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〈倉知編〉
そばを打っている。
今年の年越しそばは、俺に任せて。
そう言って、母に休息を与えた。
対面型のキッチンからリビングが見えるし、みんなの会話は逐一耳に入ってくる。
父、母、加賀さん、五月の四人が、麻雀卓マットを敷いたこたつを取り囲んでいる。
じゃんけんに負けてメンツから外れた六花は、ひどく打ちひしがれていた。今は気を取り直し、ダイニングの椅子から身を乗り出して、そば打ちをする俺をスマホで撮影している。
「頭にタオル巻いてるの可愛い」
ひたすら連写してから、動画に切り替え、ずっと俺に張りついている。
一方、麻雀組のほうでは、母が声を弾ませている。
「私も一度でいいから加賀さんと麻雀してみたかったんだ」
「あれ、お母さんもやりたかったの?」
父の声が意外そうだった。母はあまり麻雀が得意じゃない。初心者とも違うし、ルールも一応知っているが、たまにとんでもないことをやらかす。
たとえば対面からチーをしたり、多面待ちに気づかずにフリテンをしたり、自分のアガリ牌を口ずさんだり、リーチをかけていないのに裏ドラをめくったり、とにかく自由なのだ。
「やりたいよ。だって、優勝したら加賀さんに好きなことしていいんでしょ?」
母の向かい側に座った加賀さんが軽くむせた。
「ちょ、言い方」
可愛い顔で笑ったのをしっかりと目に焼きつけてから、手元に視線を落とす。水回しが完了し、生地を練る工程だ。こねるほどに滑らかになり、つやが出てくるこの作業が好きだった。
「え、なんだよ、お母さん、加賀さんをどうしたいんだよ」
父が不満げな声を出す。
「うーん、それは特に思いつかないけど」
「思いつかないんかい!」
五月のツッコミの声が大きい。
「ていうか、加賀さんを好きにできる権利は優勝賞品だよ? お母さんレベルの雀力じゃ無理だから」
「お前もな」
父が嫌味っぽく言うと、五月が「なんだと」と語気を荒げる。
「私はねえ、優勝したら、みんなで海外旅行に行きたいな」
「もはや加賀さん関係ない」
母の夢に、六花がおかしそうに茶々を入れた。スマホは俺に向けたままで、録画は続いているようだ。
「六花、こんなの録ってどうするの?」
「男子大学生のそば打ち講座とかタイトルつけて、ネット配信しよっか。人気出るよ。タグは、筋肉、童顔、腕まくり、可愛い、童貞」
「童貞じゃないし」
ふふふふ、とほくそ笑んで、俺の腕にスマホを近づけてくる。
「この腕の筋肉は需要あるよ。いいよいいよ、もっとギュってして、そこ、はい、筋肉、筋肉、いいね、次は上半身脱いでみようか?」
「六花怖い」
「そういや光太郎さんは今頃ドバイ?」
父が言った。加賀さんが腕時計を見る。
「あー、夜出発だし、空港向かってる頃かな」
光太郎さんは、年末年始は必ず海外に旅に出る。
「ドバイヤバイ。別荘持ってるのに、あえてハワイに行かないのがカッコイイよね」
「次元が違うよな」
五月と父が、はあ、ほう、と羨望のため息をつく。確かに、いいなと思う。でも俺は、今のこの時間もかけがえのないものだと思っている。
「あ、みなさん、パスポートの用意はしておいて」
加賀さんの科白に、「!?」という文字がみんなの頭上に浮かんだ気がした。俺の口からも同様に、声にならない「!?」が飛び出した。
「え、どゆこと! まさか!」
五月がこたつから立ち上がった。
「来年あたり、声かかるんじゃないかなって。ハワイの別荘に招待したいって言ってたやつ、あれ、あの人本気だから」
「来年って、来年じゃん!」
「え? お、おう」
テンションの上がった五月が、わけのわからない発言で加賀さんを戸惑わせている。
「でも倉知君が教師の仕事に慣れるまではなかなか行きにくいかな。休みも限られてるだろうし。来年、再来年、どっかその辺」
加賀さんが牌を切って、こっちを見た。
教員免許を取り、採用内定も貰い、あとは赴任先が決まるのみ。動きやすいのは今かもしれないが、浮ついていられない。自分を甘やかしたくなかった。社会人として、きちんと適応するのが先だ。
