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21の朝 ※
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〈倉知編〉
濃いグレーのスーツに身を包んだ加賀さんが、キッチンに立っている。
シャドーストライプのそのスーツは、加賀さんの体によく馴染み、完璧な、美しいシルエットを見せてくれる。
シルクのネクタイは爽やかな青系で、ワイシャツは白。ポールスミスのネクタイピンに、腕時計はジャガールクルトのクロノグラフ。
俺が選んだコーディネイトだ。
今日は、俺の誕生日だ。毎年、この日は有給休暇を取って一日中一緒にいてくれる。でも今年の八月十八日は元々休日だ。だから有休以外で何かプレゼントをあげたいと言われ、じゃあ、今日は一日スーツでいてくださいと気持ち悪い要求をしたのだ。
加賀さんは笑って快諾し、朝一でスーツに着替えると、その格好のまま朝食を作ってくれた。
スーツで料理するところを見られるなんて、思わなかった。不思議な光景だったが、スーツの加賀さんが好きな俺には至福の時間だ。
「はい、お待たせ」
スクランブルエッグにカリカリベーコン、レタスにミニトマトが添えられたプレートと、バターを塗ったトーストがテーブルに並べられた。
「美味しそう」
「インスタ映えするだろ」
対面に座った加賀さんが手を合わせた。俺もそれに倣い、二人で「いただきます」と声を揃える。
「写真撮ってもいいですか?」
「ん、いいよ。あれ? まさか本気でインスタやってんの?」
「それ、よく聞くけどなんですか?」
スマホのカメラを起動させて訊くと、加賀さんがトーストを齧って首を傾げる。
「さあ? なんか撮った写真を不特定多数に見せるやつ? SNSってやつ? 意味はわからん」
「意味って」
ふふ、と笑いが漏れてしまった。
「あ、確かハルさんがやってる。俺の写真載せていいかって訊かれて」
「えっ」
「大丈夫、断ったから」
胸を撫でおろす。見知らぬ不特定多数の人たちに加賀さんを見られて、下手をすると写真を保存されてしまう。耐えられない。
「俺だけの加賀さんです」
スマホを向けると画面の中の加賀さんが、「おいおい」と下を指さして困った顔をした。
「こっちじゃないの? 俺を撮るのかよ」
「撮ります。加賀さん、カッコイイ」
正面から二枚撮って、立ち上がる。いろんな角度から、トーストを食べる加賀さんを連写する。下から見上げたローアングルバージョン、上から見下ろしたハイアングルバージョン。しゃがんで、伸びあがって、忙しい。
「トーストと加賀さん」
「お、おう」
「朝食と加賀さんと私」
自撮りモードに切り替えて、ツーショットを撮ろうと試みる。加賀さんが頬にピースサインを当てた可愛いポーズでカメラに目線を向けながら、「倉知君、冷めるぞ」と呆れた声で言った。
「しまった、食べよう」
いそいそと席に着く。
一口食べるごとに、加賀さんを見る。どうしてだろう。なぜスーツというだけで、こんなにも輝きを放つのか。
九か月、電車の中でスーツの加賀さんを見続けた。その間に刷り込まれた一方通行の恋心が、スーツを引き金に発動するのかもしれない。だからこんなにも、胸が苦しいほどにときめいてしまうのか。
「カッコイイ」
「ん?」
「なんでもないです。あ、スーツ、油跳ねませんでした?」
ベーコンにフォークを刺して訊いた。
「まあ、多分ベーコンさんにやられたね」
「どうしよう、高そうなのに」
「お、わかる? これ一番いいやつ。いくらだと思う?」
スーツの相場がわからない。大学入学時に買ってもらった俺のスーツは、セットで靴がついて三万円だった。加賀さんのスーツならきっともっと高い。
「四……、五? 六万? 七万……、え? 十万?」
加賀さんの顔色を確認しつつ、どんどん値を上げていく。加賀さんは口元をニヤニヤさせて言った。
「ヒント。これは親父が買ってくれたスーツです」
「二十億」
「なんでだよ」
光太郎さんの名前に焦りが生まれ、ありえない金額を即答すると、加賀さんが吹き出した。
「これ、フルオーダーで三十三万」
平然と言われて、耳を疑い、身震いをした。
「大変だ、別のスーツにしましょう」
「今更だろ。それにどうせあとでもっと汚れるだろうし、いいよ。クリーニング出すわ」
「汚れる?」
「あれ? ヤりたいんだろ? 着たまま」
「えっ」
体がびくっとなって、フォークが手から落ちた。加賀さんはミニトマトを口に放り込んで、ニヤニヤ俺を見る。
「去年、俺の誕生日に言ってたじゃん。スーツ着て立ったまま後ろからヤりたいって」
冷や汗がドッと出た。
「そんなこと、言いましたっけ」
目を泳がせてわざとらしく咳き込んでみせた。
言ったかもしれない。言った気がする。いや、言った。
「……言いました。スーツで、鏡の前で、立ったまま後ろからって、俺、言いました」
恥ずかしさを押し殺して認めると、加賀さんが眉を下げ、楽しそうに「ははっ」と笑い声を弾ませた。
「立ちバックしたいから朝からスーツ着ろって言ったんじゃないの?」
「ち、違います、別に、そんな疚しい気持ちでスーツがいいって言ったわけじゃ」
「じゃあヤらないの?」
挑発するように、二個目のミニトマトをゆっくりと口に運ぶ。小さな赤い球体が可憐な唇を割って口中に消えるのを見届けてから息を吸う。
「ヤりたいです」
ふっ、と軽く笑って「俺も」と同意する加賀さんが、意味ありげに俺を見る。ヤるぞ、という合図だ。
「か、加賀さん」
ガタガタと椅子を鳴らして立ち上がる。
「こらこら、座れ。食事中だぞ」
笑いを堪えた顔を伏せて、加賀さんがはあ、と息を吐く。
「倉知君」
「はい?」
「勃ってる」
「え? ……えっ」
素早く下半身を見下ろした。あからさまに膨らむ股間。自分の体だが、素直すぎる、と顔が熱くなる。
「朝から元気だな。早く食べたら? 俺はもうごちそうさま」
手を合わせると、空になった皿を重ねて席を立つ。入れ替わりに椅子に座り、腹を空かせた獣のようにガツガツと朝食を貪った。
早く食べて、加賀さんを抱く。
上着を脱ぎ、腕まくりをして洗い物をする加賀さんを視界の端に捉えながら、必死で口を動かした。口いっぱいに詰め込んで、手を合わせてから立ち上がる。もぐもぐしながら流し台に皿を置き、細い腰に抱きついた。
