2 / 17
2
しおりを挟む
医者というのはやはり儲かるらしい。
高そうな家具や気取ったインテリアを眺めながら舌を打つ。別にうちが貧乏というわけじゃない。母さんのおかげで何不自由ない生活はできている。でもなんとなく腹が立った。
俺は今、父親を名乗る男のマンションにいる。本物の父親かはわからない。
怪しいと思いながら、のこのことついて来た。こいつが誘拐犯とか連続殺人犯だとしても、逃げるのは簡単だと思ったからだ。織田は俺より背が低く、弱そうだ。いざとなったらぶん殴ってしまえばいい。
「お腹空いてる?」
織田が訊く。
「空いてるけど、いらねー」
「そう? 何か作ってあげようか。料理、得意なんだよ」
「いらねー」
ぶっきらぼうに応える。
「つーかあんた本当に俺の父親なのか?」
織田は微笑を絶やさずにうなずいた。父親と言われても全然ピンとこない。長めの黒髪を綺麗にセットした、品のいい顔立ち。俺とは似ていない。
「明日にでもお母さんに訊いてみるといいよ」
言われなくてもそうするつもりだ。織田は俺をソファに座らせると「何か飲む?」と訊いた。
「いらねーよ。それより訊いていいか?」
「うん、何?」
「なんで離婚したんだ?」
織田は小さく息を吐き、俺の隣に腰を下ろした。
「一騎は私のことを全然覚えてないみたいだね」
「覚えてない。だからまだ完全に信じちゃいない」
「私が偽の父親だと?」
織田は声を出して笑った。
「なんのためにそんな嘘をつくのかな。なんの得にもならないよ」
「そうかよ。じゃあ質問に答えろ」
「そっけないなあ。父親なんて興味ない?」
「その通り」
「じゃあどうしてついてきたの?」
少し考えて、答えた。
「なんで離婚したのか訊きたい。それだけ」
「ふうん」
何がふうんだ。人を見下したような態度にイライラし始めていた。
「母さんが嫌いになったから?」
「昔はママって言ってたのにね」
「はあ? 知らねーよ」
「そして私のことはパパって呼んでたよ」
「どうでもいい」
フフと織田は笑った。
「いいよ、教えてあげる」
織田はゆっくりと唇を舐めた。その仕草はぞっとするものがあった。俺は織田から目を背けた。どうしてだか、急に恐怖を感じた。握りしめた拳に汗が滲んでいる。
唐突に、耳に吐息を感じた。すぐ横に織田の顔がある。
「私がね、君を犯したからだよ」
耳の横で囁いた。意味がわからない。眉をひそめて織田を見た。
「たった五歳の、しかも自分の息子を犯したから。嫌がる君に無理矢理押し込んだよ。皮膚が切れて血が出ても私はやめなかった」
俺は笑いながら立ち上がった。
「あんた頭おかしいよ、そんなデタラメ」
「真実だよ。その現場を祥子に見られてしまって、それで離婚。彼女は私を何度も何度も殴りつけた」
「帰る」
俺は織田をすり抜けて玄関に向かった。靴を履いてドアを開けようとしたが、チェーン状の鍵がかかっていた。舌を打ち、手を伸ばす。
「帰さないよ」
背後で織田の声がした。
直後、首に痛み。
「つっ……、なんだよ!?」
振り払うと、コツン、と足元で何かが跳ねた。目を疑った。注射器だ。
「は? なんだ、これ……」
「一騎」
織田が笑いを含んだ声で俺の名を呼ぶ。脳がぐらりと揺れた。
――パパやめて!
幼い叫び声が聞こえた。両耳を押さえ、振り返る。織田の顔がすぐ目の前に迫っていた。胸を押した。つもりだった。力が入らない。織田の胸にすがりつく。
「いい子だね」
抱きしめられた。耳に息がかかる。気持ち悪い。突き飛ばそうともがくのに、なんの手応えも感じない。力がまったく入らない。
「やめ、やめろ……っ」
玄関のドアに押しつけられ、股間を揉んでくる。
「あっ……!」
勝手に声が出て、体が無様に揺れ動く。
――やだよ、痛い、痛いよぉ!
