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青天の霹靂 ※
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※前話のつづき。リバです。
〈加賀編〉
「やっぱお前、助っ人君と一緒に住んでるんだな」
倉知君が迎えにくるって、とスマホを見てルンルンの俺に、原田が言った。茶化すでもなく、不快そうにするでもなく、ごく自然な口調だった。
「えーと、同じマンションだから……」
なんとなく、ごまかすだけ無駄かなという空気はあった。語尾が萎む。
他の連中が全員俺を見ていて、その目は「すべてわかっている」と物語っていた。
咳払いをしてから、顎を掻いて、首を傾げた。
「え、なんで?」
なんでわかった?
「彼女だけだからって、俺とはLINE交換しなかっただろ」
原田が拗ねたように唇を尖らせた。
「でも助っ人君とはLINEしてるっぽいし」
「あー、うん、はい」
「つーか、運動会とか見てたらわかるよな?」
同意を求められた男たちが、「わかる」と口々に言って肉を食べ、ビールを飲む。
「こいつ、隠す気ないのかなって思うよね」
製造部の先輩の科白に、ああそうか、俺は隠す気がなかったのかもしれない、と気づいた。年月が経つにつれ、むしろ知られたいと、心の底で思っていた気もする。
「で、みなさんはそういうの平気なの?」
「そういうのって?」
俺の問いかけに、全員がポカンとしたり、首を傾げたり、「何が?」という反応をみせた。
「男同士に嫌悪感とか偏見とか、ないの?」
そこでちょっとした議論は交わされたが、最終的には「加賀だからいい」の一言で片づけられてしまった。
会社の人間に勘づかれていたことは正直驚いた。
でも特に、焦りや不安はない。いずれこうなることはわかっていたし、心構えもできていた。それにたとえ、誰かに何かを言われたとしても、痛くも痒くもない。
頭の中はクリアで、やけに冷静だった。
倉知に何度も言った「大丈夫」という言葉は、自己暗示の意味もあった。
大丈夫に決まっている。
そんなことより今は、倉知が可愛い。
「愛してる」
俺のペニスを咥えて、一生懸命頭を振っている姿が、健気で愛しくて仕方がない。ともすれば、泣いてしまいそうなほどに、好きだと思う。
上目遣いの涙目と、目が合った。恥ずかしそうに伏せた睫毛が震え、頬が赤く染まっていく。この可愛さの前では、煩わしいあれこれなんて脳内からデリートされる。
「倉知君、可愛い」
おでこを人差し指でくすぐるように撫でて、しみじみと言った。
「好き。可愛い。俺の七世」
「……っ、んぅ」
倉知の体がビクッと震えた。
「気持ちいい、すげえ、上手」
倉知のフェラは、本当に愛を感じる。俺のことを、好きで堪らないのだと実感できる。それに、すごく美味しそうに頬張るから、している間中、上からじっくりと観察していたい。
はあ、と息を吐く。
可愛い。
脱衣所の床に両膝を着いて、フェラに没頭する倉知の股間に、爪先で触れた。ジーンズを押し上げる硬い感触。ぐりぐりといじっていると、倉知がうめき声を上げ、俺を解放した。唇からずるりと抜け出たペニスは、倉知の鼻先で勢いよく上を向く。酒を飲んでいるくせに、我ながら元気だなと誇りに感じる。
「か、加賀さん、待って」
「うん」
唾液で濡れたペニスを右手で擦りながら、じっと倉知の股間を見つめた。ちょこんと行儀よく正座をした倉知は、俺の視線を居心地が悪そうに両手でシャットアウトし、赤い顔でポツリとつぶやいた。
「抱いてくれますか?」
期待混じりの声色と、見上げてくる子犬のような目。
キュン、とときめいたのは胸じゃない。股間だ。
「ちょっと待って、イク」
「え?」
「お前、可愛いのも大概にしとけよ」
息を荒げて射精感と戦う俺を、倉知は困った顔で見上げている。だから、なんでそんな可愛い顔で俺を見るんだよ。
「加賀さん、イキそう?」
静かに頭を二回、上下に振った。
「そういうときは、円周率です。円周率唱えてたらそのうち治まりますよ」
「何それ。3.14159265? どっかそんくらいまでしか知らねえよ」
「じゃあ俺の女装姿を想像してみてください。スカート履いてる俺とか、どうですか? 不気味ですよね。萎えてきました? 見せて?」
「もう、ちょっと、一旦黙って」
これ以上可愛いことを言わないで欲しい。それに倉知の女装姿が萎えネタにはなりえないのをわかっていない。
倉知が黙る。ちら、と視線を落とすと、従順におすわりをして、相変わらずの子犬の目で俺を見ていた。この可愛さはなんだ? 幻覚か?
