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倉知先生と私
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〈持田町子編〉
私が倉知先生を好きになったのは、黒板に書かれた文字を見た瞬間だった。
背が高くて、スーツで、ちゃんと大人の男の人なのに、字がとても可愛かったのだ。
「数学担当の、倉知七世です」
振り返って、優しくニコっと笑う顔も可愛かった。
年上なのに、長身なのに、可愛いと思った。
爽やかな風が吹いて、キラキラと光が舞って、最後にズドンと雷が落下した。
「先生可愛い!」
思わず席を立ってそう言うと、彼はポカンとしたが、可愛いと思ったのは私だけじゃなかったらしい。
「わかるー、先生、可愛いです」
後ろのほうで、誰か、女子が言った。
「名前も可愛い」
「彼女いますか?」
「笑顔が最高」
「何歳?」
「身長何センチ?」
「スーツカッコイイ」
「何かスポーツしてますか?」
女子どころか男子まで、私に便乗して勝手に質問を始めてしまった。
倉知先生はちょっと困った顔で教室を見回してから、「よし」と手を叩いた。
「まずは自己紹介から始めましょう」
初任教師なので、今年二十三歳です、バスケ部の副顧問を任されています、と先生は言った。自己紹介と言っておいて、情報はそれのみ。
自己紹介は、初日の入学式でとっくにやらされているというのに「みんなのことも知りたいので教えてください」とお願いされ、誰も文句を言わなかった。
「はいっ、持田町子です! 八月二十六日生まれの乙女座B型、吹奏楽部です。好きな食べ物はカレーライス、音楽はメタルをよく聴きます。好きな映画は時計じかけのオレンジで、それと、たった今好きな人ができました。倉知先生です!」
教室が、ドッと沸いた。私は真剣なのに、ギャグだと思われたらしい。倉知先生はびっくりした様子で目をぱちくりさせたあと、少し照れたみたいにはにかんだ。
「うん、ありがとう。あの、挙手制じゃなくて、出席番号一番から順番にお願いしようかな」
町子フライングー、と前の席の友人に茶化されて、ツインテールの髪の束を両手でつかみ、ストンと椅子に着陸した。
ちょっとだけ、恥ずかしい。
でも大きな爪痕を残した。もう、絶対、名前と顔を、覚えてもらえたはず。
私はその日から、数学の授業を待ちわびるようになった。
数学がない日は職員室を覗きに行ったり、倉知先生が担当している別のクラスの授業が何曜日の何時間目かを調べ上げ、廊下で出待ちしたりもした。
そして、先生に関する情報を徹底的に収集した。
二年生に、同じ中学の吹奏楽部の先輩がいる。倉知先生に関するネタを、なんでもいいからくれと要求すると、彼女は呆れた顔をした。
「町子って本当に猪突猛進っていうか」
「ありがとうございます」
「褒めてないし」
「倉知先生、何訊いても教えてくれなくて、ガードがめっちゃ硬いんですよ。なんでもいいから、何か知ってることないですか?」
メモ帳を開いて準備していると、先輩は「あ」と声を漏らした。
「あ! なんですか? どうぞ」
「この前の始業式でさ、新任のあいさつあったんだけど、面白かったよ倉知先生」
「そういうの、そういうのを待ってました」
「マイクがあごにぶつかって、言おうとしてたこと全部忘れちゃったの。みんな爆笑」
「ひゃーい」
「ひゃーい?」
「それ見たかった、可愛い、めんこい!」
「町子、あのさあ」
嬉々としてメモ帳に書き殴る私を、机に肘をついた先輩が残念そうに見上げてくる。
「倉知先生、彼女いるよ」
「えっ……、ええっ、嘘、あんななのに? あんなにおぼこいのに?」
