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curry party
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※この話は「ヤサシイモノガタリの作り方 おまけ」の後日談です。
〈千葉編〉
玄関のドアを開けると、カレーの香りが漂ってきた。
食欲をそそるいい香りだ。起きてからコーヒーしか飲んでこなかったから空腹だった。胃袋が小さくグウと反応した。
確かに、と納得する。一般的な家庭のカレーとは違う、スパイシーな香りだ。期待が膨らむ。
カレーが食べたいというふざけた理由で飲み会をキャンセルしたときは「どんな大人だよ」と呆れを通り越して笑えてしまったが、食べないと損をする気持ちはなんとなく理解はできた。
「この前はすいませんでした」
俺たちをリビングに招き入れると、倉知君が頭を下げた。何が、と思ったが、どうやら加賀さんの愚行を謝っているようだ。
「約束してたのに当日ドタキャンなんて……、本当にすいません」
これは、まさにあれだ。旦那の落ち度をカバーする嫁。
いやぁん、とねちっこい声を上げて、前畑さんが小躍りを始めた。
「もう完っ全に嫁だよね!」
「えっ」
自覚がないらしい倉知君が驚いた顔をした。
「うちの主人がすみません、ってやつ?」
後藤さんから手土産の箱を受け取りながら、加賀さんが嬉しそうに言った。倉知君は恐縮した様子で顔の前で手を振った。
「あの、そんなつもりじゃ」
「できた嫁だろ」
得意げな加賀さんの左手に、指輪が見えた。左手の薬指。ちら、と倉知君を確認する。やはり、ペアリングだ。
前に倉知君の指に指輪を見つけてもしかして、と思っていた。左手の薬指だからきっとそういう意味合いだろう、とわかってはいたが、いざ二人がお揃いの指輪をしているところを見ると、改めて実感した。
この二人はカップルなのだ。
「普段着にペアリングの加賀君見れて、私はもう、半分死んだ!」
前畑さんがフルフルと体を震わせた。さすがに、誰でも指輪に目がいくらしい。後藤さんの目線も指輪に一直線だ。
「いい部屋ですね、家賃いくらですか?」
ソファに勧められ、腰を下ろした途端、不躾な質問をしたのは高橋さんだ。部屋の中を値踏みするように見回している。三人は余裕で座れるソファだが、俺はあえてクッションを選んだ。前畑さんと高橋さんの間に座らされるのは勘弁だ。
「賃貸じゃないからね」
加賀さんが平然と答えると、高橋さんが首をかしげた。マンションは必ず家賃が発生するものだと思っているらしい。
「うーん、なんかいいなぁ。いくら払えばこういうところに住めるんですか?」
「お前実家だろ。何、結婚すんの?」
カレーの器を両手に持った加賀さんが、ニヤリと笑った。前畑さんがハッとなって、「しない!」と震え上がった。
「すればいいのに。お前らも結構長いよな」
「僕はしたいです」
高橋さんが目を見開いて宣言し、隣の前畑さんを見たが、彼女はソファの端に急いで飛びのいた。
「ああもうやだ、この話終了ね」
前畑さんが心底嫌そうに腕をさすっている。本当に、毎回思うがこの二人は謎だ。
それにしてもこの部屋には驚いた。よほどの収入がなければ生活していけないだろう。下世話な話だが、どうやったらここで暮らせるのか教えてほしかった。
俺との給料の差がそれほどあるとは思えない。勤続十年以下だし、貯金額もたかが知れている。購入したなら、おそらくローン地獄だ。同棲相手は大学生だし、支払い能力があるとは思えない。
「ベランダの位置いいなあ、日当たり最高じゃない」
窓の外を見ながら後藤さんがうっとりした口調で言った。ベランダには洗濯物が並んでいて、二人がこの部屋でちゃんと生活しているのだ、という証拠に見えた。
「家事全部、七世君に押しつけてるんだったっけ?」
後藤さんが加賀さんを責めるような目で見た。カレーの皿をテーブルに置いて加賀さんが「ごめんなさい」と苦笑する。キッチンでカレーをよそっていた倉知君が、必死で言い訳を始めた。