「加賀さん、俺」
倉知が腰を上げる。おもむろに服を脱ぎ始め、あっという間に真っ裸になると、半勃ちのままバスルームのドアを開けた。
「先にシャワーしてます」
「お、おう」
「あの、綺麗にしておくので……」
照れくさそうに言って、ドアが閉まる。と見せかけて、隙間から顔を出して言い置いた。
「覗かないでくださいね」
ドアが閉まる。そして、シャワーの音。
なんなんだ。
どうして急に抱かれたがるのか、いつ、なんのスイッチを押してそうなったのか、見当がつかずに困惑したが、ある仮定が浮かんだ。
倉知の中で、俺が酔うと抱かれるものだという法則ができあがっている。
俺を酔っ払いだと認識した途端、体が「抱かれる側」に切り替わる。とか?
嘘だろ、そんな面白いことがあるか?
というか、抱かれる気満々なところ申し訳ないが、俺は別に酔っていない。缶ビールと缶チューハイを一本ずつ飲んだだけで、次の日記憶がないレベルの酔い方とは違う。
とはいえ、これは好機。据え膳食わぬは男の恥。酔っていることにして、抱かせていただこうではないか。
服を脱いで、バスルームのドアを開けた。
「えっ、わっ、覗かないでって言ったのに」
広い背中に無言で抱きついた。こんなに大きな体の男が、可愛くて堪らない。
後ろから手を回し、両方の乳首を捕らえた。軽く摘まむと、倉知が「あ……っ、んっ」と声を漏らす。
「う、声……、恥ずかしい……」
「うん、めっちゃエロい」
背中にキスをしながら、乳首をこねる。硬く尖る手応え。倉知の押し殺した声が、バスルームに響く。
「加賀さん、加賀さん」
ぴく、ぴく、と小さく反応する倉知の濡れた体を撫で回す。尻を揉んで、ペニスを擦って、脇腹を舐めて、いろいろするうちに倉知の体が震え、しまいには膝をついた。
タイルに零れ落ちたシャワーヘッドを拾い上げ、シャワーを止める。倉知が俺を見上げた。濡れた髪を撫で上げて、問う。
「ベッド行く?」
「行く、行きます」
「俺のチンコ欲しい?」
「はい、ください」
どうした、めっちゃ素直だな。
にやけそうになったが、ポーカーフェイスを装って、ニヒルな笑みを作ってみせた。倉知は夢の中にでもいるかのような、ぼんやりとした表情で、俺に見惚れている。
「おいで」
脱衣所に出て、バスタオルで倉知の体を包み込み、ろくに拭きもせず、寝室に引きずっていく。
カーテンの引かれた寝室。まだ外は明るいが、そんなことは関係ない。
絡み合う。二人分の呼吸の音、唇が触れ合う音、唾液の音が、お互いの興奮を高めていく。
押し倒した倉知の体に跨って、上から観察する。
すごく、物欲しそうな目だ。
「可愛い」
頬を撫でる。唇をなぞる。鼻から抜けるような吐息を漏らし、もどかしそうに身をよじる姿を嬉々として見下ろした。倉知のペニスはガチガチで、触れていないのに先走りが垂れ、俺の下で、脈打っている。
「すげえな」
腰を揺すって尻で刺激してやると「ひっ」と軽く息を飲み、それから泣き声で訴えた。
「加賀さん、もう挿れて」
「お尻に?」
「お尻に、ください……っ」
まさに懇願という感じだ。
「よくほぐしてからな。ここ使うの久しぶりだろ」
「早く、加賀さん」
「うん、いい子だから、待ってな」
後ろの蕾をローションでぐしょぐしょに濡らして、中指を押し込んだ。狭いそこを、徹底的に拡張する。倉知はハアハアと息を荒げ、指の動きに合わせ、いちいち体をびくつかせていた。
あと一時間はこうしていられるな、と痴態を眺めていると、突然手首をつかまれた。すごい力だ。
「いって、何?」
「加賀さん、お願い、チンチンがいい」
「え」
