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運命の赤い糸
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〈倉知編〉
クリスマスの次の日は終業式で、半日で終わった。
明日から冬休み。十三連休だ。
制服のまま丸井の店に寄って、昼食をごちそうされることになった。
「年末年始どうすんの? 加賀さんも会社休みだろ?」
丸井に訊かれて、そうなのか、と気づいた。
「そうなの?」
「え、そうだろ? 普通のサラリーマンだろ? 一般的に年末年始休みじゃね?」
「そうか……、そうかもしれない」
クリスマスに気を取られて、そんなことは考えもしなかった。
「いつから休みなんだろ」
急にソワソワし始めた。丸井がスマホを見ながら「二十八か、二十九か、その辺?」と見当をつける。
「でも別にどっか行こうとか言われてるわけじゃないんだろ」
「どこか行きたいっていうんじゃないんだ」
「何、一日中一緒にいられるのが嬉しいとか?」
「うん」
丸井がケーッと言ってお好み焼きをひっくり返す。
「一緒に初詣でも行けば?」
「それだ」
加賀さんと、二人で初詣。なんて素敵な一年の始まり。
「ああでも、一人暮らしなら実家帰ったりするんじゃね?」
「実家……」
加賀さんのお父さんの顔が浮かんだ。厳しそうだし、もしかしたら正月は一緒に過ごす、と決まっているかもしれない。
「お前だって正月は親戚んとこ行くんじゃなかった?」
「う、そうだった」
一月一日は家族で初詣、二日は父と母の実家に、顔を出す。どっちの実家も県内だから泊まることはないにしても、毎年帰宅するのは真夜中だ。
「十三連泊できると思ったのに」
「はー? おっまえ、迷惑とか考えろよ」
「め、迷惑かな?」
「誰だって一人になりたいときあるに決まってるだろ? そんなベタベタしてたら飽きられっぞ」
確かに、一人でゆっくり休みたい、と思っているところに、俺がいたら疲れるかもしれない。それに、飽きられるのは嫌だ。
「そうだよな、年末年始くらい、休ませてあげたい」
「そそ、休ませてあげろって。まあ、はめたまま年越すってのも魅力ではある」
丸井が俺の皿にお好み焼きをのせた。
「……はめたまま?」
「え、そういうことだろ? 年越しの瞬間、合体してたいってことだろ?」
丸井がにやけながら自分のお好み焼きにソースとマヨネーズをかける。
「お、俺はそんなこと考えてたわけじゃ」
「同時に姫始めも達成できるしな」
「姫始めって?」
「新年最初のエッチのこと」
俺が黙って固まっていると、丸井が笑い声を上げた。
「なんか想像してない?」
「う、うるさい、した!」
「したんかよ。あー、いいなあ、俺も加賀さんみたいな人と付き合いてー」
ため息と同時にしみじみと言うもんだから、激しく動揺した。
「ちょ、なんでそうなるんだよ。丸井は女の子が好きだろ」
「女は好きだけど、そっちの世界も興味あるっていうか」
「お前、加賀さんみたいな人、じゃなくて加賀さんがいいんだろ?」
お好み焼きを口に入れる寸前で、丸井が箸を止めて俺を見る。
「まあ、あんな人どこにでもいないからね」
「五月は? 六花は? どっちかやるから加賀さんはやめて」
「おっ、じゃあどっちもくれよ」
両手に花! と吠えて、手を上げる。
「すいませーん、焼きそばくださーい」
店の奥からおばさんが「自分で取りにきなさい!」と怒鳴った。
「そんな深刻な顔すんなよ。俺が本気で加賀さんに惚れてて、お前から奪おうとしてるとか思ってる?」
「ちょっと……」