俺は、早く大人になりたい。
自分で稼げるようになって初めて、一人前の、大人の男になれる。
まだ見ぬハワイの海岸。青い空に、輝く太陽。砂浜を、加賀さんと、手を繋いで走る。キャッキャ、ウフフ。笑い声に、包まれる。俺はひざまずき、永遠の愛を。
「七世」
六花が俺を呼ぶ。我に返った。
「手が止まってる」
慌てて続行する。そば作りは乾燥が大敵なのだ。
「楽しみだね、ハワイ」
「うん」
「ほんと、楽しみ」
六花の脳内はきっと、俺と似たような感じだと思う。この顔は、その顔だ。
ハワイの話から、来年は加賀邸でバーベキューをしようという話で盛り上がっている家族を見ながら、そばを打つ。
なんだかやけに、幸せだと思った。
温かい気持ちで、丁寧に、そばを打った。
やがて完成すると、麻雀を中断して、みんなで手を合わせ、「いただきます」と合唱した。
「うんま」
最初に反応したのは五月だった。
「あんた教師にならないで蕎麦屋になれば?」
「これはやはり筋肉との相乗効果だよ」
六花が真顔で言って、母が目元を拭う。
「うん、お出汁も完璧。お母さん、涙出てきちゃった」
父は、無言でそばをすすり続けている。器を持って、つゆを飲み、息をついてまたすする。
「加賀さん、美味しい?」
「ん、最高」
柔らかく笑って、俺の頭を撫でてくれた。
母が料理好きなのは、作る工程じゃなく、こういうご褒美があるからかもしれない。喜んでくれるみんなの笑顔が、嬉しい。
「来年は、大月君と千葉さんも一緒に麻雀できたらいいね」
食後すぐに麻雀大会が再開し、俺は六花と二人で洗い物を担当した。六花が、皿を拭きながら首を横に振る。
「大月君はともかく、千葉さんは駄目だよ」
ドキッとして、皿を落としそうになった。慌てて水を止めて、「え? なんで? どうして? 何かあった?」と問いただす。
「麻雀打てるか訊いたら、できないって」
「え、あ、そっか、そういうことか」
ホッと胸を撫で下ろす。
「麻雀もわからないのによくモテキングなんて自称してたよね」
「……あの、六花は千葉さんと上手くいってる?」
「うん、好きだよ」
あまりにあっさりと言ってのけたので、何も言えなくなった。黙って水を出し、洗い物を続けた。
「この前さ、だいぶ前だけど、二人で京都行ったんだよね」
「あ、お土産ありがとう」
「どういたしまして。清水寺の弁慶の錫杖、わかる?」
「あの、重たい武器みたいなの?」
本堂に入る手前に、弁慶が使っていたとされる錫杖が置いてある。持ち上げるとご利益があるとかないとか、聞いたことがある。
「あれ、千葉さん、持ち上げたんだよね」
「なるほど」
すごく、納得した。六花らしいと思った。
「それがなくても別に、関係ないっちゃないんだけど、ギャップ萌えって強いなって」
うんうん、とうなずいていると、リビングから「あーっ」と、父の濁った悲鳴が鳴り響いた。
「負けた……、終わった……、今年も加賀さんの勝利かよ」
「ありがとうございました」
加賀さんが頭を下げている。そして、俺を見た。
優勝賞品は「加賀さんを好きにできる権利」だが、加賀さんが勝った場合は、俺を好きにしていいことになっている。別に勝とうが負けようが好きにしてもいいのだが、なんだか改まって言われると、照れてしまう。
目を伏せて、唇を噛んだ。
「何をされるのだろう。ほのかな期待が胸をよぎった」
六花が声色を使って言った。
「何それ」
「七世のモノローグ」
「心読むのやめて」
ウフフフフ、と笑いながら、俺に体をぶつけてくる。
「二人とも、片付け終わった?」
いつの間にか母が背後にいて、冷蔵庫の中からビールを取り出していた。
「みんなで映画観ながら酒盛りしようって。はいこれ、持って」
次々と缶ビールを渡してくる。
「六花はこれ、ワイン持って。二人とも、もうあっち行って始めてて。お母さん適当におつまみ作るから」
はーいと二人で返事をした。