おぼこい? と先輩が訊き返してくる。
「つまり、初々しい感じっていうか、そう、生娘?」
「そこは普通に童貞っぽいでよくない?」
「やめてください! そんな単語で先生を汚さないで! いやでもわかる……、わかります、童貞っぽいんですよね、可愛い」
「町子めんどくさ」
先輩が、はあ、とため息をついてスマホをいじりだした。
「まあとにかく、彼女持ちだよ。うわさだけどね。なんか、左手の薬指にずっと着けてたっぽい指輪の跡が残ってて、学校来るとき外してるんじゃないかって」
「そっかぁ、彼女、いるんだ……」
「うん、だから」
「尊い」
「え?」
「彼女いる倉知先生、可愛いいいいい」
声を振り絞る。先輩は首を左右に振って「ダメだこりゃ」と言った。
私はなんとなく、倉知先生は奥手で、恋愛ごとには疎く、勉強ばかりしてきた人かと思っていた。そうじゃなく、愛する人がちゃんといる。だからあんなにキラキラしているのだ。
最高じゃん。
彼女持ちでもピュアさを失わないなんて、神かと。
むずがゆいほどに、ますます好きになった。
私は、倉知先生のファンクラブを作ることにした。もちろん、発起人である私がファンクラブ会長だ。掲示板に無許可でファンクラブ会員募集中と張り紙をしたり、勝手にビラを配ったり、精力的に活動した。
会員数はあっという間に五十名を超え、今も増え続けている。
ファンクラブ、と言っても特に何もしない。グループLINEで、新しいネクタイをしてるとか、寝癖が可愛いとか、体育館でバスケしてるとか、ちょっとした情報をシェアする程度だ。
みんな、倉知先生が好き。
でも、私が誰より一番好き。絶対、誰にも負けないという自信はあった。
だって、みんなは先生のことを知りたい欲求がなさすぎる。熱量に、差がありすぎるのだ。私は先生のことならなんでも知りたいし、先生の触ったものですら輝いて見えるのに、みんなはどうやらそうじゃないらしい。
見ているだけでいい。
それもわかる。
でも、倉知先生という人を構築するいろんな要素をもっと知れば、さらに好きになると思う。
めげずに誕生日とか血液型を聞き続けていると、あるときから急に私の質問に答えてくれるようになった。熱意が伝わったらしい。
誕生日は八月十八日。私とすごく近くて嬉しかった。しし座で、血液型はA型。A型とB型は相性が悪いと言う人がたまにいるが、そんなのは知ったことか。趣味は筋トレと料理。得意料理はカレーらしい。いつか、先生の手作りカレーが食べたい。
倉知先生の輪郭が、徐々にくっきりしてくるのが楽しかった。
私の「倉知先生メモ」は日に日に充実していく。
そんなある日、部活を終えた帰宅途中に、先生の後姿を見つけた。テンションが爆上がりして、駆け寄り、声をかける寸前で、やめた。
私は先生を尾行することにした。
悪いことをしている自覚はなかった。だって好きだもん、という軽い気持ちだった。
先生がマンションに入っていくのを見届けて、私は興奮し、まずスマホを取り出した。ファンクラブのみんなに報告だ、と思ったのだが、いや待てよと。それはルール違反だろうと怒られる予感がした。ファンクラブの中には、学級委員タイプのくそ真面目な子もいる。
絡まれるとめんどくさい。
それに確かに、尾行なんて、褒められることじゃない。
このことは自分の胸のうちにそっとしまっておこうと、見納めにマンションを見上げ、改めて、すごいと思った。
絶対に、高そう。家賃とか、一体いくらするのか、想像もできない。
学校の先生って、そんなに給料がいいのだろうか。「高校教師」「給料」で検索してみる。
「うそぉ、初任給めっちゃ安い」
じゃあなんで、こんなマンションに? 家族で住んでるとか?
