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〈加賀編〉
俺はあまり、記念日や特別な日を気にするタイプじゃない。他人の誕生日も覚えないし、自分から積極的に何かアクションを起こすことはなかった。
でも倉知の誕生日は別だ。八月十八日は、三百六十五日のうち、もっとも重要な日になった。
何かしてやりたくて、随分前からそわそわしてしまう。
付き合って最初の誕生日は高校三年のときだった。とにかく本人が一番喜ぶものをあげたいと思った。好みをリサーチした結果、倉知が喜ぶものは何よりも身近にあることに気づく。
俺だ。
何よりも優先して、何よりも必要としているのは俺で、むしろ他に何もいらないんじゃないかと思うほど、愛が深い。
かといって自分を差し出すのもおかしな話で、そもそもすでに身も心も倉知のものだ。プレゼントとしては成立しない。
何が欲しい? と訊いて、欲しいものを渡すのもつまらないし、スマートじゃない。煮詰まった結果、当日有休を取って一緒に過ごす、という若干傲慢なプレゼントを用意したのが去年のこと。
当時まだ一緒に住んでいなかったから大喜びしていたが、今年は状況が変わった。同棲していてプレゼントが有休なんて、ありがたみはないだろう。
どうしたら喜んでもらえるか。一か月前から悩み続けている。
「なんか欲しいものとかないかな」
最後の手段で倉知をもっともよく知る人物に訊くことにした。
「悩む必要ないじゃないですか」
食後のカフェラテに口をつけて、六花はニヤリと笑った。
「全裸になってベッドで待ってるだけでいいんですから」
「いや、そういうんじゃなくて、もっと普通っていうかまともなやつがいいんだけど」
「去年、前日から泊まって有休取ってイチャイチャコースでしたよね」
倉知は姉に包み隠さなすぎる。苦笑して目を逸らす。隣のテーブルに座っていた女性と目が合った。会話を聞かれていたのか、戸惑った様子で赤面し、読んでいた文庫本に慌てて目を落とした。
六花の勤め先はうちの会社のすぐ近くにある。休憩時間が合うときに、たまにこのカフェを使っているが、この店の欠点はテーブルの間隔がやけに狭いところだ。会話が筒抜けだ。
「七世、めちゃくちゃ喜んでましたよ」
「うん、でも今年同じことしてもそれほど嬉しくないかなって」
「同棲してるから? 甘いですね」
六花の目が怪しく光る。
「あの子が一番喜ぶものは、加賀さんとの時間ですよ。二人っきりのね」
うっとりと言って、何か思いついたような顔をした。
「じゃあコスプレはどうですか?」
「コスプレ?」
「今描いてる漫画、コスプレでエッチさせてて」
六花が声のボリュームを下げてヒソヒソ声で言ったが、隣で読書中だった女性が小さく「えっ」と声を上げた。こっちの会話に集中しているらしい。ちら、と横目で見ると、気まずそうに視線を泳がせ、本で顔を隠す。
六花は隣の女性には無頓着だった。
「後付けでノンフィクションにしてもらおうかな」
「貪欲だね」
「六花ちゃん!」
背後から声が上がった。男が俺たちのテーブルに駆け寄ってくる。黒縁眼鏡で、小太りの中年男だ。
「山中さん」
六花の知り合いらしい。男の名を呼ぶ声は、冷めていた。
「この、この人は? 彼氏? なんか前も、この人とこの店にいたよね?」
挙動不審な男が、俺を見て蒼白になる。六花がちら、と俺に目配せをしてから、肩をすくめて答えた。
「彼氏ですけど、何か?」
平然と嘘をつく六花。男を見上げると、俺を凝視していた。目の奥にたぎる、嫉妬。なるほど、と理解する。
「こんにちは」
軽く頭を下げて、微笑んだ。男がたじろぐ。おどおどした態度で「こ、こんにちは」と返してくる。
「え、なんで? 彼氏いないって言ってたじゃん」
泣き顔で六花を責める男のこぶしが固く握られているのを見て、不安がよぎる。
この男は六花に惚れていて、多分言い寄っている。それを疎ましく思っていて、俺を彼氏だと偽った。変に逆恨みして、六花の身に危険が及ばなければいいが。
「言いましたっけ」
ケロッとして言う六花が憂い顔を作る。
「あと五分したら戻りますから、もう少し二人で話しててもいいですか?」
男が絶望的な表情になる。うなだれて、とぼとぼと去っていく。
「合わせてくれてありがとうございます」
男が店から出ていくと、六花がすまなそうに言った。