麻雀牌を片付けて、マットを撤収したこたつに、全員が脚を入れる。それほど大きくない正方形のこたつだが、加賀さんと並んでいないと気が済まない。みっちりと密着する。
「まずはビールで乾杯すっか」
父がビールを開けながら言った。
「七世はほどほどにしてよ」
五月がじろ、と睨んでくる。
「なんで?」
「どうせキス魔になって加賀さんに襲いかかるつもりでしょ」
「いや、倉知君、だいぶ強くなったよ」
加賀さんがフォローしてくれた。えへへ、と頭を掻いてから、宣戦布告する。
「五月より強い自信ある」
「言ったな? よし、勝負だ!」
静かにゴングが鳴り響く。五月は缶ビールをあっという間に一本飲み干すと、意気揚々と二本目に口をつける。
酔いにくいコツは、ゆっくり飲むことだ。俺は二十二歳にしてそれを学んだが、五月はわかっていないらしい。急いでガブガブ飲んで、あっという間に酔い潰れた。
「あーあ。せっかく加賀さん来てるのに」
六花がチーズを齧って、ワイングラスを傾ける。
「静かでいいわ」
「もう、お父さんひどい」
母が枝豆をテーブルに置いて、こたつからはみ出て寝ている五月に、毛布をかけた。
「上に運ぶ?」
俺が訊くと、父が「置いとけよ」と素っ気なく言って枝豆を齧った。
父は五月と犬猿の仲を演じているが、言うまでもなく、本当は大好きだ。
「七世は四月から教師だな」
テレビを観ながら父が言った。上映中の映画は、父の好きそうな殺し屋ものだ。さっきから、銃声が鳴り続けている。リモコンを操作して音量を下げると、父が俺に向き直った。
「大変だと思うけど、お前ならできる」
「うん、頑張るよ」
父は満足げにうなずいてから、加賀さんに視線を移して、姿勢を正した。
「環境変わったら夜遅いとかあるかもしれないし、加賀さんにも迷惑かけるかもな。頼むわ、よろしく」
「迷惑なんて何も。ただ」
加賀さんがワイングラスに目を落とし、言い淀む。
「いや、なんでもないです」
「え、なんですか。ただ、なんですか。言ってください、なんですか? ただ?」
加賀さんの顔を覗き込んで、腕を引く。
「ただ、寂しいかもって。確実に一緒にいる時間、減るわけだし」
言わせんなよ、馬鹿、と耳打ちされて、顔を覆って脱力する。
「ごちそうさまです、よいしょー」
六花が加賀さんとワイングラスをくっつけて、音を鳴らす。
「四年間同棲しても、まだまだ一緒にくっついてたいんだね。可愛いね。ラブラブだね」
母は素直に感想を述べただけだろう。父のニヤニヤする顔が視界に入り、耳まで熱くなってくる。そわそわする俺の太ももに、加賀さんの手が触れた。こたつの中だから、みんなには見えない。わかっていても、落ち着かない。
「あら、七世、顔真っ赤。酔っ払ったんじゃない? もう二人とも寝たら? あっ、お風呂は? 二人で入ってきたら?」
母が言った。本当に他意がなく、悪気もないのだ。
残っていたワインを飲み干すと、加賀さんが腰を上げて、こたつから離脱した。それから、まっすぐ背筋を伸ばして口を開く。
「みなさん」
はい、と三人が加賀さんに注目する。
「今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします」
こちらこそ、いたします、よろしく、とみんなが頭を下げる。俺は加賀さんと、家族に向かってそれぞれ頭を下げた。加賀さんが、思い出したように、「あ」と声を漏らし、眠っている五月のかたわらにしゃがみ込み、頭を撫でた。
「五月ちゃんもよろしくね」
加賀さんの律義さというか優しさにキュンとする。五月は熟睡していて撫でられたことに気づいていない。惜しいことをした。
「じゃあ、お風呂いただきます。倉知君、いこ」
いってらっしゃーいと三人のハーモニーに見送られて、腕を組んで風呂場に向かった。
「なんで今さらそんな照れてんの?」
脱衣所で、加賀さんが服を脱ぎながら訊いた。
「両親の前でのろけるのはちょっと、慣れません」
「え、両親の前でめっちゃキスしたことあるじゃん」
「あれは、酔ってたから」