マンションの名前で検索したら、家賃が出てくるかもしれない。マンションの入り口の上のほうに名前を見つけたが、英語だ。一文字ずつ確認しながら検索窓に入力し、いざ検索、というところで「シャットダウンします」とメッセージが出た。
「やっば!」
悲鳴を上げたが、無情にもスマホは眠りについた。人の給料とか家賃とか気にしている場合じゃなかった。
そして私は、遅れてやっと、気がついた。
ここがどこか、わからない。来たことのない場所だ。
先生の後姿しか見ていなかったし、どの駅で降りたのかも把握していない。
今、何時かもわからない。
やっぱり悪いことをしたから、罰が当たったのだ。
私はここで、凍死する運命なのか。植え込みの縁に腰を下ろし、めそめそと泣いていると、声を掛けられた。
「どうしたの?」
「大丈夫?」
顔を上げると、へらへらというかニヤニヤした男が二人、私を取り囲んでいた。二つの自転車で私の逃げ道を塞いでいるように見えた。
怖くなって、縮こまって泣く以外に何もできなくなった。男たちはなぜか私を放っておかない。このままだとどこかに連れていかれて、ひどい目に遭わされる。
先生助けて、と頭の中で叫んだ。
そのとき。
「こんばんは」
さらに男が増えてしまった。私は三人の男のなぐさみものになるのか、と絶望していると、いつの間にか自転車の二人は消え、男が一人になっていた。
「で、どうしたのかな?」
しゃがみこんだ男の人が、私に目線を合わせて訊いた。
コートを羽織った大人の男の人だった。やけにイケメンで、真っ黒な髪がさらさらで、あと、いい匂いがする。
思わず警戒を解いて事情を説明すると、彼は「なるほど」と言ってスマホを取り出した。
「何、悪の組織に連絡するの? 私、どうなるの? 人身売買のオークションにかけられるとか? アラブの石油王に見初められて、海を渡るの?」
「それドラマチックだね」
やがてスマホをコートに片付けた彼は、子どもに言い聞かせるみたいなまろやかな口調で言った。
「とりあえず、ここ寒いし、エントランスに入ろうか。お母さんに連絡したいならスマホ貸すよ」
こんな顔面の人が、親切なんて、絶対に怪しい。
「なんでそんなに優しいの? イケメンで優しいなんて、怪しすぎる……。なんの罠?」
強情な私に彼は困っていたが、急にあっけなく、身を引いた。
「じゃあ、怪しいおじさんはもう行こうかな」
「えっ」
「えっ?」
「行っちゃうの?」
心細くて泣き声が出た。彼は悪びれず、ちょっと嬉しそうに口元をほころばせて言った。
「だって、今日カレーだし」
イケメンは、カレーが好物らしい。声がウキウキしている。
「カレー……、食べたい……」
私だって、カレーが大好きだ。
食べたい。カレーが食べたい。
「もういい、カレー食べたい、お腹空いたぁ」
限界になって叫ぶと、「持田さん」と名前を呼ばれた。
倉知先生だ。
全力でダッシュして先生に抱きつくと、一気に安堵が押し寄せて、泣けてきた。
わんわん泣きながら、自分の冷静な一部分が「先生に抱きついちゃった、ラッキー」と喜んでいる。
先生のたくましい体に服の上から頬を寄せ、思い切り抱きついて、そうだ、においも嗅ごうと犬みたいにくんくんしていると、ハッとした。
カレーだ。
「先生、カレーのにおい。先生のおうちも今日はカレーですか?」
「うん、今ちょうどカレー作ってて。あ、持田さん、これ、俺のだから大きいけど」
大きなフリースのジャケットが私の体を包み込む。幸せで体がポカポカしてきた。
「先生、俺って言った」
「え?」
「なんでもない」
いつもはおもに「僕」を使っている。普段は「俺」なのかと思うと、ニヤニヤが止まらなくなった。
「先生の服、幸せ。記念に貰ってもいいですか?」
「いや、できたら返して欲しいです」
うふふっと笑ってぶかぶかなフリースに袖を通し、ジッパーを上げると先生が言った。
「持田さんは、なんでここに? しかもこんな時間に」
う、と言葉に詰まる。
先生は、純粋に私を心配して訊いている。
尾行して、スマホの充電が切れて、ここがどこだかわからなくて、帰れなくなった。正直に、打ち明けるしかなかった。
先生は、尾行されたと知っても嫌な顔はしなかった。ただ静かに、困った顔で「もうここに来ないって約束して」と念を押した。
「それと、誰にも言わないでね。住所が広まると困るから」
「はい、もちろんです。先生、ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」
頭を下げる。顔を上げると、先生は「うん」と頭を掻いて、スマホを出した。
「おうちの人に電話する?」
「する、わあ、先生のスマホ触っちゃった」
すかさず待ち受けを見ると、なんでもないただのデフォルト画像だった。チッと舌を打つ。
「彼女の写真ないんですか?」
写真のフォルダを探そうとする私を先生が慌てて止めた。
「こら、駄目です。もう、番号言って、先生が電話するから」
先生が私の親と電話しているのが面白くてクスクス笑っていると、スマホを渡された。先生から事情を聞いた母が、めちゃくちゃに切れている。怒鳴られて、でも最後は「気をつけて帰ってきなさい」で締めくくる。私を愛しているから怒るのだと理解している。
「じゃあ、駅まで送るよ」
通話を終えると先生が言った。
「やった」
ちょっと、デートみたいで嬉しい。
「先生、腕組んでもいい?」
「絶対にダメです」
「じゃあ手ぇ繋ぐのは?」
「ダメです」
「ケチ」
先生はとても真面目な先生だ。教師だからというより、根っから真面目なのだと思う。
「ねえ先生、どうして私があそこにいるってわかったんですか?」
駅に向かう道中で訊ねると、先生が黙った。
「ちゃんと上着まで持ってきてくれて、なんで? どこかから見てたとか?」
「そう、ベランダに出て、たまたまだよ。うちの制服の女子が、座ってるのが見えて」
「ふうん?」
焦っているように見える。しどろもどろで言い訳をする先生の横顔を見上げた。スーツじゃない先生は、一段と若く見える。こうして歩いていても、高校生カップルでも通るくらいだ。
「あっ、あのね、さっきすごいイケメンの人に声掛けられて」
「イケメンの人」
「うん、スーツの大人の人。親切で、私のことすんごい助けようとしてくれてて、優しすぎてめっちゃ怪しかったんだけど、でも多分いい人だったと思う。サイコパスって言っちゃって申し訳なかったぁ」
ふふ、と先生が優しい顔で笑った。
「そっか」
「その人、夜ごはんカレーだからってすごい嬉しそうで、カレーいいなって、私もカレー好きなんです。あっ、それがね、そのイケメン、いつの間にか消えちゃってて。わかった、多分、地縛霊か何かだと思う。カレーに未練がある地縛霊。だって、今思うと色白で、すごい肌とか透き通ってたし、人じゃなかったかもって。そっか、この世のものじゃないからあんなに綺麗だったのかな。先生の家、カレーだよね。カレーに引き寄せられて、幽霊、現れるかも……、あっ、カレーお供えしたら、多分成仏するんじゃない? 盛り塩ならぬ、盛りカレー」
興奮してべらべら喋ると、先生が突然顔を両手で覆い、地面にうずくまった。
「え? 先生笑ってる? なんで? これ怖い話だよ」
「……ごめん」
立ち上がった先生が、口元を隠して、ずっと笑っている。先生の笑いのツボは少し変わっているかもしれない。
というか、先生は、笑いのツボが浅い。私が何を言っても笑ってくれる。駅に向かう道で何度か笑い崩れていた。私は先生が笑ってくれるのが嬉しくて、調子に乗ってしゃべり続けた。
「先生、家族と住んでるの? お父さんとお母さん? 親と同居してるのに、先生がカレー作ってるの? 趣味だから? あのマンション、すごく家賃高そうだけど、もしかしてお金持ちのお坊ちゃん?」
「えっと」
「わかった、彼女だ。彼女がお金持ちなんだ。やっぱり同棲中ですか?」
先生は答えずに、歩みを止めた。喋っていたら、あっという間に駅に着いてしまった。
「じゃあ、また明日学校でね」
「あっ、そうだ、明日数学ある、やった」
飛び跳ねる私を見つめる先生は、すごく柔らかい笑顔をしている。
「先生ごめんね」
「ん?」
「尾行して、ごめんなさい」
「うん、いいよ。持田さん、いい子だね」
「えっ、えへ、そうかな?」
「うん、ちゃんと謝れて偉いよ。約束守ってくれたらもっといい子」
「もうー、守るってば。絶対。約束。指切りしましょ」
先生は少しだけ迷ってから、小指を私に差し出した。先生の小指は小指なのに大きい。指切りをしてから、へへ、と笑って改札を通り、振り返る。
「先生、大好き」
袖が余りまくった腕を交差させて大きく振ると、困った顔で手を振り返してくれる。
先生の困った顔が、大好きだ。
その日は帰宅後、親に散々絞られた。
でも私は幸せだった。
先生が貸してくれたフリースをパジャマ代わりにして眠った。
いい匂いがする。先生って、不思議と全然男臭くない。清潔な匂い。
布団の中でフリースをひたすら匂っていて、あれ、と気づいた。
この匂いに覚えがある。
さっきのイケメンと同じ匂いだ。
幽霊と同じ柔軟剤とか。
笑っていると、そのうち眠りに落ちていた。
夢を見た。先生の夢だ。多分。それと、イケメン地縛霊もいたと思う。なんだか幸せな夢を見ていた気がするが、起きたら全部忘れていた。
それから私はずっといい子で、先生との約束をきちんと守っている。尾行したことは誰にも言っていない。フリースを借りたことも、私だけの大切な思い出にした。
もちろんマンションにも、あれ以来行っていない。
でも、先生が結婚したと知ったとき、私はムラムラした。
先生が大好きな人と幸せに暮らしている。その事実だけで私まで幸福になれるのだが、知りたいという欲求が、爆発しそうだった。
先生の奥さんは、どんな人?