「あの人、同じ会社の先輩なんです」
「好かれてるね」
「そうみたいですね」
どうでもよさそうに言うと、「そんなことより」と身を乗り出した。
「どんなコスプレがいいかなあ」
「しないよ?」
「えっ、しましょうよ。あ、女装しませんか?」
「しません」
えー、と本気で残念がっている。俺が女装して倉知が喜ぶとは思えない。
結局プレゼントは決まらないまま六花と別れ、仕事に戻った。頭の中には常に「何にしよう」のモヤモヤが居座り続けた。
誕生日まで一週間を切っても、決まらない。
俺以外で何をあげたら喜ぶのか。
服はどうだ。つまらない。
時計は父に先を越された。
「あっ、筋肉か」
「え? なんですか?」
夕食の最中に小さく叫んだ。倉知が不思議そうに俺を見る。
「筋肉?」
「違った。筋トレ」
倉知の顔を見ながら何がいいか考えていたら、筋トレの道具はどうだと思いついた。倒れるだけで腹筋が鍛えられるあれがいい。やっと有力な候補が見つかって安堵する俺を、倉知がじっと見る。
「加賀さん」
「うん?」
「もしかして俺の誕生日プレゼントで悩んでますか?」
八月十八日が近づくにつれて落ち着かなくなっていたのは俺だけじゃない。本人も何か言いたそうにしている雰囲気があった。
「うん、あー、なんか欲しいの?」
欲しいものがあるならそれでいい。
「リクエストがあります」
「お、何」
「去年と同じがいいです」
答えてから、恥ずかしそうに皿の上のミニトマトを箸先で転がした。六花の得意げな顔が、浮かんで消える。さすが弟を知り尽くした姉。
「俺の有休?」
「はい、あ、でも、仕事に支障があるなら」
「ないよ。ていうかなんか欲しいものないの?」
「ないです」
「倒れるだけで腹筋鍛えられるやつ欲しくない?」
「え? いえ、腹筋鍛えることに不都合感じないんで」
なんだそれ、と笑ってから、そりゃそうだ、と納得する。それにこれ以上鍛える必要もない。
「他になんか欲しいものない?」
「何もいりません。誕生日に加賀さんがそばにいてくれるのが何よりも嬉しいです」
幸せそうな表情の倉知を見て、胸を押さえる。
「あー、キュンとした。なんでそんな可愛いんだよ」
「可愛くないですから」
可愛い、と言うと可愛くない、と照れてそっぽを向くこの流れも毎度のことだが可愛い。
「なあでも、ほんといいの? 同棲して毎日顔合わせてんのに、プレゼントが有休って」
「最高です」
満足そうに柔らかく笑う倉知を見ていると、こっちまで幸せになる。
倉知への誕生日プレゼントは、自分自身のご褒美でもあるのだ。
〈倉知編〉
日付が変わって八月十八日になった。
「誕生日おめでとう」
ベッドの中。隣に寝転んで笑う加賀さんが、俺の頭を撫でた。
「ありがとうございます」
「十九歳か。まだ十代ってのが怖いよな」
「怖い、ですか」
「だって俺来年三十路だよ」
加賀さんは俺との年の差をよく気にする。十歳差、ということに気後れを感じているようだが、俺にはそれのどこが問題なのかがわからない。
でも永遠に、二人の年齢差が埋まることはない。だからきっと、この人はそれを気にし続ける。
不安に感じることはない、と安心させてあげられるのはいつになるのだろうか。今の俺ではまだ無理だ。加賀さんから見れば俺はまだ二十歳前の子どもで、何を言っても説得力に欠ける。
「加賀さん、変わりませんよね」
「そうかなあ」
「出会った頃のままです」
電車で見つけた美しい人は、あの頃のまま、いや、それ以上の魅力で溢れている。ベッドの脇で淡く光るスタンドライトが、白く滑らかな素肌をぼんやりと浮かび上がらせていた。
「あの、電気、明るくしていいですか?」
「え、なんで。寝ないの?」
「寝ません。もっとよく見たい」
加賀さんは困った顔で、それでも「わかった」と了承してくれた。
部屋の明かりを煌々と灯すと、加賀さんは一瞬まぶしそうに顔をしかめてから、にこりと笑った。
「誕生日だし、今日一日はなんでも言うこと聞いてやるか」
俺は物欲がない。
でもそれ以外の欲求は、人並み以上にある。
「なんでも、ですか」
俺の目が欲望でギラリと光るのを、加賀さんは見逃さなかった。慌てて前言撤回しようとする。
「やべえ、なんでもは言い過ぎた」
「なんでもですね、ありがとうございます」
「待て、なんでもって言っても限度があるからな。全裸で町内ダッシュとか言われてもしないからな」