「押しつけじゃないです、違います。俺、好きでやってるし、その、家事してると、し」
し、で言葉を切って、なぜか赤面する。
「幸せ?」
前畑さんが満面の笑みで訊いた。
「はい……、幸せなんです」
「可愛いっ!」
ソファに座ったままで、顔を覆い、両足をばたつかせる前畑さんは、腐女子だ。俺はこの腐女子というやつがよくわからない。よくわからないのも手伝って、なかなか六花さんの心をつかむことができない。
「あの、誤解がないように言っておきたいんですけど、俺が全部してるわけじゃないです」
手を止めて、倉知君が一生懸命言い募る。
「ちゃんと加賀さんも料理してますよ? 俺、加賀さんのご飯大好きです。それに、掃除も洗濯も普通にしてます、ねえ」
同意を求められた加賀さんが、ねえ、と肩をすくめておどけてみせる。
「加賀さんのご飯大好きですが超絶可愛いんだけどっ」
前畑さんが悶絶している。
まあ、俺も今のはちょっと可愛いなと思ってしまった。
「二人とも家事できるのってすごくうらやましい」
後藤さんがしみじみと言って、キッチンに回り込む。
「綺麗にしてるね」
倉知君の背中を軽く叩いて誉めてから、「この前さ」と続けた。
「土曜日に大地が急に熱出して」
大地というのは確か息子さんの名前だ。
「洗濯終わってたんだけど、干す時間ないから旦那の見えるとこにカゴ置いて、病院に向かったんだけどね」
倉知君の手元を覗き込んでいた後藤さんが、顔を上げて加賀さんを見た。
「干しといてくれたらいいなあと思いつつ、言わなかったんだけど、はい、加賀君ならどうする?」
「え? 干すよ?」
「本当に?」
疑わしそうに後藤さんが腕組みをする。
「放置する選択肢はないな」
「加賀君、一人暮らししてたもんね。千葉君は? 干しといてって言われたわけじゃない洗濯ものが目に入ったら、どうする?」
「俺を誰だと思ってるんですか? モテキングですよ」
胸を張って鼻を鳴らす。
「女性がどうして欲しいかは心得てます。当然、干します」
「よし、じゃあ最後、高橋君」
「えー、干すか干さないかって話ですか? 頼まれたんじゃなかったら、しませんよ? だって、なんで干した? って怒られたらどうするんですか」
「前畑、あんた苦労するわ」
同情の目を向ける後藤さんに、前畑さんは苦虫を噛み潰したような顔で応戦する。
「もしよ? 万が一、こいつと一緒に暮らすってなったら、家事全部叩き込んで召使いにして、私は一切何もしないから」
「召使いでもいいです、一緒に暮らしましょう」
高橋さんが立ちあがって公開プロポーズをしたが、前畑さんは脚を組んでそっぽを向き、冷めた声で言った。
「万が一って言ったでしょうが」
しょんぼりする高橋さんがいい加減不憫だ。何か言わないと、と思ったが、この二人の関係性が、いまいちわからない。もごもごしていると、加賀さんがダイニングテーブルの椅子を引いて腰を下ろし「まあまあ」と明るい声で場を和ませた。
お前ら本当はラブラブなんだろ? とか、一緒に住むっていいもんだぞ、とか、高橋にもいいところはあるよ、とか。
てっきり何かその手のフォローが入ると思ったが、違った。
「そんなことより早くカレー食べてよ」
ずっこけるところだった。
「そうだよ、食べよう」
前畑さんがホッとした顔で身を乗り出し、スプーンをつかむ。
「冷める前にいただこうか」
後藤さんが俺の隣のクッションに腰を下ろし、加賀さんと倉知君がダイニングの二脚に座り、全員が手を合わせて「いただきます」と大きな声で言った。
真っ白な炊き立てのご飯をカレーにからませ、口に運ぶ。舌にのせた瞬間に、細胞がざわついた。
「美味い……」
思わずつぶやいた。唾液が溢れてくる。二口目を急いで口に放り込み、確認した。やっぱり美味しい。複雑に絡み合うスパイスの向こう側に、まろやかな甘みが潜んでいる。インド系だからナンも合うだろうが、ライスもこれはこれで大正解だ。
「嘘でしょ、これ本当に七世君が作ったの?」