マンションに行ったら、会えるんじゃ?
でも約束した。指切りだって、した。二度とあそこには行かない。行っちゃダメだ。
先生が、いい子だって褒めてくれたから、何がなんでも我慢する。
ああ、先生の、大好きな倉知先生の、大好きな人を一目でいいから見たい。
見たい見たい見たい。
私は毎日葛藤し、欲求と、戦っている。
〈おわり〉
私が倉知先生を好きになったのは、黒板に書かれた文字を見た瞬間だった。
背が高くて、スーツで、ちゃんと大人の男の人なのに、字がとても可愛かったのだ。
「数学担当の、倉知七世です」
振り返って、優しくニコっと笑う顔も可愛かった。
年上なのに、長身なのに、可愛いと思った。
爽やかな風が吹いて、キラキラと光が舞って、最後にズドンと雷が落下した。
「先生可愛い!」
思わず席を立ってそう言うと、彼はポカンとしたが、可愛いと思ったのは私だけじゃなかったらしい。
「わかるー、先生、可愛いです」
後ろのほうで、誰か、女子が言った。
「名前も可愛い」
「彼女いますか?」
「笑顔が最高」
「何歳?」
「身長何センチ?」
「スーツカッコイイ」
「何かスポーツしてますか?」
女子どころか男子まで、私に便乗して勝手に質問を始めてしまった。
倉知先生はちょっと困った顔で教室を見回してから、「よし」と手を叩いた。
「まずは自己紹介から始めましょう」
初任教師なので、今年二十三歳です、バスケ部の副顧問を任されています、と先生は言った。自己紹介と言っておいて、情報はそれのみ。
自己紹介は、初日の入学式でとっくにやらされているというのに「みんなのことも知りたいので教えてください」とお願いされ、誰も文句を言わなかった。
「はいっ、持田町子です! 八月二十六日生まれの乙女座B型、吹奏楽部です。好きな食べ物はカレーライス、音楽はメタルをよく聴きます。好きな映画は時計じかけのオレンジで、それと、たった今好きな人ができました。倉知先生です!」
教室が、ドッと沸いた。私は真剣なのに、ギャグだと思われたらしい。倉知先生はびっくりした様子で目をぱちくりさせたあと、少し照れたみたいにはにかんだ。
「うん、ありがとう。あの、挙手制じゃなくて、出席番号一番から順番にお願いしようかな」
町子フライングー、と前の席の友人に茶化されて、ツインテールの髪の束を両手でつかみ、ストンと椅子に着陸した。
ちょっとだけ、恥ずかしい。
でも大きな爪痕を残した。もう、絶対、名前と顔を、覚えてもらえたはず。
私はその日から、数学の授業を待ちわびるようになった。
数学がない日は職員室を覗きに行ったり、倉知先生が担当している別のクラスの授業が何曜日の何時間目かを調べ上げ、廊下で出待ちしたりもした。
そして、先生に関する情報を徹底的に収集した。
二年生に、同じ中学の吹奏楽部の先輩がいる。倉知先生に関するネタを、なんでもいいからくれと要求すると、彼女は呆れた顔をした。
「町子って本当に猪突猛進っていうか」
「ありがとうございます」
「褒めてないし」
「倉知先生、何訊いても教えてくれなくて、ガードがめっちゃ硬いんですよ。なんでもいいから、何か知ってることないですか?」
メモ帳を開いて準備していると、先輩は「あ」と声を漏らした。
「あ! なんですか? どうぞ」
「この前の始業式でさ、新任のあいさつあったんだけど、面白かったよ倉知先生」
「そういうの、そういうのを待ってました」
「マイクがあごにぶつかって、言おうとしてたこと全部忘れちゃったの。みんな爆笑」
「ひゃーい」
「ひゃーい?」
「それ見たかった、可愛い、めんこい!」
「町子、あのさあ」
嬉々としてメモ帳に書き殴る私を、机に肘をついた先輩が残念そうに見上げてくる。
「倉知先生、彼女いるよ」