脳内で絶叫する子どもの悲鳴。
ガクガクと膝が震えた。
恐怖。痛み。
思い出した。
あのときの、幼い頃の感情が、閉じ込めていた記憶が、蘇る。
「ち、くしょぉ……」
膝をつく。視界が回っている。おかしい。吐き気がした。
「はっ、はあっ……」
「薬が効いたかな?」
織田の声が降ってくる。声はエコーがかかっている。見上げた。視線が定まらない。
「さあ、ベッドにいこう」
体が浮いた。どろどろに溶けたゼリー状の中を、体が浮遊している。
何が起きている?
柔らかい羽毛の中に突き落とされる。体が沈んでいく。
「一騎」
俺の名前。
「可愛い私の息子」
唇に何かが触れた。ぬめりを帯びた生暖かいものが侵入した。
いやだ、やめろ。
声が出ない。
視界は歪んでいた。でもわかる。織田が、俺の体を組み敷いている。見下ろしてくる目は妖しく揺れていた。
「さすがボクシング部。いい体だね」
織田は喋りながら俺の胸板を指でくすぐった。
「探偵を雇って調べたんだよ、君のことを全部知りたくて」
二本の指が突起を強くつまむ。
「あ……っ」
痺れるような快感に戸惑いながら、固く目を閉じて、必死で耐えた。
「離婚したあと祥子は君を連れて私から逃げた。逃げたつもりでいた、と言ったほうがいいね。私はずっと見ていたよ。君のことならなんでも知ってる」
乳首を弄っていた指が離れた。俺は恐る恐る目を開けた。
「君は可愛い。私の大事な、たった一人の分身」
つ、と指が腹の上を滑った。爪の感触が下へ下へとゆっくり移動する。逃げなければ、と思うのに、まともに体が動かない。指が、下腹部に潜りこみ、俺のモノをつかむ。
「うっ……やめ……」
声を振り絞る。織田は低く笑った。
「すごく硬くなってるよ」
責めるように言うと、手を上下させ乱暴に扱いた。
「ひっ……、や……」
喉の奥で引きつれた悲鳴が上がる。
やめろ!
頭の中で虚しく喚いた。織田の手の中で硬くなっていく自分自身が信じられない。
「もうぐちゃぐちゃだね、一騎。パパにこうされるのがそんなに嬉しいの?」
唇を噛んで涙を堪えた。羞恥で死にそうだ。
織田は自分の手のひらをまじまじと見つめていた。俺から出た体液で、ベタベタに濡れていた。
「こんなに勃たせて」
ギュッと根元を掴まれ、俺は悲鳴を上げた。
「そろそろ限界かな」
織田はフフと鼻で笑うとスーツを脱ぎ捨て、ベルトを抜いてズボンを下ろした。そこから突き出た物体に、脳味噌が警鐘を鳴らした。逃げろ。早く逃げろ。
俺は精一杯努力して体を反転させると、這って織田から逃げようとした。
「すごい精神力だな」
腰をつかまれ、引き寄せられた。
「でも逃げられないよ」
愉快そうな織田の声。
「ころ……すっ! てめえは、ぜっ、たい、……殺す!」
「殺す? できっこないよ」
肛門に何かが侵入した。指だ。織田の指が内壁を広げるように動いている。気持ち悪くて腹が波打った。
「やっ、やめ……」
言葉が出ない。織田は俺の反応を面白がるように指を二本に増やし、グルグルと回転させた。
「ひぃっ……!」
痛みで萎えかけていたペニスが跳ね起きた。目が眩むような快感が、下腹部から伝わってくる。混乱した。嫌なのに、どうして、こんな。
「ここが気持ちいい?」
織田の声が背中で響く。指先が、何度もしつこくそこをノックした。無意識に腰が揺れる。
「あっあっあっ……ああぁぁっーーー!」
俺は情けない悲鳴を上げて精を放出した。しばらく肩で息をした。抵抗する気力も失せ、踏み潰された蛙のようにラグの上にへばりついた。
「可愛いなあ、一騎は」
音を立てて俺の背中にキスをする織田。どうでもよかった。勝手にしろ、と言いたいくらいだ。やかましく鳴り響いていた心臓が徐々に落ち着きを取り戻した頃、織田が言った。
「でもまだ終わってないよ」
腰を高く持ち上げられた。尻に硬い何かが触れる。織田の怒張したモノが俺のあそこに入ろうとしている。気づいて、汗が噴き出した。
「すぐ終わるからね」
やめろと言おうとした。でもそんなことは無駄だと悟り、歯を食い縛る。
「もっと力抜いて」
言われた通り、力を抜く。ぐい、と押し入ってくる硬い感触に、身を捩る。
「大丈夫だよ、一騎」
織田の手が腰を掴んで、ぐいぐいと捻じ込んでくる。痛みはなく、圧迫感があるだけ。奥のほうに押し込まれる感覚。織田が俺の頭上で息を吐いた。
「温かいなあ、一騎の中」
織田が言う。ぼんやりと、なんで俺は抵抗しないのかと考えていた。体が動かないからだ。簡単なことだ。そうだ、変な薬を打たれて、そのせいで体が動かない。無駄な抵抗は、しない。
「動くよ?」
織田が確認を取ってくる。笑えてくる。なんでも無理矢理やってきたくせに、今になって了解を得てなんになる。俺は無反応を通した。織田がゆっくりと腰を動かした。中のものが動く。目を閉じて、ラグに爪を立てた。
「一騎」
織田が呼ぶ。ゆっくりと出たり入ったり繰り返し、何度も俺の名前を呼んだ。
「一騎、一騎っ」
「はっ……あっ、はあっ……、んぅ……」
激しく突き刺す行為は永遠に続くのかと思った。音を立てて腰を打ちつける織田の息が上がってきた。俺の尻はあいつを食い千切る勢いで締めつけている。
気持ちよかった。
信じられなかった。
俺はこんなことをされて、感じている。
情けなくて、涙が出た。嗚咽と喘ぎが混じった、複雑な声が、自分の喉からひっきりなしに溢れてくる。織田は、動きを止めなかった。無言で腰を振っている。どんな顔をしているのかはわからなかった。
そのうち聞こえてきたのは、苦しげな呻き。体内に精液をぶちまけられる感覚。直後、脈打つ自分の下半身から精が放出された。
ああもう、どうだっていい。
気を失うほどの快感だった。
高そうな家具や気取ったインテリアを眺めながら舌を打つ。別にうちが貧乏というわけじゃない。母さんのおかげで何不自由ない生活はできている。でもなんとなく腹が立った。
俺は今、父親を名乗る男のマンションにいる。本物の父親かはわからない。
怪しいと思いながら、のこのことついて来た。こいつが誘拐犯とか連続殺人犯だとしても、逃げるのは簡単だと思ったからだ。織田は俺より背が低く、弱そうだ。いざとなったらぶん殴ってしまえばいい。
「お腹空いてる?」
織田が訊く。
「空いてるけど、いらねー」
「そう? 何か作ってあげようか。料理、得意なんだよ」
「いらねー」
ぶっきらぼうに応える。
「つーかあんた本当に俺の父親なのか?」
織田は微笑を絶やさずにうなずいた。父親と言われても全然ピンとこない。長めの黒髪を綺麗にセットした、品のいい顔立ち。俺とは似ていない。
「明日にでもお母さんに訊いてみるといいよ」
言われなくてもそうするつもりだ。織田は俺をソファに座らせると「何か飲む?」と訊いた。
「いらねーよ。それより訊いていいか?」
「うん、何?」
「なんで離婚したんだ?」
織田は小さく息を吐き、俺の隣に腰を下ろした。
「一騎は私のことを全然覚えてないみたいだね」
「覚えてない。だからまだ完全に信じちゃいない」
「私が偽の父親だと?」
織田は声を出して笑った。
「なんのためにそんな嘘をつくのかな。なんの得にもならないよ」
「そうかよ。じゃあ質問に答えろ」
「そっけないなあ。父親なんて興味ない?」
「その通り」
「じゃあどうしてついてきたの?」
少し考えて、答えた。
「なんで離婚したのか訊きたい。それだけ」
「ふうん」
何がふうんだ。人を見下したような態度にイライラし始めていた。
「母さんが嫌いになったから?」
「昔はママって言ってたのにね」
「はあ? 知らねーよ」
「そして私のことはパパって呼んでたよ」
「どうでもいい」
フフと織田は笑った。
「いいよ、教えてあげる」
織田はゆっくりと唇を舐めた。その仕草はぞっとするものがあった。俺は織田から目を背けた。どうしてだか、急に恐怖を感じた。握りしめた拳に汗が滲んでいる。
唐突に、耳に吐息を感じた。すぐ横に織田の顔がある。
「私がね、君を犯したからだよ」
耳の横で囁いた。意味がわからない。眉をひそめて織田を見た。
「たった五歳の、しかも自分の息子を犯したから。嫌がる君に無理矢理押し込んだよ。皮膚が切れて血が出ても私はやめなかった」
俺は笑いながら立ち上がった。
「あんた頭おかしいよ、そんなデタラメ」
「真実だよ。その現場を祥子に見られてしまって、それで離婚。彼女は私を何度も何度も殴りつけた」
「帰る」
俺は織田をすり抜けて玄関に向かった。靴を履いてドアを開けようとしたが、チェーン状の鍵がかかっていた。舌を打ち、手を伸ばす。
「帰さないよ」
背後で織田の声がした。
直後、首に痛み。
「つっ……、なんだよ!?」
振り払うと、コツン、と足元で何かが跳ねた。目を疑った。注射器だ。
「は? なんだ、これ……」
「一騎」
織田が笑いを含んだ声で俺の名を呼ぶ。脳がぐらりと揺れた。
――パパやめて!
幼い叫び声が聞こえた。両耳を押さえ、振り返る。織田の顔がすぐ目の前に迫っていた。胸を押した。つもりだった。力が入らない。織田の胸にすがりつく。
「いい子だね」
抱きしめられた。耳に息がかかる。気持ち悪い。突き飛ばそうともがくのに、なんの手応えも感じない。力がまったく入らない。
「やめ、やめろ……っ」
玄関のドアに押しつけられ、股間を揉んでくる。
「あっ……!」
勝手に声が出て、体が無様に揺れ動く。
――やだよ、痛い、痛いよぉ!
脳内で絶叫する子どもの悲鳴。
ガクガクと膝が震えた。
恐怖。痛み。
思い出した。
あのときの、幼い頃の感情が、閉じ込めていた記憶が、蘇る。
「ち、くしょぉ……」
膝をつく。視界が回っている。おかしい。吐き気がした。
「はっ、はあっ……」
「薬が効いたかな?」
織田の声が降ってくる。声はエコーがかかっている。見上げた。視線が定まらない。
「さあ、ベッドにいこう」
体が浮いた。どろどろに溶けたゼリー状の中を、体が浮遊している。
何が起きている?
柔らかい羽毛の中に突き落とされる。体が沈んでいく。
「一騎」
俺の名前。
「可愛い私の息子」
唇に何かが触れた。ぬめりを帯びた生暖かいものが侵入した。
いやだ、やめろ。
声が出ない。
視界は歪んでいた。でもわかる。織田が、俺の体を組み敷いている。見下ろしてくる目は妖しく揺れていた。
「さすがボクシング部。いい体だね」
織田は喋りながら俺の胸板を指でくすぐった。
「探偵を雇って調べたんだよ、君のことを全部知りたくて」
二本の指が突起を強くつまむ。
「あ……っ」
痺れるような快感に戸惑いながら、固く目を閉じて、必死で耐えた。
「離婚したあと祥子は君を連れて私から逃げた。逃げたつもりでいた、と言ったほうがいいね。私はずっと見ていたよ。君のことならなんでも知ってる」
乳首を弄っていた指が離れた。俺は恐る恐る目を開けた。
「君は可愛い。私の大事な、たった一人の分身」
つ、と指が腹の上を滑った。爪の感触が下へ下へとゆっくり移動する。逃げなければ、と思うのに、まともに体が動かない。指が、下腹部に潜りこみ、俺のモノをつかむ。
「うっ……やめ……」
声を振り絞る。織田は低く笑った。
「すごく硬くなってるよ」
責めるように言うと、手を上下させ乱暴に扱いた。
「ひっ……、や……」
喉の奥で引きつれた悲鳴が上がる。
やめろ!
頭の中で虚しく喚いた。織田の手の中で硬くなっていく自分自身が信じられない。
「もうぐちゃぐちゃだね、一騎。パパにこうされるのがそんなに嬉しいの?」
唇を噛んで涙を堪えた。羞恥で死にそうだ。
織田は自分の手のひらをまじまじと見つめていた。俺から出た体液で、ベタベタに濡れていた。
「こんなに勃たせて」
ギュッと根元を掴まれ、俺は悲鳴を上げた。
「そろそろ限界かな」
織田はフフと鼻で笑うとスーツを脱ぎ捨て、ベルトを抜いてズボンを下ろした。そこから突き出た物体に、脳味噌が警鐘を鳴らした。逃げろ。早く逃げろ。
俺は精一杯努力して体を反転させると、這って織田から逃げようとした。
「すごい精神力だな」
腰をつかまれ、引き寄せられた。
「でも逃げられないよ」
愉快そうな織田の声。
「ころ……すっ! てめえは、ぜっ、たい、……殺す!」
「殺す? できっこないよ」
肛門に何かが侵入した。指だ。織田の指が内壁を広げるように動いている。気持ち悪くて腹が波打った。
「やっ、やめ……」
言葉が出ない。織田は俺の反応を面白がるように指を二本に増やし、グルグルと回転させた。
「ひぃっ……!」
痛みで萎えかけていたペニスが跳ね起きた。目が眩むような快感が、下腹部から伝わってくる。混乱した。嫌なのに、どうして、こんな。
「ここが気持ちいい?」
織田の声が背中で響く。指先が、何度もしつこくそこをノックした。無意識に腰が揺れる。
「あっあっあっ……ああぁぁっーーー!」
俺は情けない悲鳴を上げて精を放出した。しばらく肩で息をした。抵抗する気力も失せ、踏み潰された蛙のようにラグの上にへばりついた。
「可愛いなあ、一騎は」
音を立てて俺の背中にキスをする織田。どうでもよかった。勝手にしろ、と言いたいくらいだ。やかましく鳴り響いていた心臓が徐々に落ち着きを取り戻した頃、織田が言った。
「でもまだ終わってないよ」
腰を高く持ち上げられた。尻に硬い何かが触れる。織田の怒張したモノが俺のあそこに入ろうとしている。気づいて、汗が噴き出した。
「すぐ終わるからね」
やめろと言おうとした。でもそんなことは無駄だと悟り、歯を食い縛る。
「もっと力抜いて」
言われた通り、力を抜く。ぐい、と押し入ってくる硬い感触に、身を捩る。
「大丈夫だよ、一騎」
織田の手が腰を掴んで、ぐいぐいと捻じ込んでくる。痛みはなく、圧迫感があるだけ。奥のほうに押し込まれる感覚。織田が俺の頭上で息を吐いた。
「温かいなあ、一騎の中」
織田が言う。ぼんやりと、なんで俺は抵抗しないのかと考えていた。体が動かないからだ。簡単なことだ。そうだ、変な薬を打たれて、そのせいで体が動かない。無駄な抵抗は、しない。
「動くよ?」
織田が確認を取ってくる。笑えてくる。なんでも無理矢理やってきたくせに、今になって了解を得てなんになる。俺は無反応を通した。織田がゆっくりと腰を動かした。中のものが動く。目を閉じて、ラグに爪を立てた。
「一騎」
織田が呼ぶ。ゆっくりと出たり入ったり繰り返し、何度も俺の名前を呼んだ。
「一騎、一騎っ」
「はっ……あっ、はあっ……、んぅ……」
激しく突き刺す行為は永遠に続くのかと思った。音を立てて腰を打ちつける織田の息が上がってきた。俺の尻はあいつを食い千切る勢いで締めつけている。
気持ちよかった。
信じられなかった。
俺はこんなことをされて、感じている。
情けなくて、涙が出た。嗚咽と喘ぎが混じった、複雑な声が、自分の喉からひっきりなしに溢れてくる。織田は、動きを止めなかった。無言で腰を振っている。どんな顔をしているのかはわからなかった。
そのうち聞こえてきたのは、苦しげな呻き。体内に精液をぶちまけられる感覚。直後、脈打つ自分の下半身から精が放出された。
ああもう、どうだっていい。
気を失うほどの快感だった。
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ
雨宮里玖
BL
《あらすじ》放課後、三倉は浅宮に呼び出された。浅宮は三倉の親友・有栖のことを訊ねてくる。三倉はまたこのパターンかとすぐに合点がいく。きっと浅宮も有栖のことが好きで、三倉から有栖の情報を聞き出そうとしているんだなと思い、浅宮の恋を応援すべく協力を申し出る。
浅宮は三倉に「協力して欲しい。だからデートの練習に付き合ってくれ」と言い——。
攻め:浅宮(16)
高校二年生。ビジュアル最強男。
どんな口実でもいいから三倉と一緒にいたいと思っている。
受け:三倉(16)
高校二年生。平凡。
自分じゃなくて俺の親友のことが好きなんだと勘違いしている。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる