6 / 162
可愛いやつ ※
しおりを挟む
※リバです。前の話のつづき。
〈加賀編〉
「加賀さん」
「ん」
「その、俺」
倉知が何を言いたいのか、わかる。俺に挿れたままで、まだ硬い。さっき先に一回出したせいで、二回目が長持ちしたのだ。
「イキたい?」
少し腰を揺すると、俺の下で倉知がキュッと目を閉じて「はい」と答えた。バスタブの中で抱き合いながら体を動かしていると、俺のほうも復活してきた。
「勃ってきた」
倉知が薄目を開けて俺を見る。風呂に浸かっているせいか、照れているからか、頬がピンク色だ。そのピンクの頬を指先でくすぐると、まるで猫のように目を細めて気持ちよさそうに委ねてくる。
可愛い。
「なあ」
「はい?」
「挿れていい?」
「……はい?」
「なんかお前の顔見てたら、やりたくなってきた」
体を起こして、腰を浮かす。俺の中から、倉知が抜け落ちる。抜くときに倉知が出した声がエロくて、首の裏がゾク、と粟立った。
「えっと、でも、俺、その、心の準備と体の準備が」
言い訳を始める倉知を残して、バスタブを出た。シャワーで体を流し、中の物を掻き出した。倉知が俺の動きを不安そうに見ている。
「あの、今ですか? どうしても? ここで?」
「今、どうしても、ここでしたい」
はああ、と長いため息を吐いて、倉知が顔面を両手で覆う。
「無理です、難易度高いです」
「そう? どの辺が?」
「声、響くし、明るいし……」
「うん、なんか余計エロく感じるよね」
「うう、はず、かしい」
顔を覆ったまま、ぶくぶくと浸水していく。頭を全部沈めたあとで、すぐに浮上してきた。前髪を掻き上げて、顔をぬぐってから、困った様子で俺を見る。
「せめて、ベッド行きませんか」
「行きません」
力強く断言すると、倉知がたじろいだ。
「さっきまであんなに可愛かったのに」
「オスモードのスイッチ入ったんだよ、ごめんね」
倉知に手のひらを差し出した。怖がりながら、俺の手を握る。怯える感じが逆にそそる。バスタブから引き上げると、すぐに乳首に噛みついた。
「いっ……痛い」
「ごめん、可愛くてつい」
「可愛くないです」
可愛い顔で言われても。視線を泳がせて、勃起した股間を恥ずかしそうに隠している。だから、そういうのが可愛いんだよ、と言いたい。
抱かれるのが不満なわけじゃない。でも、俺も男だ。たまには抱きたくなる。
「ここ座って」
バスタブの隅に腰を下ろさせると、コンディショナーの容器を手に取った。
「何、するんですか?」
「ローション替わり」
「え、まさかそれ」
「大丈夫だよ、痛くない」
手のひらに落ちた液体を、倉知が唾を飲み込んで見下ろしている。
「手、どかして、脚広げて」
膝頭を叩いて急かす。素直に手をどかし、おずおずと脚を広げた。股間の前に膝をついて、じっと観察する。
「絶景」
口笛を吹いてそう言うと、倉知が「変態みたいです」とぼやいた。
「変態だよ。それではちょっとほぐしますので」
倉知の股を割り開いて、コンディショナーを塗り込んだ。歯を食いしばって耐える顔を見上げて、指を動かした。
「う、……んん」
俺から顔を背け、くぐもった声を漏らす。指でかき混ぜていると、勃起したペニスが勢いよく跳ねて、腹につきそうなほどに頭をもたげた。
「ここが気持ちいいんだろ」
指の腹でこすると、体を震わせて首をのけ反らせた。
「あっ、だめ、か、加賀さん、もう、抜いて!」
「挿れて、だろ?」
指を引き抜くと、倉知が俺にしがみついてきた。肩で息をして「うう、怖い」と体を小さくする。
「倉知君、ここ掴んで、四つん這いになって」
「加賀さん」