「そんなことはさせません。加賀さんの裸は俺だけのものですから」
「お、おう」
「なんでも……、なんでも言うこと聞いてくれる加賀さんかあ」
ムラ、と性欲が湧いた。加賀さんはそれを敏感に察知する。
「あんまえげつないのなしな?」
「大丈夫です。とりあえず俺の上にまたがってください」
「大丈夫じゃなさそうなんだけど」
躊躇する加賀さんの手首を引き寄せる。
「あ、お前、なんでもう勃ってんの」
「なんでもしてくれる従順な加賀さんを想像したらこうなりました」
「さっきやったばっかなのに」
呆れた顔で俺の股間を見ながら、またいで上に乗る。数分前まで絡み合って愛し合っていた。その名残が、加賀さんの体のあちこちに刻まれている。
「どうして欲しい?」
純粋な質問のつもりだろうが、この態勢でそう言われると、いろいろと煽られる。俺がつけた痕を指でなぞりながら、腹の底にくすぶる性欲を、苦労して抑制する。
「とりあえず、俺のスマホ取ってください」
サイドテーブルに二人の携帯電話が仲良く並んでいる。加賀さんが「あ?」と怪訝そうに眉を寄せた。
「スマホなんてどうすんだよ」
「撮影します」
絶句すると、腹に拳を叩きつけてきた。
「誕生日なのに痛い」
「馬鹿、却下だ却下」
「でもなんでも言うこと聞くって言いましたよね」
「流出したらどうすんだよ」
「どうやったら流出するんですか?」
「そういう質問が出る時点でアウトだからな」
確かに俺は、その手の知識に疎い。加賀さんの痴態が流出しても困るので、諦めることにした。
「スマホじゃなくて、デジカメとかなら撮ってもいいですか?」
「ハメ撮りしたいの?」
「ハメ撮り?」
はめて撮ることだよ、と雑に説明された。
「それ撮って何に使うつもり?」
何かに使うというより、いつでも見られたら最高だと思っただけだが、加賀さんは「あ、いい。答えなくていい」と顔を覆った。
「ていうかデジカメ持ってた?」
「持ってません」
「何それ」
呆れた声を出して、目をこする。そして大きなあくび。
「眠くなってきた」
「そんな」
「もう寝るか」
一晩中イチャつける、抱きしめて、キスして、堪能できると思ったのに。欲情しているのは俺一人らしい。
「夜は倉知家で誕生日パーティだし、早起きすっか」
淡々と言う加賀さんが、俺を見下ろして「はは」と笑った。
「露骨にがっかりしてんな」
「だって、せっかく有休取ってくれたのに、実家帰らなきゃいけない」
毎年、家族の誕生日はみんなでお祝いしている。先週、「食べたいものない?」と母から連絡がきて初めて、大学生になって家を出てもそれを続けるつもりらしいと知った。
「みんなお前が大好きだしな」
わかっている。俺だって、家族も大事だ。
「でも加賀さんとの時間がなくなるのが惜しいです」
「じゃあ今から朝までセックスする?」
する、と急いで言おうとする俺のペニスを、加賀さんがつかんだ。
「誕生日じゃなくてもちょいちょいオールでやってるよな」
何も言い返せない。心当たりがありすぎる。
「いいよ」
右手を上下させて、目を細めて綺麗に笑った。
「気が済むようにしたらいい。大体のことは言うこと聞くから」
「じゃあ」
唾を飲み込んで、「舐めてください」とお願いする。
「え、普通だね。そんなんでいいの?」
「一体何を要求されると思ったんですか」
「すげえ変態臭いこと」
「参考までに教えてください」
加賀さんが俺の股間に顔を寄せて、うーんとうなる。
「スカート穿け、とか」
「スカート」
つい反応してしまった。興味があると思われるのも恥ずかしい。じっと俺の顔を確認する加賀さんに、慌てて首を横に振って見せた。
「言いません、そんなこと」
ふうん、と疑わしそうに俺を見ながら、先端を舐めてくる。
「別にいいけどね、穿いても」
「えっ、いいんですか?」
「何その期待した声」
「してません」
「そもそも持ってないっての」
上目遣いで俺を見て、口中に導かれる。快感に酔いながら、荒くなっていく呼吸を意識して整える。
「加賀さん」
「ん」
咥えたまま返事をして、動きを止める。
「変態臭いお願いしていいですか?」
「んあ、何、怖いな」
唾液で濡れた俺のペニスをしごきながら、半笑いになる。これを言ったら、引かれるかもしれない。でもこんなときじゃないと、言えない。
「あの、その」
「なんだよ、遠慮すんな」
「えっと、あの、そのままで、お尻こっち向けてもらっていいですか?」
俺が言わんとすることに、加賀さんはすぐに気づいた。
「シックスナイン?」
「うう、引かないで、ください」
目を逸らして小さくうめく。
「引いてないけど。なんだよ、これくらいで変態なんて言わないよ」
笑いを含んだ声に励まされ、ホッとして視線を戻すと顔の前に加賀さんのお尻があった。思わずわしづかみにして吸いついた。
「ちょ、激しい、激しい」
笑い声を上げる加賀さんが、四つん這いで俺を咥える。根元まで全部、温かくぬめった感触が包み込み、絶妙に蠢く舌が、絡みつく。
グラグラの理性をなんとか保ち、負けじと加賀さんのペニスに舌を這わす。育ちつつあるそれを舐めながら、穴に指を押し込んだ。俺を咥えている加賀さんの喉から、くぐもった声が漏れる。
さっきまで俺が入っていたそこは、柔らかくほぐれていた。指はスムーズに、奥へと飲み込まれていく。
加賀さんのいいところはよく知っている。指の腹で押してやると、体を震わせ、反応する。指の動きを止めずに、ペニスの裏筋を舌先でくすぐるように舐めると、四つん這いになった加賀さんの膝が、ガクリと揺れた。
「あっ……、ちょ、やばい、それ」
「気持ちいいですか?」
「ん、ん、うう……」
答えになっていないうめきが返ってきた。視線を下に移して、加賀さんの表情を確認する。体をくの字に曲げて、俺のペニスを握りしめて悶絶する様子を見ていると、辛抱できなくなった。
指を入れている場合じゃない。
引き抜いて、俺の上でくたくたになっている加賀さんの体を丁寧に仰向けにすると、腰を引き寄せて股を割り開いた。
「生で、挿れます」
挿れていいですか、というお伺いではなく、挿れます、と言い切った。加賀さんは駄目だとは言わなかった。潤んだ目で俺を見て、薄く開いた唇をかすかに動かした。
「早く」
吐息のような声。凶悪な性欲が、全身を駆け巡る。
気がつくと、中に入っていた。無我夢中で腰を振り、愛しい人の名前を連呼して、肩に噛みつき、細い体を掻き抱いて、中で、果てた。
精を放った直後に思考能力を取り戻した俺は、自己嫌悪でひどく落ち込んだ。枕で顔を隠し、「違う、違う」と何度もつぶやく俺の胸を、加賀さんの手が撫でた。
「違うんです」
跳ね起きて、弁解する。ベッドの上で正座する俺を、加賀さんはおかしそうに見上げた。
「何が?」
「俺、もっと、まったりと、じっくりと、メロメロにさせたかったんです。メロメロな顔、明るいとこで観察したかった」
「はあ、スローセックスってやつ?」
「そうです。こう、なんていうか、お互いに好き好き言い合って、抱き合いながらついばむような小鳥キスをして」
力説すると、加賀さんがバフーッと盛大に吹き出した。
「ごめん、面白い」
「何がですか」
笑いごとじゃないし、面白くもない。せっかくの誕生日なのに、思うようにいかなくて心からがっかりした。
「倉知君」
寝転がったままじりじりと近づいて、正座する俺の膝に頭をのせてきた。にこりと天使の微笑みを浮かべる加賀さんが、まっすぐ俺を見上げてくる。
「好きだよ」
胸がきゅ、と締めつけられる感覚。異様な息苦しさに、呼吸を止めていることに気がついて、慌てて息をする。
「あれ、リターンがない」
ハッとした。大急ぎで「好きです!」と声を張り上げた。満足そうに、加賀さんが笑う。
「うん、好き」
「好きです、加賀さん」
泣きそうになる。堪えていると、加賀さんが体を起こして俺の首に抱きついてきた。
「好き、大好き」
顔を覗き込んでそう言うと、ちゅ、と軽く唇にキスをくれる。触れるだけのキスを何度も続けたあとで、鼻先でもう一度「好きだよ」と囁いた。その表情が、声が、男前すぎて、顔が熱くなる。無言で加賀さんを抱きしめて、頬ずりをした。
「倉知君、大丈夫だから」
何か、慰められた。俺の後ろ頭を撫でてから、クスクス笑って加賀さんが言った。
「俺、もうメロメロだよ?」
やられた。
完敗だ。
メロメロなのは、こっちだ。骨抜きだ。もう、敵いっこない。やりたかったことを全部、やられてしまった。理想的で、格好良くて、甘ったるい。
腰が砕けてくたくたになる俺を、受け止めるその力強さまで完璧だ。
「誕生日、おめでとう」
あと何回誕生日を迎えれば、この人を見返せるのだろう。
そのときが来るまで、絶対に、手放してやらない。