「七世君ってインド人?」
「うん、これは串揚げ食べてる場合じゃない。すごい美味しい」
三人が口々に言った。
「な、だろ、美味いだろ」
加賀さんが誇らしげに言って、倉知君と目を合わせた。笑い合う二人。
この仲の良さは羨ましい。男同士ではあるが、この二人は俺が理想とする彼氏彼女の最終形態だ。俺も、いつか六花さんと目と目で会話をしてみたい。
こんなふうになりたい。いや、なってみせる。
カチャカチャとスプーンの音が響く中、一人決意を新たにした。
全員がおかわりをして、鍋のカレーが尽きたあとで、香ばしいほうじ茶の香りが漂ってきた。倉知君がキッチンに立って、お茶を淹れている。食後のコーヒー、じゃなく、あえてほうじ茶なのが、なんだかいいなと思った。コーヒーだと、下手をするとカレーの余韻を消してしまう。
お茶を淹れる倉知君の隣に加賀さんが立っている。手伝う、という女性二人を、お客様だからと座らせて、洗い物をしている。後藤さんと前畑さんが、二人が並んでいる光景を眺めて、はあ、とため息をついた。
「いいね」
「いいよね」
「可愛い」
「可愛いよね」
大人の男を可愛いと表現するのはいかがなものかと思ったが、まあ、確かに、と認めざるを得ない。二人が醸し出す幸せの香りは、カレーよりも濃厚だ。幸せで、愛に溢れている。
以前、家事は分担すべきだ、と説教を垂れたのが恥ずかしくなってきた。そういう次元じゃないのだ。
「いただいたロールケーキ、出してもいいですか?」
テーブルに人数分のほうじ茶を並べながら倉知君が訊いた。
「うん、よろしく」
後藤さんが返事をすると、微笑んでキッチンに戻っていった。
「七世君みたいな息子が欲しい。って会うたびに思う」
後藤さんが言って、前畑さんも同調する。
「私も弟にしたいって毎回思う。六花ちゃんがすんごい自慢してくるんだもん」
「六花さん」
びくん、と体が跳ねた。三人が俺を見てそれぞれ微妙な表情を作った。
「あの子、千葉君にとことん興味ないからな」
洗い物を終えた加賀さんが、マグカップを片手に俺の隣に腰を下ろした。
「少しは俺のこと気にしてたり……ないですか?」
「残念ながら、ないな」
がっくりと肩を落とす。体を鍛えるだけじゃなく、格闘技を習得しなければならないのだろうか。
「お前の仕事ぶりとか話題に出しても食いつかないね」
加賀さんが後ろ手をつき、脚を放り出す。代わりに俺は背筋を伸ばして加賀さんのほうに向きなおり、正座をした。
「俺のこと、推してくれてるんですか?」
「おう、褒めちぎって持ち上げてやってるよ」
加賀さんが光を放っているように見えた。なんていい人なんだ。胸が熱くなり、涙がこみ上げる。
「加賀さん、抱きしめていいですか?」
飛びつく準備をしていると、倉知君がキッチンから大声で吠えた。
「ダメです!」
奇声を上げて喜ぶ女子二人。
「はは」
加賀さんがまんざらでもない顔でキッチンの倉知君を仰ぎ見ている。
「愛されてますね」
「まあね。俺もめっちゃ愛してる」
再び巻き起こる、歓喜の悲鳴。
「ちょっと加賀さん、なんでのろけてるんですか」
トレイを持った倉知君が、恥ずかしそうに登場した。テーブルに皿を置く倉知君の後姿を、加賀さんがじろじろ見ている。後姿というか、尻を見ている、と気づいて殴りたくなった。
「主任、いつものろけてますよね」
いち早くケーキとフォークを手に取って、高橋さんが言った。倉知君がちら、と加賀さんを振り返る。見ているこっちが恥ずかしくなるような、照れた表情だ。
「そうだっけ?」
「そうですよぅ」
「だって自慢したいじゃん。健気だろ、可愛いだろ、いい子だろ、どうだーって」
「加賀さん、やめて」
倉知君が慌ててトレイで顔を隠す。みんながウフフと笑う。ふわふわとした癒しの空気に包まれた。
「あ、フォーク一本足りない」
皿とフォークを配っていた後藤さんが声を上げる。
「持ってきます」
倉知君が立ち上がろうとするのを、加賀さんが肩に手を置いて止めた。
「いいよ、俺が持ってくるから七世は座ってて」