「加賀さんのチンチン……、チンチンがいいんです」
取り憑かれたようにチンチンを連呼する倉知が俺のペニスに手を伸ばす。まずい、このままでは、引っこ抜かれてしまう。
「わかった、うん、チンチン挿れてやるから」
途端に顔を輝かせ自ら大きく股を開いた。
「倉知君、酔ってる?」
「七世です」
「お、おう、七世は酔ってる?」
「まさか。飲んでません。運転してきたんですよ」
「うん、ですよね」
もしかして、俺が酔って記憶をなくすことを前提に弾け飛んでいるのだろうか。
酔ってない、と真実を教えたら。どんな反応をするだろう。
卑猥な単語を連発して、わき目もふらずに欲しがって、恥ずかしげもなくよがる姿を見るのも一興。
だがしかし。俺は、恥ずかしがる倉知が、何よりも好きなのだ。
「あのな、俺、全然酔ってないから」
「え?」
「酔っ払いの俺に犯されるの好き?」
「え、……え?」
「明日になっても全部覚えてるよ。一生忘れないかもね」
へら、と笑う倉知の顔が、次第に赤みを帯びてくる。
「愛しい奴」
ペニスの先端を押し入れ、中に進む。倉知は真っ赤な顔を両手で隠して、「やだ」とか「ばか」とか、喘ぎ声の合間にうめき続けていた。
終わってからも、布団にくるまって出てこない。
「ごめんって。いい加減顔見せてよ」
「もう俺はずっとここで生きていきます」
「いやいやいや。出てきてよ。ほら、チンチン。見て、倉知君の大好きな加賀さんのチンチンだよ」
反応がない。逆効果だったようだ。
「じゃあ加賀さんのお尻は? お尻好きにしてもいいよ?」
ビクン! と大きく反応があった。布団がむくりと起き上がり、中から全裸の倉知が現れた。目を疑った。性懲りもなく勃起している。
「本当ですね?」
「いや待って、なんで勃ってんの?」
「お尻を好きにしてもいいというフレーズに惹かれました」
毎日好きにしてんじゃねえか、と思ったが、倉知が出てきたことが嬉しくて、両手を広げてみせた。飛び込んでくる。抱きしめて、笑う。倉知も笑う。
二人で笑って、馬鹿なことを言い合って。
抱き合っていられるのは、この上ない幸せだ。
〈おわり〉
〈加賀編〉
「やっぱお前、助っ人君と一緒に住んでるんだな」
倉知君が迎えにくるって、とスマホを見てルンルンの俺に、原田が言った。茶化すでもなく、不快そうにするでもなく、ごく自然な口調だった。
「えーと、同じマンションだから……」
なんとなく、ごまかすだけ無駄かなという空気はあった。語尾が萎む。
他の連中が全員俺を見ていて、その目は「すべてわかっている」と物語っていた。
咳払いをしてから、顎を掻いて、首を傾げた。
「え、なんで?」
なんでわかった?
「彼女だけだからって、俺とはLINE交換しなかっただろ」
原田が拗ねたように唇を尖らせた。
「でも助っ人君とはLINEしてるっぽいし」
「あー、うん、はい」
「つーか、運動会とか見てたらわかるよな?」
同意を求められた男たちが、「わかる」と口々に言って肉を食べ、ビールを飲む。
「こいつ、隠す気ないのかなって思うよね」
製造部の先輩の科白に、ああそうか、俺は隠す気がなかったのかもしれない、と気づいた。年月が経つにつれ、むしろ知られたいと、心の底で思っていた気もする。
「で、みなさんはそういうの平気なの?」
「そういうのって?」
俺の問いかけに、全員がポカンとしたり、首を傾げたり、「何が?」という反応をみせた。
「男同士に嫌悪感とか偏見とか、ないの?」
そこでちょっとした議論は交わされたが、最終的には「加賀だからいい」の一言で片づけられてしまった。
会社の人間に勘づかれていたことは正直驚いた。