上半身裸の加賀さんが、ベルトに手をかけて「うん」と笑った。ベルトを解く動作を、見つめた。ボタンを外し、ファスナーを下ろし、ジーンズを脱ぐ右足。
「見すぎ」
「あの」
「ん?」
「麻雀、また勝ちましたね」
「おう、強いだろ」
「強い、カッコイイ」
「はは」
全裸になった加賀さんが、さっさと浴室に入っていく。急いで服を脱ぎ、下腹部を確認して、まずい、とうろたえた。
少し大きくなっている。
股間を両手で隠して中に入り、シャワーで体を流す加賀さんの後ろにくっついた。
「何しよっかな」
「え」
「優勝賞品」
「あ、あの、マンション帰ってからでお願いします」
加賀さんが、振り返る。
「なんで隠してんの?」
「えっと、ちょっとおっきくなっちゃって」
声を潜めて白状する。加賀さんの持つシャワーヘッドが、両手で隠した俺の股間を捕らえた。強めのシャワーを浴びせられ、「あっ」と声を上げる。
「見せなさい」
「あっ、駄目、加賀さん、声、廊下に響いてるかも。六花が聞いてたら」
「別にいいよ。六花ちゃんなら」
「じゃあ、おとなりさん、おとなりの増田さんに、聞かれちゃう」
「おとなりの増田さん」
加賀さんが、ヤる気をなくした。そういう俺も、自分の科白に股間が見事に萎えた。股間は萎えたが、欲求は消滅しない。
二人きりになりたい。
抱き合うだけでいい。
できたらキスもしたい。
素早く体と頭を洗い、湯船には浸からず、髪もろくに乾かさず、さっさと歯磨きを済ませ、風呂場を出た。
階段を忍者のごとき静けさで駆け上がり、自室に飛び込む。
灯りを点けずに、思う存分キスをして、抱き合って、一息つく。
「俺、倉知家泊まるのすごい好きなんだけど」
「はい」
「いつも寝るのがめっちゃ楽しみ」
「あ、ベッドですか?」
「うん」
狭いベッドで抱き合って眠るのが好きなのは、加賀さんも一緒だ。
「寝る?」
「メインイベントですね」
いそいそと、二人でベッドに潜り込む。
「狭いな」
「狭いですね」
「くっつくしかないな」
「くっつくしかないです」
体を密着させ、脚を絡ませ、お互いに、スリスリする。
そのうち加賀さんが眠ってしまった。寝息が可愛い。堪らずに、髪を撫で、おでこに唇を押しつけた。
遠くで鳴る、除夜の鐘。無事に、今年を生き抜いた。来年はどんな年になるだろう。
「来年もよろしくお願いします」
一年の終わりに、愛しい人を抱きしめて、眠る。
幸福に満たされ、目を閉じた。
〈おわり〉
そばを打っている。
今年の年越しそばは、俺に任せて。
そう言って、母に休息を与えた。
対面型のキッチンからリビングが見えるし、みんなの会話は逐一耳に入ってくる。
父、母、加賀さん、五月の四人が、麻雀卓マットを敷いたこたつを取り囲んでいる。
じゃんけんに負けてメンツから外れた六花は、ひどく打ちひしがれていた。今は気を取り直し、ダイニングの椅子から身を乗り出して、そば打ちをする俺をスマホで撮影している。
「頭にタオル巻いてるの可愛い」
ひたすら連写してから、動画に切り替え、ずっと俺に張りついている。
一方、麻雀組のほうでは、母が声を弾ませている。
「私も一度でいいから加賀さんと麻雀してみたかったんだ」
「あれ、お母さんもやりたかったの?」
父の声が意外そうだった。母はあまり麻雀が得意じゃない。初心者とも違うし、ルールも一応知っているが、たまにとんでもないことをやらかす。
たとえば対面からチーをしたり、多面待ちに気づかずにフリテンをしたり、自分のアガリ牌を口ずさんだり、リーチをかけていないのに裏ドラをめくったり、とにかく自由なのだ。
「やりたいよ。だって、優勝したら加賀さんに好きなことしていいんでしょ?」
母の向かい側に座った加賀さんが軽くむせた。
「ちょ、言い方」
可愛い顔で笑ったのをしっかりと目に焼きつけてから、手元に視線を落とす。水回しが完了し、生地を練る工程だ。こねるほどに滑らかになり、つやが出てくるこの作業が好きだった。
「え、なんだよ、お母さん、加賀さんをどうしたいんだよ」
父が不満げな声を出す。
「うーん、それは特に思いつかないけど」
「思いつかないんかい!」
五月のツッコミの声が大きい。
「ていうか、加賀さんを好きにできる権利は優勝賞品だよ? お母さんレベルの雀力じゃ無理だから」
「お前もな」
父が嫌味っぽく言うと、五月が「なんだと」と語気を荒げる。
「私はねえ、優勝したら、みんなで海外旅行に行きたいな」
「もはや加賀さん関係ない」
母の夢に、六花がおかしそうに茶々を入れた。スマホは俺に向けたままで、録画は続いているようだ。
「六花、こんなの録ってどうするの?」
「男子大学生のそば打ち講座とかタイトルつけて、ネット配信しよっか。人気出るよ。タグは、筋肉、童顔、腕まくり、可愛い、童貞」
「童貞じゃないし」
ふふふふ、とほくそ笑んで、俺の腕にスマホを近づけてくる。
「この腕の筋肉は需要あるよ。いいよいいよ、もっとギュってして、そこ、はい、筋肉、筋肉、いいね、次は上半身脱いでみようか?」
「六花怖い」
「そういや光太郎さんは今頃ドバイ?」
父が言った。加賀さんが腕時計を見る。
「あー、夜出発だし、空港向かってる頃かな」
光太郎さんは、年末年始は必ず海外に旅に出る。
「ドバイヤバイ。別荘持ってるのに、あえてハワイに行かないのがカッコイイよね」
「次元が違うよな」
五月と父が、はあ、ほう、と羨望のため息をつく。確かに、いいなと思う。でも俺は、今のこの時間もかけがえのないものだと思っている。
「あ、みなさん、パスポートの用意はしておいて」
加賀さんの科白に、「!?」という文字がみんなの頭上に浮かんだ気がした。俺の口からも同様に、声にならない「!?」が飛び出した。
「え、どゆこと! まさか!」
五月がこたつから立ち上がった。
「来年あたり、声かかるんじゃないかなって。ハワイの別荘に招待したいって言ってたやつ、あれ、あの人本気だから」
「来年って、来年じゃん!」
「え? お、おう」
テンションの上がった五月が、わけのわからない発言で加賀さんを戸惑わせている。
「でも倉知君が教師の仕事に慣れるまではなかなか行きにくいかな。休みも限られてるだろうし。来年、再来年、どっかその辺」
加賀さんが牌を切って、こっちを見た。
教員免許を取り、採用内定も貰い、あとは赴任先が決まるのみ。動きやすいのは今かもしれないが、浮ついていられない。自分を甘やかしたくなかった。社会人として、きちんと適応するのが先だ。
俺は、早く大人になりたい。
自分で稼げるようになって初めて、一人前の、大人の男になれる。
まだ見ぬハワイの海岸。青い空に、輝く太陽。砂浜を、加賀さんと、手を繋いで走る。キャッキャ、ウフフ。笑い声に、包まれる。俺はひざまずき、永遠の愛を。
「七世」
六花が俺を呼ぶ。我に返った。
「手が止まってる」
慌てて続行する。そば作りは乾燥が大敵なのだ。
「楽しみだね、ハワイ」
「うん」
「ほんと、楽しみ」
六花の脳内はきっと、俺と似たような感じだと思う。この顔は、その顔だ。
ハワイの話から、来年は加賀邸でバーベキューをしようという話で盛り上がっている家族を見ながら、そばを打つ。
なんだかやけに、幸せだと思った。
温かい気持ちで、丁寧に、そばを打った。
やがて完成すると、麻雀を中断して、みんなで手を合わせ、「いただきます」と合唱した。
「うんま」
最初に反応したのは五月だった。
「あんた教師にならないで蕎麦屋になれば?」
「これはやはり筋肉との相乗効果だよ」
六花が真顔で言って、母が目元を拭う。
「うん、お出汁も完璧。お母さん、涙出てきちゃった」
父は、無言でそばをすすり続けている。器を持って、つゆを飲み、息をついてまたすする。
「加賀さん、美味しい?」
「ん、最高」
柔らかく笑って、俺の頭を撫でてくれた。
母が料理好きなのは、作る工程じゃなく、こういうご褒美があるからかもしれない。喜んでくれるみんなの笑顔が、嬉しい。
「来年は、大月君と千葉さんも一緒に麻雀できたらいいね」
食後すぐに麻雀大会が再開し、俺は六花と二人で洗い物を担当した。六花が、皿を拭きながら首を横に振る。
「大月君はともかく、千葉さんは駄目だよ」
ドキッとして、皿を落としそうになった。慌てて水を止めて、「え? なんで? どうして? 何かあった?」と問いただす。
「麻雀打てるか訊いたら、できないって」
「え、あ、そっか、そういうことか」
ホッと胸を撫で下ろす。
「麻雀もわからないのによくモテキングなんて自称してたよね」
「……あの、六花は千葉さんと上手くいってる?」
「うん、好きだよ」
あまりにあっさりと言ってのけたので、何も言えなくなった。黙って水を出し、洗い物を続けた。
「この前さ、だいぶ前だけど、二人で京都行ったんだよね」
「あ、お土産ありがとう」
「どういたしまして。清水寺の弁慶の錫杖、わかる?」
「あの、重たい武器みたいなの?」
本堂に入る手前に、弁慶が使っていたとされる錫杖が置いてある。持ち上げるとご利益があるとかないとか、聞いたことがある。
「あれ、千葉さん、持ち上げたんだよね」
「なるほど」
すごく、納得した。六花らしいと思った。
「それがなくても別に、関係ないっちゃないんだけど、ギャップ萌えって強いなって」
うんうん、とうなずいていると、リビングから「あーっ」と、父の濁った悲鳴が鳴り響いた。
「負けた……、終わった……、今年も加賀さんの勝利かよ」
「ありがとうございました」
加賀さんが頭を下げている。そして、俺を見た。
優勝賞品は「加賀さんを好きにできる権利」だが、加賀さんが勝った場合は、俺を好きにしていいことになっている。別に勝とうが負けようが好きにしてもいいのだが、なんだか改まって言われると、照れてしまう。
目を伏せて、唇を噛んだ。
「何をされるのだろう。ほのかな期待が胸をよぎった」
六花が声色を使って言った。
「何それ」
「七世のモノローグ」
「心読むのやめて」
ウフフフフ、と笑いながら、俺に体をぶつけてくる。
「二人とも、片付け終わった?」
いつの間にか母が背後にいて、冷蔵庫の中からビールを取り出していた。
「みんなで映画観ながら酒盛りしようって。はいこれ、持って」
次々と缶ビールを渡してくる。
「六花はこれ、ワイン持って。二人とも、もうあっち行って始めてて。お母さん適当におつまみ作るから」
はーいと二人で返事をした。
麻雀牌を片付けて、マットを撤収したこたつに、全員が脚を入れる。それほど大きくない正方形のこたつだが、加賀さんと並んでいないと気が済まない。みっちりと密着する。
「まずはビールで乾杯すっか」
父がビールを開けながら言った。
「七世はほどほどにしてよ」
五月がじろ、と睨んでくる。
「なんで?」
「どうせキス魔になって加賀さんに襲いかかるつもりでしょ」
「いや、倉知君、だいぶ強くなったよ」
加賀さんがフォローしてくれた。えへへ、と頭を掻いてから、宣戦布告する。
「五月より強い自信ある」
「言ったな? よし、勝負だ!」
静かにゴングが鳴り響く。五月は缶ビールをあっという間に一本飲み干すと、意気揚々と二本目に口をつける。
酔いにくいコツは、ゆっくり飲むことだ。俺は二十二歳にしてそれを学んだが、五月はわかっていないらしい。急いでガブガブ飲んで、あっという間に酔い潰れた。
「あーあ。せっかく加賀さん来てるのに」
六花がチーズを齧って、ワイングラスを傾ける。
「静かでいいわ」
「もう、お父さんひどい」
母が枝豆をテーブルに置いて、こたつからはみ出て寝ている五月に、毛布をかけた。
「上に運ぶ?」
俺が訊くと、父が「置いとけよ」と素っ気なく言って枝豆を齧った。
父は五月と犬猿の仲を演じているが、言うまでもなく、本当は大好きだ。
「七世は四月から教師だな」
テレビを観ながら父が言った。上映中の映画は、父の好きそうな殺し屋ものだ。さっきから、銃声が鳴り続けている。リモコンを操作して音量を下げると、父が俺に向き直った。
「大変だと思うけど、お前ならできる」
「うん、頑張るよ」
父は満足げにうなずいてから、加賀さんに視線を移して、姿勢を正した。
「環境変わったら夜遅いとかあるかもしれないし、加賀さんにも迷惑かけるかもな。頼むわ、よろしく」
「迷惑なんて何も。ただ」
加賀さんがワイングラスに目を落とし、言い淀む。
「いや、なんでもないです」
「え、なんですか。ただ、なんですか。言ってください、なんですか? ただ?」
加賀さんの顔を覗き込んで、腕を引く。
「ただ、寂しいかもって。確実に一緒にいる時間、減るわけだし」
言わせんなよ、馬鹿、と耳打ちされて、顔を覆って脱力する。
「ごちそうさまです、よいしょー」
六花が加賀さんとワイングラスをくっつけて、音を鳴らす。
「四年間同棲しても、まだまだ一緒にくっついてたいんだね。可愛いね。ラブラブだね」
母は素直に感想を述べただけだろう。父のニヤニヤする顔が視界に入り、耳まで熱くなってくる。そわそわする俺の太ももに、加賀さんの手が触れた。こたつの中だから、みんなには見えない。わかっていても、落ち着かない。
「あら、七世、顔真っ赤。酔っ払ったんじゃない? もう二人とも寝たら? あっ、お風呂は? 二人で入ってきたら?」
母が言った。本当に他意がなく、悪気もないのだ。
残っていたワインを飲み干すと、加賀さんが腰を上げて、こたつから離脱した。それから、まっすぐ背筋を伸ばして口を開く。
「みなさん」
はい、と三人が加賀さんに注目する。
「今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします」
こちらこそ、いたします、よろしく、とみんなが頭を下げる。俺は加賀さんと、家族に向かってそれぞれ頭を下げた。加賀さんが、思い出したように、「あ」と声を漏らし、眠っている五月のかたわらにしゃがみ込み、頭を撫でた。
「五月ちゃんもよろしくね」
加賀さんの律義さというか優しさにキュンとする。五月は熟睡していて撫でられたことに気づいていない。惜しいことをした。
「じゃあ、お風呂いただきます。倉知君、いこ」
いってらっしゃーいと三人のハーモニーに見送られて、腕を組んで風呂場に向かった。
「なんで今さらそんな照れてんの?」
脱衣所で、加賀さんが服を脱ぎながら訊いた。
「両親の前でのろけるのはちょっと、慣れません」
「え、両親の前でめっちゃキスしたことあるじゃん」
「あれは、酔ってたから」
上半身裸の加賀さんが、ベルトに手をかけて「うん」と笑った。ベルトを解く動作を、見つめた。ボタンを外し、ファスナーを下ろし、ジーンズを脱ぐ右足。
「見すぎ」
「あの」
「ん?」
「麻雀、また勝ちましたね」
「おう、強いだろ」
「強い、カッコイイ」
「はは」
全裸になった加賀さんが、さっさと浴室に入っていく。急いで服を脱ぎ、下腹部を確認して、まずい、とうろたえた。
少し大きくなっている。
股間を両手で隠して中に入り、シャワーで体を流す加賀さんの後ろにくっついた。
「何しよっかな」
「え」
「優勝賞品」
「あ、あの、マンション帰ってからでお願いします」
加賀さんが、振り返る。
「なんで隠してんの?」
「えっと、ちょっとおっきくなっちゃって」
声を潜めて白状する。加賀さんの持つシャワーヘッドが、両手で隠した俺の股間を捕らえた。強めのシャワーを浴びせられ、「あっ」と声を上げる。
「見せなさい」
「あっ、駄目、加賀さん、声、廊下に響いてるかも。六花が聞いてたら」
「別にいいよ。六花ちゃんなら」
「じゃあ、おとなりさん、おとなりの増田さんに、聞かれちゃう」
「おとなりの増田さん」
加賀さんが、ヤる気をなくした。そういう俺も、自分の科白に股間が見事に萎えた。股間は萎えたが、欲求は消滅しない。
二人きりになりたい。
抱き合うだけでいい。
できたらキスもしたい。
素早く体と頭を洗い、湯船には浸からず、髪もろくに乾かさず、さっさと歯磨きを済ませ、風呂場を出た。
階段を忍者のごとき静けさで駆け上がり、自室に飛び込む。
灯りを点けずに、思う存分キスをして、抱き合って、一息つく。
「俺、倉知家泊まるのすごい好きなんだけど」
「はい」
「いつも寝るのがめっちゃ楽しみ」
「あ、ベッドですか?」
「うん」