ん? と違和感を覚えた瞬間、倉知君が「ひえっ」とか「ふえっ」とか、そんな感じの奇妙な声を発した。顔を覆った指の隙間から、荒い呼吸が漏れていて、耳が真っ赤に染まっている。
一体何が、といぶかしんでいると、後藤さんと前畑さんがお互いの体を肘で小突きながら「聞いた?」「うん」とヒソヒソし始めた。
「あ、しまった。違う、間違えた」
加賀さんが頭を掻く。
「みんなが七世君って呼ぶから、つい」
そうか、と気づいた。いつもは「倉知君」と呼んでいるのに、今確かに「七世」と呼んだ。違和感はそれだったのか、とすっきりしたが、倉知君は顔を覆ったまま動かない。多分すごく、照れているのだろう。
いつもと違う呼び方というのは、確かに効果的ではある。マンネリからの脱出にも使える。それにしても倉知君は大げさというか、ピュアというか。
長く付き合っていてお互いを本気で想っている二人なのだから、名前で呼ぶことくらいあってもいいと思う。
「ごめんな、七世君」
加賀さんが笑ってキッチンに向かう。君がついていようと、下の名前はご法度らしく、倉知君は肩を震わせている。
「名前で呼ぶこと全然ないの?」
後藤さんが訊ねたが、倉知君は顔を覆ったままうんともすんとも言わない。耳の赤さは鮮明なままで、元に戻るには相当時間がかかりそうだ。他の誰に呼ばれても平気なのに、加賀さんだとこんなことになるのか。腑に落ちない。
「たまに呼ぶんだけどね。慣れないんだよ」
フォークを持ってきた加賀さんが、後藤さんに手渡した。再び、全員での「いただきます」が行われ、倉知君以外がロールケーキを口に運ぶ。
「でもわかるな。子ども生まれてから名前で呼ばれなくなったもん」
後藤さんが慎重な動作でロールケーキにフォークを入れながら言った。
「普段と違う呼び方ってときめくよね。わかるわかる」
倉知君を慰めているつもりなのか、優しい声で理解を示したが、まったくもって浮上しない。
「私も加賀君に若菜って呼ばれたら、のたうち回って全身打撲になる!」
前畑さんが力説すると、高橋さんが控えめに「若菜」と呼んだが、まるっきり無視された。本当に、どうして付き合っているのだろう。こういうプレイか、と思いたくなる。
こういうプレイ。
ちら、と倉知君を見た。何か、ぶつぶつ言っているのが聞こえる。耳を寄せると、数字だった。1907021798……と、謎の数字を唱えている。
全員がケーキを食べ終え、お茶を飲み終えた頃に、倉知君が顔からそっと手をどけた。
「加賀さん」
しっかりした声だったが、頬はピンク色だ。
「ん?」
「名前はもう、禁止ですからね」
「え、未来永劫?」
「えっ? じゃなくて、あの、みんながいるときはちょっと」
「じゃあ、二人きりなら呼んでいい?」
「……お願いします」
後藤さんは目尻を下げ、微笑ましそうに、前畑さんは腐女子特有のにやけ顔で、高橋さんは羨ましそうに、それぞれ二人を見つめている。
俺は一人、ソワソワと落ち着かなかった。
たかが名前呼びくらいでうろたえすぎだ、と気になっていたが、今のやり取りで確信できた。
おそらくこの二人は「そういうプレイ」をしているのだろう。
前畑さんと高橋さんがツンデレ彼女とヘタレ彼氏を演じているのと同じで、プレイの一環に違いない。
二人きりの空間で、甘ったるい雰囲気のときに、ごくたまに、名前で呼ぶ。慣れない、と加賀さんは言ったが、慣れさせたくないのではないか。
きっと、恋人の初々しい反応を、いつまでも楽しんでいたいのだ。
とてもよくわかる。そういう駆け引きが恋愛の醍醐味だ。
ちくしょう、と心の内で毒づいた。
猛烈に人肌が恋しくなってしまった。俺には常に彼女がいた。いつでも誰かの体温が、すぐそばにあったのに。今はどれだけ手を伸ばしても、届かない。指の先に、かすりもしない。
誰か。
誰でもいい。
気持ちが折れそうになる。
浅ましい欲求が俺の体にしがみつき、耳元で「諦めろよ」と囁いた。
女は他にも大勢いる。
なびかない女を追いかけて何になる?
うるさい。
耳を塞ぐ。
「千葉君、どうした?」
くぐもった加賀さんの声。
「なんでもないです」
手をどけて、息をついて笑ってみせた。
あの人じゃないとダメだと感じる。
そんなのは、後にも先にも彼女だけ。
もう少し。あと少しだけ、あがいてみよう。
〈おわり〉
〈千葉編〉
玄関のドアを開けると、カレーの香りが漂ってきた。
食欲をそそるいい香りだ。起きてからコーヒーしか飲んでこなかったから空腹だった。胃袋が小さくグウと反応した。
確かに、と納得する。一般的な家庭のカレーとは違う、スパイシーな香りだ。期待が膨らむ。
カレーが食べたいというふざけた理由で飲み会をキャンセルしたときは「どんな大人だよ」と呆れを通り越して笑えてしまったが、食べないと損をする気持ちはなんとなく理解はできた。
「この前はすいませんでした」
俺たちをリビングに招き入れると、倉知君が頭を下げた。何が、と思ったが、どうやら加賀さんの愚行を謝っているようだ。
「約束してたのに当日ドタキャンなんて……、本当にすいません」
これは、まさにあれだ。旦那の落ち度をカバーする嫁。
いやぁん、とねちっこい声を上げて、前畑さんが小躍りを始めた。
「もう完っ全に嫁だよね!」
「えっ」
自覚がないらしい倉知君が驚いた顔をした。
「うちの主人がすみません、ってやつ?」
後藤さんから手土産の箱を受け取りながら、加賀さんが嬉しそうに言った。倉知君は恐縮した様子で顔の前で手を振った。
「あの、そんなつもりじゃ」
「できた嫁だろ」
得意げな加賀さんの左手に、指輪が見えた。左手の薬指。ちら、と倉知君を確認する。やはり、ペアリングだ。
前に倉知君の指に指輪を見つけてもしかして、と思っていた。左手の薬指だからきっとそういう意味合いだろう、とわかってはいたが、いざ二人がお揃いの指輪をしているところを見ると、改めて実感した。
この二人はカップルなのだ。
「普段着にペアリングの加賀君見れて、私はもう、半分死んだ!」
前畑さんがフルフルと体を震わせた。さすがに、誰でも指輪に目がいくらしい。後藤さんの目線も指輪に一直線だ。
「いい部屋ですね、家賃いくらですか?」
ソファに勧められ、腰を下ろした途端、不躾な質問をしたのは高橋さんだ。部屋の中を値踏みするように見回している。三人は余裕で座れるソファだが、俺はあえてクッションを選んだ。前畑さんと高橋さんの間に座らされるのは勘弁だ。
「賃貸じゃないからね」
加賀さんが平然と答えると、高橋さんが首をかしげた。マンションは必ず家賃が発生するものだと思っているらしい。
「うーん、なんかいいなぁ。いくら払えばこういうところに住めるんですか?」
「お前実家だろ。何、結婚すんの?」
カレーの器を両手に持った加賀さんが、ニヤリと笑った。前畑さんがハッとなって、「しない!」と震え上がった。
「すればいいのに。お前らも結構長いよな」
「僕はしたいです」
高橋さんが目を見開いて宣言し、隣の前畑さんを見たが、彼女はソファの端に急いで飛びのいた。
「ああもうやだ、この話終了ね」
前畑さんが心底嫌そうに腕をさすっている。本当に、毎回思うがこの二人は謎だ。
それにしてもこの部屋には驚いた。よほどの収入がなければ生活していけないだろう。下世話な話だが、どうやったらここで暮らせるのか教えてほしかった。
俺との給料の差がそれほどあるとは思えない。勤続十年以下だし、貯金額もたかが知れている。購入したなら、おそらくローン地獄だ。同棲相手は大学生だし、支払い能力があるとは思えない。
「ベランダの位置いいなあ、日当たり最高じゃない」
窓の外を見ながら後藤さんがうっとりした口調で言った。ベランダには洗濯物が並んでいて、二人がこの部屋でちゃんと生活しているのだ、という証拠に見えた。
「家事全部、七世君に押しつけてるんだったっけ?」
後藤さんが加賀さんを責めるような目で見た。カレーの皿をテーブルに置いて加賀さんが「ごめんなさい」と苦笑する。キッチンでカレーをよそっていた倉知君が、必死で言い訳を始めた。
「押しつけじゃないです、違います。俺、好きでやってるし、その、家事してると、し」
し、で言葉を切って、なぜか赤面する。
「幸せ?」
前畑さんが満面の笑みで訊いた。
「はい……、幸せなんです」
「可愛いっ!」
ソファに座ったままで、顔を覆い、両足をばたつかせる前畑さんは、腐女子だ。俺はこの腐女子というやつがよくわからない。よくわからないのも手伝って、なかなか六花さんの心をつかむことができない。
「あの、誤解がないように言っておきたいんですけど、俺が全部してるわけじゃないです」
手を止めて、倉知君が一生懸命言い募る。
「ちゃんと加賀さんも料理してますよ? 俺、加賀さんのご飯大好きです。それに、掃除も洗濯も普通にしてます、ねえ」
同意を求められた加賀さんが、ねえ、と肩をすくめておどけてみせる。
「加賀さんのご飯大好きですが超絶可愛いんだけどっ」
前畑さんが悶絶している。
まあ、俺も今のはちょっと可愛いなと思ってしまった。
「二人とも家事できるのってすごくうらやましい」
後藤さんがしみじみと言って、キッチンに回り込む。
「綺麗にしてるね」
倉知君の背中を軽く叩いて誉めてから、「この前さ」と続けた。
「土曜日に大地が急に熱出して」
大地というのは確か息子さんの名前だ。
「洗濯終わってたんだけど、干す時間ないから旦那の見えるとこにカゴ置いて、病院に向かったんだけどね」
倉知君の手元を覗き込んでいた後藤さんが、顔を上げて加賀さんを見た。
「干しといてくれたらいいなあと思いつつ、言わなかったんだけど、はい、加賀君ならどうする?」
「え? 干すよ?」
「本当に?」
疑わしそうに後藤さんが腕組みをする。
「放置する選択肢はないな」
「加賀君、一人暮らししてたもんね。千葉君は? 干しといてって言われたわけじゃない洗濯ものが目に入ったら、どうする?」
「俺を誰だと思ってるんですか? モテキングですよ」
胸を張って鼻を鳴らす。
「女性がどうして欲しいかは心得てます。当然、干します」
「よし、じゃあ最後、高橋君」
「えー、干すか干さないかって話ですか? 頼まれたんじゃなかったら、しませんよ? だって、なんで干した? って怒られたらどうするんですか」
「前畑、あんた苦労するわ」
同情の目を向ける後藤さんに、前畑さんは苦虫を噛み潰したような顔で応戦する。
「もしよ? 万が一、こいつと一緒に暮らすってなったら、家事全部叩き込んで召使いにして、私は一切何もしないから」
「召使いでもいいです、一緒に暮らしましょう」
高橋さんが立ちあがって公開プロポーズをしたが、前畑さんは脚を組んでそっぽを向き、冷めた声で言った。
「万が一って言ったでしょうが」
しょんぼりする高橋さんがいい加減不憫だ。何か言わないと、と思ったが、この二人の関係性が、いまいちわからない。もごもごしていると、加賀さんがダイニングテーブルの椅子を引いて腰を下ろし「まあまあ」と明るい声で場を和ませた。
お前ら本当はラブラブなんだろ? とか、一緒に住むっていいもんだぞ、とか、高橋にもいいところはあるよ、とか。
てっきり何かその手のフォローが入ると思ったが、違った。
「そんなことより早くカレー食べてよ」
ずっこけるところだった。
「そうだよ、食べよう」
前畑さんがホッとした顔で身を乗り出し、スプーンをつかむ。
「冷める前にいただこうか」
後藤さんが俺の隣のクッションに腰を下ろし、加賀さんと倉知君がダイニングの二脚に座り、全員が手を合わせて「いただきます」と大きな声で言った。
真っ白な炊き立てのご飯をカレーにからませ、口に運ぶ。舌にのせた瞬間に、細胞がざわついた。
「美味い……」
思わずつぶやいた。唾液が溢れてくる。二口目を急いで口に放り込み、確認した。やっぱり美味しい。複雑に絡み合うスパイスの向こう側に、まろやかな甘みが潜んでいる。インド系だからナンも合うだろうが、ライスもこれはこれで大正解だ。
「嘘でしょ、これ本当に七世君が作ったの?」
「七世君ってインド人?」
「うん、これは串揚げ食べてる場合じゃない。すごい美味しい」
三人が口々に言った。
「な、だろ、美味いだろ」
加賀さんが誇らしげに言って、倉知君と目を合わせた。笑い合う二人。
この仲の良さは羨ましい。男同士ではあるが、この二人は俺が理想とする彼氏彼女の最終形態だ。俺も、いつか六花さんと目と目で会話をしてみたい。
こんなふうになりたい。いや、なってみせる。
カチャカチャとスプーンの音が響く中、一人決意を新たにした。
全員がおかわりをして、鍋のカレーが尽きたあとで、香ばしいほうじ茶の香りが漂ってきた。倉知君がキッチンに立って、お茶を淹れている。食後のコーヒー、じゃなく、あえてほうじ茶なのが、なんだかいいなと思った。コーヒーだと、下手をするとカレーの余韻を消してしまう。
お茶を淹れる倉知君の隣に加賀さんが立っている。手伝う、という女性二人を、お客様だからと座らせて、洗い物をしている。後藤さんと前畑さんが、二人が並んでいる光景を眺めて、はあ、とため息をついた。
「いいね」
「いいよね」
「可愛い」
「可愛いよね」
大人の男を可愛いと表現するのはいかがなものかと思ったが、まあ、確かに、と認めざるを得ない。二人が醸し出す幸せの香りは、カレーよりも濃厚だ。幸せで、愛に溢れている。
以前、家事は分担すべきだ、と説教を垂れたのが恥ずかしくなってきた。そういう次元じゃないのだ。
「いただいたロールケーキ、出してもいいですか?」
テーブルに人数分のほうじ茶を並べながら倉知君が訊いた。
「うん、よろしく」
後藤さんが返事をすると、微笑んでキッチンに戻っていった。
「七世君みたいな息子が欲しい。って会うたびに思う」
後藤さんが言って、前畑さんも同調する。
「私も弟にしたいって毎回思う。六花ちゃんがすんごい自慢してくるんだもん」
「六花さん」
びくん、と体が跳ねた。三人が俺を見てそれぞれ微妙な表情を作った。
「あの子、千葉君にとことん興味ないからな」
洗い物を終えた加賀さんが、マグカップを片手に俺の隣に腰を下ろした。
「少しは俺のこと気にしてたり……ないですか?」
「残念ながら、ないな」
がっくりと肩を落とす。体を鍛えるだけじゃなく、格闘技を習得しなければならないのだろうか。
「お前の仕事ぶりとか話題に出しても食いつかないね」
加賀さんが後ろ手をつき、脚を放り出す。代わりに俺は背筋を伸ばして加賀さんのほうに向きなおり、正座をした。
「俺のこと、推してくれてるんですか?」
「おう、褒めちぎって持ち上げてやってるよ」
加賀さんが光を放っているように見えた。なんていい人なんだ。胸が熱くなり、涙がこみ上げる。
「加賀さん、抱きしめていいですか?」
飛びつく準備をしていると、倉知君がキッチンから大声で吠えた。
「ダメです!」
奇声を上げて喜ぶ女子二人。
「はは」
加賀さんがまんざらでもない顔でキッチンの倉知君を仰ぎ見ている。
「愛されてますね」
「まあね。俺もめっちゃ愛してる」
再び巻き起こる、歓喜の悲鳴。
「ちょっと加賀さん、なんでのろけてるんですか」
トレイを持った倉知君が、恥ずかしそうに登場した。テーブルに皿を置く倉知君の後姿を、加賀さんがじろじろ見ている。後姿というか、尻を見ている、と気づいて殴りたくなった。
「主任、いつものろけてますよね」
いち早くケーキとフォークを手に取って、高橋さんが言った。倉知君がちら、と加賀さんを振り返る。見ているこっちが恥ずかしくなるような、照れた表情だ。
「そうだっけ?」
「そうですよぅ」
「だって自慢したいじゃん。健気だろ、可愛いだろ、いい子だろ、どうだーって」
「加賀さん、やめて」
倉知君が慌ててトレイで顔を隠す。みんながウフフと笑う。ふわふわとした癒しの空気に包まれた。
「あ、フォーク一本足りない」
皿とフォークを配っていた後藤さんが声を上げる。
「持ってきます」
倉知君が立ち上がろうとするのを、加賀さんが肩に手を置いて止めた。
「いいよ、俺が持ってくるから七世は座ってて」
ん? と違和感を覚えた瞬間、倉知君が「ひえっ」とか「ふえっ」とか、そんな感じの奇妙な声を発した。顔を覆った指の隙間から、荒い呼吸が漏れていて、耳が真っ赤に染まっている。
一体何が、といぶかしんでいると、後藤さんと前畑さんがお互いの体を肘で小突きながら「聞いた?」「うん」とヒソヒソし始めた。
「あ、しまった。違う、間違えた」
加賀さんが頭を掻く。
「みんなが七世君って呼ぶから、つい」
そうか、と気づいた。いつもは「倉知君」と呼んでいるのに、今確かに「七世」と呼んだ。違和感はそれだったのか、とすっきりしたが、倉知君は顔を覆ったまま動かない。多分すごく、照れているのだろう。
いつもと違う呼び方というのは、確かに効果的ではある。マンネリからの脱出にも使える。それにしても倉知君は大げさというか、ピュアというか。
長く付き合っていてお互いを本気で想っている二人なのだから、名前で呼ぶことくらいあってもいいと思う。
「ごめんな、七世君」
加賀さんが笑ってキッチンに向かう。君がついていようと、下の名前はご法度らしく、倉知君は肩を震わせている。
「名前で呼ぶこと全然ないの?」
後藤さんが訊ねたが、倉知君は顔を覆ったままうんともすんとも言わない。耳の赤さは鮮明なままで、元に戻るには相当時間がかかりそうだ。他の誰に呼ばれても平気なのに、加賀さんだとこんなことになるのか。腑に落ちない。
「たまに呼ぶんだけどね。慣れないんだよ」
フォークを持ってきた加賀さんが、後藤さんに手渡した。再び、全員での「いただきます」が行われ、倉知君以外がロールケーキを口に運ぶ。
「でもわかるな。子ども生まれてから名前で呼ばれなくなったもん」
後藤さんが慎重な動作でロールケーキにフォークを入れながら言った。
「普段と違う呼び方ってときめくよね。わかるわかる」
倉知君を慰めているつもりなのか、優しい声で理解を示したが、まったくもって浮上しない。
「私も加賀君に若菜って呼ばれたら、のたうち回って全身打撲になる!」
前畑さんが力説すると、高橋さんが控えめに「若菜」と呼んだが、まるっきり無視された。本当に、どうして付き合っているのだろう。こういうプレイか、と思いたくなる。
こういうプレイ。
ちら、と倉知君を見た。何か、ぶつぶつ言っているのが聞こえる。耳を寄せると、数字だった。1907021798……と、謎の数字を唱えている。
全員がケーキを食べ終え、お茶を飲み終えた頃に、倉知君が顔からそっと手をどけた。
「加賀さん」
しっかりした声だったが、頬はピンク色だ。
「ん?」
「名前はもう、禁止ですからね」
「え、未来永劫?」
「えっ? じゃなくて、あの、みんながいるときはちょっと」
「じゃあ、二人きりなら呼んでいい?」
「……お願いします」
後藤さんは目尻を下げ、微笑ましそうに、前畑さんは腐女子特有のにやけ顔で、高橋さんは羨ましそうに、それぞれ二人を見つめている。
俺は一人、ソワソワと落ち着かなかった。
たかが名前呼びくらいでうろたえすぎだ、と気になっていたが、今のやり取りで確信できた。
おそらくこの二人は「そういうプレイ」をしているのだろう。
前畑さんと高橋さんがツンデレ彼女とヘタレ彼氏を演じているのと同じで、プレイの一環に違いない。
二人きりの空間で、甘ったるい雰囲気のときに、ごくたまに、名前で呼ぶ。慣れない、と加賀さんは言ったが、慣れさせたくないのではないか。
きっと、恋人の初々しい反応を、いつまでも楽しんでいたいのだ。
とてもよくわかる。そういう駆け引きが恋愛の醍醐味だ。
ちくしょう、と心の内で毒づいた。
猛烈に人肌が恋しくなってしまった。俺には常に彼女がいた。いつでも誰かの体温が、すぐそばにあったのに。今はどれだけ手を伸ばしても、届かない。指の先に、かすりもしない。
誰か。
誰でもいい。
気持ちが折れそうになる。
浅ましい欲求が俺の体にしがみつき、耳元で「諦めろよ」と囁いた。
女は他にも大勢いる。
なびかない女を追いかけて何になる?
うるさい。
耳を塞ぐ。
「千葉君、どうした?」
くぐもった加賀さんの声。
「なんでもないです」
手をどけて、息をついて笑ってみせた。
あの人じゃないとダメだと感じる。
そんなのは、後にも先にも彼女だけ。
もう少し。あと少しだけ、あがいてみよう。
〈おわり〉
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