〈おわり〉
俺はあまり、記念日や特別な日を気にするタイプじゃない。他人の誕生日も覚えないし、自分から積極的に何かアクションを起こすことはなかった。
でも倉知の誕生日は別だ。八月十八日は、三百六十五日のうち、もっとも重要な日になった。
何かしてやりたくて、随分前からそわそわしてしまう。
付き合って最初の誕生日は高校三年のときだった。とにかく本人が一番喜ぶものをあげたいと思った。好みをリサーチした結果、倉知が喜ぶものは何よりも身近にあることに気づく。
俺だ。
何よりも優先して、何よりも必要としているのは俺で、むしろ他に何もいらないんじゃないかと思うほど、愛が深い。
かといって自分を差し出すのもおかしな話で、そもそもすでに身も心も倉知のものだ。プレゼントとしては成立しない。
何が欲しい? と訊いて、欲しいものを渡すのもつまらないし、スマートじゃない。煮詰まった結果、当日有休を取って一緒に過ごす、という若干傲慢なプレゼントを用意したのが去年のこと。
当時まだ一緒に住んでいなかったから大喜びしていたが、今年は状況が変わった。同棲していてプレゼントが有休なんて、ありがたみはないだろう。
どうしたら喜んでもらえるか。一か月前から悩み続けている。
「なんか欲しいものとかないかな」
最後の手段で倉知をもっともよく知る人物に訊くことにした。
「悩む必要ないじゃないですか」
食後のカフェラテに口をつけて、六花はニヤリと笑った。
「全裸になってベッドで待ってるだけでいいんですから」
「いや、そういうんじゃなくて、もっと普通っていうかまともなやつがいいんだけど」
「去年、前日から泊まって有休取ってイチャイチャコースでしたよね」
倉知は姉に包み隠さなすぎる。苦笑して目を逸らす。隣のテーブルに座っていた女性と目が合った。会話を聞かれていたのか、戸惑った様子で赤面し、読んでいた文庫本に慌てて目を落とした。
六花の勤め先はうちの会社のすぐ近くにある。休憩時間が合うときに、たまにこのカフェを使っているが、この店の欠点はテーブルの間隔がやけに狭いところだ。会話が筒抜けだ。
「七世、めちゃくちゃ喜んでましたよ」
「うん、でも今年同じことしてもそれほど嬉しくないかなって」
「同棲してるから? 甘いですね」
六花の目が怪しく光る。
「あの子が一番喜ぶものは、加賀さんとの時間ですよ。二人っきりのね」
うっとりと言って、何か思いついたような顔をした。
「じゃあコスプレはどうですか?」
「コスプレ?」
「今描いてる漫画、コスプレでエッチさせてて」
六花が声のボリュームを下げてヒソヒソ声で言ったが、隣で読書中だった女性が小さく「えっ」と声を上げた。こっちの会話に集中しているらしい。ちら、と横目で見ると、気まずそうに視線を泳がせ、本で顔を隠す。
六花は隣の女性には無頓着だった。
「後付けでノンフィクションにしてもらおうかな」
「貪欲だね」
「六花ちゃん!」
背後から声が上がった。男が俺たちのテーブルに駆け寄ってくる。黒縁眼鏡で、小太りの中年男だ。
「山中さん」
六花の知り合いらしい。男の名を呼ぶ声は、冷めていた。
「この、この人は? 彼氏? なんか前も、この人とこの店にいたよね?」
挙動不審な男が、俺を見て蒼白になる。六花がちら、と俺に目配せをしてから、肩をすくめて答えた。
「彼氏ですけど、何か?」
平然と嘘をつく六花。男を見上げると、俺を凝視していた。目の奥にたぎる、嫉妬。なるほど、と理解する。
「こんにちは」
軽く頭を下げて、微笑んだ。男がたじろぐ。おどおどした態度で「こ、こんにちは」と返してくる。
「え、なんで? 彼氏いないって言ってたじゃん」
泣き顔で六花を責める男のこぶしが固く握られているのを見て、不安がよぎる。
この男は六花に惚れていて、多分言い寄っている。それを疎ましく思っていて、俺を彼氏だと偽った。変に逆恨みして、六花の身に危険が及ばなければいいが。
「言いましたっけ」
ケロッとして言う六花が憂い顔を作る。
「あと五分したら戻りますから、もう少し二人で話しててもいいですか?」
男が絶望的な表情になる。うなだれて、とぼとぼと去っていく。
「合わせてくれてありがとうございます」
男が店から出ていくと、六花がすまなそうに言った。
「あの人、同じ会社の先輩なんです」
「好かれてるね」
「そうみたいですね」
