電車の男ー同棲編ー番外編

月世

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堕ちる ※

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※この話は本編【Ⅲ.倉知編「会いたい」】のその後です。倉知君が合宿中のお話。一方その頃、加賀さんは…。

〈加賀編〉

 二泊三日くらい、大したことはない。仕事に没頭していればあっという間に帰ってくる。寂しいなんて、思う暇もないだろう。
 能天気な予想に反して、もう寂しい。倉知が脱いでいったTシャツを着るくらい、寂しい。残り香に包まれたまま、ベッドの上で横になる。
 こういうときは邪魔をしないように連絡をすべきじゃないのかもしれない。でも多分あいつだって寂しいはずだ。と、勝手に決めつける。
 携帯でメールを打ち、返事を待つ。同棲してから夜を別々に過ごすのは初めてで、一人のときにどうすればいいのかわからなくなっている。我ながら情けない。
 返事はなかなか来なかった。盛り上がっていて気づかないのかもしれない。もう寝てしまおうか、と目を閉じたとき、返信メールが届いた。メールを読むとすぐに電話をかける。
 倉知は深刻な様子で寂しがっていた。失敗したな、と少しだけ後悔した。明るく振る舞って元気づけてやったはいいが、俺が寂しい。なまじ、匂いがあるからいけない。ここにいる、という錯覚。
「倉知君」
 声が返ってくるはずもない。自分を抱きしめて、体を丸めた。
 倉知の匂い。襟ぐりを引っ張って、吸い込む。吐く。何度か繰り返していると、おかしくなってきた。一人で声を出して笑い、ベッドの上で足をばたつかせた。妙に、ハイだ。気分がいい。シャツで多幸感を得られるとは思わなかった。
 変態行為のついでだ。堕ちるところまで堕ちてやれ。
 寝転んだまま股間に手を突っ込んだ。シャツのにおいを目一杯吸い込んで、手を動かす。目を閉じる。倉知の匂い。あいつがいつもするように、優しく丁寧に、自分自身をこすった。
「う……、やべえ、何やってんだ、俺」
 独り言をつぶやいて、身をよじる。簡単に硬くなったペニスをしごきながら、シャツの匂いを吸い込んだ。
「はっ……、はあ……、倉知く……」
 ぶる、と体が震えた。奥が、疼く。足りない。前の刺激だけじゃ、物足りない。サイドテーブルからローションを出して股間にぶちまけると、右手を上下させながら、左手の人差し指と中指をためらいなく後ろに突っ込んだ。
「ん……、あっ、やっ……べ、きもち……い」
 右手と左手を駆使して、快感を貪る。静まり返った一人の部屋に、ぐちゅぐちゅと卑猥な音がこだました。何も考えられない。一心不乱に両手を動かした。
 かすかに鼻腔をくすぐる、倉知の匂い。腰のあたりがゾクゾクする。唇を噛んで、声を堪え、果てた。右の手のひらに、生暖かい感触。中に入れていた指を、ゆっくりと引き抜いた。
 荒い息が収まってきた頃、言いようのない罪悪感を覚えた。
 何かとんでもないことをしてしまったような気がする。そもそも自慰自体がどれだけぶりか、わからない。気持ちよかった。でも、こんなものだったか? 虚しさで、心が寒い。今すぐ、倉知と抱き合いたい。
「早く帰ってきてよ……」
 愛しいあいつの匂いを身にまとい、目を閉じた。

〈おわり〉
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