話して理解して貰えるか? あ、でも市役所に勤めてるんだからその辺理解あるように教育されてるのか? でも、まだ星との事はちゃんと始まってもいないし。
え? 何を言えば……、会話が続かない。
黙りこくる洋介。
「俺は家族と来たんだが、ちょっと車に忘れ物があって取りに帰ったところなんだ」
急に広田が空気を読んだように、ニカッと笑って自分の話を始めた。
「これから何処に居るか探さないといけないんだが、今はスマホがあって便利だよな」
「ああ、それ俺もさっき思った」
ほっとして同意しながら、洋介は思い出した。ああ、そう言えばこういう奴だった。さらっとした気遣いが出来る奴なんだ。空気読んで、余計な事は言わない。だから駅でばったり会っても話し易かった。昔から人間が出来てる、そして今では真っ当に大人になってる。
「久しぶりに会えて良かったよ! じゃあ俺、もう行くな! 久しぶりに会ったのにバタバタしてて申し訳ないが、家族達探さないとだから」
「うん、そうだよな」
「呼び止めて悪かったな!」
「いやいや」
「お袋さんによろしく!」
「ああ」
手を振ると颯爽と広田は去って行った。
洋介は何か忸怩たる思いを抱えながら、便箋と封筒を買いに行った。頭があんまり働いていなくて、ぼーっとしたまま無地にイラストがエンボス加工で浮き出てるのを見つけた。可愛いけど子供っぽくないデザイン。その中で猫と蛙の二種類を買った。後でせめて猫と犬にすれば、風太郎とチャップスに似てたからって言えたのに、何で俺はこんなのを買ったんだ?と後悔した。
平介はテレビの自動録画機能で気になる番組を予約しまくり、畑に行かない時は居間でずっとテレビを見ている。最近は、そこに手話通訳に行かなくなった富士子も加わった。
「ちょっと出掛けて来るから車貸して」
二人が出掛けない日である事は居間に貼ってあるカレンダーで確認済みである。通院の予定が書いてあるのだが、今日の予定は空欄だった。
「何処行くの?」
「駅の近くのショッピングモール」
「俺も行く!」
「私も!」
見ていたテレビをリモコンで消すと、テキパキと動き出す平介と富士子。
「えー、俺もう出たいんだけど」
「ちょっとくらい待ちなさいよ!」と隣の寝室へ着替えに行く富士子に、「母さんのちょっとは三十分だ」と平介がちゃちゃを入れながら廊下へ向かう。富士子のタンスは寝室にあるが、平介のタンスは新館一階の和室にあるからだ。
残された洋介は二人の飲み掛けの湯呑みに蓋をし、テレビのコンセントがちゃんと抜いてあるかを確認した。平介が節電に煩いのだ。
「三十分も待てないよ」
隣の寝室のドアは引き戸なのだが、経年劣化でガタがきている。二階の重みで開けにくいのだ。いつも半開きの状態にしているので、暖簾を掛けて見えない様にしているが、富士子が着替えている気配は感じられるし、此方の声も富士子に聞こえる。
別に急いではいないが、直ぐにでも出られる状態なのに三十分も待つのは嫌だ。損した気がする。
「十分……、十五分も掛からないわよ!」
「十五分じゃあんま変わんない気がする」
十分だったら待てそうだが、十五分じゃ三十分の半分じゃないか。
「直ぐ終わるわよ! 誰の車だと思ってるの? あたしの車よ!」
「はいはい」
それを言われてしまうと弱い。
「待ってる間に家の鍵閉めてよ。窓開いてるとことか。風ちゃん居たら出しといてね!」
猫の風太郎は、トイレは家の中ではしない。家の中に猫トイレは無く、したくなったら外に出せと家人にせがむので、短時間でも家族全員が留守にする時は外に出す決まりだ。近所に民家が少ない田舎だから出来る猫の飼い方である。
風太郎は二階の洋介の布団の上で丸くなっていた。
「出掛けるから、ふうも外に出せって。お袋が」
言い訳しながら網戸にしていた部屋の窓を閉める。風太郎は、薄目を開け煩そうにまた閉じた。動く気がないのだ。邪魔者が居なくなってぬくぬくとした布団を独り占めしているのだから。
「おーい、俺はもう行けるぞ!」
階下から平介が声を張り上げる。
「お母さんは置いて行こう」
「あともうちょっと!」
平介は揶揄った後、トイレに入ったらしくドアと鍵を閉める音が聞こえる。
「はあ。悪いな」
洋介は風太郎を持ち上げると階段を下り始めた。風太郎が嫌がって身を捩るが、階段の途中、それもかなり上の方なんかで落としたら幾ら身の軽い猫でも大惨事だ。
「待て待て」
撫でて宥めながら抱え直すと不満そうに唸っているが大人しくなった。
風太郎の体重は六キロ、人間の赤ん坊と同じ位だと富士子が言っていた。暴れられるとちょっと厄介だ。尻に手を当ててズタ袋でも抱える様に抱くと座りがいいのか大人しく抱かれる。
猫なら暴れられても怖くないのに、たとえ大人しくても人間の赤ん坊を抱くのはなんであんなに怖いんだろうと、洋介は姪のリンちゃんを初めて抱かされた時の事を思い出した。壊しそうで怖かった。何かあったら責任取れないと、ひたすら怖かった。首が据わっていない赤ん坊だったのもあるが、三歳になった今でも怖くて触れない。
玄関のドアを開けて下ろすと、風太郎は恨めしそうに洋介をひと睨みしてからツンと澄ました歩き方でチャップスの小屋へ向かった。チャップスは風太郎に遊んで貰えると喜んで飛び跳ねているが、風太郎はチャップスの小屋の中で寝直すつもりなのだろう。いつもながら相手にされず哀れな犬である。
結局十分ちょい待たされて、やって来たショッピングモールは中々盛況だった。平日なのに結構駐車場が埋まっている。
「入り口の近くがいいぞ」
距離を歩きたくない平介が主張するが、空いていない。仕方ないので、入り口の前で二人を降ろしてから洋介だけで車を停めに行った。
「此処で待ってるわ」と富士子は叫んでたが、平介がさっさと店内へ入って行くので後を追って行くのがバックミラー越しに見えた。今はスマホがあるからいい。言った事と違う行動されても後でちゃんと連絡がつく。
車を停めてからメールを確認すると、案の定富士子から『ユニクロに居ます』とお爺さんとお婆さんの絵文字付きで連絡が来ていた。丁度良かった。これで一人で行動出来る。二人に合流する前に便箋を買って行こう。『了解。自分の買い物してから合流します。移動するならまたメールして』と返事を送った。
モールの中は女性客が多い。目に付くのは、年齢層の様々な女性が一人で居る姿か、若しくは老いた母とその娘らしき中年女性のペア。
若いカップルもちらほら。平介と富士子みたいな老夫婦も多い。
小学生くらいの子供を連れた家族連れは不思議だ。お父さんが休みだから家族で買い物に来たんだろうが、子供の学校はどうしたんだ? 自分に子供がいないから小学校の行事なんてまるで思い出せない。経験した事の筈なのに既に異次元の出来事だ。何かの休みなのだろうか。
いつか、自分が星と結婚したら子供を連れて買い物に来たりする事もあるのか。キョロキョロと見回してみたが、同性同士のカップルは見当たらない。この辺だと多分凄く珍しがられて目立つだろうな。東京だったら違うのだろうか? 目立つのが嫌かというとそうでもない。星と一緒なら人の目は気にならない気がする。ただ、実際にそうなってみないと分からないけど。
「まあ、その前に付き合ってみないと」
思わず口に出して呟いてしまった。俺も歳だな、往来で独り言なんて、と顔を赤くしていると「あれ? 岬?」と声を掛けられた。
「広田?」
「おう、久しぶりだなぁ。元気か?」
久しぶりなんてもんじゃない、大学卒業以来だ。中学の同級生だが、全然変わってない。相変わらず、蛙に似てる。だからずっと会ってなくても直ぐ分かった。本人に言った事はないが。
同級生達は自転車で通える近場の高校に進学する奴等が多くて段々と疎遠になっていった中、二人とも高校と大学が電車通学だったので、駅でよく会って話したっけ。
「おばさん元気か?」
「ああ」
広田は東京の大学を卒業した後、地元の市役所に就職した。富士子から何度か広田の名前を聞いた事がある。手話通訳で市役所に行ったら、向こうから「もしかして岬君のお母さんじゃ?」と話し掛けられたそうだ。ちゃんとしてる。洋介なら絶対知らんぷりする。言わなきゃ分かんないのに。だが言えば円滑に人付き合いが回る。そう言えば中学の頃もそんな感じだった。
就職後、洋介は東京で一人暮らしを始めたので、駅で広田に会う事もなくなった。だから市役所の同僚と結婚したのも富士子から聞いた。
「広報の時はお世話になったからなあ。そうか、元気か。良かった。今は部署が変わっちゃってさ、全然お会いしてないから」
「そうか、お前に会ったって伝えとくよ」
「おう。よろしくな! お前一人か?」
「いや」
お袋達と……、と続けようとして、急に洋介は我に返った。
ヤバイヤバイ。
広田は私服だ。ポロシャツにジーパン。仕事は休みなんだろう。一人だが、結婚してるんだから子供もいるかも。就職して割と直ぐに結婚した筈だから、結構大きな子供がいるんじゃ? それって今、何歳くらいなんだ? 中学? 高校? いや、大学生か? それか、子供作るのは遅くてまだ小さいとか? いや、どうなんだ? 富士子からその辺は聞いてないぞ。家族も一緒なのか? そもそも今日は平日なのに市役所は休みなのか? え? どうしよう。仕事は休みなのかって訊いたら、絶対お前は?って訊かれるよな。そっち方面に話を持っていきたくない。仕事も結婚の話もダメだ。いや、今の俺は結婚のアテがないわけじゃないけど、第三の性を持つ男性が相手とか話して理解して貰えるか? あ、でも市役所に勤めてるんだからその辺理解あるように教育されてるのか? でも、まだ星との事はちゃんと始まってもいないし。
え? 何を言えば……、会話が続かない。
黙りこくる洋介。
「俺は家族と来たんだが、ちょっと車に忘れ物があって取りに帰ったところなんだ」
急に広田が空気を読んだように、ニカッと笑って自分の話を始めた。
「これから何処に居るか探さないといけないんだが、今はスマホがあって便利だよな」
「ああ、それ俺もさっき思った」
ほっとして同意しながら、洋介は思い出した。ああ、そう言えばこういう奴だった。さらっとした気遣いが出来る奴なんだ。空気読んで、余計な事は言わない。だから駅でばったり会っても話し易かった。昔から人間が出来てる、そして今では真っ当に大人になってる。
「久しぶりに会えて良かったよ! じゃあ俺、もう行くな! 久しぶりに会ったのにバタバタしてて申し訳ないが、家族達探さないとだから」
「うん、そうだよな」
「呼び止めて悪かったな!」
「いやいや」
「お袋さんによろしく!」
「ああ」
手を振ると颯爽と広田は去って行った。
洋介は何か忸怩たる思いを抱えながら、便箋と封筒を買いに行った。頭があんまり働いていなくて、ぼーっとしたまま無地にイラストがエンボス加工で浮き出てるのを見つけた。可愛いけど子供っぽくないデザイン。その中で猫と蛙の二種類を買った。後でせめて猫と犬にすれば、風太郎とチャップスに似てたからって言えたのに、何で俺はこんなのを買ったんだ?と後悔した。
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