どうでもよさそうに言うと、「そんなことより」と身を乗り出した。
「どんなコスプレがいいかなあ」
「しないよ?」
「えっ、しましょうよ。あ、女装しませんか?」
「しません」
えー、と本気で残念がっている。俺が女装して倉知が喜ぶとは思えない。
結局プレゼントは決まらないまま六花と別れ、仕事に戻った。頭の中には常に「何にしよう」のモヤモヤが居座り続けた。
誕生日まで一週間を切っても、決まらない。
俺以外で何をあげたら喜ぶのか。
服はどうだ。つまらない。
時計は父に先を越された。
「あっ、筋肉か」
「え? なんですか?」
夕食の最中に小さく叫んだ。倉知が不思議そうに俺を見る。
「筋肉?」
「違った。筋トレ」
倉知の顔を見ながら何がいいか考えていたら、筋トレの道具はどうだと思いついた。倒れるだけで腹筋が鍛えられるあれがいい。やっと有力な候補が見つかって安堵する俺を、倉知がじっと見る。
「加賀さん」
「うん?」
「もしかして俺の誕生日プレゼントで悩んでますか?」
八月十八日が近づくにつれて落ち着かなくなっていたのは俺だけじゃない。本人も何か言いたそうにしている雰囲気があった。
「うん、あー、なんか欲しいの?」
欲しいものがあるならそれでいい。
「リクエストがあります」
「お、何」
「去年と同じがいいです」
答えてから、恥ずかしそうに皿の上のミニトマトを箸先で転がした。六花の得意げな顔が、浮かんで消える。さすが弟を知り尽くした姉。
「俺の有休?」
「はい、あ、でも、仕事に支障があるなら」
「ないよ。ていうかなんか欲しいものないの?」
「ないです」
「倒れるだけで腹筋鍛えられるやつ欲しくない?」
「え? いえ、腹筋鍛えることに不都合感じないんで」
なんだそれ、と笑ってから、そりゃそうだ、と納得する。それにこれ以上鍛える必要もない。
「他になんか欲しいものない?」
「何もいりません。誕生日に加賀さんがそばにいてくれるのが何よりも嬉しいです」
幸せそうな表情の倉知を見て、胸を押さえる。
「あー、キュンとした。なんでそんな可愛いんだよ」
「可愛くないですから」
可愛い、と言うと可愛くない、と照れてそっぽを向くこの流れも毎度のことだが可愛い。
「なあでも、ほんといいの? 同棲して毎日顔合わせてんのに、プレゼントが有休って」
「最高です」
満足そうに柔らかく笑う倉知を見ていると、こっちまで幸せになる。
倉知への誕生日プレゼントは、自分自身のご褒美でもあるのだ。
〈倉知編〉
日付が変わって八月十八日になった。
「誕生日おめでとう」
ベッドの中。隣に寝転んで笑う加賀さんが、俺の頭を撫でた。
「ありがとうございます」
「十九歳か。まだ十代ってのが怖いよな」
「怖い、ですか」
「だって俺来年三十路だよ」
加賀さんは俺との年の差をよく気にする。十歳差、ということに気後れを感じているようだが、俺にはそれのどこが問題なのかがわからない。
でも永遠に、二人の年齢差が埋まることはない。だからきっと、この人はそれを気にし続ける。
不安に感じることはない、と安心させてあげられるのはいつになるのだろうか。今の俺ではまだ無理だ。加賀さんから見れば俺はまだ二十歳前の子どもで、何を言っても説得力に欠ける。
「加賀さん、変わりませんよね」
「そうかなあ」
「出会った頃のままです」
電車で見つけた美しい人は、あの頃のまま、いや、それ以上の魅力で溢れている。ベッドの脇で淡く光るスタンドライトが、白く滑らかな素肌をぼんやりと浮かび上がらせていた。
「あの、電気、明るくしていいですか?」
「え、なんで。寝ないの?」
「寝ません。もっとよく見たい」
加賀さんは困った顔で、それでも「わかった」と了承してくれた。
部屋の明かりを煌々と灯すと、加賀さんは一瞬まぶしそうに顔をしかめてから、にこりと笑った。
「誕生日だし、今日一日はなんでも言うこと聞いてやるか」
俺は物欲がない。
でもそれ以外の欲求は、人並み以上にある。
「なんでも、ですか」
俺の目が欲望でギラリと光るのを、加賀さんは見逃さなかった。慌てて前言撤回しようとする。
「やべえ、なんでもは言い過ぎた」
「なんでもですね、ありがとうございます」
「待て、なんでもって言っても限度があるからな。全裸で町内ダッシュとか言われてもしないからな」
「そんなことはさせません。加賀さんの裸は俺だけのものですから」
「お、おう」