「えっ……、ええっ、嘘、あんななのに? あんなにおぼこいのに?」
おぼこい? と先輩が訊き返してくる。
「つまり、初々しい感じっていうか、そう、生娘?」
「そこは普通に童貞っぽいでよくない?」
「やめてください! そんな単語で先生を汚さないで! いやでもわかる……、わかります、童貞っぽいんですよね、可愛い」
「町子めんどくさ」
先輩が、はあ、とため息をついてスマホをいじりだした。
「まあとにかく、彼女持ちだよ。うわさだけどね。なんか、左手の薬指にずっと着けてたっぽい指輪の跡が残ってて、学校来るとき外してるんじゃないかって」
「そっかぁ、彼女、いるんだ……」
「うん、だから」
「尊い」
「え?」
「彼女いる倉知先生、可愛いいいいい」
声を振り絞る。先輩は首を左右に振って「ダメだこりゃ」と言った。
私はなんとなく、倉知先生は奥手で、恋愛ごとには疎く、勉強ばかりしてきた人かと思っていた。そうじゃなく、愛する人がちゃんといる。だからあんなにキラキラしているのだ。
最高じゃん。
彼女持ちでもピュアさを失わないなんて、神かと。
むずがゆいほどに、ますます好きになった。
私は、倉知先生のファンクラブを作ることにした。もちろん、発起人である私がファンクラブ会長だ。掲示板に無許可でファンクラブ会員募集中と張り紙をしたり、勝手にビラを配ったり、精力的に活動した。
会員数はあっという間に五十名を超え、今も増え続けている。
ファンクラブ、と言っても特に何もしない。グループLINEで、新しいネクタイをしてるとか、寝癖が可愛いとか、体育館でバスケしてるとか、ちょっとした情報をシェアする程度だ。
みんな、倉知先生が好き。
でも、私が誰より一番好き。絶対、誰にも負けないという自信はあった。
だって、みんなは先生のことを知りたい欲求がなさすぎる。熱量に、差がありすぎるのだ。私は先生のことならなんでも知りたいし、先生の触ったものですら輝いて見えるのに、みんなはどうやらそうじゃないらしい。
見ているだけでいい。
それもわかる。
でも、倉知先生という人を構築するいろんな要素をもっと知れば、さらに好きになると思う。
めげずに誕生日とか血液型を聞き続けていると、あるときから急に私の質問に答えてくれるようになった。熱意が伝わったらしい。
誕生日は八月十八日。私とすごく近くて嬉しかった。しし座で、血液型はA型。A型とB型は相性が悪いと言う人がたまにいるが、そんなのは知ったことか。趣味は筋トレと料理。得意料理はカレーらしい。いつか、先生の手作りカレーが食べたい。
倉知先生の輪郭が、徐々にくっきりしてくるのが楽しかった。
私の「倉知先生メモ」は日に日に充実していく。
そんなある日、部活を終えた帰宅途中に、先生の後姿を見つけた。テンションが爆上がりして、駆け寄り、声をかける寸前で、やめた。
私は先生を尾行することにした。
悪いことをしている自覚はなかった。だって好きだもん、という軽い気持ちだった。
先生がマンションに入っていくのを見届けて、私は興奮し、まずスマホを取り出した。ファンクラブのみんなに報告だ、と思ったのだが、いや待てよと。それはルール違反だろうと怒られる予感がした。ファンクラブの中には、学級委員タイプのくそ真面目な子もいる。
絡まれるとめんどくさい。
それに確かに、尾行なんて、褒められることじゃない。
このことは自分の胸のうちにそっとしまっておこうと、見納めにマンションを見上げ、改めて、すごいと思った。
絶対に、高そう。家賃とか、一体いくらするのか、想像もできない。
学校の先生って、そんなに給料がいいのだろうか。「高校教師」「給料」で検索してみる。
「うそぉ、初任給めっちゃ安い」
じゃあなんで、こんなマンションに? 家族で住んでるとか?
