電車の男ー同棲編ー番外編

月世

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夏の思い出 ※

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〈六花編〉

 両親が結婚記念日に旅行に出かけると言い出した。二泊三日の日程で、その間、家を空けることになるからあとは任せた、と告げられた。両親の不在はちょうどお盆休みの頃で、私も五月も休みの時期だった。もう二人とも社会人だから三日くらい自分たちでなんとでもしなさい、という意図がひしひし伝わってきた。
 五月は掃除も洗濯も料理もできない。私も基本、しない。できないじゃなくて、しないのだ、と言い張ると、五月と言い合いになった。
「じゃあ、りっちゃんが全部してよ」
「全部? 家事全部押しつけるつもり?」
「できるんでしょ? だったらやってよ」
「なんで私が五月の面倒見なきゃいけないの」
「だってあたしできないもん」
「やってみようっていう気はないの?」
「ない」
「分担する?」
「しない」
「私、自分のことしかしないから。あんたはあんたで勝手にやってね」
「りっちゃん冷たい! ケチ!」
 機嫌を損ねた五月が私を無視するようになり、そこから冷戦に発展した。
 その冷戦中の休日、ふらっと顔を出した七世と加賀さんが私たちのギスギスした空気に気づき、何かあったのかと訊かれ、白状すると七世は呆れ、加賀さんは笑った。
「掃除はともかく、この時期洗濯もの溜めるのはきついな」
 加賀さんがのほほんとして言った。
「洗濯機の使い方くらいわかるよね?」
 七世が眉間にしわを寄せて真剣に訊いた。
「わかるよ、私はね。でも五月の分の洗濯はしてあげるつもりないから」
「どうせ洗濯機回すなら一緒に洗えばいいのに」
 加賀さんが言うと、冷蔵庫を意味もなく開いていた五月が「そう!」と声を上げて割り込んできた。私が先にリビングにいたもんだから、加賀さんが来たというのに混ざれなくてずっとウロウロしていた。
「そう思うよね、誰でも。わざわざ分けて洗うとか、意地悪だし不経済!」
「意地悪とかじゃなくて私は不公平なのがいやなの。結局全部やらされるんだから」
「できる人がすればいいじゃん。適材適所だよ」
「適材適所の使い方、絶対間違ってる」
 久しぶりに会話をしたかと思えばまた言い合いの喧嘩だ。七世は知らん顔をしてテレビを眺めている。私と五月が喧嘩をするのはよくあることだ。
「お盆の三日間、二人とも仕事休みなの?」
 加賀さんがリビングのカレンダーを眺めて訊いた。両親の不在の日が赤丸で囲ってあり、これみよがしに父母旅行と書いてある。
「休みです」
「よし」
 加賀さんが手を打った。七世がハッとして加賀さんを見た。
「四人でどっか行くか」
 三人が息をのむ。テレビの音だけが、しばらく聞こえていた。先に声を上げたのは五月だった。
「行く! すごい、行きたい、賛成、それいい!」
 五月がはしゃいで足音をドタバタさせる。
「どっか行きたいとこない?」
「えっと、えっと、あ、海! あたし海行きたい!」
「海? 海水浴?」
「待ってください、お盆休みに二人で長野行く約束は?」
 七世が加賀さんの肩を掴んで必死に言い募る。そんな素敵な約束をしていたなんて。
「元々無計画だし、ちょっとくらい予定変更してもいいだろ」
「ちょっとじゃないです。二人と四人じゃだいぶ違う」
「七世! せっかく加賀さんが誘ってくれてるのに邪魔すんな!」
「五月は、ほら、あの人、誰だっけ、あの人とデートとかしないの?」
 あの人というのは彼氏の大月君のことか。名前を忘れ去られているのが不憫だ。
「あいつは夏休み中がっつりバイト。ざまあ」
 にやけながら答える五月。七世は口をパクパクさせてから、私を見た。
「六花」
 七世の言いたいことはわかる。二人のラブラブタイムを奪いたくない。でも。
 いちゃつく二人をそばで見られる。
 悲しい腐女子精神が邪魔して、なかなか遠慮の言葉が出てこない。
「あの、予定してたなら泊まるとこの予約とかキャンセルしなきゃいけないですよね」
 そこまでさせるのは、という意味で訊くと、加賀さんがあっけらかんとして答えた。
「いや、どこも予約してない。どっかラブホでも適当に入るかって言ってたから」
 七世が顔を覆い、五月は耳を塞いでわあわあ言って、私は身もだえた。
「あれ、賛成なのは五月ちゃんだけ? 六花ちゃんは行きたくない?」
「いき」
 即答しかけて言葉を切る。そして七世を見た。顔を覆ったままうなだれている。可愛い弟のために、ここは引くべきだ。
「たいです」
 いろんなものと格闘した結果、出た言葉だった。

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〈加賀編〉

 眼前に広がる一面の海。照り付ける太陽の日差しは、強烈だ。肌がじりじりと、焼けるような感覚。普段インドア派で、炎天下で活動する機会はほとんどない。海に来たのも小学生以来だ。
 お盆の時期だからか海水浴客は多くない。それでも人目を引いてしまう。
 仕方がない、と思う。
 五月も六花も容姿が整っている上にスタイルがいい。五月は白のホルターネックのビキニ、六花は黒のワンピース水着だ。美女二人を連れているのもそうだが、目立つのは倉知のせいもあると思う。暇さえあれば筋トレをしている根っからの体育会系だ。長身のシックスパックは男女問わず憧れの対象だ。
 他人の視線が倉知の裸体に注がれるのを、心を無にして甘んじて受け入れなければならない。ここは海だ。
「加賀さん、加賀さん、一緒に写真撮ろう!」
 出発時からずっとテンションマックスの五月がスマホを振り回して、レジャーシートの上で手招きをする。
「俺はいいけど」
「駄目」
 ビーチパラソルを砂浜に突き刺しながら、倉知が即答する。俺は肩をすくめた。
「ですよね」
「もう、感じ悪い!」
 二人の旅行が台無しになったのが悔しいらしい。四人でどこかに出かける機会はもうないかもしれない。最後だと思って楽しもう、と宥め続けて渋々受け入れはしたが、機嫌はよろしくない。
「いいもん、勝手に撮るもん。ッキャー!」
 五月が俺にスマホを向ける。倉知が素早く間に割り込んできた。
「あっ、変なの撮っちゃったじゃない!」
「加賀さん、これ着て」
 パーカーを差し出してくる。
「やだよ、暑い」
「でも、耐えられない。加賀さんの裸を他人に見られるなんて」
 きょろきょろして倉知が言った。
「みんな見てる。加賀さんを見てる。俺のなのに。俺の裸なのに」
 疑心暗鬼だ。誰も俺を見てはいない。
 スケッチブックを抱えてひたすら筆を走らせている六花が満面の笑みで「うぇーい」と謎の声を上げる。海に来てまでこれとは熱心だ。
「いいから着てください」
 俺に無理やりパーカーを羽織らせて、急いでジッパーを一番上まで上げると仕上げにフードを被せられた。倉知のだからぶかぶかで不審者のようだ。
「どうでもいいけど、あっつ」
「あんた独占欲強すぎ」
「うん、そう」
 口を尖らせて文句を言う五月に、真顔で頷いて、俺を抱きしめた。
「うあー、暑い、放せ、暑い」
 倉知の腕の中でもがく俺を、六花が興奮気味にスマホで撮影している。
「あのー、こんにちはー、ちょっといいですか?」
 見るからに遊んでいそうな若い男が二人、声をかけてきた。
「僕たちと一緒に遊びません?」
 ヘラヘラと笑いながら五月と六花を代わる代わる見て訊いた。こっちは男二人に女二人、普通に考えれば二組のカップルなのだが、想像力がないのか駄目元なのか、どうやらこれはナンパらしい。
「遊びません」
 六花がぴしゃりと言って、すぐに男たちから目を逸らす。値踏みするような目で見ていた五月も「無理、さよなら」と両腕でバツを作る。
「なんで男連れの女ナンパしようと思うかなあ」
 すごすごと去っていく男たちの背中を見ながら五月が鼻で笑う。それだけ二人がいい女だからだろう。
「ねえ、こんなとこでだべってないで泳ごうよ!」
 五月が立ち上がって、頭から浮き輪を被ると、キャー、と声を上げて海に突進していった。
「六花ちゃんは? 泳がないの?」
「どうぞ。私、荷物の番してます」
 パラソルの陰で涼しい顔をしてサングラスをかける。一人にすると男が寄ってきそうだ、と思ったが、六花なら上手く対処するだろう。
「倉知君、海入ろう」
「それ着たままですか?」
「脱ぐよ?」
「脱がないで。脱いだら泣きます」
「暑い、無理」
 パーカーを脱いで倉知に向かって投げ捨て、海に向かう。
「駄目です、ちゃんと着て。日焼けするし皮膚がんになるかも」
「なんだよそれ。過保護か」
 諦めない倉知が追いかけてくる。海に入ってしまえばこっちの勝ちだ。砂浜を全力疾走して海に突き進む。
 波打ち際に足を突っ込んだ瞬間、腹に倉知の腕が巻きついた。
「捕まえた」
「くそー、足でお前に勝てるわけねえ」
「ほら、いい子だから着て」
「しつけえな、お前も」
「ちょっとー、何イチャついてんのよー」
 浮き輪で浮かんでいる五月が手を振って叫んでいる。別にイチャついてはいない。
 倉知の手を振りほどいて後ろ向きで海に入っていきながら、牽制する意味で海水を両手でかけてやると、むきになってやり返してくる。
「うわー、これなんかすげえ青春ぽい。うける」
「ああもう、パーカーがびしょ濡れじゃないですか。これじゃ着せられない」
「こらー、イチャつくなってー!」
 五月が遠くでわめく。
「イチャついてないっての。なあ」
「イチャつくのはもう少しあとですよね」
 濡れた髪を撫でつけて、倉知が笑った。太陽の強烈な光に照らされた倉知の肉体は、いつにも増して逞しく見える。海水で濡れた肌に、降り注ぐ日差しが反射して光って見えた。
 健全なはずの映像が、俺の目には淫靡に映る。
「倉知君」
「はい?」
「なんかすげえ美味そうだな、お前」
「えっ」
 唇を舐める仕草をして見せて、笑った。倉知の顔がみるみる赤くなる。手を伸ばすと大げさに飛びすさった。
「な、何する気ですか」
「何もしないよ。外だし」
「そ、そうですよね」
「今日ごめんな。ほんとは二人旅だったのに」
「もう、気にしてません」
 頭を掻く倉知の顔を覗き込んで、頬を撫でる。機嫌が治ったようでよかった。顔を寄せて耳もとで囁いた。
「夜は二人きりだから」
 耳を押さえて崩れ落ちる倉知の顔面に、海水をぶっかける。
 とりあえず日が高いうちは、童心に帰って遊ぶことにした。

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〈五月編〉
 波打ち際で初々しいカップルのようにキャッキャウフフやっている二人を、浮き輪に乗って眺めていた。
 加賀さんと泊りで遊びに行く日が来るとは思わなかった。
 嬉しいような、悲しいような。だってずっと、片思いをこじらせていた。本当の意味で吹っ切れたのはつい最近のこと。彼氏を作って、自分で区切りをつけた。
 二人のイチャつくシーンを見て、もっとつらくなると思っていた。でも全然、ショックはない。もう大丈夫。あたしはもう、不毛な片思いを卒業したのだ。
 公衆の面前で乳繰り合っている(ように見える)二人を眺めていると、三人の女子が近づいてきた。尻の軽そうなギャルだ。距離があるから会話はよく聞こえない。でもあれは、ナンパだ。どうやって撃退するのか、と見ていると、七世が加賀さんを女たちから遠ざけるようにして立ち塞がった。
「うっわ、バレバレじゃん。あいついつもああなのかな」
 二人の関係を知っているからそう思うのだろうか。他人の目からは付き合っているようには見えないのか、女たちは引き下がろうとしない。加賀さん目当て、というより、どっちも狙っているからだろう。七世の体を、馴れ馴れしくベタベタ触り始める女たち。
 これは、まずい。前に友人の亜矢が七世にちょっかいを出したとき、加賀さんは静かに切れていた。今回は無防備な水着姿で、しかも女は三人。さてどうなる。
 不測の事態に備えてもう少し近くで見守ることにした。波を掻き分けて距離を詰める。そのとき、あたしの視界を突然巨大な黒い物体が遮った。
「やだ、鮫!」
 悲鳴を上げると、あはは、と二人分の笑い声が聞こえた。茶髪と金髪の男が二人、ビニール製の鮫に寄りかかって笑っている。
「え、本物だと思った? ごめんごめん」
 ニヤニヤして訊かれて、イラついた。
「ちょっとびっくりしただけだから」
「ねえねえ、さっきから一人だよね。一緒に遊ぼうよ」
 またナンパだ。
「悪いけど忙しいから。ちょっと、見えないんだけど。どいてよ」
 男たちの隙間から、七世が女に抱きつかれているのが見えた。あのバカ、隙がありすぎるんだよ、と舌打ちをした。
「この鮫、乗れるんだよ。乗ってもいいよ」
「は? ガキなの? ていうかホント邪魔、どいてってば」
 首を左右に振って二人を確認する。女に抱きつかれたまま石化したように硬直している七世と、女に腕を引かれている加賀さんが見えた。カッと、頭に血が上る。
「雑魚がっ、加賀さんに触るんじゃねえええええ!」
 大声で怒鳴って、ビニールの鮫をひっくり返し、両手を振り回して波を掻き分ける。うおおおお、と声を振り絞って両手両足をばたつかせ、全力で泳ぐ。足のつく深さのところまで来ると、浮き輪を腰に抱えたまま女たちを蹴散らすように突撃した。
「どけええええい!」
「きゃあ、ちょっと、何この人!」
 あたしの形相に恐れをなした女が、加賀さんから飛びのいた。
「お前ら……、散れっ!」
 指を突きつけると、一人の女が「あ」と気づいたように声を上げる。
「もしかしてどっちかの彼女さん?」
 まずい、という顔で女たちが七世から離れていく。
「違う」
 胸を張って答えてから、「いや、違わない」と言い直した。
「あ、あたし、この人の彼女」
 加賀さんの指をそっと握る。加賀さんはうんともすんとも言わない。顔を見上げると、美しい無表情がそこにあった。怒っている。
「今違うって言ったよね? なんなの? 勘違い女?」
 腕組みをした女が鼻で笑って、見下すような目で見てくる。
「彼女って思い込んでる痛い女」
 あはは、と爆笑する女たち。ぶち、と頭の中で何かが弾け飛ぶ。
「おいこら、ビッチ三姉妹。お前らの目は節穴か? カップルなのはどう見てもこの二人だろうが!」
 三人の女が笑うのをやめて、静かになる。唖然としている。しまった。悔しさのあまり、本当のことを言ってしまった。
「え?」
「何?」
「ギャグ?」
 顔を見合わせる三人。加賀さんがそれを見て、はは、と声を漏らして笑う。
「そう、こいつは俺のだから」
 七世の腕に手を絡めて、加賀さんが言った。朗らかな笑顔。でも目が、笑っていない。すごく、怒っている。笑顔だけど怒っているのが、この女たちにはわからないようだ。
 ギャグなのか本気なのか測りかねているらしく、再び顔を見合わせる女たちに向かって、加賀さんが訊いた。
「質問してもいい?」
「え、あ、はい、なになに? スリーサイズですかぁ?」
 真黒に日焼けした女が馬鹿みたいな科白を吐いた。加賀さんはテンションを変えずに淡々と続けた。
「水着の女が自分の彼氏に抱きついたら、どう思う?」
「え」
「すげえむかつくよね?」
「う」
「いいこと思いついた」
 加賀さんが髪を掻き上げて、輝く笑顔で言った。あまりのイケメンぶりに三人の女が目を細めてうっとりする。
「この辺に穴掘って首だけ出して埋めたら、波が来るたびに溺れてさぞかし苦しいだろうな」
 その爽やかな表情とはかけ離れた、耳を疑うような恐ろしい科白
「そういや君たち今めちゃくちゃ暇なんだっけ? 一緒に穴掘りしようか」
 一目散に逃げていった女たちの背中を見ていると、パチパチと手を打つ音が聞こえた。六花だ。パラソルの下で拍手をしている。
「素敵、感動した!」
 確かに、今の追い払い方は秀逸だったと思う。スカッとした。でも、すごく怖かった。太陽が燦々と降り注いでいるのに、寒くて身震いするほどだ。亜矢のときも思った。この人の怒り方は、怖い。
 加賀さんが「あー」と気の抜けた声を出して空に顔を向けた。
「収まらねえ、怒りが」
「あ、あの、すいません」
 なぜか七世が謝った。加賀さんはため息をついてから、七世の腹を悲しそうな泣き顔で撫でさすった。
「くそ、穢された。ファブリーズしまくりてえ」
「俺は布製品じゃ……、あの、あんまり激しくこすらないで」
 七世の腰が引けていく。シャッター音が連続して聞こえた。六花が二人にスマホを向けている。
 あたしには六花の境地にまでたどり着くことはできない。でも。二人がナチュラルにイチャつく様子を見て安堵した。
 他の女が加賀さんに触るのはどうにも我慢ならない。けど、七世が加賀さんに触れても嫌悪がない、ということに気づいた。むしろ、これでいい、と納得している自分がいる。
 あたしはもう立派に、二人の応援者だ。

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〈倉知編〉

 長野への二人旅が海への四人旅に変更になった。しかも両親の旅行に張り合って、二泊三日の日程だ。どうしてそうなるのか。腑に落ちずにがっかりしていたが、いざ四人で旅をしてみると、思ったより楽しかった。姉二人と時間を共有するのも久しぶりだ。悪くはない。
 旅のプランは五月と六花が責任を持って立てた。俺たちはそれに従うだけ。次はどこへ行くのか、何をするのか、開けてみてのお楽しみ、というのも新鮮でいい。
 海水浴のあとは温泉に向かった。宿泊先の宿は自然の中に佇むひっそりとした旅館だった。建物の脇には渓流が流れていて、静かで落ち着ける最高のロケーション。夜は二人きりでゆっくりとできる。
 と思っていた。
 とにかく今、後悔するのは何もかもを全部任せすぎたということだ。
「なんでだよ……」
 俺は頭を抱えて畳に膝をついた。
 仲居に案内されて、部屋の中に入った瞬間から嫌な予感はしていた。でも、まさか、こんなオチが待っていたなんて。
「見て見て、外すごいよ。絶景!」
 五月が窓を全開にして大げさな身振りで深呼吸をした。
「なかなかいい部屋だね。景色もいいし、綺麗だし」
 六花が急須と湯呑を準備しながらこっちを見て首を傾げる。
「二人とも荷物置いて座ったら?」
「ちょっと待って。確認させて」
 加賀さんが挙手をして言った。
「四人で寝るの?」
「はい、そうです」
 悪びれずに即答する六花。その口元がひくひくと笑いを堪えているのが見えた。確信犯だ。
「ベッド二つに、あと畳に布団二組敷くみたいですね」
「ベッドがいい人! はいはい!」
 五月が元気よく手を上げる。はあ、とため息が漏れた。ベッドだろうがなんだろうがどうでもいい。
「普通、二部屋取るよね?」
 責めるように俺が言うと、六花はニヤニヤして答えた。
「予約が埋まってて。妥協だよ、妥協。仕方なかったの」
 嘘くさい。
「いいの? 俺一応男だよ? ご両親が知ったら怒らない?」
 加賀さんが困った顔で訊いた。ごもっともだ。
「怒りませんよ。だって加賀さん、家族じゃないですか」
「そうだよ、家族だもん。なんの問題もないって」
 二人が「ねえ」と、俺に同意を求める。
「そうだけど、俺は加賀さんと二人きりがよかった」
 本音を呟くと、六花が目を爛々とさせる。
「大丈夫、邪魔しないから」
「露天風呂ついてる! やん、なんかエッチ!」
 五月のはしゃいだ声が響く。六花が俺と加賀さんを見比べて、にこりと笑った。
「あとで一緒に入りなよ」
 覗かれそうで入る気にならない。加賀さんも同じことを思ったらしい。苦笑いしている。湯呑に口をつけてお茶をすすっていた六花が、よし、と呟いて腰を上げた。
「五月、ロビーに浴衣取りにいこ」
「あ、選べるやつ? ついでにひとっぷろ浴びますか」
 せかせかと準備をする姉たち。
「というわけで、私たちちょっと大浴場行ってくるから。やるなら今だよ、わかった?」
「仕方ないからベッド使っていいよ」
「お、言うようになったじゃん、五月も」
「ふふん、まあね。ではごゆっくりー」
 戸が閉まって、足音が去っていく。加賀さんを見ると、目が合った。
「なんか、すいません」
「うん、いや、まあたまにはこういうのもいいかもね」
 さすが、寛大な心の持ち主だ。大して動じていない。ベッドの上に寝転ぶと、笑顔で俺を呼ぶ。
「おいで」
「え、でも、いつ戻ってくるかわからないし」
 もじもじしていると、加賀さんが吹いた。
「しないって。俺もそこまで強心臓じゃないよ」
 ベッドを叩いてもう一度「おいで」と言った。素直にベッドに膝をつくと、すぐさま手を引かれた。俺の体をまたいで加賀さんが上に乗る。
「あの、加賀さん」
 無言で俺の服の中に手を突っ込んでくる。
「えっと、しないんですよね?」
「うん、しない」
 そう言いながら服をめくり、胸までむき出しにされた。腹を撫でて顔を寄せる。ビクッと体が反応した。臍からみぞおちまでゆっくりと這い上がってくる舌の滑った感触。
「加賀さん……っ」
 上半身を起こして加賀さんの肩を押す。
「何してるんですか」
「消毒」
「消毒?」
「痴女に抱きつかれただろ」
 加賀さんが苦虫を噛み潰したような顔で舌打ちをする。
「思い出したら腹立ってきた」
 俺の手をどかして、腹筋に歯を立ててくる。
「痛い」
 声を上げる俺にかまわずに、腹への甘噛みを続け、次第に上へと移動し、乳首にまで到達する。抗いようのない強烈な性欲。今すぐ押し倒して抱いてしまいたい。
 でも、もし二人に見られたら。六花のことだからどうにかしてイチャつく場面を見ようと画策している気がする。たとえば気づかないうちに隠しカメラを設置されていたり、出たと思わせて実は室内に潜んでいたり、忘れ物をしたとか言って突然戻ってきたり。
 首を強く吸われる感覚。驚いて、思考を中断した。
「う、あっ……」
 音を立てて激しく吸われ続けて変な声を出すと、やっと解放してくれた。吸われていたところがジンジンしている。
「よし、できた」
「……何、なんですか」
「変な虫が寄ってこないおまじない」
 もしかしなくても、キスマークをつけられたらしい。これほどわかりやすく嫉妬して見せてくれるなんて、珍しい。嬉しくてニヤニヤしてしまう。加賀さんの肩と腰に手を回して抱きしめると、俺の上で脱力してうめくように言った。
「あー、つらい」
「え、どこがですか? どこか痛い?」
「じゃなくて、海でお前の体見てからずっとムラムラしっぱなしなんだよ」
「え」
「夜は二人っきりになれると思ってたのに」
 加賀さんが吐いた大きなため息が鎖骨にかかって、体が震えた。
「ぐっちゃぐちゃにやりまくりたかったのになあ」
 わざとか無意識かわからないが、声に色気が凝縮されている。ぞくぞくして身震いを抑えられない。このままじゃ、張りつめていたものが切れてしまう。
「加賀さん、とにかく、一旦離れましょう」
 肩を軽く叩いてうながすと、素直に俺からどいた。
 沈黙が、落ちる。
「あ、あの、景色、綺麗ですね」
「うん、都会じゃ見られないよな、こういうの」
 窓際に並んで立つと、腕が触れ合った。そこから全身に電流が流れたように心地よい痺れが広がっていく。慌てて距離を置いて座椅子の上で正座した。
「お茶、そうだ、お茶飲みましょう」
 六花が淹れたお茶が、湯気を上げている。暑いときに熱いものを飲むのも意外といいものだ。
「倉知君」
 加賀さんが外を見ながら言った。
「やっぱり、しよっか」
 口の中のお茶を、吹き出すところだった。慌てて飲み込んでむせていると、加賀さんがテーブルに両手を置いて腰を上げた。
「し、しません。落ち着いて、座ってください」
「我慢できる? 明日も多分、四人部屋だよ」
 う、と言葉に詰まる。布団を並べて、何もしないで寝る。そんな拷問みたいな夜が二日も続くのだ。いや、逆転の発想だ。二日我慢すればいいだけのこと。大体、同棲しているからと言って毎日欠かさずセックスしているわけじゃない。二日間のブランクくらい、普通にある。余裕だ。
「我慢、します」
 言い切ると加賀さんがゆっくりと立ち上がり、ボストンバッグを漁り始めた。
「あった」
 中から取り出した何かを、こっちに放り投げてくる。コンドームの箱だ。頭と股間に血が上る。内心で狼狽する俺を差し置いて、加賀さんがベルトに手をかける。
「あの、加賀さん?」
「俺は我慢できないんだよ」
「え、ちょっと」
「ごめん、めちゃくちゃ欲情してる」
 いつもの理性的な加賀さんはどこへ行ったのか。畳の上に後ろ手をついて、後ずさる。上半身裸の加賀さんが、俺の股間を足の裏で触れた。
「硬いな」
「えっと、そのうち収束します」
「そう? でも俺のこれは収まらないよ」
 ベルトを外すと、前をくつろげて勃起したものを放り出した。
「駄目ですって、片付けて!」
「往生際悪いな。ここは正直に反応してるのに」
 言いながら足をぐりぐりと動かしてくる。
「あっ、や、やめて、出ちゃう」
 脚にしがみついて懇願する。見上げると、恍惚とした表情で自分のペニスをしごく加賀さんと目が合った。ぎく、とした。まずい、これは危険なパターンだ。
「倉知君」
「駄目です」
「まだ何も言ってない」
「わかります、抱かせろって言うんでしょ」
「なんでわかった?」
 加賀さんの目がオスのものになっているからすぐにわかる。
「絶対、無理です。今はほんと、勘弁してください」
「わかった。じゃあ抱いてよ。それならいい?」
 それなら、と危うくうなずきそうになった。危ない。
「そういう問題じゃなくて、いつ二人が戻ってくるかわからないのに」
「十分、いや、五分あればいけるだろ?」
 股間で手を上下させる映像と、足の裏で踏まれる刺激の相乗効果で、俺の理性はぐらついて、あっけなく崩壊した。
 加賀さんを組み敷いて、荒々しくキスをする。ズボンと下着を剥いで、下腹部をまさぐった。指を二本、差し込んで、広げながら抜き差しをする。声を押し殺し、俺から顔を背けて小刻みに震えている。もう片方の手で硬くて熱い脈打つペニスを夢中でしごくと、加賀さんが身をよじって声を上げた。
「あっ……、ん、いい、もう、挿れて」
 がくがくと腰が揺れている。ファスナーを下げ、ペニスを取り出し、コンドームをつける。先端を押しつけて、腰を進める。誘い込まれるように、中へ、奥へと導かれる。
「う、ちょっと待って、すぐ、いっちゃいそうです」
 動きを止めて、呼吸を整える。加賀さんが涙目で俺を見て、自分からゆらゆらと腰を揺らした。
「いいから急いで」
 そうか、今は一秒でも早くイッたほうがいい。姉二人がいつ戻ってくるか、わからない。こんなところを見られたらトラウマで勃たなくなるかもしれない。
 加賀さんの体をホールドして、ガンガンに腰を打ちつけた。声を出さないように歯を食いしばる加賀さんが、自身のペニスを握りしめて、首をのけ反らせた。その喉元に顔を寄せ、吸いついた。一心不乱に、腰を激しく動かしながら音を立てて首を吸う。
「加賀さん、好き。大好き」
 二回、三回、と場所を変えて吸いつくと、加賀さんの体が痙攣した。中が収縮してきつく締めつけてくる。
 悲鳴と同時に、精を放つ。
 加賀さんの裸を抱きしめて、ふわふわとした幸福な余韻に浸っていると、電話の着信音が無遠慮に割り込んできた。俺のスマホだ。ポケットから引き出すと、画面には「六花」の文字が。
『そろそろ終わった?』
 期待を込めた声で、前置きもなく訊いてきた。
「お、終わったって……、何が? あの、な、何もしてないから」
 つい、嘘が出た。
『へえ? じゃあ今すぐ部屋に戻っても問題ないよね』
「えっ」
『戻るからね』
「ま」
 待って、と言い終わる前に通話が切れた。
「加賀さん、大変だ」
「聞こえたよ。それより倉知君」
 加賀さんが俺の下でもぞもぞと蠢いた。
「は、はい」
「ティッシュ取って」
 加賀さんの手が精液まみれだ。
「あと、抜いて」
「う、うわ、ごめんなさい」
 慌てて抜け出てコンドームを外してから、はたと気づく。
「これ、どこに捨てよう」
「普通にティッシュで包んでゴミ箱だろ?」
「ばれますよね」
「さすがにゴミ箱漁ったりしないんじゃない?」
「加賀さん」
「ん?」
「駄目だ、やっぱりばれちゃう」
「何?」
「加賀さんのフェロモンがダダ漏れです」
 火照った頬と、気だるげな視線。まさに今セックスしました、という雰囲気が全身から漂っている。
「俺人間だしそんなもんないよ」
「あるんです。美しさと色気が三割増しくらいだし、それになんか、すごい、いい匂いするし」
「気のせい気のせい。あ、そうだ。露天風呂ついてんだっけ」
 なんて暢気なんだ。一人でテンパる俺を置いてさっさと風呂場に行ってしまった。とりあえず窓を開けて換気をして、コンドームの箱を片付けて、加賀さんの脱ぎ散らかした服を回収して、と動き回っていると、「倉知君」と加賀さんの声が俺を呼んだ。
 風呂場のドアから顔を出して、手招いている。
「一緒に入ろうよ」
 唖然として「はい?」と聞き返した。
「二人で入れそうだよ」
「今、五月と六花が」
「うん、なあ別にさ、ばれるも何も知ってるんだし、今更隠さなくてもよくない?」
 冷静に諭されて確かに、と納得した。疚しいことはない。堂々としていればいい。
「そう、ですね」
「だろ。じゃあ入るぞ」
「はい」
 なんだか気が楽になった。
 ホッと息をついたとき、ガチャガチャと入り口のほうで音がした。二人が帰ってきたようだ。