「なんでも……、なんでも言うこと聞いてくれる加賀さんかあ」
ムラ、と性欲が湧いた。加賀さんはそれを敏感に察知する。
「あんまえげつないのなしな?」
「大丈夫です。とりあえず俺の上にまたがってください」
「大丈夫じゃなさそうなんだけど」
躊躇する加賀さんの手首を引き寄せる。
「あ、お前、なんでもう勃ってんの」
「なんでもしてくれる従順な加賀さんを想像したらこうなりました」
「さっきやったばっかなのに」
呆れた顔で俺の股間を見ながら、またいで上に乗る。数分前まで絡み合って愛し合っていた。その名残が、加賀さんの体のあちこちに刻まれている。
「どうして欲しい?」
純粋な質問のつもりだろうが、この態勢でそう言われると、いろいろと煽られる。俺がつけた痕を指でなぞりながら、腹の底にくすぶる性欲を、苦労して抑制する。
「とりあえず、俺のスマホ取ってください」
サイドテーブルに二人の携帯電話が仲良く並んでいる。加賀さんが「あ?」と怪訝そうに眉を寄せた。
「スマホなんてどうすんだよ」
「撮影します」
絶句すると、腹に拳を叩きつけてきた。
「誕生日なのに痛い」
「馬鹿、却下だ却下」
「でもなんでも言うこと聞くって言いましたよね」
「流出したらどうすんだよ」
「どうやったら流出するんですか?」
「そういう質問が出る時点でアウトだからな」
確かに俺は、その手の知識に疎い。加賀さんの痴態が流出しても困るので、諦めることにした。
「スマホじゃなくて、デジカメとかなら撮ってもいいですか?」
「ハメ撮りしたいの?」
「ハメ撮り?」
はめて撮ることだよ、と雑に説明された。
「それ撮って何に使うつもり?」
何かに使うというより、いつでも見られたら最高だと思っただけだが、加賀さんは「あ、いい。答えなくていい」と顔を覆った。
「ていうかデジカメ持ってた?」
「持ってません」
「何それ」
呆れた声を出して、目をこする。そして大きなあくび。
「眠くなってきた」
「そんな」
「もう寝るか」
一晩中イチャつける、抱きしめて、キスして、堪能できると思ったのに。欲情しているのは俺一人らしい。
「夜は倉知家で誕生日パーティだし、早起きすっか」
淡々と言う加賀さんが、俺を見下ろして「はは」と笑った。
「露骨にがっかりしてんな」
「だって、せっかく有休取ってくれたのに、実家帰らなきゃいけない」
毎年、家族の誕生日はみんなでお祝いしている。先週、「食べたいものない?」と母から連絡がきて初めて、大学生になって家を出てもそれを続けるつもりらしいと知った。
「みんなお前が大好きだしな」
わかっている。俺だって、家族も大事だ。
「でも加賀さんとの時間がなくなるのが惜しいです」
「じゃあ今から朝までセックスする?」
する、と急いで言おうとする俺のペニスを、加賀さんがつかんだ。
「誕生日じゃなくてもちょいちょいオールでやってるよな」
何も言い返せない。心当たりがありすぎる。
「いいよ」
右手を上下させて、目を細めて綺麗に笑った。
「気が済むようにしたらいい。大体のことは言うこと聞くから」
「じゃあ」
唾を飲み込んで、「舐めてください」とお願いする。
「え、普通だね。そんなんでいいの?」
「一体何を要求されると思ったんですか」
「すげえ変態臭いこと」
「参考までに教えてください」
加賀さんが俺の股間に顔を寄せて、うーんとうなる。
「スカート穿け、とか」
「スカート」
つい反応してしまった。興味があると思われるのも恥ずかしい。じっと俺の顔を確認する加賀さんに、慌てて首を横に振って見せた。
「言いません、そんなこと」
ふうん、と疑わしそうに俺を見ながら、先端を舐めてくる。
「別にいいけどね、穿いても」
「えっ、いいんですか?」
「何その期待した声」
「してません」
「そもそも持ってないっての」
上目遣いで俺を見て、口中に導かれる。快感に酔いながら、荒くなっていく呼吸を意識して整える。
「加賀さん」
「ん」
咥えたまま返事をして、動きを止める。
「変態臭いお願いしていいですか?」
「んあ、何、怖いな」
唾液で濡れた俺のペニスをしごきながら、半笑いになる。これを言ったら、引かれるかもしれない。でもこんなときじゃないと、言えない。
「あの、その」
「なんだよ、遠慮すんな」
「えっと、あの、そのままで、お尻こっち向けてもらっていいですか?」
俺が言わんとすることに、加賀さんはすぐに気づいた。