狭いベッドで抱き合って眠るのが好きなのは、加賀さんも一緒だ。
「寝る?」
「メインイベントですね」
いそいそと、二人でベッドに潜り込む。
「狭いな」
「狭いですね」
「くっつくしかないな」
「くっつくしかないです」
体を密着させ、脚を絡ませ、お互いに、スリスリする。
そのうち加賀さんが眠ってしまった。寝息が可愛い。堪らずに、髪を撫で、おでこに唇を押しつけた。
遠くで鳴る、除夜の鐘。無事に、今年を生き抜いた。来年はどんな年になるだろう。
「来年もよろしくお願いします」
一年の終わりに、愛しい人を抱きしめて、眠る。
幸福に満たされ、目を閉じた。
〈おわり〉
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初めてコメントさせてもらいます。
数日前に『電車の男』を読み始め
それから寝る間も惜しんで
ずっと読みふけっています。
ほんとにこの作品に出会えて幸せです。
1作目から感動してコメントしたかったのですが、完結から時間も経ってるし遠慮していたのですが、
同棲番外編の邂逅(大崎編)を読んで号泣して、たまらずコメントさせてもらいました。
大崎さん、合宿のときは色々あったけど 倉知君と出会えて素敵な女の子になれてほんと良かった。
大崎さんを通して見れた倉知くんと加賀さんのやり取りも読んでいて可愛いくて愛しくて、まるで自分がそれを見ていたかのようにドキドキしました。
まだ同棲(番外編)も社会人編も残っているのでしばらく幸せな日が続きそうです☆ミ
素敵な作品をありがとうございました。
はじめまして。
発見していただきありがとうございます。とても長いシリーズになってしまったので、いちから読むの大変だったと思います。寝る間も惜しんで!うれしいですが、お体壊さないようお気をつけくださいね!寝てくださいね!
わあ、一作目の感想、遠慮せず書いていただきたいです。気が向きましたらぜひぜひ。
同棲編の本編で、癖の強い印象だった大崎さんですが、番外編でだいぶ挽回してきたと思っています。当時、当然というかあまり支持はなかったのですが、番外編でいい子なんだというのを書けてよかったです。
「邂逅」以降もまだまだ長い道のりですので、休憩しながらお付き合いいただけるとさいわいです。
コメントとてもうれしかったです。こちらこそ、ありがとうございます!
ちびちびと読んでいた『同棲編』の紙本を読み終えてしまってここへ来ました❗✨
番外編 やっぱりスバラシイ😂💕
そして重要❗
ここで色々な変化を噛みしめつつ、
最新話も追います😌✨
もう、加賀さんと倉知くん最高❤️‼️
って心の中で何度も叫んで
顔がニヤつくのを抑えられず
家族にいつもの始まった、と思われながら
少しずつ 再読していきます😌❤️
紙でも読んでくださってありがとうございます😊
番外編も紙に…というのがすさまじい分量でなかなか腰が上がらないのですが…(笑)。
すごく文字数が多いシリーズだからこそ、再読が本当にありがたいです。
疲れない程度にお付き合いいただけるとうれしいです😊
いつもありがとうございます!
ものすごく楽しいです。
途中までエブで読んでましたが、倉地くんの大学卒業のタイミングでここに来ました。
あちらは読破してきましたが、もう、楽しいです!!
ニヤけて泣いてと感情が忙しいですが本棚放置でシリーズ満喫しています。
あちらではもう更新なしですか?
ココでひたすらしおり挟んでいきますねー♡
お読みいただきありがとうございます😊
エブリスタでの更新再開は予定していません、すみません~。強制非公開が解ける日が万が一きたら…でも70万字もあるものを修正はとても不可能ですので…そんな日はこないかなと。社会人編とその番外編だけでも飛ばして更新してしまおうかという誘惑はあるのですが、やっぱり間違えて同棲編番外編をすっ飛ばしてしまう人も出そうなので…。
使いやすくてサイトの雰囲気も好きなので戻りたいのですが、とりあえずこちらかムーンライトノベルズにてお付き合いいただけるとうれしいです😊