でも特に、焦りや不安はない。いずれこうなることはわかっていたし、心構えもできていた。それにたとえ、誰かに何かを言われたとしても、痛くも痒くもない。
頭の中はクリアで、やけに冷静だった。
倉知に何度も言った「大丈夫」という言葉は、自己暗示の意味もあった。
大丈夫に決まっている。
そんなことより今は、倉知が可愛い。
「愛してる」
俺のペニスを咥えて、一生懸命頭を振っている姿が、健気で愛しくて仕方がない。ともすれば、泣いてしまいそうなほどに、好きだと思う。
上目遣いの涙目と、目が合った。恥ずかしそうに伏せた睫毛が震え、頬が赤く染まっていく。この可愛さの前では、煩わしいあれこれなんて脳内からデリートされる。
「倉知君、可愛い」
おでこを人差し指でくすぐるように撫でて、しみじみと言った。
「好き。可愛い。俺の七世」
「……っ、んぅ」
倉知の体がビクッと震えた。
「気持ちいい、すげえ、上手」
倉知のフェラは、本当に愛を感じる。俺のことを、好きで堪らないのだと実感できる。それに、すごく美味しそうに頬張るから、している間中、上からじっくりと観察していたい。
はあ、と息を吐く。
可愛い。
脱衣所の床に両膝を着いて、フェラに没頭する倉知の股間に、爪先で触れた。ジーンズを押し上げる硬い感触。ぐりぐりといじっていると、倉知がうめき声を上げ、俺を解放した。唇からずるりと抜け出たペニスは、倉知の鼻先で勢いよく上を向く。酒を飲んでいるくせに、我ながら元気だなと誇りに感じる。
「か、加賀さん、待って」
「うん」
唾液で濡れたペニスを右手で擦りながら、じっと倉知の股間を見つめた。ちょこんと行儀よく正座をした倉知は、俺の視線を居心地が悪そうに両手でシャットアウトし、赤い顔でポツリとつぶやいた。
「抱いてくれますか?」
期待混じりの声色と、見上げてくる子犬のような目。
キュン、とときめいたのは胸じゃない。股間だ。
「ちょっと待って、イク」
「え?」
「お前、可愛いのも大概にしとけよ」
息を荒げて射精感と戦う俺を、倉知は困った顔で見上げている。だから、なんでそんな可愛い顔で俺を見るんだよ。
「加賀さん、イキそう?」
静かに頭を二回、上下に振った。
「そういうときは、円周率です。円周率唱えてたらそのうち治まりますよ」
「何それ。3.14159265? どっかそんくらいまでしか知らねえよ」
「じゃあ俺の女装姿を想像してみてください。スカート履いてる俺とか、どうですか? 不気味ですよね。萎えてきました? 見せて?」
「もう、ちょっと、一旦黙って」
これ以上可愛いことを言わないで欲しい。それに倉知の女装姿が萎えネタにはなりえないのをわかっていない。
倉知が黙る。ちら、と視線を落とすと、従順におすわりをして、相変わらずの子犬の目で俺を見ていた。この可愛さはなんだ? 幻覚か?
「加賀さん、俺」
倉知が腰を上げる。おもむろに服を脱ぎ始め、あっという間に真っ裸になると、半勃ちのままバスルームのドアを開けた。
「先にシャワーしてます」
「お、おう」
「あの、綺麗にしておくので……」
照れくさそうに言って、ドアが閉まる。と見せかけて、隙間から顔を出して言い置いた。
「覗かないでくださいね」
ドアが閉まる。そして、シャワーの音。
なんなんだ。
どうして急に抱かれたがるのか、いつ、なんのスイッチを押してそうなったのか、見当がつかずに困惑したが、ある仮定が浮かんだ。
倉知の中で、俺が酔うと抱かれるものだという法則ができあがっている。
俺を酔っ払いだと認識した途端、体が「抱かれる側」に切り替わる。とか?
嘘だろ、そんな面白いことがあるか?