+++++++++++++++++++++++++++

〈六花編〉

「あれ、加賀さんは?」
 部屋の中を見回した。加賀さんの姿がない。
「そこの、露天風呂」
 七世が目を泳がせて答えた。
「キャー、ということはすぐそこに裸の加賀さんが!」
 五月が風呂場のドアに張りついて、隙間から覗く仕草をする。
「ちょっと、覗かないでよ」
「それより」
 ベッドに目を向けた。上に人が寝転んだ形跡があるが、情事が行われたにしては整いすぎている。でも、さっき電話したときの様子から、何かあったのは間違いない。
 それに、七世の首に真新しいキスマークがくっきりとついている。イチャついていたのは明白だ。
「スリルあったでしょ」
 部屋の中を歩き回りながら言った。不自然に外を眺めていた七世がビクッとしてこっちを見た。
「な、何が?」
「誰かに見られるかもって。燃えなかった?」
「そんなの燃えるわけ……、あ、いや、その、何もしてないから」
 七世は嘘が下手だ。ここで、数分前まで、二人がまぐわっていた。想像すると楽しくなってきた。歩き回って妄想する私の足の裏に、何かがくっついた。見ると、開封済みのコンドームの袋。奇声を発するところだった。興奮を鎮め、呼吸を整えて、にやけそうになる顔面を摘まんでから言った。
「七世、証拠隠滅が不十分だよ」
「え、何……、あっ、わっ、それ」
 コンドームの袋をちらつかせると、窓枠に腰掛けていた七世が青ざめた。素早く飛んできて、私の手から袋を奪取した。そして、ゆっくりと私の顔色を窺って、はあ、とため息をつく。
「ああもう、やりましたけど、何か問題でも?」
 開き直って口を尖らせた。子どもみたいだ。
「ないよ。ただひたすら、尊いなって思うだけ」
「尊い?」
「とりあえずネタ提供ありがとうございます」
 お辞儀をすると七世が心底呆れた顔で「また描くの?」とぼやく。ゴミ箱にコンドームの袋を捨ててから、あっと目を剥いた。
「五月、何覗いてんの!」
 そういえば五月が静かだな、と思ったら本格的に隙間を開けて覗いていた。
「女が男の入浴シーン覗くって、どんな変態なんだよ!」
 七世が激高して素早くドアを閉める。
「ノンノン、そこにあるのはエロティシズムではない。芸術である」
 五月が鼻の下を伸ばして親指を立てた。
「わかる、加賀さんの裸体は芸術だよね」
 同意すると七世がうなずきかけてから、うわーと情けない声を上げて頭を掻き乱す。
「もう、二度と加賀さんを海とかプールとかに連れてかない!」
「えー、ケチ」
「なんとでもどうぞ」
「おーい、ちょっとー、さっきから待ってんだけどまだ? 一緒に入ろうよー、いい湯だよー」
 風呂場から聞こえてくる加賀さんの間延びした声に、二人の動きが止まる。
「待って、今っ、今行くから! 今すぐ行くからね!」
 浴衣を脱ごうとする五月の体をどけて、七世が風呂場に滑り込み、中から鍵を掛けた。
「あーっ、ずるい! あたしも入る!」
 ドアを乱打して本気で悔しがる五月をげんこつで黙らせて、しーっと唇に人差し指を当てる。
「黙って。聞こえないじゃない」
「……あたしよりりっちゃんのがたち悪いよね?」
 殴られた頭を押さえて被害者面をする五月をどけて、ドアに耳をつける。風呂に入る二人を盗み聞きするのは二回目だ。確かに、たちが悪い。それは認める。でもこんなにも素晴らしい人生のご褒美を目の前に用意されて黙って見過ごすわけにはいかない。
 これは大切な創作の糧。一見、非常識に見える私のこの行為は、多くの腐女子たちの願いなのだ。

+++++++++++++++++++++++++++

〈加賀編〉

「はい、お疲れー」
「かんぱーい」
 それぞれのグラスを合わせて乾杯をする。五月が嬉しそうにビールを一気飲みすると、「すいませーん、生ビールおかわりー」と仲居を呼ぶ。
 以前倉知と二人で泊まった宿とは違って、個室じゃない。テーブルと椅子が並んだ会場で、衝立もない。若い男女のカップル、老夫婦、家族連れでにぎやかだった。ライトアップされた中庭を売りにしているようで、なかなかに風情がある。
「ねえねえ、四人で写真撮ろうよ」
 五月がスマホを掲げて言った。
「お父さんとお母さんに送ってあげたら喜ぶと思うんだ」
 珍しく殊勝なことを言うな、と思ったが、グラスをテーブルに置いた六花が冷静に分析した。
「加賀さんとの写真撮って大月君に自慢したいだけじゃないの?」
「なっ……、なんでわかったの?」
 たじろぐ五月のスマホが、軽快な音を鳴らす。ほぼ同時に六花と倉知のスマホも何かを受信したようだ。
「あ、お父さんだ」
 五月が画面を見てほんのりと笑顔になる。
「先越された、ほら!」
 俺にスマホの画面を見せてくる。浴衣を着た倉知の両親が肩を寄せ合って笑っている写真だ。
「相変わらず仲良しだな」
「負けてらんないでしょ。すいません、写真撮ってもらっていいですか?」
 生ビールを持ってきた若い仲居にスマホを渡すと、席を立って俺の肩に手を置いて、顔を寄せる。
「りっちゃん、早く」
「もう、しょうがないな」
 箸を置いて立ち上がり、倉知の肩に手を回して笑顔を向ける。
「じゃあ撮りますよ、はい、バリー」
 バリ? バリ? と全員が不思議そうに反復したところでシャッター音が鳴った。
「もう一枚いきますか?」
「あ、はい、てかなんでバリなんですか?」
 五月が訊くと、仲居が誇らしげに言った。
「先月バリ島で挙式したんですけど、写真撮るとき、バリって言わされるんですよ。バリーってほら、笑顔になりますよね」
 へー、と気のない声で五月が相槌を打つ。先月挙式したばかりだからか、浮かれているように見えた。
「あっ、はいチーズのほうがいいですか? それともバリ? 多数決取りますか?」
 これほどどっちでもいい二択を迫られたことはない。
「じゃあバリで」
 六花が淡々と言って、俺たちはうんうんと同意する。果てしなくどうでもいい。
 写真を撮り終えた仲居が去っていくと、席に戻った五月が肩をすくめて言った。
「変な人。あ、でも写真は完璧。あたしは超可愛いし、加賀さんも超カッコイイし」
「どれ見せて」
 六花が画面を覗き込む。
「いいんじゃない」
 満足そうだ。
「よし、要に自慢する」
 五月がスマホを操作する。へえ、と感心した。ちゃんと大月のことを下の名前で呼んでやっているようだ。意外に上手くいっているのかもしれない。
「バリ島か……」
 しゃぶしゃぶ肉を鍋にくぐらせながら、倉知がぽつりと呟いた。エビのてんぷらを齧っていた六花が弟の小さな呟きを聞き逃さなかった。
「海外挙式って、いいよね」
 明るい声で言って、ニコニコしながら俺と倉知を交互に見る。倉知は考えていることが姉にバレて照れ臭そうだ。
「何よ、あたしまだ結婚しないよ?」
「あんたのことじゃない」
 六花が五月の肩にツッコミを入れる。
「七世と加賀さんに決まってるじゃない」
 うっとりとして言った。
「えっ、いつ? あんたマジで加賀さんと結婚すんの? 嘘でしょ、羨ましくて泣けてきた」
 目元を拭う五月。もう酔っているのだろうか。
「決めた」
 顔を上げた五月が箸を握りしめたこぶしを高々と突き上げて宣言した。
「あたしも結婚する」
「あのね、そんな張り合うみたいにするもんじゃないよ」
「だって悔しいじゃん。弟のほうが先に結婚するなんて」
「そう? 私は結婚する気ないけど」
「あの、別に俺今すぐするとは言ってないし」
 倉知が困った顔を俺に向ける。そもそも同性同士の結婚は、日本では認められていない。五月は真剣にわかっていなさそうだし、六花はわかっていて夢見がちな妄想をしていそうだ。そして倉知は。
 倉知は本当にわかっているのだろうか。式を挙げてもそれは、自己満足にしかならないことを。
 それでも。
 自己満足でもいい。俺はこいつが幸せで、笑っていてくれれば小さなことはなんだって構わない。
 テーブルの下で倉知の太ももに手を置いた。その手を握って微笑む倉知の目は、疑いようのない二人の未来を見据えている。

+++++++++++++++++++++++++++

〈五月編〉

 食事を終えて食事処から出るところで、写真を撮ってくれた仲居が頭を下げてあたしたちを見送った。
「美味しかったです」
「ごちそうさまでした」
 七世と六花が頭を下げる。
「どうもでーす」
 適当に挨拶をするあたしのあとで、加賀さんが他人にしか見せないよそゆきの笑顔を作り、会釈した。
「さきほどはありがとうございました。それと、ご結婚おめでとうございます。お幸せに」
「ふぁっ、はっ、はい! ありがとうございますっ」
 新婚のくせにデレデレになっている。いいのかよ、と鼻を鳴らす。でも仕方がない。加賀さんの営業スマイルは素晴らしく美しい。
「たとえば布団の訪問販売でさ」
 部屋に向かう途中で、廊下を歩きながら突然六花が妙な話を始めた。
「あるじゃん、何十万もするやつ。加賀さんがあれやったら最強じゃない?」
「おいおい、それ悪質なやつだよね」
 加賀さんが陽気に合の手を入れる。
「ああいう詐欺まがいのじゃなくても、訪問販売したら絶対営業成績トップだと思うな」
「わかる! 主婦もイチコロだよ」
 新婚の女ですら、ああなのだ。六花の言いたいことはわかる。
「加賀さんはそんなのじゃなくても成績優秀です」
 七世がなぜかむきになって言った。加賀さんがよしよし、と七世の頭を撫でまわす。
「営業先ですごい歓迎されたりしません?」
 六花が訊くと、加賀さんは首の後ろを撫でながら「そうかもね」と濁した。
「私この前、IT企業のカレンダーデザイン任されたんですけど、そのときひらめいたんです」
 うん、と加賀さんが促すと、六花が得意満面で続けた。
「高木印刷の来年のカレンダーは、加賀さんをモデルに起用したらいいんじゃないかって」
「え?」
 ポカンとする加賀さん。話がすり替わっていて、あたしも一瞬ポカンとなりかけた。でも六花のひらめきはすぐに理解できた。
「それ、いい」
 あたしが力強く乗っかると、六花がニヤリとした。
「でしょ」
「あれ? なんでうちの会社の話になってんの?」
「俺も加賀さんのカレンダー欲しい」
 七世が真顔だ。
「企業のカレンダーってさ、つまんないじゃん。風景の写真だったり、変な絵だったり、もらっても大体がゴミ箱行きだし、でも加賀さんをモデルに使ってたら……、どう?」
「欲しい」
「欲しい」
 七世とあたしの意見が合致した。
「りっちゃん天才。天才でおま」
「でしょ」
「いやいや、倉知家以外は需要ないから」
 加賀さんが笑ってエレベーターのボタンを押す。
「でも俺やっぱり、加賀さんのカレンダーがあちこちに配られるのはいやかも。うん、いやだ」
「はい出た独占欲」
 七世の背中を後ろから叩いたとき、あたしのスマホが音を立てた。画面を確認する。要からの電話だ。
「五月ちゃん、乗らないの?」
 エレベーターのドアが開いている。
「あたし、電話してから行くね」
「あ、彼だ。ラブラブじゃん」
 六花が茶化してくる。うっさい、と手を振って追い払う仕草をすると、小走りでその場を離れた。歩きながら、通話ボタンを押す。
「もしもし」
『あ、やっと出た!』
「あんたバイトは?」
『今終わって……、それより写真、ありがとう』
「加賀さんの写真なんて持ってないでしょ? 感謝しなさいよね」
『え、あ、うん、あ、そっか、加賀さんだ』
 様子がおかしい。
『それより浴衣が可愛くてさ』
「ゆか……、あっ、あたし?」
 意表を突かれて裏返った声が出た。
『うん、あ、海行ったんすよね? 写真ないんすか? 水着見たいな』
「それ! あたしも撮りたかったんだけど、七世に邪魔されて」
『加賀さんのじゃなくて、五月さんのね』
 またしても予想外の科白が出た。脳内で反復すると、急激に照れがきた。
「ちょっと、なんなのよさっきから!」
『えっ』
「このえろがっぱ!」
『えろがっぱ!?』
 スマホに向かって叫ぶと、前から来た宿泊客が驚いた顔でじろじろと見てきた。
「もういい。部屋戻る。今日加賀さんと一緒に寝れるんだから。ふふん、羨ましいでしょ」
 渾身の自慢のはずだった。加賀さんのファンなら、血反吐を吐いて羨むネタだ。大騒ぎで妬んでくる要を想像したのに、なぜか反応がない。スマホが無言になった。
「ちょっと聞いてる?」
『加賀さんと寝る? それ冗談すよね?』
「四人部屋だからみんな一緒だけど」
 言い訳のように付け加えた。何か、調子が狂う。
「何よ、もっと羨みなさいよ」
『俺、いやっす』
「はあ?」
『五月さんが男と同じ部屋で一晩過ごすなんて』
 ぞくっとした。立ち止まって腕を撫でさする。
『いや、あの、加賀さんが五月さんに何かするとか思ってないっす。でもなんか、やっぱり複雑で』
 ああ、こいつは。加賀さんよりあたしが好きなのだ。
 でもあたしは? 要のことを、ちゃんと好きなのだろうか。まだよくわからない。ただ、素の自分をさらけ出せて、それでも嫌われないから気が楽だとは思う。他の男にはない安心感もある。
 別れたくないと思う。離れている今、声を聞いて顔を見たいと思う。
 それだけで充分だ。
『あの、もしもし? 怒った?』
「怒ってない」
『俺、うざかったすか?』
「そうでもないよ。あんたあたしのこと好き?」
『そ、そりゃ好きっすよ』
「じゃあ、大学卒業して、まだ付き合ってたら結婚しよっか」
 普通、こんなことを言われたらドン引きだ。でも要は引くどころか大いに盛り上がって大声で宣言した。
『する!』
「よし、約束ね」
 過去、男と付き合った最長記録は七か月。四年持ったらそれは本当に、潮時だと思う。別れない保証はない。でもあたしは四年後が、今から楽しみで仕方がない。