「うわ、めっちゃ邪魔。可愛いけどめっちゃ邪魔」
そんな洗い物はあとですればいいから、と口の中に物を詰め込んだ状態でもごもご言うと、加賀さんが「なんて?」と聞き返す。
まどろっこしい。
腰をつかんで引き寄せて、股間を押しつける。
「わかったわかった。片付けたらな」
加賀さんは洗い物をする手を止めない。俺はもう我慢できなかった。
前に手を回し、ベルトを外す。すぐに気づいて「おい」と身じろぎをしたが、手がふさがっていて抵抗できない。ボタンを外し、ファスナーを下ろす。スラックスを下着と一緒に下ろして下半身を露出させると、硬くなった自身の欲望を取り出して、素肌に密着させた。
「え、ちょ、マジか。あと皿一枚で終わるから。待てない?」
「……加賀さん、好き」
ようやく自由になった口を開いて、耳の後ろで囁いた。ワイシャツの裾をまくり上げ、小さな尻に勃起したものを押しつける。小刻みに揺すっていると、最初は笑っていた加賀さんが、シンクの端をつかんで小さく肩を震わせた。感じている。それが嬉しくて、調子に乗って腰を動かした。
割れ目に押しつけ、なすりつける。息が上がってきた。視線は加賀さんの尻に釘付けだった。細い腰がかすかに揺れ動いている。俺のペニスが尻の割れ目を往復するのを手伝ってくれているのだ。
加賀さんの呼吸の音が聞こえる。左手でシャツの裾をまくり上げ、腰から背中にかけての緩やかなラインを凝視しながら、割れ目を利用してペニスをこする。二人とも、無言だ。この状況が妙に興奮をあおり、あっという間に射精感がこみ上げた。
「あっ……、もう、出る……っ」
迸った白い液体が、加賀さんの尻に、腰に、飛んだ。息を弾ませ、濡れた先端を蕾に押しつける。このまま中に、侵入したい。射精したばかりだというのに、性欲が収まらない。背筋を快感が駆け上り、欲求で、体が震える。
邪魔な服をむしり取って、全裸で絡み合いたい。
ダメだ、落ち着こう。今日俺は、スーツの加賀さんを鏡の前で、後ろから抱くことができる。そのプレミアムチケットを無駄にしてはいけない。
「すいません」
「ん……、何が?」
「先にイッちゃって」
「しかも早いしな」
「……すいません」
「いいんじゃない? 誕生日だし?」
「あの、拭きます」
オロオロと見回して、キッチンペーパーに気づいた。それを二枚重ねにし、丁寧に拭っていると、加賀さんが「フライパンの気分」と笑いだした。
「加賀さん、余裕ですよね」
「でもちょっと勃ったよ」
ほら、と俺の手を前に導いた。この硬度とボリュームは、ちょっと、だろうか。
下半身を露出した状態で、さらにイチモツを握られているというのに鼻歌交じりに洗い物を再開する。なんという人だ。
「加賀さん」
「うん」
「挿れたいです」
泣きそうな声が出てしまった。
「いいよ。終わり」
水を止めて、タオルで手を拭く。俺の手首を引きはがすと、下着とスラックスを引き上げて履き直す。ベルトを締め、腕まくりを解いた。
今からセックスをしようというのに服を脱がずに身支度を整えるのはなぜだ、と疑問に思ったが、すぐに思い至る。
俺の望みを叶えてくれるのだ。あくまでも、スーツの加賀さんを堪能する日だ。最終的には着崩れていいが、パリッとした完璧な状態を、俺が、この手で、乱していく。
「寝室? 洗面台? どっち?」
上着を羽織りながら加賀さんが訊いた。鏡の前でやるにはどっちかしかない。洗面台は、下のほうまで見られない。寝室のスタンドミラーなら、全身を見ることができる。
「寝室でお願いします」
「ですよね」
はは、と笑ってスーツの襟を正し、俺の手を取ると、改まった口調で唐突に言った。
「誕生日おめでとう」
「え? あ、はい、ありがとうございます」
「ごめん、言い忘れてた」
「言われてないことに気づきませんでした」
はは、へへ、と笑い合ってから、引き寄せられるようにキスをした。
髪を撫で、優しく唇を吸う。がっつかない。俺はもう二十一歳だ。ゆったりとした大人の振る舞いを見せなくては。と、二十歳になった日も同じことを思った気がする。
人は一日で突然大人にはなれない。
「七世」
唇を離した瞬間、加賀さんが俺を呼んだ。みぞおちの辺りが、ギュッとなる。優しい表情で俺を見上げる天使。可愛い。美しい。愛しくて堪らない。
「好き、大好きです」
「うん、俺も。めっちゃ大好き。可愛い。いい子。俺の、七世」
加賀さんの目が潤んでいることに気づいて、喉に甘い痛みが広がった。鼻の奥がツンとなる。無理やり唾を飲み込んで、泣くのを我慢したのに、加賀さんが「泣くな」と笑って頭を撫でた。涙が目に溜まるのがわかる。歯を食いしばって泣くのを堪え、手の甲で涙をぬぐう。
「加賀さん、好きです。何回言っても言い足りない」
「うん。いっぱい言って」
微笑んで、もう一度キスをしてから俺の手を引いた。寝室に向かっている。体が熱くなり、手のひらに汗がにじむ。
焦るな。落ち着け。冷静にいこう。暴走しない。俺が、リードする。
できる。俺は今日、少しだけ大人になったのだ。
カーテンを閉めた寝室。灯りを点けた。明るい部屋で、よく見たい。加賀さんは、消せとか明るいとか、文句を言うことはなかった。
「これ脱いだらダメ?」
加賀さんが、スーツの上着を指さして言った。三十三万を汚さないために、脱ぐほうがいいに決まっている。でも、脱がないで欲しい。という思いが透けたようで、無言でいたのに「じゃあいいわ」と撤回した。
「ネクタイ緩めるのもなし? あ、靴下くらいは脱いでいい? なんか滑りそう」
俺の答えを待たずに靴下を脱ぎ捨てた。靴下くらいは大目に見よう。
「本当に鏡見ながらすんの?」
スタンドミラーの前に立ち、ネクタイを直しながら加賀さんが鏡の中で視線を寄越す。服を素早く脱ぎ捨て、全裸になると、返事をした。
「します」
「下は? 膝くらいまで下してするとか?」
「そうです」
「ど変態」
「否定しません。でも、加賀さん限定です。加賀さん限定の変態です」
「はは、何それ」
全裸になると、背後から腰に手を回し、包み込むようにして抱きしめた。
耳を食む。加賀さんの体がぴく、と反応した。右手で股間を捕らえた。指を動かしながら、左手を上着の中に差し入れて、ワイシャツの上から優しく胸を揉む。乳首を探り当て、指先でこすりつけた。硬く、尖っていく感触。
「ん……、はぁ……っ」
鏡の中の加賀さんが、快感に酔いしれるように、目を閉じる。
「加賀さん」
「……ん」
「目、開けてください」
「え?」
瞼を開けた加賀さんが、鏡越しに俺を見る。
「ずっと俺を見てて」
鏡の中で戸惑ったように瞬く目を、力強く見つめて言った。にこ、と笑うと、加賀さんも、同じように笑みを返してくれる。
「目、離さないで」
耳に唇を押し当てた。目を合わせたままで、耳の中に舌を入れる。
「う、あ……」
加賀さんの体が強張った。右手の手のひらが変化を捉えた。押し上げてくる手応えがある。
「気持ちいいですか? 大きくなってる」
耳たぶを軽く噛んでから、首筋に強く吸いついた。加賀さんから目を逸らさない。加賀さんは身悶えながら、俺の手首を握り締めた。引きはがそうとする力に抵抗して、右手を上下させ、左手は乳首を攻め続ける。
「あっ、あ、んっ……」
加賀さんの膝が震えているのがわかる。ガクガクと揺れながら、ぎゅ、と目をつむってしまった。
「加賀さん、目、開けて」
動きを止めて、首筋を軽く噛んでから耳打ちすると、加賀さんがうっすら目を開けた。
「自分の顔、見てください」
「え……」
「すごくいやらしい顔してる」
半開きの唇、トロンとした目、眉間に刻まれた深いシワ。加賀さんがふいと顔を背けて鏡から目を逸らし、俺に体重を預けてくる。こめかみにキスをして、笑いながら訊いた。
「気持ちよかったですか?」
「うん、すげえいい。イッちゃいそう」
艶っぽい声色でそんなことを言われたら、もう、イカせるしかない。
後ろから手を伸ばしてベルトを外す。ボタンとファスナーを下ろし、下着の中に手を突っ込んだ。先走りで指が濡れたが、構わずにまさぐった。
首の裏に噛みついた。歯型がついたのを確認して、そこに舌を這わせ、しつこいほどにうなじを舐めた。
その間、両手を動かすこともさぼらない。とにかく、攻撃の手を緩めない。
「はあっ……」
加賀さんが息を吐く。何度か小さく「あっ」と可愛い声を漏らし、俺の太ももをつかんでくる。
「七世、なな、せ」
うわずった声で俺を呼ぶ。俺は鏡を凝視していた。スーツの加賀さんが、切なげに顔を歪め、涙目で、俺を見ている。
すごい。
何か、一瞬、よからぬ妄想が脳裏をかすめた。ここは電車の中。通勤途中の加賀さんを、誰にもばれないように、こっそり犯しているような。
「七世、七世……っ」
連呼され、妄想を中断した。泣き声に近い「七世」が、俺の中に浸透し、いろんな感情をないまぜにする。
好き。愛しい。可愛い。綺麗。挿れたい。泣かせたい。喘がせたい。
大人らしく、落ち着いて、スマートに、抱く。丁寧にことを進める予定だった。
でも現実の俺が行ったのは、ハァハァと煩悩剥き出しに興奮しながら、下着を雑に引き下ろし、スタンドミラーの背後の壁に両手をつかせ、後ろから一気に挿入し、腰を打ちつけるという荒々しい所業だった。
「はあっ、あ、はっ、あ、う……」
鏡に映った加賀さんは、うつむいている。耳が、赤い。俺が動くたびに声を上げた。可愛い。腰をしっかりと固定し、「脚開いて、もっとお尻、突き出して」と頭の上から囁いた。
「それと、ちゃんと目、開けて。自分の顔、見て、すごい、エロい、だらしない顔」
抜き差しを繰り返しながら途切れ途切れに言うと、加賀さんが小さく叫んだ。
「へんたいっ」
顔を上げて、睨むように俺を見る。ぞく、とした。涙で濡れた瞳と視線を合わせ、息を荒げ、腰を振る。
今俺は、大好きなスーツ姿の加賀さんを、抱いている。それだけじゃない。なんだか優位に立っている気がする。
奇妙な高揚感があった。嬉しくて、誇らしくて、腰の動きはますます激しさを増していく。
「ちょ、ま、って、そこ、そこばっか、だめ、う……、イク……っ」
加賀さんが懇願する目で俺に訴えた。直後に、つかんでいた腰がビクッと跳ねて、スタンドミラーに何かが飛んだ。精液だ。白いどろりとした液体が、鏡の上を、ゆっくりと流れ落ちていく。
加賀さんが肩で息をして、うなだれている。垂れていく精液を見つめた。苦労して昂りを抑え込む。大きく深呼吸をして、加賀さんの体を腕の中にすっぽりと収めた。
「好きです」
「ん……、うん」
脱力する体が愛おしい。後ろ頭に頬ずりをしつつ、鏡を見る。ワイシャツの隙間から、頭をもたげたペニスが見えている。それはゆらゆらと揺れ動き、先から零れた精液が糸を引いて、落下した。何か、ものすごく卑猥だ。見ているだけで下腹部が暴発しそうだった。
「加賀さん」
「わかってるよ」
俺たちはつながったままだ。そして、加賀さんの中の「俺」は、まだまだ元気いっぱいだ。
「ちょっと一旦抜いて?」
加賀さんが言った。
「え、でも」
「立ったままだときついんだよ。ベッドでしたい」
鏡に映る自分たちのセックスを楽しんでいた節がある。返事に窮する俺の腕を、加賀さんが撫でさすった。
「すげえ気持ちよくしてやるから」
「そ、それは、あの」
「騎乗位で、めっちゃぐりぐり腰動かしてやるよ」
俺は誘惑に負けた。負けてよかった。いや、負けてない。これは実質勝ちだ。
加賀さんが、エロい。
膝まで中途半端に下ろしていたスラックスと下着を脱ぎ去ると、下半身をさらした状態で俺の体をまたいで膝を立てる。スーツの上着を脱ぎ捨てて、嗜虐的な目で俺を見下ろした。ネクタイを緩める姿にときめいて、うっとりと見惚れてしまう。
自分の手で少しずつ乱していく予定だったが、どうでもよくなった。
加賀さんがエロカッコイイ。
ワイシャツのボタンを二個外すと、俺の上で腰を落とし、ペニスをつかんで、もう一度、つながった。うねりの中に導かれ、「あっ」と思わず声が出た。中は、熱い。
ギシギシと鳴るベッド。シーツのこすれる音。それと、加賀さんの荒い息遣い。
激しくグラインドさせる加賀さんの腰を両手で捕獲し、その動きを助けるように前後に揺する。
「気持ちいい、加賀さん、すごい」
途中から我慢できずに、ああとかううとか、俺のほうが喘いでいた。喘ぎながら、腹の上で痴態を繰り広げる加賀さんを、堪能する。
唇を噛んで、自分で腰を動かしている。勃起したペニスが、フルフルと揺れていて、果てしなくいやらしい光景。絶景だ。見晴らし最高だ。