助けを求めるような目で見てくる。何度か逆でやっているが、よく怖い、と口にする。良すぎるから怖いのは、わかっている。本気で嫌がることはしない。
バスタブの淵に掴まらせて、腰を持ち上げる。
「挿れるよ。力抜いて」
宣言して、ゆっくりと、倉知の中に入る。奥まで全部埋め込んで、息をつく。相変わらずきつくて狭い。尻を揉むようにして撫でながら、腰を引いて、突き上げる。
「あっ……」
倉知が声を上げる。
「痛い?」
訊くと、首を横に振った。バックだと顔が見えないから言葉で確認するほかない。首を横に振り続ける倉知の腰を引き寄せて、浅く、抜き差しをした。泣き声のような、鼻から抜ける声を出して、必死で堪えている。一度動きを止めて、背中にキスをした。音を立てて吸いついて、軽く噛む。薄い歯形がついたのを確認して、そこを舐めた。汗の味がする。
倉知は、声を殺して呼吸を荒げ、快感と戦っている。俺の一挙一動に敏感に反応する恋人が、可愛くて仕方がない。
倉知が身をよじり、ちら、とこっちを振り返った。
「……かが、さん」
「ん?」
「あ、あの……、その、う、……ごいてください」
最後は聞き取れないほど小さな声だった。
「動いてって言った?」
赤く染まった耳が肯定している。
「何それ、可愛いな」
ぐ、と腰を押しつけると、繋がっている部分がきつく締まる。
「気持ちいい?」
無言で、かすかに首を縦に振る。
「可愛いな」
今度は横に振る。
「可愛いんだよ」
ニャー、と猫の声が、ドアの向こうから賛同する。
「な、猫も可愛いって言ってる」
「い、言ってません」
「なあ、ちょっと、ニャーって言って」
「……え?」
「さっき猫の鳴き真似しただろ。あれ、めっちゃ可愛かった」
ごまかせるはずがないのに、自然にああいうことをしてしまう子どもっぽさが可愛い。
「鳴いてよ、猫みたいに」
鳴かせようと腰を揺する。
「あっ、う、ん、ん……」
「ニャーは?」
「うう、やだ、なんですかこれ、やだ……」
「バックだと動物になった気持ちにならない?」
「なりません」
かたくなだ。
「ニャーっていうまでイカせない」
動きを止めて胸に手を回し、乳首をつまむ。
「いっ……た」
「ニャーは?」
「なんで……、犬派なんでしょ?」
倉知が反撃に出た。確かにその通り。
「じゃあワンでもいいよ」
「……言いません」
「ワンよりニャーのが倉知君ぽいな」
「もう、意味がわかりません」
「鳴いてよ、ニャーって」
軽く腰を振ると、油断していたのか、可愛く「あんっ」と声を上げた。
なんだ今のは。もう、ニャーとかワンとかどうでもいい。
自分で自分の出した声に照れまくっている感じも、可愛い。
可愛い可愛い可愛い、と呪文のように繰り返す。
強張った体を抱いて、腰を打ちつける。二回、三回、と肉を打つ音が響き、そのたびにバスタブを掴む倉知の手が震えるのがわかった。
長い悲鳴を上げて、倉知の全身が痙攣した。同時に、俺も中で果てる。脈打つ下腹部が、精を全部吐き出すまで、腰を揺らし続け、大きく息を吐いてから、外に出る。
抜いた途端に、倉知が浴室の床にうずくまった。
「大丈夫?」
「……はい、もう、なんか力が入らなくて」
後ろから倉知の丸まった背中に乗っかるようにして抱きしめる。
「倉知君、すげえ可愛かった」
「……可愛いのは加賀さんですから」
「倉知君だよ」
「加賀さんです」
ニャー、とドアの向こうで猫が鳴く。
「ほら」
「何がほら?」
「通訳してやろう。倉知君、可愛いニャー」
ああもう、と丸まったまま、倉知がうめく。
「可愛いのは加賀さんです。これだけは譲れません」
譲れないのはお互い様のようだ。
〈おわり〉
〈加賀編〉
「加賀さん」
「ん」