+++++++++++++++++++++++++++

〈倉知編〉

 食事のあと、温泉に入ることにした。五月と六花は当然のように、もう一度入ると言って、一緒に部屋を出た。
 加賀さんと温泉に来るのは二回目だ。前回は付き合いたての頃で、あのときも今と同じように他人に加賀さんの裸を見せたくなくてやきもきしていた。
「もっとリラックスしろって。誰も見ないよ」
 自分が盾になり、終始人の視線を遮ろうとする俺に、加賀さんは呆れていた。そんなことを言われても、念には念を入れておきたい。
 入浴を終えて部屋に戻る途中で、加賀さんが言った。
「ていうかむしろ見られてるのお前だろ」
「……え?」
「筋肉すげえもんな。お前くらい腹筋バキバキな奴珍しいから」
「はあ、そうですか?」
「二度見されてんのに気づかないの?」
「全意識を加賀さんに注いでるから気づきません」
「あー、ですよね」
 遠い目をして笑う。浴衣の袖に手を入れて小さく息を吐くと、肩を軽くぶつけてきた。
「いつまでこんなふうにお姫様扱いしてもらえるのかな」
「お姫様」
「うん」
 そう言われると俺の行動は姫を守るナイトのそれかもしれない。
「なんだかんだでお前に甘やかされんの好きだしな、俺」
 キュン、と胸が鳴る。可愛い。
「加賀さんは、これから先もずっと俺のお姫様です」
 通路の前後に誰もいないことを確認して、肩を抱き寄せる。加賀さんが引き気味に「お、おう」と目を背けた。
「自分で言っといて、ないわ、お姫様は」
「いや、ありですよ」
 高貴な雰囲気があるからお姫様でも違和感がない。ドレスを着てお姫様に扮する加賀さんはさぞかし綺麗だろう、と言ったら不快にさせるだろうか。
「姫」
「何?」
「あ、姫で返事した」
「お前な」
 脇腹に加賀さんの肘鉄が突き刺さる。
「冗談抜きに、いつまでも大事にするし、死ぬまで守ります」
 心変わりはしない。俺は永遠にこのままだ。
「うん、俺も。俺もお前を守るよ」
 見つめ合う。加賀さんの目は、吸い込まれそうなほど、美しい。肩に手を置いて、顔を近づけたところで腹にパンチが飛んできた。
「痛い」
「見られたらどうすんだよ。部屋戻るぞ」
「はい。でも二人っきりになれないんですよね」
「あー、まあ、そういう日もあっていいんじゃない。同棲してると我慢する機会もないんだし」
 加賀さんはいつでも物事を楽観的にとらえる。見習いたい、と思うのに、どうにも俺は悲観的になってしまう。二人きりになりたい。今、キスしたいし抱きしめたい。それができないのは苦しくてつらい。不幸だ、と感じてしまう。
 二人きりになれるのは、エレベーターの中だけ。一階から二階に上がるわずかな時間に、思いっきりキスをした。壁に押しつけて、舌をねじ込んで、絡ませる。加賀さんが俺の頭にしがみついたところでエレベーターが止まり、ドアが開く。人がいなくてよかった。
「足がふらつく」
 加賀さんが上気した頬で俺の浴衣の袖をつかむ。その仕草が可愛くて顔が緩む。お姫様抱っこでどこかに連れ去りたい。
「あれ、二人ともいないみたい」
 部屋に戻ると、五月と六花の姿がなかった。女性の風呂は長い。
「加賀さん」
「ん」
「今なら二人きりです」
 後ろから抱きついて、うなじに唇を押しつけた。
「こらこら、さっきやっただろ」
「足りません」
 浴衣の襟から手を差し込んだ。胸を撫でて乳首を摘まみながらうなじに舌を這わす。
「倉知君、ストップ」
「もうちょっとだけ……」
 音を立てて首に吸いついていると、加賀さんが足の甲を踏んできた。その攻撃にめげずに今度は手を下のほうに差し入れた。
「やめろって。馬鹿、揉むな」
「加賀さん、色っぽい。いい匂い」
 はあはあ言って自分の股間を加賀さんの尻に擦りつける。このままじゃ止められなくなる、と思うのに、自制できない。浴衣をまくりあげて、壁に手をつかせた格好で、後ろから……、とよからぬことを考えていると、突然「あー!」と叫び声が上がり、ベッドの掛布団が宙に舞った。真っ赤な顔の五月がベッドで肩を上下させている。
「もう限界、息苦しくて死ぬ!」
「さつ、き」
 ハッとした。ということは隣のベッドには。布団の隙間から覗く目と視線が合った。
 先に帰っていた姉たちが隠れていたのだ、とやっと気づいた。
「だからやめろって言ったんだよ」
 加賀さんが俺の手から逃れて、乱れた浴衣を直した。力が抜けて、床に尻をつく。起き上がりつつあった股間はすっかり萎えてしまった。
「チッ、惜しかった」
 六花が布団から顔を出して悔しそうにベッドに拳を叩きつけた。
「悪趣味なことしないでよ」
 文句を言うと、ニヤニヤ笑いで「ごめんね」と謝った。
「驚かせるつもりで隠れてたんだけど、出るタイミング逃しちゃって」
 怪しい。最初から俺たちがイチャつくのを見越して隠れていたに違いない。
「加賀さん、私たちが隠れてるのわかったんですか?」
 六花が訊くと、加賀さんは笑って頷いた。
「なんかすげえダースベイダーの音みたいなのしてたから」
「えっ、それあたし? あたしの鼻息?」
「くっ、多分私の鼻息だ」
「いやごめん、冗談。気配でわかったんだよ」
 なんだーと二人が胸を撫でおろす。気配なんて、俺にはまったくわからなかった。
「さて、じゃあ寝ますか」
 加賀さんが言って、布団に寝転んだ。部屋を空けていた間に敷いてくれたらしい。二組の布団が並んでいる。
「もう寝るの? じゃあ、あたしが添い寝してあげる」
 五月がベッドから飛び降りて加賀さんの隣に寝転んだ。うつぶせになった加賀さんが、じっと五月を見つめる。
「あっ、やばいこれドキドキする」
「倉知君が凶悪な顔で見てるよ」
「何よ、ちょっとくらい夢見させてよ」
 俺は無言で五月の体を抱え上げ、ベッドに放り投げた。ベッドの上でバウンドする五月の体。
「ちょ、大丈夫? 激しくない?」
 加賀さんが心配そうに言った。俺と五月は小さい頃から取っ組み合いの喧嘩をしたり、柔道技を掛け合ったりしている。これくらいなんともない。
「何よ、浴衣が崩れちゃったじゃない」
「もう寝るけど絶対加賀さんにちょっかい出さないでよ」
 念を押すと五月は布団に潜り込みながら「へーい」とあくび交じりの返事をした。今日は目一杯遊んだからさすがの五月も疲れたのだろう。電池切れという感じですぐに寝息が聞こえてきた。
「明日何時起き?」
 スケッチブックにペンを走らせている六花に訊いた。
「七時でいいかな」
「明日はどこ行くの?」
「それは明日のお楽しみ」
 スケッチブックから顔を上げた六花が、眉を下げて口元隠し「あらやだ、可愛い」とベッドの上で身を乗り出した。視線の先には加賀さんが。こっちもすでに眠っている。寝つきが異様にいいから、布団に入って一分以内に眠れるという特技を持っている。
「寝顔撮っていい?」
「駄目」
 瞬時に答えた。六花が肩をすくめて、スケッチブックをめくった。
「描くのはいいよね」
「いいけど……、寝ないの? みんな寝たよ」
 もう一組の布団に横になって、訊いた。六花はいつも寝るのが遅いからまだ眠くないのかもしれない。
「もうちょい。ねえ、七世」
「何?」
「寝静まったら布団の中で声殺してこっそりエッチとか萌えるんだけど、どう?」
「な、何それ、なんの提案だよ」
「夜中に布団が怪しく蠢いてても気づかないふりしてあげるから」
「あの、俺、もう寝る」
 布団をかぶって目を固くつむる。六花の声が優しく「おやすみ」と囁いたのが聞こえた。
 加賀さんと対照的に、俺は寝つきが悪い。この日もなかなか眠れなかった。布団も枕も違うと、なおさらだ。
 やがて、部屋の明かりが消えて、静寂が訪れる。隣を見る。暗闇の中で、そっと布団を抜け出して、加賀さんの体に寄り添った。体温に、安心する。
 手探りで加賀さんの手を見つけ出し、握り合わせる。たったそれだけで、体中に幸福感が広がって、胸が熱くなる。なぜだか、泣きそうだ。体を繋げる必要なんて、ない。これだけで、実感できる。俺はこの人が、大好きで、大切で、たまらない。
 すぐそばで穏やかな寝息が聞こえる。
 おやすみなさい。
 目を閉じて、心の中で、つぶやいた。

〈おわり〉
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