というか、抱かれる気満々なところ申し訳ないが、俺は別に酔っていない。缶ビールと缶チューハイを一本ずつ飲んだだけで、次の日記憶がないレベルの酔い方とは違う。
とはいえ、これは好機。据え膳食わぬは男の恥。酔っていることにして、抱かせていただこうではないか。
服を脱いで、バスルームのドアを開けた。
「えっ、わっ、覗かないでって言ったのに」
広い背中に無言で抱きついた。こんなに大きな体の男が、可愛くて堪らない。
後ろから手を回し、両方の乳首を捕らえた。軽く摘まむと、倉知が「あ……っ、んっ」と声を漏らす。
「う、声……、恥ずかしい……」
「うん、めっちゃエロい」
背中にキスをしながら、乳首をこねる。硬く尖る手応え。倉知の押し殺した声が、バスルームに響く。
「加賀さん、加賀さん」
ぴく、ぴく、と小さく反応する倉知の濡れた体を撫で回す。尻を揉んで、ペニスを擦って、脇腹を舐めて、いろいろするうちに倉知の体が震え、しまいには膝をついた。
タイルに零れ落ちたシャワーヘッドを拾い上げ、シャワーを止める。倉知が俺を見上げた。濡れた髪を撫で上げて、問う。
「ベッド行く?」
「行く、行きます」
「俺のチンコ欲しい?」
「はい、ください」
どうした、めっちゃ素直だな。
にやけそうになったが、ポーカーフェイスを装って、ニヒルな笑みを作ってみせた。倉知は夢の中にでもいるかのような、ぼんやりとした表情で、俺に見惚れている。
「おいで」
脱衣所に出て、バスタオルで倉知の体を包み込み、ろくに拭きもせず、寝室に引きずっていく。
カーテンの引かれた寝室。まだ外は明るいが、そんなことは関係ない。
絡み合う。二人分の呼吸の音、唇が触れ合う音、唾液の音が、お互いの興奮を高めていく。
押し倒した倉知の体に跨って、上から観察する。
すごく、物欲しそうな目だ。
「可愛い」
頬を撫でる。唇をなぞる。鼻から抜けるような吐息を漏らし、もどかしそうに身をよじる姿を嬉々として見下ろした。倉知のペニスはガチガチで、触れていないのに先走りが垂れ、俺の下で、脈打っている。
「すげえな」
腰を揺すって尻で刺激してやると「ひっ」と軽く息を飲み、それから泣き声で訴えた。
「加賀さん、もう挿れて」
「お尻に?」
「お尻に、ください……っ」
まさに懇願という感じだ。
「よくほぐしてからな。ここ使うの久しぶりだろ」
「早く、加賀さん」
「うん、いい子だから、待ってな」
後ろの蕾をローションでぐしょぐしょに濡らして、中指を押し込んだ。狭いそこを、徹底的に拡張する。倉知はハアハアと息を荒げ、指の動きに合わせ、いちいち体をびくつかせていた。
あと一時間はこうしていられるな、と痴態を眺めていると、突然手首をつかまれた。すごい力だ。
「いって、何?」
「加賀さん、お願い、チンチンがいい」
「え」
「加賀さんのチンチン……、チンチンがいいんです」
取り憑かれたようにチンチンを連呼する倉知が俺のペニスに手を伸ばす。まずい、このままでは、引っこ抜かれてしまう。
「わかった、うん、チンチン挿れてやるから」
途端に顔を輝かせ自ら大きく股を開いた。
「倉知君、酔ってる?」
「七世です」
「お、おう、七世は酔ってる?」
「まさか。飲んでません。運転してきたんですよ」
「うん、ですよね」
もしかして、俺が酔って記憶をなくすことを前提に弾け飛んでいるのだろうか。
酔ってない、と真実を教えたら。どんな反応をするだろう。
卑猥な単語を連発して、わき目もふらずに欲しがって、恥ずかしげもなくよがる姿を見るのも一興。
だがしかし。俺は、恥ずかしがる倉知が、何よりも好きなのだ。
「あのな、俺、全然酔ってないから」
「え?」
「酔っ払いの俺に犯されるの好き?」
「え、……え?」
「明日になっても全部覚えてるよ。一生忘れないかもね」
へら、と笑う倉知の顔が、次第に赤みを帯びてくる。
「愛しい奴」
ペニスの先端を押し入れ、中に進む。倉知は真っ赤な顔を両手で隠して、「やだ」とか「ばか」とか、喘ぎ声の合間にうめき続けていた。
終わってからも、布団にくるまって出てこない。
「ごめんって。いい加減顔見せてよ」
「もう俺はずっとここで生きていきます」
「いやいやいや。出てきてよ。ほら、チンチン。見て、倉知君の大好きな加賀さんのチンチンだよ」
反応がない。逆効果だったようだ。
「じゃあ加賀さんのお尻は? お尻好きにしてもいいよ?」
ビクン! と大きく反応があった。布団がむくりと起き上がり、中から全裸の倉知が現れた。目を疑った。性懲りもなく勃起している。
「本当ですね?」
「いや待って、なんで勃ってんの?」
「お尻を好きにしてもいいというフレーズに惹かれました」
毎日好きにしてんじゃねえか、と思ったが、倉知が出てきたことが嬉しくて、両手を広げてみせた。飛び込んでくる。抱きしめて、笑う。倉知も笑う。
二人で笑って、馬鹿なことを言い合って。
抱き合っていられるのは、この上ない幸せだ。
〈おわり〉
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