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一月三日の二人
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※「I'm home」を未読の方はそちらからどうぞ。
〈加賀編〉
起きたくない。
というよりも、起きられない。
なぜならば、布団の中が温かいせいだ。
「朝ご飯、食べませんか?」
寝室のドアが開く音のあとで、倉知の声が聞こえた。
「うん、待って、出られない」
「もしかして二日酔い?」
昨日、倉知の祖父に日本酒を勧められ、それなりに飲んだ。それなりだ。酔うほどではない。
「元気だけど、オフトゥンから出たくない」
「オフトゥン」
絶妙なニュアンスのまま、倉知が復唱する。
「うあー、駄目だ、こんなことしてたらもったいない。だがしかし、オフトゥンが俺を抱きしめて離さない。倉知君、助けて」
こう言えば布団に嫉妬して、勢いよく跳ねのけてくれる。そう思った。
「わかりました」
笑いを含んだ声で言って、もぞもぞと中に入ってくる。
「あれ、入ってきた」
「せっかく休みだし、好きなだけ布団の中でゴロゴロしましょう」
「甘やかすんじゃねえ」
抱きついて、スリスリして、「大好き」と告白する。
笑って、脚を絡ませて。
今日は一日中、二人でいよう。
〈おわり〉
〈加賀編〉
起きたくない。
というよりも、起きられない。
なぜならば、布団の中が温かいせいだ。
「朝ご飯、食べませんか?」
寝室のドアが開く音のあとで、倉知の声が聞こえた。
「うん、待って、出られない」
「もしかして二日酔い?」
昨日、倉知の祖父に日本酒を勧められ、それなりに飲んだ。それなりだ。酔うほどではない。
「元気だけど、オフトゥンから出たくない」
「オフトゥン」
絶妙なニュアンスのまま、倉知が復唱する。
「うあー、駄目だ、こんなことしてたらもったいない。だがしかし、オフトゥンが俺を抱きしめて離さない。倉知君、助けて」
こう言えば布団に嫉妬して、勢いよく跳ねのけてくれる。そう思った。
「わかりました」
笑いを含んだ声で言って、もぞもぞと中に入ってくる。
「あれ、入ってきた」
「せっかく休みだし、好きなだけ布団の中でゴロゴロしましょう」
「甘やかすんじゃねえ」
抱きついて、スリスリして、「大好き」と告白する。
笑って、脚を絡ませて。
今日は一日中、二人でいよう。
〈おわり〉
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