本気かどうかと訊かれれば、多分、違うとは思う。ただの憧れのようなものだろうし、奪おうなんて感情を丸井が抱くわけもない。
「あのなあ。そもそもあの人がお前以外の男に興味あると思う?」
「おも、わない」
傲慢だ、と思ったが、本音が出た。
「ほら。速効で結論出るんだから、変なことで真剣になるなって。ネタだよ、ネタ」
丸井が立ち上がって厨房に消えた。
俺は少し神経質かもしれない。反省しながらお好み焼きを黙々と食べていると、店のドアが開いた。お客さんだろう
「いらっしゃいませ……、あら!」
おばさんが奥から飛び出して、「あらあらまあまあ」と何か一人で盛り上がっている。
「スーツ着てるとやっぱり高校生じゃないってわかるのね。素敵だわあ」
「いやいや、着てなくても高校生じゃないですよ」
思わず箸を取り落とした。
「加賀さん!」
叫んで振り返ると、加賀さんがこっちを見て、「え」と驚いた顔をした。
「倉知君? なんでこんな時間に」
嬉しくて飛んでいって、抱きつこうとする俺の頭に素早く手刀を落とす。
「痛い」
「え、なんでいるの? さぼり? お前が?」
「違います。今日終業式だから、午前中で終わったんです」
「あー、そっか、だよな。お前がさぼるわけないよな」
よしよし、と頭を撫でられる。まさか加賀さんに会えるとは思っていなくて、なかなか興奮が冷めない。抱きつきたくてうずうずしていると、加賀さんの後ろから高橋さんが顔を出した。
「七世君、僕もいますよ」
「あ、はい、こんにちは」
頭を下げると、「抱きついてこないんですか?」とニマニマ笑って訊かれた。
「すいません」
と謝るしかない。おかげで少し興奮が冷めた。
「ななちゃんの隣空いてるから、そこに座って」
おばさんに案内されて、二人が隣のテーブルに座った。
「加賀さん、こっち来て」
「え? いや、いいよ。連れいるんだろ? 丸井君?」
丸井は厨房で焼きそばを作っているようで、なかなか出てこない。
「加賀さんが遠い……」
シュンとして自分のテーブルに着くと、加賀さんが笑った。
「すごい近いし」
「あ、加賀さん」
メニューを取って高橋さんに手渡すと、「何?」と加賀さんがこっちを見る。
「年末年始の休みっていつからですか?」
「仕事納めが二十八だから、二十九から休み。うち泊まる?」
「主任、やらしい」
「何がだよ、どこがだよ」
「言い方がなんかやらしいです」
「なんでだよ、めっちゃ爽やかだろうが」
「あの、泊まっていいんですか? 一年の疲れ取るのに、俺がいたらもっと疲れませんか?」
おそるおそる訊くと、加賀さんが頬杖をついてこっちを見た。
「お前、今日で学校休みなんだよな?」
「はい」
「じゃあ、おうちの人の了解取れたら、今日からうち泊まれよ。朝飯作って見送って、晩飯作って待ってて」
加賀さんが言った。体が、震えてきた。
「主任、それなんか、プロポーズみたい」
「ん、そう? プロポーズはもうちょっと気の利いたこと言いたいけど」
俺を見た加賀さんが、言葉を切った。
「倉知君、赤い」
はは、と笑って加賀さんが腰を上げた。席を立ち、俺の隣に腰掛けた。
「お前は俺の癒しだって言ってるだろ」
「う、は、はい」
下から覗き込んで顔を近づけて言われると、緊張してしまう。他にお客さんもいるから、変なことはしないとわかっていても、期待して、思わず目を閉じた。
加賀さんが、ぶはっと吹き出す。
「キス待ちすんなよ」
小声で言って、俺の頭を撫でると、耳元に口を寄せて「また夜にな」と囁いて、席を立つ。
俺は顔を覆って、必死で耐えた。沸き起こるいろんなものを、必死で抑える。
「加賀さん、いらっしゃいませ!」
丸井の声が聞こえた。しばらく二人の会話を聞いていたが、顔を上げられない。
耳も、首も、熱い。熱が冷めない。
「で、倉知はなんで隣に加賀さんがいるのに落ち込んでいるんだ?」
丸井が席に戻って、鉄板の上に焼きそばを置いた。
「……撃沈した」
「え? 何?」
「加賀さんが、俺の喜ぶことばっかりする」
「ふうん? あ、焼きそば食えよ。二人前あるから」
「うん、ありがとう」
隣に加賀さんがいると思うと落ち着かない。ちらちら見ながら焼きそばを食べる。
「にしてもすごい偶然だな。別に打ち合わせしたわけじゃないんだろ?」
「してない。びっくりした。でも嬉しい。加賀さんカッコイイ」
最後を強調して言うと、加賀さんが「聞こえてる」と笑った。
丸井が焼きそばをすすりながら少し身を乗り出して言った。
「なあ、こういうのあるとさ、運命だなって思わない?」
「運命」
「だって、俺らが平日の昼にうちで食うなんて年に一回か二回だろ。加賀さんがお前抜きでうち来るのも初めてだし、それがかち合うって、やっぱ運命だよ。運命ですよね、加賀さん」
丸井が声を張り上げて同意を求める。
「丸井君はロマンチストなんだね」
「えへへ、そうなんですよ」
「まあ、確かに偶然が重なるとな。おっと、倉知君、大変だ」
加賀さんが小指を立てて、俺に向けた。
「え、なんですか?」
「赤い糸が繋がってる」
ハッとして自分の小指を見た。
三人が、同時に笑う。
「さすが倉知君」
「七世君はピュアですよねえ」
「倉知こそロマンチスト王だよな」
俺は自分の手を見下ろして、「うん」と呟いた。
一瞬、本当に見えた。
俺には、赤い糸がちゃんと見えた。
俺の小指と、加賀さんの小指を繋ぐ赤い糸が。
そんなことを真顔で言ったら、きっとどん引きだ。
運命。
俺と加賀さんが出会ったのが、運命だったら。
赤い糸が、切れないように、ほどけないように、ギュッと拳を握りしめた。
〈おわり〉
クリスマスの次の日は終業式で、半日で終わった。
明日から冬休み。十三連休だ。
制服のまま丸井の店に寄って、昼食をごちそうされることになった。
「年末年始どうすんの? 加賀さんも会社休みだろ?」
丸井に訊かれて、そうなのか、と気づいた。
「そうなの?」
「え、そうだろ? 普通のサラリーマンだろ? 一般的に年末年始休みじゃね?」
「そうか……、そうかもしれない」
クリスマスに気を取られて、そんなことは考えもしなかった。
「いつから休みなんだろ」
急にソワソワし始めた。丸井がスマホを見ながら「二十八か、二十九か、その辺?」と見当をつける。
「でも別にどっか行こうとか言われてるわけじゃないんだろ」
「どこか行きたいっていうんじゃないんだ」
「何、一日中一緒にいられるのが嬉しいとか?」
「うん」
丸井がケーッと言ってお好み焼きをひっくり返す。
「一緒に初詣でも行けば?」
「それだ」
加賀さんと、二人で初詣。なんて素敵な一年の始まり。
「ああでも、一人暮らしなら実家帰ったりするんじゃね?」
「実家……」
加賀さんのお父さんの顔が浮かんだ。厳しそうだし、もしかしたら正月は一緒に過ごす、と決まっているかもしれない。
「お前だって正月は親戚んとこ行くんじゃなかった?」
「う、そうだった」
一月一日は家族で初詣、二日は父と母の実家に、顔を出す。どっちの実家も県内だから泊まることはないにしても、毎年帰宅するのは真夜中だ。
「十三連泊できると思ったのに」
「はー? おっまえ、迷惑とか考えろよ」
「め、迷惑かな?」
「誰だって一人になりたいときあるに決まってるだろ? そんなベタベタしてたら飽きられっぞ」
確かに、一人でゆっくり休みたい、と思っているところに、俺がいたら疲れるかもしれない。それに、飽きられるのは嫌だ。
「そうだよな、年末年始くらい、休ませてあげたい」
「そそ、休ませてあげろって。まあ、はめたまま年越すってのも魅力ではある」
丸井が俺の皿にお好み焼きをのせた。
「……はめたまま?」
「え、そういうことだろ? 年越しの瞬間、合体してたいってことだろ?」
丸井がにやけながら自分のお好み焼きにソースとマヨネーズをかける。
「お、俺はそんなこと考えてたわけじゃ」
「同時に姫始めも達成できるしな」
「姫始めって?」
「新年最初のエッチのこと」
俺が黙って固まっていると、丸井が笑い声を上げた。
「なんか想像してない?」
「う、うるさい、した!」
「したんかよ。あー、いいなあ、俺も加賀さんみたいな人と付き合いてー」
ため息と同時にしみじみと言うもんだから、激しく動揺した。
「ちょ、なんでそうなるんだよ。丸井は女の子が好きだろ」
「女は好きだけど、そっちの世界も興味あるっていうか」
「お前、加賀さんみたいな人、じゃなくて加賀さんがいいんだろ?」
お好み焼きを口に入れる寸前で、丸井が箸を止めて俺を見る。
「まあ、あんな人どこにでもいないからね」
「五月は? 六花は? どっちかやるから加賀さんはやめて」
「おっ、じゃあどっちもくれよ」
両手に花! と吠えて、手を上げる。
「すいませーん、焼きそばくださーい」
店の奥からおばさんが「自分で取りにきなさい!」と怒鳴った。
「そんな深刻な顔すんなよ。俺が本気で加賀さんに惚れてて、お前から奪おうとしてるとか思ってる?」
「ちょっと……」
本気かどうかと訊かれれば、多分、違うとは思う。ただの憧れのようなものだろうし、奪おうなんて感情を丸井が抱くわけもない。
「あのなあ。そもそもあの人がお前以外の男に興味あると思う?」
「おも、わない」
傲慢だ、と思ったが、本音が出た。
「ほら。速効で結論出るんだから、変なことで真剣になるなって。ネタだよ、ネタ」
丸井が立ち上がって厨房に消えた。
俺は少し神経質かもしれない。反省しながらお好み焼きを黙々と食べていると、店のドアが開いた。お客さんだろう
「いらっしゃいませ……、あら!」
おばさんが奥から飛び出して、「あらあらまあまあ」と何か一人で盛り上がっている。
「スーツ着てるとやっぱり高校生じゃないってわかるのね。素敵だわあ」
「いやいや、着てなくても高校生じゃないですよ」
思わず箸を取り落とした。
「加賀さん!」
叫んで振り返ると、加賀さんがこっちを見て、「え」と驚いた顔をした。
「倉知君? なんでこんな時間に」
嬉しくて飛んでいって、抱きつこうとする俺の頭に素早く手刀を落とす。
「痛い」
「え、なんでいるの? さぼり? お前が?」
「違います。今日終業式だから、午前中で終わったんです」
「あー、そっか、だよな。お前がさぼるわけないよな」
よしよし、と頭を撫でられる。まさか加賀さんに会えるとは思っていなくて、なかなか興奮が冷めない。抱きつきたくてうずうずしていると、加賀さんの後ろから高橋さんが顔を出した。
「七世君、僕もいますよ」
「あ、はい、こんにちは」
頭を下げると、「抱きついてこないんですか?」とニマニマ笑って訊かれた。
「すいません」
と謝るしかない。おかげで少し興奮が冷めた。
「ななちゃんの隣空いてるから、そこに座って」
おばさんに案内されて、二人が隣のテーブルに座った。
「加賀さん、こっち来て」
「え? いや、いいよ。連れいるんだろ? 丸井君?」
丸井は厨房で焼きそばを作っているようで、なかなか出てこない。
「加賀さんが遠い……」
シュンとして自分のテーブルに着くと、加賀さんが笑った。
「すごい近いし」
「あ、加賀さん」
メニューを取って高橋さんに手渡すと、「何?」と加賀さんがこっちを見る。
「年末年始の休みっていつからですか?」
「仕事納めが二十八だから、二十九から休み。うち泊まる?」
「主任、やらしい」
「何がだよ、どこがだよ」
「言い方がなんかやらしいです」
「なんでだよ、めっちゃ爽やかだろうが」
「あの、泊まっていいんですか? 一年の疲れ取るのに、俺がいたらもっと疲れませんか?」
おそるおそる訊くと、加賀さんが頬杖をついてこっちを見た。
「お前、今日で学校休みなんだよな?」
「はい」
「じゃあ、おうちの人の了解取れたら、今日からうち泊まれよ。朝飯作って見送って、晩飯作って待ってて」
加賀さんが言った。体が、震えてきた。
「主任、それなんか、プロポーズみたい」
「ん、そう? プロポーズはもうちょっと気の利いたこと言いたいけど」
俺を見た加賀さんが、言葉を切った。
「倉知君、赤い」
はは、と笑って加賀さんが腰を上げた。席を立ち、俺の隣に腰掛けた。
「お前は俺の癒しだって言ってるだろ」
「う、は、はい」
下から覗き込んで顔を近づけて言われると、緊張してしまう。他にお客さんもいるから、変なことはしないとわかっていても、期待して、思わず目を閉じた。
加賀さんが、ぶはっと吹き出す。
「キス待ちすんなよ」
小声で言って、俺の頭を撫でると、耳元に口を寄せて「また夜にな」と囁いて、席を立つ。
俺は顔を覆って、必死で耐えた。沸き起こるいろんなものを、必死で抑える。
「加賀さん、いらっしゃいませ!」
丸井の声が聞こえた。しばらく二人の会話を聞いていたが、顔を上げられない。
耳も、首も、熱い。熱が冷めない。
「で、倉知はなんで隣に加賀さんがいるのに落ち込んでいるんだ?」
丸井が席に戻って、鉄板の上に焼きそばを置いた。
「……撃沈した」
「え? 何?」
「加賀さんが、俺の喜ぶことばっかりする」
「ふうん? あ、焼きそば食えよ。二人前あるから」
「うん、ありがとう」
隣に加賀さんがいると思うと落ち着かない。ちらちら見ながら焼きそばを食べる。
「にしてもすごい偶然だな。別に打ち合わせしたわけじゃないんだろ?」
「してない。びっくりした。でも嬉しい。加賀さんカッコイイ」
最後を強調して言うと、加賀さんが「聞こえてる」と笑った。
丸井が焼きそばをすすりながら少し身を乗り出して言った。
「なあ、こういうのあるとさ、運命だなって思わない?」
「運命」
「だって、俺らが平日の昼にうちで食うなんて年に一回か二回だろ。加賀さんがお前抜きでうち来るのも初めてだし、それがかち合うって、やっぱ運命だよ。運命ですよね、加賀さん」
丸井が声を張り上げて同意を求める。
「丸井君はロマンチストなんだね」
「えへへ、そうなんですよ」
「まあ、確かに偶然が重なるとな。おっと、倉知君、大変だ」
加賀さんが小指を立てて、俺に向けた。
「え、なんですか?」
「赤い糸が繋がってる」
ハッとして自分の小指を見た。
三人が、同時に笑う。
「さすが倉知君」
「七世君はピュアですよねえ」
「倉知こそロマンチスト王だよな」
俺は自分の手を見下ろして、「うん」と呟いた。
一瞬、本当に見えた。
俺には、赤い糸がちゃんと見えた。
俺の小指と、加賀さんの小指を繋ぐ赤い糸が。
そんなことを真顔で言ったら、きっとどん引きだ。
運命。
俺と加賀さんが出会ったのが、運命だったら。
赤い糸が、切れないように、ほどけないように、ギュッと拳を握りしめた。
〈おわり〉
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