加賀さんの体がふらふらになるまで揺さぶって、下から突いて、気づくと押し倒していた。太ももを抱えて腰をぶつけ、両手をつかんで引き寄せ、ガンガンに責め立てた。抑えられないほどの射精感が何度も襲ったが、そのたびに動きを止め、首筋を吸ったり乳首を噛んだり、全身を撫でさすることに集中する。愛撫で、波が引くのを待つのだ。
激しく穿つ動作とは正反対の、静かに優しく労わるような動作を交互に繰り出す。やがて、加賀さんが声もなく果てた。締められて、目がくらむ。加賀さんのペニスから、二回、三回と吐き出された精液が、ワイシャツに飛んでシミを作る。
それを見ながら、でも動きは止めてやらない。
いいところをゴリゴリと突いて、達したばかりのペニスをきつく握って擦ってやる。
「ん、う……、やめ、もう、ストップ……!」
加賀さんがベッドをバシバシ叩いて降参の意を示したが、俺にはやるべきことがあるのだ。一生懸命ラストスパートをかける。
「やっ、あっ、あーっ、イってる……って……、やめろ、馬鹿、あっ、あ……っ!」
喉から引き攣れた悲鳴を上げ、首を仰け反らして全身を痙攣させた加賀さんが、精液とは別の液体が噴射された。よし、と心の中で歓喜のガッツポーズをしながら、中で、果てる。
気持ちいい。幸せだ。脳内が、お花畑だ。
愛しい人の体の上に、崩れ落ちる。湿ったワイシャツの感触が頬に触れた。胸板が絶え間なく上下している。その動きが緩やかになった頃、グス、と鼻をすする音が聞こえた。
驚いて起き上がると、加賀さんが顔を両手で隠し、グスグスやっていた。
「え? え? あの、えっ、加賀さん? 泣いてます?」
「うん……、お前が泣かせた」
「なんで? あっ、中に出したから?」
「違う、中に出されんの、すげえ好き。好きになりました」
「え、そうだったんですか?」
妙な気恥しさに照れていると、加賀さんが手で覆った向こう側で「はああああ」と息を吐いた。
「気持ちよかった」
くぐもった声が聞こえた。ホッとして「じゃあよかったです」と言うと、手をどけて、ちょっと怒ったみたいな拗ねた顔した。
「気持ちいいよ? めっちゃいいんだけど、でも心の準備がいるんだよ。なんか怖いの、経験者ならわかるだろ?」
「え、えっと、怖くて泣いたんですか?」
「うん」
どうしよう、加賀さんが可愛い。ニヤニヤしていく口元を正常に保つのが難しい。
「俺もお前を吹かせるときは、今度から言う」
「えっ、あっ、は、はい、お願いします」
咄嗟に頭を下げた。上げたとき、加賀さんが聖母のようなまなざしで優しく微笑んでいて、もう、好きで好きで溜まらなくて、俺の下半身は出したばかりだというのに、節操もなく、無事、復活を果たすのだ。
好き、愛してると言い合って。キスをしながら、汗だくで抱き合った。
しつこいほど、口中を貪った。唇を吸い、舌先で上顎をなぞり、舌を絡ませる。唾液を交換して、飲み干して、飽きもせずに口を塞ぎ続けた。
「はあっ、はっ、七世、したい、挿れて」
トロンとした目で加賀さんが俺の鎖骨に爪を立てた。七世と呼ばれることに、だいぶ慣れてきた。ドキドキするし、恥ずかしさは残るものの、うろたえることはなくなった。
自分の変化というか、成長が誇らしい。
ねだられて、舞い上がりそうになるのを我慢して、丁寧に体を繋げた。揺さぶって、啼かせて、重ね合わせた手のひらを、しっかりと握り締める。
何回か、果てた。加賀さんが動かなくなり、ようやく俺も、律動を止めた。
何時だろう。わからない。まあいいか。多分、今日はまだまだ終わらない。
ベッドの上で加賀さんを抱きしめた。頬ずりをして、汗の浮いたしょっぱい体を舐めて、噛みついて、吸いついて、いろいろやった。
加賀さんは動じない。体力を使い果たし、抜け殻になっている。
「シャワー」
腕の中でぐったりしている加賀さんが、突然つぶやいた。
ワイシャツ一枚の加賀さんを、持ち上げて、風呂場に運んだ。タイルに脚を下ろして着地させると、シャワーを出す。
「シャツ」
加賀さんが俺にしがみついたまま言った。さっきから単語でしか意思表示をしていない。なんだか可愛いと思った。
「脱がせたくありません。着てて」
濡れたワイシャツから透けて見える様々なものを堪能したい。下心に気づかれないように、濡れそぼる加賀さんの後姿を鏡越しに見つめた。
ワイシャツが張りついて体のラインが強調されている。細い腰、引き締まった尻から伸びる、細い太もも。内腿を流れる白い液体が目についた。シャワーの水が、それを洗い流していく。白い塊になって流れていくのを見送って、ごくりと唾を飲み込んだ。
俺のだ。俺が、加賀さんの中に、出した。
「はは」
突然、力なく加賀さんが笑った。
「なんかムクムク育ってるんだけど」
「えっ、あっ、すいません、違うんです、わざとじゃなくて」
慌てて体を離し、もう一度「違うんです」と叫んで首を横に振った。加賀さんの視線は俺の下半身に注がれている。
「あんだけやってまだフル勃起? 中学生かお前は」
「だって、その、鏡に映ってる背中が、エロすぎて」
ワイシャツが透けてるし、お尻が、肌色が、精液が、としどろもどろになる俺の股間に、加賀さんが手を伸ばす。
「そういやここにも鏡、あったな」
「え? はい、……あっ、あの、加賀さん」
「うん」
「気持ちいいです」
こすられて、上ずった声が出る。加賀さんは濡れた髪を左手で掻き上げて、笑った。
「鏡の前で立ちバック、もっかいする?」
「勿論、します」
「はは、勿論? スーツじゃなくていい?」
「濡れたワイシャツも大好きです」
肌に張りついたワイシャツの向こうから透けて見える乳首を凝視しながら答えた。
「見すぎ」
加賀さんが楽しそうに笑って、抱きついてくる。胸に頬ずりをしてから、左の大胸筋に齧りつき、強く吸われた。赤い痕がついたのを確認すると、指先でこすりながら、満足げに喜色満面を浮かべた。
「俺の」
「はい、加賀さんのです」
「ん」
加賀さんが首を傾げて、ちょん、と自分の首筋を指さした。刻印を刻めという意味だとすぐに悟り、吸いついた。音がするほどしつこく吸って、離したときには真っ赤になっていたが、加賀さんは「痛い痛い」と言いながら、嬉しそうだった。
「俺のです」
「うん、……可愛い七世、大好き」
加賀さんの声は、感極まったように、かすかに震えていた。
とても、わかる。
二人でいると、たまにわけもなく、なんでもない瞬間に、泣きそうになることがある。好きで、幸せで、愛しくて、涙が出そうになる。
加賀さんもきっと、そうなのだ。