「シックスナイン?」
「うう、引かないで、ください」
目を逸らして小さくうめく。
「引いてないけど。なんだよ、これくらいで変態なんて言わないよ」
笑いを含んだ声に励まされ、ホッとして視線を戻すと顔の前に加賀さんのお尻があった。思わずわしづかみにして吸いついた。
「ちょ、激しい、激しい」
笑い声を上げる加賀さんが、四つん這いで俺を咥える。根元まで全部、温かくぬめった感触が包み込み、絶妙に蠢く舌が、絡みつく。
グラグラの理性をなんとか保ち、負けじと加賀さんのペニスに舌を這わす。育ちつつあるそれを舐めながら、穴に指を押し込んだ。俺を咥えている加賀さんの喉から、くぐもった声が漏れる。
さっきまで俺が入っていたそこは、柔らかくほぐれていた。指はスムーズに、奥へと飲み込まれていく。
加賀さんのいいところはよく知っている。指の腹で押してやると、体を震わせ、反応する。指の動きを止めずに、ペニスの裏筋を舌先でくすぐるように舐めると、四つん這いになった加賀さんの膝が、ガクリと揺れた。
「あっ……、ちょ、やばい、それ」
「気持ちいいですか?」
「ん、ん、うう……」
答えになっていないうめきが返ってきた。視線を下に移して、加賀さんの表情を確認する。体をくの字に曲げて、俺のペニスを握りしめて悶絶する様子を見ていると、辛抱できなくなった。
指を入れている場合じゃない。
引き抜いて、俺の上でくたくたになっている加賀さんの体を丁寧に仰向けにすると、腰を引き寄せて股を割り開いた。
「生で、挿れます」
挿れていいですか、というお伺いではなく、挿れます、と言い切った。加賀さんは駄目だとは言わなかった。潤んだ目で俺を見て、薄く開いた唇をかすかに動かした。
「早く」
吐息のような声。凶悪な性欲が、全身を駆け巡る。
気がつくと、中に入っていた。無我夢中で腰を振り、愛しい人の名前を連呼して、肩に噛みつき、細い体を掻き抱いて、中で、果てた。
精を放った直後に思考能力を取り戻した俺は、自己嫌悪でひどく落ち込んだ。枕で顔を隠し、「違う、違う」と何度もつぶやく俺の胸を、加賀さんの手が撫でた。
「違うんです」
跳ね起きて、弁解する。ベッドの上で正座する俺を、加賀さんはおかしそうに見上げた。
「何が?」
「俺、もっと、まったりと、じっくりと、メロメロにさせたかったんです。メロメロな顔、明るいとこで観察したかった」
「はあ、スローセックスってやつ?」
「そうです。こう、なんていうか、お互いに好き好き言い合って、抱き合いながらついばむような小鳥キスをして」
力説すると、加賀さんがバフーッと盛大に吹き出した。
「ごめん、面白い」
「何がですか」
笑いごとじゃないし、面白くもない。せっかくの誕生日なのに、思うようにいかなくて心からがっかりした。
「倉知君」
寝転がったままじりじりと近づいて、正座する俺の膝に頭をのせてきた。にこりと天使の微笑みを浮かべる加賀さんが、まっすぐ俺を見上げてくる。
「好きだよ」
胸がきゅ、と締めつけられる感覚。異様な息苦しさに、呼吸を止めていることに気がついて、慌てて息をする。
「あれ、リターンがない」
ハッとした。大急ぎで「好きです!」と声を張り上げた。満足そうに、加賀さんが笑う。
「うん、好き」
「好きです、加賀さん」
泣きそうになる。堪えていると、加賀さんが体を起こして俺の首に抱きついてきた。
「好き、大好き」
顔を覗き込んでそう言うと、ちゅ、と軽く唇にキスをくれる。触れるだけのキスを何度も続けたあとで、鼻先でもう一度「好きだよ」と囁いた。その表情が、声が、男前すぎて、顔が熱くなる。無言で加賀さんを抱きしめて、頬ずりをした。
「倉知君、大丈夫だから」
何か、慰められた。俺の後ろ頭を撫でてから、クスクス笑って加賀さんが言った。
「俺、もうメロメロだよ?」
やられた。
完敗だ。
メロメロなのは、こっちだ。骨抜きだ。もう、敵いっこない。やりたかったことを全部、やられてしまった。理想的で、格好良くて、甘ったるい。
腰が砕けてくたくたになる俺を、受け止めるその力強さまで完璧だ。
「誕生日、おめでとう」
あと何回誕生日を迎えれば、この人を見返せるのだろう。
そのときが来るまで、絶対に、手放してやらない。
〈おわり〉
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