「その、俺」
倉知が何を言いたいのか、わかる。俺に挿れたままで、まだ硬い。さっき先に一回出したせいで、二回目が長持ちしたのだ。
「イキたい?」
少し腰を揺すると、俺の下で倉知がキュッと目を閉じて「はい」と答えた。バスタブの中で抱き合いながら体を動かしていると、俺のほうも復活してきた。
「勃ってきた」
倉知が薄目を開けて俺を見る。風呂に浸かっているせいか、照れているからか、頬がピンク色だ。そのピンクの頬を指先でくすぐると、まるで猫のように目を細めて気持ちよさそうに委ねてくる。
可愛い。
「なあ」
「はい?」
「挿れていい?」
「……はい?」
「なんかお前の顔見てたら、やりたくなってきた」
体を起こして、腰を浮かす。俺の中から、倉知が抜け落ちる。抜くときに倉知が出した声がエロくて、首の裏がゾク、と粟立った。
「えっと、でも、俺、その、心の準備と体の準備が」
言い訳を始める倉知を残して、バスタブを出た。シャワーで体を流し、中の物を掻き出した。倉知が俺の動きを不安そうに見ている。
「あの、今ですか? どうしても? ここで?」
「今、どうしても、ここでしたい」
はああ、と長いため息を吐いて、倉知が顔面を両手で覆う。
「無理です、難易度高いです」
「そう? どの辺が?」
「声、響くし、明るいし……」
「うん、なんか余計エロく感じるよね」
「うう、はず、かしい」
顔を覆ったまま、ぶくぶくと浸水していく。頭を全部沈めたあとで、すぐに浮上してきた。前髪を掻き上げて、顔をぬぐってから、困った様子で俺を見る。
「せめて、ベッド行きませんか」
「行きません」
力強く断言すると、倉知がたじろいだ。
「さっきまであんなに可愛かったのに」
「オスモードのスイッチ入ったんだよ、ごめんね」
倉知に手のひらを差し出した。怖がりながら、俺の手を握る。怯える感じが逆にそそる。バスタブから引き上げると、すぐに乳首に噛みついた。
「いっ……痛い」
「ごめん、可愛くてつい」
「可愛くないです」
可愛い顔で言われても。視線を泳がせて、勃起した股間を恥ずかしそうに隠している。だから、そういうのが可愛いんだよ、と言いたい。
抱かれるのが不満なわけじゃない。でも、俺も男だ。たまには抱きたくなる。
「ここ座って」
バスタブの隅に腰を下ろさせると、コンディショナーの容器を手に取った。
「何、するんですか?」
「ローション替わり」
「え、まさかそれ」
「大丈夫だよ、痛くない」
手のひらに落ちた液体を、倉知が唾を飲み込んで見下ろしている。
「手、どかして、脚広げて」
膝頭を叩いて急かす。素直に手をどかし、おずおずと脚を広げた。股間の前に膝をついて、じっと観察する。
「絶景」
口笛を吹いてそう言うと、倉知が「変態みたいです」とぼやいた。
「変態だよ。それではちょっとほぐしますので」
倉知の股を割り開いて、コンディショナーを塗り込んだ。歯を食いしばって耐える顔を見上げて、指を動かした。
「う、……んん」
俺から顔を背け、くぐもった声を漏らす。指でかき混ぜていると、勃起したペニスが勢いよく跳ねて、腹につきそうなほどに頭をもたげた。
「ここが気持ちいいんだろ」
指の腹でこすると、体を震わせて首をのけ反らせた。
「あっ、だめ、か、加賀さん、もう、抜いて!」
「挿れて、だろ?」
指を引き抜くと、倉知が俺にしがみついてきた。肩で息をして「うう、怖い」と体を小さくする。
「倉知君、ここ掴んで、四つん這いになって」
「加賀さん」
助けを求めるような目で見てくる。何度か逆でやっているが、よく怖い、と口にする。良すぎるから怖いのは、わかっている。本気で嫌がることはしない。
