電車の男ー同棲編ー番外編

月世

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in sync おまけ ※

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※このお話は「in sync」のおまけです。リバってますのでお気をつけください。
加賀×倉知です。リバが苦手な方はスルー願います。
大丈夫、という方のみお進みください。






〈倉知編〉

 マンションのエレベーターの中。尻を、撫でまわされている。当然というか、加賀さんに、だが。さわさわと控えめに撫でてくる手をそっと振り払うと、今度は激しく揉みしだかれ声を上げそうになった。
「カメラついてるんだから、ああいうことやめてください」
 エレベーターから降りて部屋に戻ると、開口一番文句を言った。加賀さんはまったく悪びれる様子もなく、靴を脱ぐ俺の背後から性懲りもなく両手で尻を掴んでくる。
「大丈夫だよ、カメラから見えない犯行だから」
「犯行って……、あの、お尻触りすぎです」
「何、いやなの?」
 手つきが怪しい。両手で揉みしだかれて、声が出そうになる。慌てて加賀さんの手を振りほどいて、後ずさる。
「あっ、お腹空きません? 俺、なんか作ります」
「腹減ってるほうが性欲増すんだって。生存本能ってやつな」
 玄関を上がった加賀さんが、ベルトを外しながら言った。ひい、と悲鳴を上げ、慌てて逃げた。加賀さんが、笑って追いかけてくる。
「いい感じに盛り上がってまいりました」
「ま、待ってください。落ち着いて」
 逃げ場があるはずがない。大の大人がソファの周りをぐるぐると追いかけっこする様は、傍から見たら滑稽だろう。でも俺は、真剣だ。
「なんで嫌がるんだよ。いい加減慣れろ」
 加賀さんがコートを脱ぎ捨てて言った。
「慣れません。だって、加賀さん、……やらしいんだもん」
 加賀さんが俺を抱くとき、必ず何度もイかされる。気が狂いそうなほど気持ちよくされて、悶える俺を冷静に観察する。何度抱かれてもそれが恥ずかしくて、いまだに慣れない。思い出しただけで体に力が入らなくなり、腰が抜けた感じになってしまう。
「可愛いなおい」
 加賀さんがソファの肘掛に足を掛けた。スプリングを軋ませながらソファのシートを踏みしめて、こっちにくる。たじろぐ俺の肩に手を置いた。ソファの上から、身を屈めるようにしてキスをされ、目を閉じた。ちゅ、ちゅ、と音を立てて何度も唇を吸われ、骨抜きになった頃合いを見計らったように、離れていった。物足りなさに目を開けると、加賀さんが綺麗に笑っていた。
「ベッド行く?」
 頬を撫でながら訊かれた。操られるようにうなずいて、手を引かれて寝室に入る。ベッドに寝かされ、服を脱がされ、首に、胸に、腹に、唇が吸いついてくる。
「声出していいよ」
 歯を食いしばって声を押し殺す俺を、加賀さんが上から覗き込んで言った。
「ていうか声出して。可愛い声、聴かせてよ」
 脇腹をくすぐるように撫でながら、首筋に吸いついてくる。丁寧に、大事そうに俺の肌を撫で続ける優しい手のひら。体の隅々を舐めて噛んで、吸われて、何も考えられなくなった。
「あっ、加賀さん……、あっ、んん」
 羞恥でつぐんでいた唇が、堪えきれずに薄く開く。懸命に堪えていたが、鼻にかかった甘ったるい声が溢れ出てしまうと、もうどうでもよくなった。
「んあっ、……ん、加賀、さん、気持ちいい、もっと、もっとして」
 俺を見下ろし、加賀さんが微笑んで頭を撫でた。
「七世、いい子」
 俺の名前を囁く声が、とろけるように、優しい。胸を掻き乱したくなるほど切なくなった。
 体を深く繋げると、それだけで達してしまいそうになる。中をゆるゆると出入りする加賀さんが、俺のペニスをつかんで手を上下させた。背筋を、快感が駆けあがる。張りつめていた何かが、爆ぜた。
「うあっ、あ、やっ、や、めて、イク、イク……!」
 首を横に振って必死で訴えたが、俺の中のいいところを突きながら、手の動きもやめてくれない。体が跳ねた。吐精し、頭が真っ白になっても、気持ちいいのが止まらない。
「やだ、……あっ、か、がさんっ……!」
 体の奥を穿たれ続け、身をよじる。加賀さんは俺の太ももをしっかりと固定したまま、腰を打ちつけてくる。
「イッてる、もう、イッ……たから……」
「うん、やっべ……、すっげ締まる」
「かが、さん、イッてる、とまって、も、やっ……!」
 かすれた悲鳴を上げたが、動きを止めてくれる気配がない。イキ続ける俺を激しく攻め立てる加賀さんの動きが止んだのは、叫びすぎて声が枯れ始めた頃だった。
「七世」
 汗で濡れた俺の頬を両手で包み込んで、名前を呼ぶ。
「……っ、ん……」
「バックでやらせて」
 そう言うと、素早く腰を引いて俺の中から出ていった。一気に圧迫感が失せ、体がガクガクと震えた。震えながら丸まって逃げようとする俺の腰を、加賀さんが捕獲する。うつぶせにされると、硬く熱いものが再び躊躇なく押し入ってくる。膝が揺れ、シーツに潰れる俺に覆いかぶさり、抜き差しを繰り返す力強さは変わらない。
 何度でも、絶頂に押し上げられる。汗だくだった。吐き出す精も、尽きた。声も枯れた。もう何も出ない。
 シミだらけのシーツの上で、ぐったりとうつぶせで体を横たえ、加賀さんを見つめていた。起き上がれない俺の体を、濡れたタオルで拭いてくれている。世話を焼かれているのが嬉しい。自然と笑顔になった。
「どこも痛くない?」
「大丈夫、です」
 やつれた声が出た。げほ、と咳き込むと加賀さんが俺の髪を撫でて謝った。
「ごめん、すげえ可愛いから調子乗っちゃった」
 可愛くないです、と心の中で否定して、小さく頭を振る。
「可愛いよ。なあ、倉知君」
 なんですか。
「俺に抱かれるの嫌いじゃないよな?」
 ……はい、でも駄目です。
「いいじゃん。もう、今度から逆にしよう」
 駄目ですって。
「お前のケツ、すげえいいんだよ」
 なんって言い方するんですか。
「倉知君のお尻、すごく気持ちいいんです」
 丁寧に言い直しても同じですから。
「いいか、お前のこれは一種の才能だぞ。生かさないともったいない」
 意味わかりません。そんな才能ないです。
「はあ……、くそ。あのな、ぶっちゃけ、イキまくってよがりまくって乱れるお前を見るのが楽しくて仕方ないんだよ」
 ……。
「いつかお前のほうから俺にまたがって、挿れてくださいってお願いする日が」
 そんな日は来ません。
「来ない? 駄目? あ、想像したらちょっと元気になった」
 加賀さんの股間に視線を移動させ、手を伸ばす。反撃のつもりで、軽く握ってやった。
「え、マジか」
 嬉しそうに声を弾ませ、いそいそと俺の背中に加賀さんが乗った。
「ちょ、え、何」
「大丈夫。お前の考えてることくらいわかってるよ」
 自信たっぷりにそう言うと、俺の尻を揉んでから、割れ目に何かを押しつけてきた。
「欲しいんだろ?」
「ち、ちが」
 耳に吐息がかかり、言葉を飲み込んだ。
「第二ラウンド突入だな」
 肝心なところで意思疎通が上手くいかなくなってしまった。俺の意思に反して、第二ラウンドの幕が上がる。

〈おわり〉
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