電車の男ー同棲編ー番外編

月世

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幸せな日常 おまけ

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〈加賀編〉

 帰宅すると、倉知がなぜかパンツ一丁だった。
「おかえりなさい」
 準備万端かよ、と飛びかかろうとしたが、どうやら違う。汗だくだ。
「何その汗」
「走ってきました。俺も今帰ってきたところです」
 冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出すと、キャップを回しながら、輝く笑顔で答えた。健康的かつ爽やかなオーラ。高原に吹くそよ風を感じて、体が後方に揺らいだ。
 さっきのエロ臭い顔はどこへ行った。俺の、「エロイ倉知君」はどこへ行ってしまった。
 ひたいに手を当てて天井を仰ぐ。顧客との打ち合わせ中、放置プレイ真っ最中の倉知を頭の片隅で想像して、わくわくしていた。帰った途端、泣き顔ですがりつき、早くしたいとせがんでくる姿を妄想していたのが馬鹿みたいだ。
 オナニーするな、と言ったら、運動で発散させるとは。やられた。
「今日ほんと、天気いいですね。洗濯物すぐ乾きそう」
 窓の外を眺めて、ペットボトルに口をつける倉知の横顔が、まぶしい。CMか、というほど美味そうに飲んでいる。
「シャワーしたらお昼食べに」
 喋っている途中の倉知のパンツを、膝まで一気にずり下げた。
「うわっ、何、なんですか、何するんですか」
 非難の声を上げて、慌てて元に戻そうとする倉知の手を止めた。股間からぶら下がるブツは、穏やかに眠った状態だ。無言で手を伸ばし、鷲掴みする。汗で湿っているが、見事にふにゃふにゃだ。
「ちくしょう、このふにゃチン野郎め」
「なんかそれひどいです」
「二時間くらい、勃起したまま待てなかったのか?」
「無茶苦茶言わないでください。あの、加賀さん」
 揉み続ける俺の手をものともせず、倉知が言った。
「シャワーしてきます」
 だから手を離せ、という感じでポンポンとなだめるように肩を叩かれた。俺が股間を揉んでいるのに、余裕の笑顔だ。
「加賀さんも着替えてきて。お昼、お寿司食べましょう」
 なんてピュアな目で見やがる。これは駄目だ。まさかの賢者タイムだ。
 急に自分が穢れた存在に思えて、恥ずかしくなった。すごすごと寝室に退散して、スーツを脱いだ。
 着替えている間、バスルームに突撃して襲ってやろうか、という考えが浮かんだが、鬼畜の所業に思えてくる。
 はあ、と息をつく。
 まあいいか。
 今日はいい天気だし、外に出て、寿司を食べて、ドライブでもするか。
 日が高いうちはせいぜい健全に過ごしてやろう。
 お楽しみは夜にとっておくのだ。

〈おわり〉
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