バスタブの淵に掴まらせて、腰を持ち上げる。
「挿れるよ。力抜いて」
宣言して、ゆっくりと、倉知の中に入る。奥まで全部埋め込んで、息をつく。相変わらずきつくて狭い。尻を揉むようにして撫でながら、腰を引いて、突き上げる。
「あっ……」
倉知が声を上げる。
「痛い?」
訊くと、首を横に振った。バックだと顔が見えないから言葉で確認するほかない。首を横に振り続ける倉知の腰を引き寄せて、浅く、抜き差しをした。泣き声のような、鼻から抜ける声を出して、必死で堪えている。一度動きを止めて、背中にキスをした。音を立てて吸いついて、軽く噛む。薄い歯形がついたのを確認して、そこを舐めた。汗の味がする。
倉知は、声を殺して呼吸を荒げ、快感と戦っている。俺の一挙一動に敏感に反応する恋人が、可愛くて仕方がない。
倉知が身をよじり、ちら、とこっちを振り返った。
「……かが、さん」
「ん?」
「あ、あの……、その、う、……ごいてください」
最後は聞き取れないほど小さな声だった。
「動いてって言った?」
赤く染まった耳が肯定している。
「何それ、可愛いな」
ぐ、と腰を押しつけると、繋がっている部分がきつく締まる。
「気持ちいい?」
無言で、かすかに首を縦に振る。
「可愛いな」
今度は横に振る。
「可愛いんだよ」
ニャー、と猫の声が、ドアの向こうから賛同する。
「な、猫も可愛いって言ってる」
「い、言ってません」
「なあ、ちょっと、ニャーって言って」
「……え?」
「さっき猫の鳴き真似しただろ。あれ、めっちゃ可愛かった」
ごまかせるはずがないのに、自然にああいうことをしてしまう子どもっぽさが可愛い。
「鳴いてよ、猫みたいに」
鳴かせようと腰を揺する。
「あっ、う、ん、ん……」
「ニャーは?」
「うう、やだ、なんですかこれ、やだ……」
「バックだと動物になった気持ちにならない?」
「なりません」
かたくなだ。
「ニャーっていうまでイカせない」
動きを止めて胸に手を回し、乳首をつまむ。
「いっ……た」
「ニャーは?」
「なんで……、犬派なんでしょ?」
倉知が反撃に出た。確かにその通り。
「じゃあワンでもいいよ」
「……言いません」
「ワンよりニャーのが倉知君ぽいな」
「もう、意味がわかりません」
「鳴いてよ、ニャーって」
軽く腰を振ると、油断していたのか、可愛く「あんっ」と声を上げた。
なんだ今のは。もう、ニャーとかワンとかどうでもいい。
自分で自分の出した声に照れまくっている感じも、可愛い。
可愛い可愛い可愛い、と呪文のように繰り返す。
強張った体を抱いて、腰を打ちつける。二回、三回、と肉を打つ音が響き、そのたびにバスタブを掴む倉知の手が震えるのがわかった。
長い悲鳴を上げて、倉知の全身が痙攣した。同時に、俺も中で果てる。脈打つ下腹部が、精を全部吐き出すまで、腰を揺らし続け、大きく息を吐いてから、外に出る。
抜いた途端に、倉知が浴室の床にうずくまった。
「大丈夫?」
「……はい、もう、なんか力が入らなくて」
後ろから倉知の丸まった背中に乗っかるようにして抱きしめる。
「倉知君、すげえ可愛かった」
「……可愛いのは加賀さんですから」
「倉知君だよ」
「加賀さんです」
ニャー、とドアの向こうで猫が鳴く。
「ほら」
「何がほら?」
「通訳してやろう。倉知君、可愛いニャー」
ああもう、と丸まったまま、倉知がうめく。
「可愛いのは加賀さんです。これだけは譲れません」
譲れないのはお互い様のようだ。
〈おわり〉
58
お気に入りに追加
535
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる