電車の男 番外編

月世

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加賀邸にて

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〈倉知編〉

 豪邸、と呼んでもいいかもしれない。敷地の外から見ても、気後れするほど立派な家だった。インターホンを押すと、カメラがついていて、何も言わなくても訪問者が誰かわかったらしい。女性の声が「おかえりなさい」と返事をした。
 門を抜けて中に入り、玄関に到達するまでの距離が長い。手入れされた芝生が広がり、駐車スペースには高級外車が駐まっていた。ここだけで、俺のうちが丸々一軒入るんじゃないかと思った。
「どうした?」
 立ち止まって辺りを見回す俺を、加賀さんが数歩先で振り返った。
 今日は加賀さんの実家にお呼ばれしている。その話が出たとき、何を着ていけばいいのか、手土産は何にすればいいのか、と大騒ぎしてしまった。加賀さんは、いつも通りの格好でいいし、手土産はいらない、と根気よく俺を宥めてくれた。
 言われた通り、普段着に、手ぶらで来たことを後悔した。
「いえ、その、素敵なお屋敷すぎて」
 加賀さんが笑って肩をすくめる。
「中はわりとシンプルだよ。親父が余計な物置くの嫌いな人だから」
「なんか、すごく怖くなってきました」
「まあ、リラックスしろって言っても難しいのはわかる」
 加賀さんが俺に歩み寄り、下から顔を近づけてくる。キスされる、と身構えて目を閉じた俺のひたいに、ゴン、と重い衝撃が。頭を抑えて目を開けると、加賀さんが鼻先で「どう?」と言った。
「なんですか、痛いです」
「ちょっとは緊張ほぐれた?」
「一割くらい、ほぐれました」
「あと九回いっとくか」
「馬鹿になるからやめてください」
 頭突きの準備をする加賀さんの体を回れ右させて、玄関に向かうと、ドアが開いて女性が現れた。加賀さんのお父さんの、再婚相手の女性だ、とすぐにわかった。事前に聞いていたから驚きは少ない。
 加賀さんの継母にしては、若い。若くて、美人だ。家庭の事情を知らない人なら、姉だと思うだろう。どことなく、加賀さんに似ている気がした。
「久しぶりだね、おかえり」
「ただいま、ハルさん」
 加賀さんに軽くハグをすると、俺に気づき、すぐに離れて頭を下げた。
「えっと、七世君? だっけ? いらっしゃい」
「こんにちは、初めまして。倉知七世です」
 慌てて頭を下げると、顔を綻ばせて笑った。
「どうぞどうぞ、上がってね」
 ハルさん、と呼ばれた女性は、のんびりとした口調で言って、家の中に戻っていった。加賀さんが俺の背中を押して、玄関に押し込んだ。玄関も、広い。靴が置き放題だな、と思った。
 家に上がって、掃除の行き届いた廊下を歩き、リビングに通された。吹き抜けになっていて、天井が、高い。日本の家じゃないみたいだ。
 見上げると、シーリングファンが回っていた。ここはリゾート地か。頭が追いつかない。
「あれ、親父は?」
 リビングに入ると、加賀さんが訊いた。
「もうちょっとで帰ってくると思うよ」
「帰ってきたら呼んで。部屋行ってる」
 ハルさんが「オッケー」と気楽な調子で返事をする。加賀さんが俺の手を引いて、リビングから二階に続く螺旋状の階段を足早に上る。家の中にこんな階段があるなんて、不思議な感覚だ。どこもかしこもオシャレすぎて、落ち着かない。
 加賀さんが二階の部屋のドアを開けて、先に俺を中に入れた。
「ここ、俺の部屋」
「え」
 壁一枚が、テレビボードも兼ねた壁面収納になっていて、大型のテレビが目についた。アパートのものより大きなサイズのベッドに、ガラスのテーブル、リクライニングチェア。何畳あるかわからないが、うちのリビングより確実に広い。
 長い期間、使われてないからか、生活感というか、生活臭のようなものがない。
「あの」
「ん?」
「お、落ち着きません。広すぎて」
 はは、と笑うと、入り口で立ち尽くす俺の手を引いて、ベッドに座らされた。
「なんか漫画でも読む? あ、DVD観る? ゲームする? この部屋娯楽だけは事欠かないから」
「いえ、あの、とてもそんな気分じゃ」
「まだ緊張してんの?」
 加賀さんが隣に腰掛けて、俺の顔を覗き込んでくる。
「ほぐしてやろうか?」
 頬を撫でられて、ビクッと体が震えた。
「そういうのは、今いいです」
「あれ、そう?」
 加賀さんの指が、俺の首を撫でている。慌ててベッドから腰を上げた。部屋の中を無意味に歩き回り、キョロキョロする。家具の他にインテリアのようなものは一つだけ。日本刀が壁に飾ってあった。
 洋風の部屋にはそぐわない物体に、思わず足が止まる。
「なんか、浮いてますね、これだけ。なんで日本刀?」
 触れようとする俺の腰に、加賀さんの手が回った。
「それ真剣だから、危ないよ」
「真剣? え、本物ですか? なんでこんなものが」
 困惑して手を引っ込めると、加賀さんが俺の背後でフフフと笑った。
「ゾンビ対策だよ」
「なるほど、いざというとき安心ですね」
 納得してうなずいた。
「うん、そのときは俺がお前を守るから」
 腹に添えられた手が服の中に侵入して、腹筋を撫でている。その手をどかそうと頑張りながら、訊いた。
「あ、あの、でも、日本刀、扱えるんですか?」
「昔、居合いしてたから使えるよ。ミショーンくらいは戦えるかもね」
 ミショーン、というのはゾンビドラマの登場人物で、日本刀を扱う黒人の女性だ。ゾンビウイルスが蔓延する世界で、日本刀を振るって戦えるなんて、かっこよすぎる。とうっとりと想像していると、加賀さんが吹き出した。
「あー、面白い」
「え、冗談ですか? どこから?」
「ゾンビ対策以外は本当だよ。あー、可愛いなあ、どうしてくれよう」
 加賀さんの手が怪しく動いている。どうしてか、やけにちょっかいを出してくる。服の上から胸を揉まれ、小さく悲鳴を上げた。
「何してるんですか」
「うん、なんか、この部屋に倉知君がいるってのが、変な感じで。ちょっとベッド行こうか」
「駄目です、何考えてるんですか」
「ほんと、なんでだろ。妙に興奮する」
 片方の手で胸を、もう片方の手で尻を揉んでくる。膝が震えてきた。
「加賀さん、やめて。勃っちゃうじゃないですか」
「あー、止まんねえ」
 エスカレートする加賀さんをなんとか振りほどき、対面しながら距離を取る。
「加賀さん」
「うん」
「あの、そうだ、アルバム、卒業アルバムとかないんですか?」
「ない」
「え、いや、ないことないですよね」
 テーブルの周りをじりじりと逃げる俺を、追う加賀さん。
「さあ、どっかにはあるんじゃない」
「見たいなあ、若い加賀さん」
「おっさんですいませんね」
「そういう意味じゃなくて」
 弁解しようとする俺の科白を遮って、電子音が鳴り響いた。
『帰ってきたよー、下りてきてー』
 インターホンか何かから、ハルさんの声が聞こえた。加賀さんが頭を掻く。
「行くか」
 冷静になってくれたらしい。
 加賀さんの部屋を出ると、緊張感がすっかり消えていることに気づいた。もしかしたら、俺の緊張をほぐすために、あんな真似をしたのかもしれない。
「七世君」
 加賀さんのお父さんの声が、リビングに響いた。
「いらっしゃい」
 前に一度だけ会ったときは、夜で、しかも突然のことで俺は混乱していた。見るからに金持ちそうで、身なりのちゃんとした紳士、というイメージだった。住む世界の違う人。そういう印象は、今もあまり変わらない。
 スーツじゃないし、本人はラフな格好のつもりなのかもしれない。淡いピンクのストライプが入ったワイシャツを、嫌味なく着こなしている。
 年齢は知らないが、若々しい人だ。シャツの上からでも鍛えられているのがわかる。何かスポーツをしているのだろう。
「こんにちは、お邪魔してます。今日は、お招きいただいて、ありがとうございます」
 直立して、声を張り上げ、腰を曲げる。加賀さんが俺の隣で「はは、硬いな」と暢気に笑う。
「自分の家だと思って楽にしなさい」
 こんなおしゃれな家を自宅と一緒にはできない。リビングのソファに座るように勧められ、ぎくしゃくと腰を下ろす。隣に座った加賀さんが、自分の肩を揉みながら言った。
「こっちまで肩凝るわ」
「すいません」
 うつむいて縮こまる俺の目の前に、人の手が現れて、紅茶のカップが置かれた。顔を上げると、ハルさんと目が合った。
「怖いよねえ、この人」
 残りの二つをお父さんと加賀さんの前に置いて、屈託なく笑う。
 怖いです、とも、怖くないです、とも言えない。ちら、とお父さんを確認すると、腑に落ちない様子で首を傾げている。
「怖くないよ、って言ってあげたいけど、嘘になるから言わない」
「ハルさん、フォローになってない」
 加賀さんが紅茶のカップに口をつけて苦笑する。ハルさんはトレイを後ろ手に持って、俺の耳の横で大きな声で言った。
「怖いよ、この人。噛みつかれないように気をつけて」
「はい、気をつけます」
 速効でそう答えていた。しまった、今のは失礼だった、と思っても遅い。
 声を上げて笑ったハルさんが「七世君、素直で面白ーい」と俺の頭を撫でてから、鼻歌を歌いながら去って行った。
「なんかごめん」
 加賀さんが謝った。
「あの人、人をからかうのが好きなんだよ。気にしないで」
「はい、気にしません」
 膝の上で拳を握りしめて、屹然と答えた。加賀さんが咳払いをしてカップを傾ける。
「おかしい……」
 お父さんが、難しい顔で腕組みをしながら言った。
「今日は怖がらせないようにと思って、ピンクの服を着てみたんだが」
 隣で加賀さんがブッと紅茶を吹いた。むせる加賀さんの背中を撫でながら、胸が熱くなるのを感じた。怖がらせないように、という気遣いをしてくれるなんて、やっぱりこの人は、加賀さんのお父さんだ。優しい人なのだ。
 勝手に恐怖心を抱いて、まともに目を見て話せていなかった。心の底から自分の言動を反省する。
「お父さん」
 眉間に皺を寄せて考え込む加賀さんのお父さんに、背筋を伸ばして向き直る。
「その服、すごく似合ってます。爽やかです」
 俺が言うと、加賀さんのお父さんが顔を輝かせた。
「そうか、じゃあよかった。これにして正解だったな」
 安心したように柔らかく笑って、ワイシャツの襟を直しながら「定光」と加賀さんを呼んだ。
「どうした」
 隣を見ると、加賀さんがソファに倒れ込んで、クッションを抱きしめながらうずくまっていた。背中が震えている。
 泣いているのか、と思ったら、笑っていた。苦しそうにおなかを抱えて、声を殺して笑っている。何がおかしいのか、わからなかった。
「加賀さん、大丈夫ですか?」
「もう、なんか、ボケのないコント見てるみたい」
 意味がわからない。お父さんも同意見のようで、不思議そうに息子を見ている。
「お前は時々わけのわからないことで笑うな」
 ひとしきり笑った加賀さんが、起き上がって「あー」と言いながら涙を拭う。
「打ち解けられたみたいでよかったよ。あ、紅茶飲んで」
「はい、いただきます」
 喉がカラカラに乾いている。紅茶をすすっていると、加賀さんのお父さんがテーブルの上に封筒を置いた。
「今日来て貰ったのは、純粋に顔を見て話をしたかったのもそうなんだが」
「ちょっと待って」
 加賀さんがお父さんを止めた。
「なんの話するつもり?」
「なんだ、駄目か?」
 封筒から中身を取り出した。
「どういう部屋がいいか、希望を聞いておきたい。二人揃ってのほうがいいだろう」
「ああ、なんだ、マンション?」
 俺たちのほうに向けて、間取りが描かれたパンフレットのようなものを見せてくる。
 加賀さんは、なんの話だと思ったのだろう。
「アイランドキッチンがいいな」
「他には? 七世君も希望はないか?」
 訊かれて恐縮する。マンションなんて、ちょっとやそっとじゃ手に入らないものなのに。まるで冷蔵庫でも買うかのように簡単に話を進めている。
 というか、一緒に住むことを前提に訊かれて顔が熱くなった。
「希望なんて滅相も……」
「あれ? 二人で入れる広い風呂がいいんじゃなかったっけ?」
「かかかか加賀さん」
 お父さんになんて恥ずかしいことを。恐る恐るお父さんを見ると、顎に手をやって、封筒に何かメモしている。
「アイランドキッチンと、広い風呂に、あとは寝室も広いほうがいいか? キングサイズのベッドが必要だろう」
 平然と言って、さらに恥ずかしい一言を付け加えた。
「寝室だけでも防音設備の整ったところが好ましいな」
 もう何も言えなかった。硬直して、必死で羞恥に耐えた。
「図面で見てもなかなかピンとこねえな」
 加賀さんがパンフレットを手に取って、眺めている。
「気になる物件は内見可能だから、連れていってやるぞ」
「んー」
 生返事をしながら、パンフレットをめくって、ちら、と俺を見た。
「やっぱ倉知君の実家からそんなに遠くないほうがいいな」
「え」
「いつでも帰れるように」
 何気なく言ったその科白に、首の後ろがひや、と冷えた。加賀さんの横顔を見つめる。特に深い意味がない発言なのかもしれないが、急に怖くなった。
「あの、俺、帰りません」
「ん?」
 きょとん、とした顔でこっちを見る。
「ずっと、加賀さんと一緒にいたいです。帰らないです。そんなに簡単に、実家に戻るつもり、ありません」
 泣きそうになるのを堪えて力説する俺を、加賀さんは唖然として見ている。
「もう一生、離れたくないのに……。俺を、捨てないでください」
「ちょ、落ち着け」
 ごん、と加賀さんの拳が俺の頭頂部に落ちた。
「そういう意味じゃなくて、家族の顔見たくなることもあるだろうし、言ってもまだ未成年なんだから、行き来するのに便利なほうがいいだろってことだよ」
「そ、そう、そういう意味ですか」
「そういう意味だよ。何、別れないよ? 俺も一生離すつもりないから」
「加賀さん」
 キュン、と胸の奥で音が鳴った。その音をかき消すように、咳払いがリビングに響く。
「今日は暑い日だな」
 加賀さんのお父さんが窓の外を見ながら言った。ハッと我に返る。人前で痴態を演じてしまった。すいません、と謝って、紅茶を一気に飲み干した。
「まだ時間はある。二人の希望に合う物件を探しておくから、それまでお前たちはゆっくり愛を育んでいるといい」
 真面目な顔でそんなことを言われると、どう返していいのかわからない。
「恥ずかしいことさらっと言うよね」
 加賀さんが笑いながら言った。さっきからずっと、俺は赤面し続けている。そろそろ身が持たない。
「さて」
 加賀さんのお父さんが、腕時計を見て、腰を上げた。
「私は少し、出かけてくる。夕飯には間に合いそうにない」
「え、そうなの?」
「すまない、客から呼び出しがかかってね。七世君」
 お父さんが右手を差し出している。急いで立ち上がって、その手を握った。
「今度また、食事でもしよう」
「はい、よろしくお願いします」
 お父さんがリビングから出ていくと、立ち尽くしたまま、顔を覆った。
「どした?」
 加賀さんの声が訊く。
「いえ、なんか、いろいろ失敗したなって」
「そう? 大丈夫だよ。倉知君、ちょっと座って」
 加賀さんが机の上を片付けてから、ソファをポンポンと叩いた。素直にそこに腰掛けると、肩を抱いて顔を近づけてきた。
「わっ、近いです。なんですか?」
「別に、キスしたくなっただけ」
「なんでいきなり……」
「お前が終始可愛いからだよ」
 可愛くない、と言おうとする俺の口を、加賀さんが塞ぐ。しばらくうっとりと、身を任せた。そのうち、チュ、と音を立てて唇が離れると、加賀さんが「ごめん」と俺の胸に頭を押しつけて、うめくように言った。
 何が、と思った瞬間、「やめるの?」とハルさんの声が聞こえた。向かい側のソファの背もたれから顔を覗かせていた。
「もっと見たーい」
「見せません」
 加賀さんが俺から距離を取って、カップに残っていた紅茶を流し込んでいる。俺はもう、顔を上げることができない。両腕で顔を隠すようにして突っ伏した。
「じゃあ私もちょっと出かけてこようかなー」
 カップを片付けているらしく、カチャカチャという音が聞こえた。
「え、どこ行くの?」
「決めてない」
「何それ」
「あーあ、ごちそう作ろうと思ってたけど、あの人いないならカレーでもしよっかな」
「一応、俺たち客なんですけど」
「わかった、じゃあお寿司取ってあげる。すごい高いやつ」
「それはどうもありがとうございます」
「一時間か二時間くらいで帰るけど、お留守番してて? お土産になんか美味しいもの買ってくるからさ」
「はいはい、いってらっしゃい」
 ふふ、とハルさんの含み笑いが漏れる。
「じゃあごゆっくり」
 ハルさんの気配が消えるまで、俺は顔を上げられなかった。人にキスシーンを見られることは何度かあった。今回は今までで一番ダメージが大きい。
 玄関のドアが閉まる音と、車のエンジン音が聞こえて、ハルさんが出かけたことがわかると、加賀さんが口を開いた。
「倉知君」
「はい……」
「俺の部屋行く?」
「えっ」
 飛び跳ねて、ソファから転げ落ちた。加賀さんが笑いを堪えた顔で、「卒業アルバム見せてやるから」と手を差し伸べてくる。その手をすぐにはつかまない。
「本当に、それだけですか?」
「ん? というと?」
 意地悪く訊いて、口の端をにや、と持ち上げた。
「変なことしませんか?」
「変なことの定義を述べよ」
「それは、えっと、たとえば服脱がしたり」
 しどろもどろになる俺を、面白そうに見ている。その目は完全にサディストのそれだ。
「わかった、脱がさない。はい、行くぞ」
 手首をつかむと、無理矢理起き上がらされた。あっさりと引き下がられると、それはそれで少しつまらないかもしれない。
 二階に上がって部屋に入ると、油断していた俺は、ベッドに押し倒された。
「あの、卒業アルバムは」
「あとで見せてやる」
「変なことしないって言ったのに」
「これは変なことじゃない」
 俺の腹に乗って、キリッとカッコイイ顔で断言した。
「メイクラブだ。親父も愛を育めって言ってただろ」
 調子がいいことを言って、覆い被さってくる。
「約束は守る」
 耳元で囁かれて、「え?」と聞き返した。
「服は脱がさないから」
「脱がないでどうやって……」
 変なことを言ってしまった。加賀さんが至近距離で、上から見下ろしてくる。また、顔が熱くなる。体もじわじわと熱を帯び、何もされていないのに、下半身が反応した。
 加賀さんが、それに気づいて嬉しそうに、笑う。
「服、汚したらごめんね」
 約束がどうとか、服が汚れるとか、本当はどうだっていい。
 見慣れない天井を見上げて、愛しい人を、抱きしめた。

〈おわり〉
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