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授業
副担任と担任
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「本当は、爵位なんて関係無しに、悪い事をした生徒にはきちんと学院が叱るべきなんです。ですが、まだ無理なんです。申し訳ないです。アーロン君の在学中には無理かもしれませんが、いつか出来る様に頑張っていますので許して下さい」
副担任はそうアーロンに頭を下げると、帰って行った。
「あいつは教師として信頼出来る奴だから」
「そうなんですか?」
理不尽ではあるが向こうの方が爵位が上なら仕方のない事だから謝られてもな、と思いながら副担任を見送っていると、寮監のリバーが話しかけて来た。
「うん。もう一杯お茶飲むか?」
「いえ」
もうお腹がたぷたぷだ。
「じゃあ、クッキー食うか?」
「はい」
リバーは席を立つと奥の部屋から杯とお揃いの皿にクッキーを数枚のせて来た。
「ほれ」
「ありがとうございます」
机にのせられたのを食べると、チーズ味だった。甘じょっぱい味で癖になりそうだ。
「美味しい」
「そうか、良かった。で、話の続きだが、お前のクラスで何かあった時は担任でなく、あいつを頼れ」
アーロンは何かあったら担任に言おうと思っていた。だって普通そうじゃないか。担任と副担任っていたら、担任を頼るだろう。怪訝に思ったのが、顔に出たのだろう。
「お前のクラスの担任な、奴に言ったら揉み消されるぞ。外面の良さと、上に媚びる事でのし上がって来た奴だからな。多分相談したら親身になって話は聞いてくれるだろう。聞く振りは上手なんだよ。それで放置だ」
「そうなんですか?」
「ああ、一見人当たりがいいから皆騙されるんだけどな。結局改善されないって苦情が毎年俺ん所に来る。で、調べたら全部奴の所で止まってた。今年はだからあいつを副担任に付けたんだろう。少しずつだが学院もましになって来てるって事だな」
そう言えば、班行動の時に子爵家の班を担当したのは担任で、男爵家の班に伯爵家の子息が入った方は副担任が担当していたなとアーロンは思い出す。あの伯爵家の生徒の家は力が無いってイアンが話していたから、魔石が取れて強気になっている子爵家の生徒の班を担任は優遇したという事なのだろうか。
「それって、何か意図的に止めていたんでしょうか?」
「いや、単に仕事が出来無いんだろう。見目は良いし、一生懸命やっている様に見えるから今まで気付かれていなかっただけじゃ無いのかな」
「そうなんですか」
大人なのに仕事が出来ないとか同じ職場の仲間から生徒に暴露されてしまうなんて、情けないなと思ってしまう。担任の講義は取らない様にしよう、確か一般教養の歴史の担当だった筈。他の先生の講義を取れないか調べてみようとアーロンは決めた。
「で、どうする? この後」
「今、三時間目でしたっけ?」
「ああ」
夜はここで歓迎会だった筈だ。それ迄どうやって時間を潰すか。
「独りになるのが怖ければこの部屋に居てもいい。俺は奥の部屋で作業する。反対に、独りが良ければ部屋にいると良い。時間になったらイアンに呼びに行かせよう。あいつなら、平気だろ?」
「はあ」
「もしかして部屋まで送った方がいいか?」
「いえ、そこ迄気を遣って頂かなくても」
本当に襲われていたらとても一人では歩けなかっただろうが、嫌らしい事を言われて追い掛けられただけだ。
「取り敢えず自分の部屋に戻ります」
「分かった。もしも寮から出て行きたい所があったら、売店とか、必ず声をかけてくれ。付き添う」
「えっと、はい」
「うん、いい子だ」
ぽんぽんとリーヴはアーロンの頭を軽く触れると奥の部屋へ引っ込んで行った。
アーロンは暫くの間ぼーっとそのままソファに座っていたが、「よし」と声を掛けて立ち上がると自室へ戻って、使ってしまった仕掛けを仕込み直す事にした。
副担任はそうアーロンに頭を下げると、帰って行った。
「あいつは教師として信頼出来る奴だから」
「そうなんですか?」
理不尽ではあるが向こうの方が爵位が上なら仕方のない事だから謝られてもな、と思いながら副担任を見送っていると、寮監のリバーが話しかけて来た。
「うん。もう一杯お茶飲むか?」
「いえ」
もうお腹がたぷたぷだ。
「じゃあ、クッキー食うか?」
「はい」
リバーは席を立つと奥の部屋から杯とお揃いの皿にクッキーを数枚のせて来た。
「ほれ」
「ありがとうございます」
机にのせられたのを食べると、チーズ味だった。甘じょっぱい味で癖になりそうだ。
「美味しい」
「そうか、良かった。で、話の続きだが、お前のクラスで何かあった時は担任でなく、あいつを頼れ」
アーロンは何かあったら担任に言おうと思っていた。だって普通そうじゃないか。担任と副担任っていたら、担任を頼るだろう。怪訝に思ったのが、顔に出たのだろう。
「お前のクラスの担任な、奴に言ったら揉み消されるぞ。外面の良さと、上に媚びる事でのし上がって来た奴だからな。多分相談したら親身になって話は聞いてくれるだろう。聞く振りは上手なんだよ。それで放置だ」
「そうなんですか?」
「ああ、一見人当たりがいいから皆騙されるんだけどな。結局改善されないって苦情が毎年俺ん所に来る。で、調べたら全部奴の所で止まってた。今年はだからあいつを副担任に付けたんだろう。少しずつだが学院もましになって来てるって事だな」
そう言えば、班行動の時に子爵家の班を担当したのは担任で、男爵家の班に伯爵家の子息が入った方は副担任が担当していたなとアーロンは思い出す。あの伯爵家の生徒の家は力が無いってイアンが話していたから、魔石が取れて強気になっている子爵家の生徒の班を担任は優遇したという事なのだろうか。
「それって、何か意図的に止めていたんでしょうか?」
「いや、単に仕事が出来無いんだろう。見目は良いし、一生懸命やっている様に見えるから今まで気付かれていなかっただけじゃ無いのかな」
「そうなんですか」
大人なのに仕事が出来ないとか同じ職場の仲間から生徒に暴露されてしまうなんて、情けないなと思ってしまう。担任の講義は取らない様にしよう、確か一般教養の歴史の担当だった筈。他の先生の講義を取れないか調べてみようとアーロンは決めた。
「で、どうする? この後」
「今、三時間目でしたっけ?」
「ああ」
夜はここで歓迎会だった筈だ。それ迄どうやって時間を潰すか。
「独りになるのが怖ければこの部屋に居てもいい。俺は奥の部屋で作業する。反対に、独りが良ければ部屋にいると良い。時間になったらイアンに呼びに行かせよう。あいつなら、平気だろ?」
「はあ」
「もしかして部屋まで送った方がいいか?」
「いえ、そこ迄気を遣って頂かなくても」
本当に襲われていたらとても一人では歩けなかっただろうが、嫌らしい事を言われて追い掛けられただけだ。
「取り敢えず自分の部屋に戻ります」
「分かった。もしも寮から出て行きたい所があったら、売店とか、必ず声をかけてくれ。付き添う」
「えっと、はい」
「うん、いい子だ」
ぽんぽんとリーヴはアーロンの頭を軽く触れると奥の部屋へ引っ込んで行った。
アーロンは暫くの間ぼーっとそのままソファに座っていたが、「よし」と声を掛けて立ち上がると自室へ戻って、使ってしまった仕掛けを仕込み直す事にした。
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