抱かれてみたい

小桃沢ももみ

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ライム先輩と

相談

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 「っていう訳なんですけど、どう思われますか?」

 とアーロンはライム先輩に昨日の経緯を話した。
 今日の昼食は、アーロンはハンバーグ、ライム先輩は鮭のピカタを食べている。アーロンは米、ライム先輩はパンを選んだ。ライム先輩がその美しい手にカトラリーを持ち、鮭を丁度良い大きさに切り、綺麗な唇に運ぶのを見ながら返事を待つ。
 ライム先輩と二人きりの食事は楽しかった。ライム先輩はアーロンの話にいつも興味を持って、面白そうに聞いてくれるから話していて楽しい。ライム先輩はAクラスなので勉強も出来る、講義で分からなかった所を聞くと分かりやすく教えてくれるのも助かる。
 アーロンは自分の話を聞いてくれている時のライム先輩の表情が好きだ。真剣な表情、アーロンが上手く説明出来なかった時にどういう事を言いたいのか考えている表情、アーロンが面白い事を言った時に笑ってくれる顔、どれもこれも美しくて格好良くてぼうっと見惚れてしまう時がある。
 ただ、アーロンは礼儀作法に自信が無い。ライム先輩のように家庭教師に学んだ訳では無く、兄達から学んだからだ。食べる時も、話す時も、男爵家の生徒達と一緒に居る時よりきちんと出来る様にずっと気を付けている。

 「キース君の主様あるじさまか、確かブルックス様だったか、私より二つ上の方だな」
 「ご存知ですか?」
 「お顔は存じ上げているよ。同じ伯爵家だから、寮でお会いした事もある。ただ学年が二つも上だからね、親しく会話させて頂いた事はまだ無いな」
 「そうですか」
 「お背の高い体格の良いお方だった。おっとりした性格の様に見受けられたから、元気で行動力のあるキース君をお気に召したのでは無いかな?」
 「成る程」

 (ポン酢ソース美味しい。でもデミグラスソースも食べたいな。頼んでも良いかしら?)

 アーロンはハンバーグを食べながらキースの主様はどんな人なのだろうと考えた。でもそんなに興味がある訳でもない。キースを選ぶなんて変わり者だなと思った位だ。それに多分ライム先輩の方がかっこいいし。

 「来月だったら、私がアーロン君を連れて行ってあげられると思う。今月から本格的に領地について学び始めたばかりだから休む訳には行かない。だが来月なら何とかなるかもしれない。それ迄待てないかい?」
 「うーん。僕は平気なんですけど、イチロウ様達はどうなのか」
 「それなら、今回はアーロン君は止めておいて、イチロウ君達だけキース君と一緒に行くのはどうだろうか?」
 「でも折角だから行くならイチロウ様達とも一緒に行きたいです」
 「だったら、二人も私達と一緒に一ヶ月後に行くのはどうだろう?」
 「そうですよね……」

 考え込んでいると、給仕が新しいハンバーグの皿を持って来た。

 「え」
 「うふふ、食べ足りないだろうと思ってね」

 と、ライム先輩が悪戯な笑みを浮かべる。

 「ありがとうございます!」

 (凄い、ライム先輩。僕の事良く分かってる! ちゃんとソースもデミグラスだ。何で? 魔法みたい)

 「ふふふ。不思議そうな顔だね?」
 「はい」

 ライム先輩は楽しそうに、ナプキンで口元を拭った。
 
 「君の事が好きだからかな」
 「え……」

 アーロンの頬が赤く染まる。

 「なんてね。私は君の食べている所を見ているのが好きなのだよ。幸せそうだから。だからもっと食べたいと考えている君の考え位読めるよ」
 
 熱くなったアーロンの頬にライム先輩のひんやりした手がそっと触れる。

 「さあ、食べなさい。もう私は食べ終わったからね、君が美味しそうに食べるのを喜んで見ているよ」

 ライム先輩の手が離れていく。
 アーロンは何故かそれが名残惜しい。

 (もう、先輩ったら時々こうやって、触れたり僕の事、す、好きだとか言ったりするから困っちゃうんだよな)

 
 
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