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授業
講義選択
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「今日の予定は講義選択の説明と、課外活動の説明、学院内施設の案内です」
担任が話し始める。副担任は担任の少し後ろの離れた所に立っている。
「尚、Cクラスは課外活動の説明と施設案内は、Bクラスと同時に行います。人数がかなり多くなりますので、逸れないように注意して下さい。予定としては、一時間目が講義選択の説明、二時間目が施設の案内、昼食を挟んで、三時間目が課外活動の説明です」
Bクラスと同時、というのを聞いて生徒達が少しざわつく。勿論礼儀作法を躾けられた貴族の子息達なので直ぐに静かになったが。
「では、講義選択の説明にうつります。まず四人か五人の班を作って下さい。一つの班に一人、職員か補佐がついて説明します」
四人か、五人と言われて、アーロンと火の国の二人、イアンは顔を合わせて頷いた。他の男爵家の子息達も席の近い生徒と班になった様だ。最前列の子爵家の子息達は自分達だけで組むのだろうと、見ていたら、一番体格が良くて彼等を仕切っている様だった生徒が、一番角に座っている生徒を誘った。
「良かったらご一緒しませんか?」
だが、その生徒は近くの席の男爵家の子息達と組むと断った。アーロンがそのやり取りを見ていると、イアンが背後から「アーロン様、優しい、とか思ってるでしょ」と耳打ちして来た。
「え、違うの?」
「断られるの前提で誘ってるから。あの中で一番性格悪いの、ドミニク。愚兄に負けない位狡賢い」
イアンが言っているのは子爵家の子息達を仕切っている生徒の事だ。
ドミニクという名の生徒は、体格は立派だが、垂れ気味の小さな目に口元にはいつも笑みを浮かべているので、ぱっと見おっとりとした熊という印象。子爵家の集団に好感は持てないアーロンだが、ドミニクはあの中ではましに見えていた。
「あの人、多分伯爵家」
イアンはこそこそと喋りながら、ドミニクの誘いを断った最前列の角の生徒を顎で指した。
「そうなんだ」
該当の生徒は目立つ容姿では無く身体付きも小柄な方なので、堂々とした体格のドミニクと比べると貧弱に見える。だが、言われて見れば、髪の毛や肌の綺麗さ、制服の肩やワイシャツの襟等もぱりっとしてどこか他の生徒より小綺麗だった。
(そういえば、さっき良い匂いしたの、多分あの人だよね)
アーロンは自分の後ろを通って行った生徒を思い出した。あの生徒は確か、男爵家の子息達に挨拶しながら席についた。
「ドミニクの家、子爵家だけど旧家、領地も広い。だから威張ってる。普通、伯爵家に子爵家から誘ったりとかしないでしょ?」
言われてみればそうだ。
それに、アーロン達男爵家の子息達が爵位の低さ故に早くから登校したりしているのに、子爵家の生徒達は一時間目の鐘ぎりぎりに登校して来た。
「ちょっと名前分からないけど、多分あの人の家、力強く無い。だからドミニク舐めてる、それ隠して無い」
そうか、分かってて誘っているのか。相手が伯爵家なのも、自分達の方が爵位が低いのも。つまり、自分達の方が強いって今の会話で示して見せたのか。でもそれは誰に対してだろう? あの伯爵家の人? それともこのクラスの全員かしら? まあ答えがどれだとしても、それは確かに性格が悪いかもとアーロンは思った。
「そもそも担任も奴等だけで組ませようとしてる」
「あ、四、五人って言ってたもんね」
最前列の生徒は六人。一番角の人が伯爵家なら、子爵家の生徒は丁度五人だ。
「うん。隔離なのか、奴等寄りなのかは不明だけど」
イアンは、子爵家の生徒の動きだけで無く、他の生徒や、担任の対応についても観察していた様だ。アーロンは、そっか、色々知って考えなくっちゃいけないんだなと気を引き締めた。
「ねえ、あっちの人の名前も教えて」
アーロンはイアンに、子爵家の目立つ三人のうち、強面の名前を聞く。彼はあまり喋らなかったのでどんな人物かは分からない。
「あれはイーライ。イーライの家も領地が広い、田舎だけど。あと魔石が出る」
「魔石」
それは確かに強気にもなるだろう。魔道具を作る上で欠かせない物だから。
「イーライはドミニクと一緒に居るけど、多分本当は自分の方が威張りたい」
「え、そうなの?」
「うん。領地の広さはおんなじ位だし。負けず嫌い」
「そうなんだ……」
結構複雑な人間関係だ。イアンはもう一人の名前も教えてくれた。
「あっちはデクスター。デクスターの家は領地が狭い。けど後の二人にくっ付いて威張っている。ドミニクに擦り寄ったり、イーライに擦り寄ったり。強い物の陰で威張るのが上手い。ちょっとだけ魔石も出る」
「なるほど」
アーロンは昨日自分の腕を掴んで来た太めの生徒には嫌な印象しか持っていなかったので、名前を聞きながら渋い表情になってしまう。すると、別の声が割り込んで来た。
「うん。お勉強出来てるね。けど、惜しい。ドミニクの領地からも実は魔石が採れる様になった」
耳元で知らない声がしたので、アーロンとイアンはひっと声を上げた。
「だから奴等は威張ってる。お分かり?」
話に入って来たのは、吊り目でちょっと顎がしゃくれたお世辞にも美形とは言えない生徒だった。
担任が話し始める。副担任は担任の少し後ろの離れた所に立っている。
「尚、Cクラスは課外活動の説明と施設案内は、Bクラスと同時に行います。人数がかなり多くなりますので、逸れないように注意して下さい。予定としては、一時間目が講義選択の説明、二時間目が施設の案内、昼食を挟んで、三時間目が課外活動の説明です」
Bクラスと同時、というのを聞いて生徒達が少しざわつく。勿論礼儀作法を躾けられた貴族の子息達なので直ぐに静かになったが。
「では、講義選択の説明にうつります。まず四人か五人の班を作って下さい。一つの班に一人、職員か補佐がついて説明します」
四人か、五人と言われて、アーロンと火の国の二人、イアンは顔を合わせて頷いた。他の男爵家の子息達も席の近い生徒と班になった様だ。最前列の子爵家の子息達は自分達だけで組むのだろうと、見ていたら、一番体格が良くて彼等を仕切っている様だった生徒が、一番角に座っている生徒を誘った。
「良かったらご一緒しませんか?」
だが、その生徒は近くの席の男爵家の子息達と組むと断った。アーロンがそのやり取りを見ていると、イアンが背後から「アーロン様、優しい、とか思ってるでしょ」と耳打ちして来た。
「え、違うの?」
「断られるの前提で誘ってるから。あの中で一番性格悪いの、ドミニク。愚兄に負けない位狡賢い」
イアンが言っているのは子爵家の子息達を仕切っている生徒の事だ。
ドミニクという名の生徒は、体格は立派だが、垂れ気味の小さな目に口元にはいつも笑みを浮かべているので、ぱっと見おっとりとした熊という印象。子爵家の集団に好感は持てないアーロンだが、ドミニクはあの中ではましに見えていた。
「あの人、多分伯爵家」
イアンはこそこそと喋りながら、ドミニクの誘いを断った最前列の角の生徒を顎で指した。
「そうなんだ」
該当の生徒は目立つ容姿では無く身体付きも小柄な方なので、堂々とした体格のドミニクと比べると貧弱に見える。だが、言われて見れば、髪の毛や肌の綺麗さ、制服の肩やワイシャツの襟等もぱりっとしてどこか他の生徒より小綺麗だった。
(そういえば、さっき良い匂いしたの、多分あの人だよね)
アーロンは自分の後ろを通って行った生徒を思い出した。あの生徒は確か、男爵家の子息達に挨拶しながら席についた。
「ドミニクの家、子爵家だけど旧家、領地も広い。だから威張ってる。普通、伯爵家に子爵家から誘ったりとかしないでしょ?」
言われてみればそうだ。
それに、アーロン達男爵家の子息達が爵位の低さ故に早くから登校したりしているのに、子爵家の生徒達は一時間目の鐘ぎりぎりに登校して来た。
「ちょっと名前分からないけど、多分あの人の家、力強く無い。だからドミニク舐めてる、それ隠して無い」
そうか、分かってて誘っているのか。相手が伯爵家なのも、自分達の方が爵位が低いのも。つまり、自分達の方が強いって今の会話で示して見せたのか。でもそれは誰に対してだろう? あの伯爵家の人? それともこのクラスの全員かしら? まあ答えがどれだとしても、それは確かに性格が悪いかもとアーロンは思った。
「そもそも担任も奴等だけで組ませようとしてる」
「あ、四、五人って言ってたもんね」
最前列の生徒は六人。一番角の人が伯爵家なら、子爵家の生徒は丁度五人だ。
「うん。隔離なのか、奴等寄りなのかは不明だけど」
イアンは、子爵家の生徒の動きだけで無く、他の生徒や、担任の対応についても観察していた様だ。アーロンは、そっか、色々知って考えなくっちゃいけないんだなと気を引き締めた。
「ねえ、あっちの人の名前も教えて」
アーロンはイアンに、子爵家の目立つ三人のうち、強面の名前を聞く。彼はあまり喋らなかったのでどんな人物かは分からない。
「あれはイーライ。イーライの家も領地が広い、田舎だけど。あと魔石が出る」
「魔石」
それは確かに強気にもなるだろう。魔道具を作る上で欠かせない物だから。
「イーライはドミニクと一緒に居るけど、多分本当は自分の方が威張りたい」
「え、そうなの?」
「うん。領地の広さはおんなじ位だし。負けず嫌い」
「そうなんだ……」
結構複雑な人間関係だ。イアンはもう一人の名前も教えてくれた。
「あっちはデクスター。デクスターの家は領地が狭い。けど後の二人にくっ付いて威張っている。ドミニクに擦り寄ったり、イーライに擦り寄ったり。強い物の陰で威張るのが上手い。ちょっとだけ魔石も出る」
「なるほど」
アーロンは昨日自分の腕を掴んで来た太めの生徒には嫌な印象しか持っていなかったので、名前を聞きながら渋い表情になってしまう。すると、別の声が割り込んで来た。
「うん。お勉強出来てるね。けど、惜しい。ドミニクの領地からも実は魔石が採れる様になった」
耳元で知らない声がしたので、アーロンとイアンはひっと声を上げた。
「だから奴等は威張ってる。お分かり?」
話に入って来たのは、吊り目でちょっと顎がしゃくれたお世辞にも美形とは言えない生徒だった。
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