「愛してます」
来年も、その先も、ずっと二人でいよう。
〈おわり〉
濃いグレーのスーツに身を包んだ加賀さんが、キッチンに立っている。
シャドーストライプのそのスーツは、加賀さんの体によく馴染み、完璧な、美しいシルエットを見せてくれる。
シルクのネクタイは爽やかな青系で、ワイシャツは白。ポールスミスのネクタイピンに、腕時計はジャガールクルトのクロノグラフ。
俺が選んだコーディネイトだ。
今日は、俺の誕生日だ。毎年、この日は有給休暇を取って一日中一緒にいてくれる。でも今年の八月十八日は元々休日だ。だから有休以外で何かプレゼントをあげたいと言われ、じゃあ、今日は一日スーツでいてくださいと気持ち悪い要求をしたのだ。
加賀さんは笑って快諾し、朝一でスーツに着替えると、その格好のまま朝食を作ってくれた。
スーツで料理するところを見られるなんて、思わなかった。不思議な光景だったが、スーツの加賀さんが好きな俺には至福の時間だ。
「はい、お待たせ」
スクランブルエッグにカリカリベーコン、レタスにミニトマトが添えられたプレートと、バターを塗ったトーストがテーブルに並べられた。
「美味しそう」
「インスタ映えするだろ」
対面に座った加賀さんが手を合わせた。俺もそれに倣い、二人で「いただきます」と声を揃える。
「写真撮ってもいいですか?」
「ん、いいよ。あれ? まさか本気でインスタやってんの?」
「それ、よく聞くけどなんですか?」
スマホのカメラを起動させて訊くと、加賀さんがトーストを齧って首を傾げる。
「さあ? なんか撮った写真を不特定多数に見せるやつ? SNSってやつ? 意味はわからん」
「意味って」
ふふ、と笑いが漏れてしまった。
「あ、確かハルさんがやってる。俺の写真載せていいかって訊かれて」
「えっ」
「大丈夫、断ったから」
胸を撫でおろす。見知らぬ不特定多数の人たちに加賀さんを見られて、下手をすると写真を保存されてしまう。耐えられない。
「俺だけの加賀さんです」
スマホを向けると画面の中の加賀さんが、「おいおい」と下を指さして困った顔をした。
「こっちじゃないの? 俺を撮るのかよ」
「撮ります。加賀さん、カッコイイ」
正面から二枚撮って、立ち上がる。いろんな角度から、トーストを食べる加賀さんを連写する。下から見上げたローアングルバージョン、上から見下ろしたハイアングルバージョン。しゃがんで、伸びあがって、忙しい。
「トーストと加賀さん」
「お、おう」
「朝食と加賀さんと私」
自撮りモードに切り替えて、ツーショットを撮ろうと試みる。加賀さんが頬にピースサインを当てた可愛いポーズでカメラに目線を向けながら、「倉知君、冷めるぞ」と呆れた声で言った。
「しまった、食べよう」
いそいそと席に着く。
一口食べるごとに、加賀さんを見る。どうしてだろう。なぜスーツというだけで、こんなにも輝きを放つのか。
九か月、電車の中でスーツの加賀さんを見続けた。その間に刷り込まれた一方通行の恋心が、スーツを引き金に発動するのかもしれない。だからこんなにも、胸が苦しいほどにときめいてしまうのか。
「カッコイイ」
「ん?」
「なんでもないです。あ、スーツ、油跳ねませんでした?」
ベーコンにフォークを刺して訊いた。
「まあ、多分ベーコンさんにやられたね」
「どうしよう、高そうなのに」
「お、わかる? これ一番いいやつ。いくらだと思う?」
スーツの相場がわからない。大学入学時に買ってもらった俺のスーツは、セットで靴がついて三万円だった。加賀さんのスーツならきっともっと高い。
「四……、五? 六万? 七万……、え? 十万?」
加賀さんの顔色を確認しつつ、どんどん値を上げていく。加賀さんは口元をニヤニヤさせて言った。
「ヒント。これは親父が買ってくれたスーツです」
「二十億」
「なんでだよ」
光太郎さんの名前に焦りが生まれ、ありえない金額を即答すると、加賀さんが吹き出した。
「これ、フルオーダーで三十三万」
平然と言われて、耳を疑い、身震いをした。
「大変だ、別のスーツにしましょう」
「今更だろ。それにどうせあとでもっと汚れるだろうし、いいよ。クリーニング出すわ」
「汚れる?」
「あれ? ヤりたいんだろ? 着たまま」
「えっ」
体がびくっとなって、フォークが手から落ちた。加賀さんはミニトマトを口に放り込んで、ニヤニヤ俺を見る。
「去年、俺の誕生日に言ってたじゃん。スーツ着て立ったまま後ろからヤりたいって」
冷や汗がドッと出た。
「そんなこと、言いましたっけ」
目を泳がせてわざとらしく咳き込んでみせた。
言ったかもしれない。言った気がする。いや、言った。
「……言いました。スーツで、鏡の前で、立ったまま後ろからって、俺、言いました」
恥ずかしさを押し殺して認めると、加賀さんが眉を下げ、楽しそうに「ははっ」と笑い声を弾ませた。
「立ちバックしたいから朝からスーツ着ろって言ったんじゃないの?」
「ち、違います、別に、そんな疚しい気持ちでスーツがいいって言ったわけじゃ」
「じゃあヤらないの?」
挑発するように、二個目のミニトマトをゆっくりと口に運ぶ。小さな赤い球体が可憐な唇を割って口中に消えるのを見届けてから息を吸う。
「ヤりたいです」
ふっ、と軽く笑って「俺も」と同意する加賀さんが、意味ありげに俺を見る。ヤるぞ、という合図だ。
「か、加賀さん」
ガタガタと椅子を鳴らして立ち上がる。
「こらこら、座れ。食事中だぞ」
笑いを堪えた顔を伏せて、加賀さんがはあ、と息を吐く。
「倉知君」
「はい?」
「勃ってる」
「え? ……えっ」
素早く下半身を見下ろした。あからさまに膨らむ股間。自分の体だが、素直すぎる、と顔が熱くなる。
「朝から元気だな。早く食べたら? 俺はもうごちそうさま」
手を合わせると、空になった皿を重ねて席を立つ。入れ替わりに椅子に座り、腹を空かせた獣のようにガツガツと朝食を貪った。
早く食べて、加賀さんを抱く。
上着を脱ぎ、腕まくりをして洗い物をする加賀さんを視界の端に捉えながら、必死で口を動かした。口いっぱいに詰め込んで、手を合わせてから立ち上がる。もぐもぐしながら流し台に皿を置き、細い腰に抱きついた。
「うわ、めっちゃ邪魔。可愛いけどめっちゃ邪魔」
そんな洗い物はあとですればいいから、と口の中に物を詰め込んだ状態でもごもご言うと、加賀さんが「なんて?」と聞き返す。