マンションの名前で検索したら、家賃が出てくるかもしれない。マンションの入り口の上のほうに名前を見つけたが、英語だ。一文字ずつ確認しながら検索窓に入力し、いざ検索、というところで「シャットダウンします」とメッセージが出た。
「やっば!」
悲鳴を上げたが、無情にもスマホは眠りについた。人の給料とか家賃とか気にしている場合じゃなかった。
そして私は、遅れてやっと、気がついた。
ここがどこか、わからない。来たことのない場所だ。
先生の後姿しか見ていなかったし、どの駅で降りたのかも把握していない。
今、何時かもわからない。
やっぱり悪いことをしたから、罰が当たったのだ。
私はここで、凍死する運命なのか。植え込みの縁に腰を下ろし、めそめそと泣いていると、声を掛けられた。
「どうしたの?」
「大丈夫?」
顔を上げると、へらへらというかニヤニヤした男が二人、私を取り囲んでいた。二つの自転車で私の逃げ道を塞いでいるように見えた。
怖くなって、縮こまって泣く以外に何もできなくなった。男たちはなぜか私を放っておかない。このままだとどこかに連れていかれて、ひどい目に遭わされる。
先生助けて、と頭の中で叫んだ。
そのとき。
「こんばんは」
さらに男が増えてしまった。私は三人の男のなぐさみものになるのか、と絶望していると、いつの間にか自転車の二人は消え、男が一人になっていた。
「で、どうしたのかな?」
しゃがみこんだ男の人が、私に目線を合わせて訊いた。
コートを羽織った大人の男の人だった。やけにイケメンで、真っ黒な髪がさらさらで、あと、いい匂いがする。
思わず警戒を解いて事情を説明すると、彼は「なるほど」と言ってスマホを取り出した。
「何、悪の組織に連絡するの? 私、どうなるの? 人身売買のオークションにかけられるとか? アラブの石油王に見初められて、海を渡るの?」
「それドラマチックだね」
やがてスマホをコートに片付けた彼は、子どもに言い聞かせるみたいなまろやかな口調で言った。
「とりあえず、ここ寒いし、エントランスに入ろうか。お母さんに連絡したいならスマホ貸すよ」
こんな顔面の人が、親切なんて、絶対に怪しい。
「なんでそんなに優しいの? イケメンで優しいなんて、怪しすぎる……。なんの罠?」
強情な私に彼は困っていたが、急にあっけなく、身を引いた。
「じゃあ、怪しいおじさんはもう行こうかな」
「えっ」
「えっ?」
「行っちゃうの?」
心細くて泣き声が出た。彼は悪びれず、ちょっと嬉しそうに口元をほころばせて言った。
「だって、今日カレーだし」
イケメンは、カレーが好物らしい。声がウキウキしている。
「カレー……、食べたい……」
私だって、カレーが大好きだ。
食べたい。カレーが食べたい。
「もういい、カレー食べたい、お腹空いたぁ」
限界になって叫ぶと、「持田さん」と名前を呼ばれた。
倉知先生だ。
全力でダッシュして先生に抱きつくと、一気に安堵が押し寄せて、泣けてきた。
わんわん泣きながら、自分の冷静な一部分が「先生に抱きついちゃった、ラッキー」と喜んでいる。
先生のたくましい体に服の上から頬を寄せ、思い切り抱きついて、そうだ、においも嗅ごうと犬みたいにくんくんしていると、ハッとした。
カレーだ。
「先生、カレーのにおい。先生のおうちも今日はカレーですか?」
「うん、今ちょうどカレー作ってて。あ、持田さん、これ、俺のだから大きいけど」
大きなフリースのジャケットが私の体を包み込む。幸せで体がポカポカしてきた。
「先生、俺って言った」
「え?」
「なんでもない」
いつもはおもに「僕」を使っている。普段は「俺」なのかと思うと、ニヤニヤが止まらなくなった。
「先生の服、幸せ。記念に貰ってもいいですか?」
「いや、できたら返して欲しいです」
うふふっと笑ってぶかぶかなフリースに袖を通し、ジッパーを上げると先生が言った。
「持田さんは、なんでここに? しかもこんな時間に」
う、と言葉に詰まる。
先生は、純粋に私を心配して訊いている。
尾行して、スマホの充電が切れて、ここがどこだかわからなくて、帰れなくなった。正直に、打ち明けるしかなかった。
先生は、尾行されたと知っても嫌な顔はしなかった。ただ静かに、困った顔で「もうここに来ないって約束して」と念を押した。
「それと、誰にも言わないでね。住所が広まると困るから」
「はい、もちろんです。先生、ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」
頭を下げる。顔を上げると、先生は「うん」と頭を掻いて、スマホを出した。
「おうちの人に電話する?」
「する、わあ、先生のスマホ触っちゃった」
すかさず待ち受けを見ると、なんでもないただのデフォルト画像だった。チッと舌を打つ。
「彼女の写真ないんですか?」
写真のフォルダを探そうとする私を先生が慌てて止めた。
「こら、駄目です。もう、番号言って、先生が電話するから」