まどろっこしい。
腰をつかんで引き寄せて、股間を押しつける。
「わかったわかった。片付けたらな」
加賀さんは洗い物をする手を止めない。俺はもう我慢できなかった。
前に手を回し、ベルトを外す。すぐに気づいて「おい」と身じろぎをしたが、手がふさがっていて抵抗できない。ボタンを外し、ファスナーを下ろす。スラックスを下着と一緒に下ろして下半身を露出させると、硬くなった自身の欲望を取り出して、素肌に密着させた。
「え、ちょ、マジか。あと皿一枚で終わるから。待てない?」
「……加賀さん、好き」
ようやく自由になった口を開いて、耳の後ろで囁いた。ワイシャツの裾をまくり上げ、小さな尻に勃起したものを押しつける。小刻みに揺すっていると、最初は笑っていた加賀さんが、シンクの端をつかんで小さく肩を震わせた。感じている。それが嬉しくて、調子に乗って腰を動かした。
割れ目に押しつけ、なすりつける。息が上がってきた。視線は加賀さんの尻に釘付けだった。細い腰がかすかに揺れ動いている。俺のペニスが尻の割れ目を往復するのを手伝ってくれているのだ。
加賀さんの呼吸の音が聞こえる。左手でシャツの裾をまくり上げ、腰から背中にかけての緩やかなラインを凝視しながら、割れ目を利用してペニスをこする。二人とも、無言だ。この状況が妙に興奮をあおり、あっという間に射精感がこみ上げた。
「あっ……、もう、出る……っ」
迸った白い液体が、加賀さんの尻に、腰に、飛んだ。息を弾ませ、濡れた先端を蕾に押しつける。このまま中に、侵入したい。射精したばかりだというのに、性欲が収まらない。背筋を快感が駆け上り、欲求で、体が震える。
邪魔な服をむしり取って、全裸で絡み合いたい。
ダメだ、落ち着こう。今日俺は、スーツの加賀さんを鏡の前で、後ろから抱くことができる。そのプレミアムチケットを無駄にしてはいけない。
「すいません」
「ん……、何が?」
「先にイッちゃって」
「しかも早いしな」
「……すいません」
「いいんじゃない? 誕生日だし?」
「あの、拭きます」
オロオロと見回して、キッチンペーパーに気づいた。それを二枚重ねにし、丁寧に拭っていると、加賀さんが「フライパンの気分」と笑いだした。
「加賀さん、余裕ですよね」
「でもちょっと勃ったよ」
ほら、と俺の手を前に導いた。この硬度とボリュームは、ちょっと、だろうか。
下半身を露出した状態で、さらにイチモツを握られているというのに鼻歌交じりに洗い物を再開する。なんという人だ。
「加賀さん」
「うん」
「挿れたいです」
泣きそうな声が出てしまった。
「いいよ。終わり」
水を止めて、タオルで手を拭く。俺の手首を引きはがすと、下着とスラックスを引き上げて履き直す。ベルトを締め、腕まくりを解いた。
今からセックスをしようというのに服を脱がずに身支度を整えるのはなぜだ、と疑問に思ったが、すぐに思い至る。
俺の望みを叶えてくれるのだ。あくまでも、スーツの加賀さんを堪能する日だ。最終的には着崩れていいが、パリッとした完璧な状態を、俺が、この手で、乱していく。
「寝室? 洗面台? どっち?」
上着を羽織りながら加賀さんが訊いた。鏡の前でやるにはどっちかしかない。洗面台は、下のほうまで見られない。寝室のスタンドミラーなら、全身を見ることができる。
「寝室でお願いします」
「ですよね」
はは、と笑ってスーツの襟を正し、俺の手を取ると、改まった口調で唐突に言った。
「誕生日おめでとう」
「え? あ、はい、ありがとうございます」
「ごめん、言い忘れてた」
「言われてないことに気づきませんでした」
はは、へへ、と笑い合ってから、引き寄せられるようにキスをした。
髪を撫で、優しく唇を吸う。がっつかない。俺はもう二十一歳だ。ゆったりとした大人の振る舞いを見せなくては。と、二十歳になった日も同じことを思った気がする。
人は一日で突然大人にはなれない。
「七世」
唇を離した瞬間、加賀さんが俺を呼んだ。みぞおちの辺りが、ギュッとなる。優しい表情で俺を見上げる天使。可愛い。美しい。愛しくて堪らない。
「好き、大好きです」
「うん、俺も。めっちゃ大好き。可愛い。いい子。俺の、七世」
加賀さんの目が潤んでいることに気づいて、喉に甘い痛みが広がった。鼻の奥がツンとなる。無理やり唾を飲み込んで、泣くのを我慢したのに、加賀さんが「泣くな」と笑って頭を撫でた。涙が目に溜まるのがわかる。歯を食いしばって泣くのを堪え、手の甲で涙をぬぐう。
「加賀さん、好きです。何回言っても言い足りない」
「うん。いっぱい言って」
微笑んで、もう一度キスをしてから俺の手を引いた。寝室に向かっている。体が熱くなり、手のひらに汗がにじむ。
焦るな。落ち着け。冷静にいこう。暴走しない。俺が、リードする。
できる。俺は今日、少しだけ大人になったのだ。
カーテンを閉めた寝室。灯りを点けた。明るい部屋で、よく見たい。加賀さんは、消せとか明るいとか、文句を言うことはなかった。
「これ脱いだらダメ?」
加賀さんが、スーツの上着を指さして言った。三十三万を汚さないために、脱ぐほうがいいに決まっている。でも、脱がないで欲しい。という思いが透けたようで、無言でいたのに「じゃあいいわ」と撤回した。
「ネクタイ緩めるのもなし? あ、靴下くらいは脱いでいい? なんか滑りそう」
俺の答えを待たずに靴下を脱ぎ捨てた。靴下くらいは大目に見よう。
「本当に鏡見ながらすんの?」
スタンドミラーの前に立ち、ネクタイを直しながら加賀さんが鏡の中で視線を寄越す。服を素早く脱ぎ捨て、全裸になると、返事をした。
「します」
「下は? 膝くらいまで下してするとか?」
「そうです」
「ど変態」
「否定しません。でも、加賀さん限定です。加賀さん限定の変態です」
「はは、何それ」
全裸になると、背後から腰に手を回し、包み込むようにして抱きしめた。
耳を食む。加賀さんの体がぴく、と反応した。右手で股間を捕らえた。指を動かしながら、左手を上着の中に差し入れて、ワイシャツの上から優しく胸を揉む。乳首を探り当て、指先でこすりつけた。硬く、尖っていく感触。
「ん……、はぁ……っ」
鏡の中の加賀さんが、快感に酔いしれるように、目を閉じる。
「加賀さん」
「……ん」
「目、開けてください」
「え?」
瞼を開けた加賀さんが、鏡越しに俺を見る。
「ずっと俺を見てて」
鏡の中で戸惑ったように瞬く目を、力強く見つめて言った。にこ、と笑うと、加賀さんも、同じように笑みを返してくれる。
「目、離さないで」
耳に唇を押し当てた。目を合わせたままで、耳の中に舌を入れる。
「う、あ……」
加賀さんの体が強張った。右手の手のひらが変化を捉えた。押し上げてくる手応えがある。
「気持ちいいですか? 大きくなってる」
耳たぶを軽く噛んでから、首筋に強く吸いついた。加賀さんから目を逸らさない。加賀さんは身悶えながら、俺の手首を握り締めた。引きはがそうとする力に抵抗して、右手を上下させ、左手は乳首を攻め続ける。
「あっ、あ、んっ……」
加賀さんの膝が震えているのがわかる。ガクガクと揺れながら、ぎゅ、と目をつむってしまった。
「加賀さん、目、開けて」
動きを止めて、首筋を軽く噛んでから耳打ちすると、加賀さんがうっすら目を開けた。
「自分の顔、見てください」
「え……」
「すごくいやらしい顔してる」
半開きの唇、トロンとした目、眉間に刻まれた深いシワ。加賀さんがふいと顔を背けて鏡から目を逸らし、俺に体重を預けてくる。こめかみにキスをして、笑いながら訊いた。
「気持ちよかったですか?」
「うん、すげえいい。イッちゃいそう」
艶っぽい声色でそんなことを言われたら、もう、イカせるしかない。
後ろから手を伸ばしてベルトを外す。ボタンとファスナーを下ろし、下着の中に手を突っ込んだ。先走りで指が濡れたが、構わずにまさぐった。
首の裏に噛みついた。歯型がついたのを確認して、そこに舌を這わせ、しつこいほどにうなじを舐めた。
その間、両手を動かすこともさぼらない。とにかく、攻撃の手を緩めない。
「はあっ……」
加賀さんが息を吐く。何度か小さく「あっ」と可愛い声を漏らし、俺の太ももをつかんでくる。
「七世、なな、せ」
うわずった声で俺を呼ぶ。俺は鏡を凝視していた。スーツの加賀さんが、切なげに顔を歪め、涙目で、俺を見ている。
すごい。
何か、一瞬、よからぬ妄想が脳裏をかすめた。ここは電車の中。通勤途中の加賀さんを、誰にもばれないように、こっそり犯しているような。
「七世、七世……っ」
連呼され、妄想を中断した。泣き声に近い「七世」が、俺の中に浸透し、いろんな感情をないまぜにする。
好き。愛しい。可愛い。綺麗。挿れたい。泣かせたい。喘がせたい。
大人らしく、落ち着いて、スマートに、抱く。丁寧にことを進める予定だった。
でも現実の俺が行ったのは、ハァハァと煩悩剥き出しに興奮しながら、下着を雑に引き下ろし、スタンドミラーの背後の壁に両手をつかせ、後ろから一気に挿入し、腰を打ちつけるという荒々しい所業だった。
「はあっ、あ、はっ、あ、う……」
鏡に映った加賀さんは、うつむいている。耳が、赤い。俺が動くたびに声を上げた。可愛い。腰をしっかりと固定し、「脚開いて、もっとお尻、突き出して」と頭の上から囁いた。
「それと、ちゃんと目、開けて。自分の顔、見て、すごい、エロい、だらしない顔」
抜き差しを繰り返しながら途切れ途切れに言うと、加賀さんが小さく叫んだ。
「へんたいっ」
顔を上げて、睨むように俺を見る。ぞく、とした。涙で濡れた瞳と視線を合わせ、息を荒げ、腰を振る。
今俺は、大好きなスーツ姿の加賀さんを、抱いている。それだけじゃない。なんだか優位に立っている気がする。
奇妙な高揚感があった。嬉しくて、誇らしくて、腰の動きはますます激しさを増していく。
「ちょ、ま、って、そこ、そこばっか、だめ、う……、イク……っ」
加賀さんが懇願する目で俺に訴えた。直後に、つかんでいた腰がビクッと跳ねて、スタンドミラーに何かが飛んだ。精液だ。白いどろりとした液体が、鏡の上を、ゆっくりと流れ落ちていく。
加賀さんが肩で息をして、うなだれている。垂れていく精液を見つめた。苦労して昂りを抑え込む。大きく深呼吸をして、加賀さんの体を腕の中にすっぽりと収めた。
「好きです」
「ん……、うん」
脱力する体が愛おしい。後ろ頭に頬ずりをしつつ、鏡を見る。ワイシャツの隙間から、頭をもたげたペニスが見えている。それはゆらゆらと揺れ動き、先から零れた精液が糸を引いて、落下した。何か、ものすごく卑猥だ。見ているだけで下腹部が暴発しそうだった。
「加賀さん」
「わかってるよ」
俺たちはつながったままだ。そして、加賀さんの中の「俺」は、まだまだ元気いっぱいだ。
「ちょっと一旦抜いて?」
加賀さんが言った。
「え、でも」
「立ったままだときついんだよ。ベッドでしたい」
鏡に映る自分たちのセックスを楽しんでいた節がある。返事に窮する俺の腕を、加賀さんが撫でさすった。
「すげえ気持ちよくしてやるから」
「そ、それは、あの」
「騎乗位で、めっちゃぐりぐり腰動かしてやるよ」
俺は誘惑に負けた。負けてよかった。いや、負けてない。これは実質勝ちだ。
加賀さんが、エロい。
膝まで中途半端に下ろしていたスラックスと下着を脱ぎ去ると、下半身をさらした状態で俺の体をまたいで膝を立てる。スーツの上着を脱ぎ捨てて、嗜虐的な目で俺を見下ろした。ネクタイを緩める姿にときめいて、うっとりと見惚れてしまう。
自分の手で少しずつ乱していく予定だったが、どうでもよくなった。
加賀さんがエロカッコイイ。
ワイシャツのボタンを二個外すと、俺の上で腰を落とし、ペニスをつかんで、もう一度、つながった。うねりの中に導かれ、「あっ」と思わず声が出た。中は、熱い。
ギシギシと鳴るベッド。シーツのこすれる音。それと、加賀さんの荒い息遣い。
激しくグラインドさせる加賀さんの腰を両手で捕獲し、その動きを助けるように前後に揺する。
「気持ちいい、加賀さん、すごい」
途中から我慢できずに、ああとかううとか、俺のほうが喘いでいた。喘ぎながら、腹の上で痴態を繰り広げる加賀さんを、堪能する。
唇を噛んで、自分で腰を動かしている。勃起したペニスが、フルフルと揺れていて、果てしなくいやらしい光景。絶景だ。見晴らし最高だ。
加賀さんの体がふらふらになるまで揺さぶって、下から突いて、気づくと押し倒していた。太ももを抱えて腰をぶつけ、両手をつかんで引き寄せ、ガンガンに責め立てた。抑えられないほどの射精感が何度も襲ったが、そのたびに動きを止め、首筋を吸ったり乳首を噛んだり、全身を撫でさすることに集中する。愛撫で、波が引くのを待つのだ。
激しく穿つ動作とは正反対の、静かに優しく労わるような動作を交互に繰り出す。やがて、加賀さんが声もなく果てた。締められて、目がくらむ。加賀さんのペニスから、二回、三回と吐き出された精液が、ワイシャツに飛んでシミを作る。
それを見ながら、でも動きは止めてやらない。
いいところをゴリゴリと突いて、達したばかりのペニスをきつく握って擦ってやる。
「ん、う……、やめ、もう、ストップ……!」
加賀さんがベッドをバシバシ叩いて降参の意を示したが、俺にはやるべきことがあるのだ。一生懸命ラストスパートをかける。
「やっ、あっ、あーっ、イってる……って……、やめろ、馬鹿、あっ、あ……っ!」
喉から引き攣れた悲鳴を上げ、首を仰け反らして全身を痙攣させた加賀さんが、精液とは別の液体が噴射された。よし、と心の中で歓喜のガッツポーズをしながら、中で、果てる。
気持ちいい。幸せだ。脳内が、お花畑だ。
愛しい人の体の上に、崩れ落ちる。湿ったワイシャツの感触が頬に触れた。胸板が絶え間なく上下している。その動きが緩やかになった頃、グス、と鼻をすする音が聞こえた。
驚いて起き上がると、加賀さんが顔を両手で隠し、グスグスやっていた。
「え? え? あの、えっ、加賀さん? 泣いてます?」
「うん……、お前が泣かせた」
「なんで? あっ、中に出したから?」
「違う、中に出されんの、すげえ好き。好きになりました」
「え、そうだったんですか?」
妙な気恥しさに照れていると、加賀さんが手で覆った向こう側で「はああああ」と息を吐いた。
「気持ちよかった」
くぐもった声が聞こえた。ホッとして「じゃあよかったです」と言うと、手をどけて、ちょっと怒ったみたいな拗ねた顔した。
「気持ちいいよ? めっちゃいいんだけど、でも心の準備がいるんだよ。なんか怖いの、経験者ならわかるだろ?」
「え、えっと、怖くて泣いたんですか?」
「うん」
どうしよう、加賀さんが可愛い。ニヤニヤしていく口元を正常に保つのが難しい。
「俺もお前を吹かせるときは、今度から言う」
「えっ、あっ、は、はい、お願いします」
咄嗟に頭を下げた。上げたとき、加賀さんが聖母のようなまなざしで優しく微笑んでいて、もう、好きで好きで溜まらなくて、俺の下半身は出したばかりだというのに、節操もなく、無事、復活を果たすのだ。
好き、愛してると言い合って。キスをしながら、汗だくで抱き合った。
しつこいほど、口中を貪った。唇を吸い、舌先で上顎をなぞり、舌を絡ませる。唾液を交換して、飲み干して、飽きもせずに口を塞ぎ続けた。
「はあっ、はっ、七世、したい、挿れて」
トロンとした目で加賀さんが俺の鎖骨に爪を立てた。七世と呼ばれることに、だいぶ慣れてきた。ドキドキするし、恥ずかしさは残るものの、うろたえることはなくなった。
自分の変化というか、成長が誇らしい。
ねだられて、舞い上がりそうになるのを我慢して、丁寧に体を繋げた。揺さぶって、啼かせて、重ね合わせた手のひらを、しっかりと握り締める。
何回か、果てた。加賀さんが動かなくなり、ようやく俺も、律動を止めた。
何時だろう。わからない。まあいいか。多分、今日はまだまだ終わらない。
ベッドの上で加賀さんを抱きしめた。頬ずりをして、汗の浮いたしょっぱい体を舐めて、噛みついて、吸いついて、いろいろやった。
加賀さんは動じない。体力を使い果たし、抜け殻になっている。
「シャワー」
腕の中でぐったりしている加賀さんが、突然つぶやいた。
ワイシャツ一枚の加賀さんを、持ち上げて、風呂場に運んだ。タイルに脚を下ろして着地させると、シャワーを出す。
「シャツ」
加賀さんが俺にしがみついたまま言った。さっきから単語でしか意思表示をしていない。なんだか可愛いと思った。
「脱がせたくありません。着てて」
濡れたワイシャツから透けて見える様々なものを堪能したい。下心に気づかれないように、濡れそぼる加賀さんの後姿を鏡越しに見つめた。
ワイシャツが張りついて体のラインが強調されている。細い腰、引き締まった尻から伸びる、細い太もも。内腿を流れる白い液体が目についた。シャワーの水が、それを洗い流していく。白い塊になって流れていくのを見送って、ごくりと唾を飲み込んだ。
俺のだ。俺が、加賀さんの中に、出した。
「はは」
突然、力なく加賀さんが笑った。
「なんかムクムク育ってるんだけど」
「えっ、あっ、すいません、違うんです、わざとじゃなくて」
慌てて体を離し、もう一度「違うんです」と叫んで首を横に振った。加賀さんの視線は俺の下半身に注がれている。
「あんだけやってまだフル勃起? 中学生かお前は」
「だって、その、鏡に映ってる背中が、エロすぎて」
ワイシャツが透けてるし、お尻が、肌色が、精液が、としどろもどろになる俺の股間に、加賀さんが手を伸ばす。
「そういやここにも鏡、あったな」
「え? はい、……あっ、あの、加賀さん」
「うん」
「気持ちいいです」
こすられて、上ずった声が出る。加賀さんは濡れた髪を左手で掻き上げて、笑った。
「鏡の前で立ちバック、もっかいする?」
「勿論、します」
「はは、勿論? スーツじゃなくていい?」
「濡れたワイシャツも大好きです」
肌に張りついたワイシャツの向こうから透けて見える乳首を凝視しながら答えた。
「見すぎ」
加賀さんが楽しそうに笑って、抱きついてくる。胸に頬ずりをしてから、左の大胸筋に齧りつき、強く吸われた。赤い痕がついたのを確認すると、指先でこすりながら、満足げに喜色満面を浮かべた。
「俺の」
「はい、加賀さんのです」
「ん」
加賀さんが首を傾げて、ちょん、と自分の首筋を指さした。刻印を刻めという意味だとすぐに悟り、吸いついた。音がするほどしつこく吸って、離したときには真っ赤になっていたが、加賀さんは「痛い痛い」と言いながら、嬉しそうだった。
「俺のです」
「うん、……可愛い七世、大好き」
加賀さんの声は、感極まったように、かすかに震えていた。
とても、わかる。
二人でいると、たまにわけもなく、なんでもない瞬間に、泣きそうになることがある。好きで、幸せで、愛しくて、涙が出そうになる。
加賀さんもきっと、そうなのだ。
「愛してます」
来年も、その先も、ずっと二人でいよう。
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