先生が私の親と電話しているのが面白くてクスクス笑っていると、スマホを渡された。先生から事情を聞いた母が、めちゃくちゃに切れている。怒鳴られて、でも最後は「気をつけて帰ってきなさい」で締めくくる。私を愛しているから怒るのだと理解している。
「じゃあ、駅まで送るよ」
通話を終えると先生が言った。
「やった」
ちょっと、デートみたいで嬉しい。
「先生、腕組んでもいい?」
「絶対にダメです」
「じゃあ手ぇ繋ぐのは?」
「ダメです」
「ケチ」
先生はとても真面目な先生だ。教師だからというより、根っから真面目なのだと思う。
「ねえ先生、どうして私があそこにいるってわかったんですか?」
駅に向かう道中で訊ねると、先生が黙った。
「ちゃんと上着まで持ってきてくれて、なんで? どこかから見てたとか?」
「そう、ベランダに出て、たまたまだよ。うちの制服の女子が、座ってるのが見えて」
「ふうん?」
焦っているように見える。しどろもどろで言い訳をする先生の横顔を見上げた。スーツじゃない先生は、一段と若く見える。こうして歩いていても、高校生カップルでも通るくらいだ。
「あっ、あのね、さっきすごいイケメンの人に声掛けられて」
「イケメンの人」
「うん、スーツの大人の人。親切で、私のことすんごい助けようとしてくれてて、優しすぎてめっちゃ怪しかったんだけど、でも多分いい人だったと思う。サイコパスって言っちゃって申し訳なかったぁ」
ふふ、と先生が優しい顔で笑った。
「そっか」
「その人、夜ごはんカレーだからってすごい嬉しそうで、カレーいいなって、私もカレー好きなんです。あっ、それがね、そのイケメン、いつの間にか消えちゃってて。わかった、多分、地縛霊か何かだと思う。カレーに未練がある地縛霊。だって、今思うと色白で、すごい肌とか透き通ってたし、人じゃなかったかもって。そっか、この世のものじゃないからあんなに綺麗だったのかな。先生の家、カレーだよね。カレーに引き寄せられて、幽霊、現れるかも……、あっ、カレーお供えしたら、多分成仏するんじゃない? 盛り塩ならぬ、盛りカレー」
興奮してべらべら喋ると、先生が突然顔を両手で覆い、地面にうずくまった。
「え? 先生笑ってる? なんで? これ怖い話だよ」
「……ごめん」
立ち上がった先生が、口元を隠して、ずっと笑っている。先生の笑いのツボは少し変わっているかもしれない。
というか、先生は、笑いのツボが浅い。私が何を言っても笑ってくれる。駅に向かう道で何度か笑い崩れていた。私は先生が笑ってくれるのが嬉しくて、調子に乗ってしゃべり続けた。
「先生、家族と住んでるの? お父さんとお母さん? 親と同居してるのに、先生がカレー作ってるの? 趣味だから? あのマンション、すごく家賃高そうだけど、もしかしてお金持ちのお坊ちゃん?」
「えっと」
「わかった、彼女だ。彼女がお金持ちなんだ。やっぱり同棲中ですか?」
先生は答えずに、歩みを止めた。喋っていたら、あっという間に駅に着いてしまった。
「じゃあ、また明日学校でね」
「あっ、そうだ、明日数学ある、やった」
飛び跳ねる私を見つめる先生は、すごく柔らかい笑顔をしている。
「先生ごめんね」
「ん?」
「尾行して、ごめんなさい」
「うん、いいよ。持田さん、いい子だね」
「えっ、えへ、そうかな?」
「うん、ちゃんと謝れて偉いよ。約束守ってくれたらもっといい子」
「もうー、守るってば。絶対。約束。指切りしましょ」
先生は少しだけ迷ってから、小指を私に差し出した。先生の小指は小指なのに大きい。指切りをしてから、へへ、と笑って改札を通り、振り返る。
「先生、大好き」
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先生の困った顔が、大好きだ。
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それから私はずっといい子で、先生との約束をきちんと守っている。尾行したことは誰にも言っていない。フリースを借りたことも、私だけの大切な思い出にした。
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でも、先生が結婚したと知ったとき、私はムラムラした。
先生が大好きな人と幸せに暮らしている。その事実だけで私まで幸福になれるのだが、知りたいという欲求が、爆発しそうだった。
先生の奥さんは、どんな人?
マンションに行ったら、会えるんじゃ?
でも約束した。指切りだって、した。二度とあそこには行かない。行っちゃダメだ。
先生が、いい子だって褒めてくれたから、何がなんでも我慢する。
ああ、先生の、大好きな倉知先生の、大好きな人を一目でいいから見たい。
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〈おわり〉
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