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7話「幼馴染との再会」
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各員が荷物整理や部屋の模様替えの為に居住区へと向かうと、その場に一人残された秋空は自身が使用する提督室へと向かうために歩き出した。一応彼の荷物も事前に運び込まれていて、提督室にはダンボールの山が組み上げられている状態であるのだ。
「ふぅ……暫くはゆっくりとできそうだな。まあ荷物整理はしないといけないが……こうも多くのダンボールの山を見ると、やる気という感情が削がれていくのは何故だろうか」
そして提督室へと戻り秋空は革張りの椅子に腰を下ろして一息つこうとするが、自分が初めて使用する提督専用の部屋ということもあってか妙に落ち着かない感じがして気が休まらない。
恐らくだがダンボールの山が多くあり、それも原因の一端であろう。
しかし周りを見渡せばこの提督室はそれなりに部屋も広く、凝った装飾の類もそれほどなくて雰囲気的には二重丸と言ったところである。
それでも秋空としては気になる点が一つ有り右側の壁に掛け軸のような物が飾られているのだが、そこには『ガーディアンとの不純異性交遊は絶対に駄目っ!』という内容が無駄に達筆で書かれているのだ。
さらに目を凝らしてよく見ると彼が着任する前に、このシリウスで指揮をしていた前提督らしき名前もしっかりと記されていた。つまり前の提督がこの掛け軸を作り上げて置いていったのだろう、それに何の意味があるのか秋空には理解できないが。
「前提督は一体どんなガーディアン達と任務を共にしたのだ。しかもこれを残していく辺り、何かしらの強い意志を感じるが……。取り敢えず拝んでおく事にしよう。なにかご利益がありそうだし」
そう言いつつ彼は椅子を回転させて掛け軸の方へと体を向けると、両手を合わせて祈りを捧げるように念を送り込む。
――すると時見を見計らうようにして唐突にも提督室の扉が三回ノックされた。
「ん、誰だ? 入っていいぞ」
「はいっ大鳳軍曹です! 秘書官の件や色々とお話がありまして失礼させて頂きます!」
扉の奥から活気のある声で自らの名を告げて彼女はそのままドアノブを回して扉を開け放ち部屋へと入ろうとすると、秋空は提督として一応威厳のある姿勢を取ろうと机の上に両肘を置いて手を組みながら視線を向けた。
「それで俺に話とは一体なんだ? 大鳳?」
彼女が目の前まで歩み寄ると秋空は要件を尋ねる。
「……もう分かってるでしょ? 随分と時間が掛かっちゃったけど漸くまた会えたね。秋空!」
そう言いながら表情を緩めて剣刃は笑顔を見せつつ、彼の名前を口にして机へと手を乗せると顔を近づけてきた。
「また会えたね? ……ちょっま、待てよ? おいおい……もしかして大鳳お前は……」
彼女から放たれた言葉の意味を秋空は瞬時に考えると、前々から剣刃の声は何処で聞いたことのあるものだとして疑問だったのだが、今こうして改めて考えた事で彼の中では一つの可能性が見えた。
「そうだよ! 中学生の頃まで一緒に暮らしてた幼馴染の大鳳剣刃だよっ! もしかして今の今まで気づかなかったの?」
秋空が何かに気が付いた事を察したのか、彼女は自分を幼馴染だと公言して両手を机の上から離すと姿勢を正して今度は怪訝そうな顔を向けながらが視線を合わせてくる。
「い、いや……自己紹介の時に名前を聞いて一瞬考えた。けれど同姓同名だろうとして気に留めていなかったんだ。だがまさかお前がガーディアンになっていたとは……」
最初の自己紹介の時に剣刃の名前を聞いて彼はその可能性を一応疑いはしたのだ。
しかしそんな偶然なんて滅多にないだろうとして、秋空の中で自然と考えが消滅したのである。
「えへっ、そうでしょう! これでも凄く勉強して頑張ったんだからね! 髪色だって秋空の為に敢えて銀色にしてるんだから!」
彼女は昔と変わらず向日葵のように眩しい笑顔を浮かべると、自身の髪を主張するようにサイドアップで纏められている部分を近づけてきた。
「えっそうなのか? リキッドの副作用とかじゃなくてか?」
「うん、染めたの。私は体質のせいなのか、あまり副作用が出なかったから髪は茶色のままだよ」
どうやら剣刃の髪色はリキッドによる副作用ではなく、本当に人工的に染めているようである。
そしてリキッドの副作用がこうも現れてない者を見るのは秋空としては初めてで色々と興味深い。このシリウスに乗艦している他の者達は髪色や瞳が日本人離れしているから余計にだ。
「そうなのか……。にしてもこうしてお前と再び会えるとは思いもしなかったな。最後の別れがあんな感じだったし……」
秋空は家族を人型の自我を持つファーゲルに惨殺されて以来、幼馴染の家で数年間お世話になっていたのだが、ガーディアン育成学園の指揮官育成過程に入学が決定してからは最低限の挨拶を行い早々に家を出ていたのだ。
「お父さんとお母さんは別に怒ってないよ。ただ……復讐に取り憑かれたように生きるのだけは駄目だって」
彼が半ば無理やり家を飛び出した事に対して剣刃の両親は特に激怒している様子はなく、それよりも復讐という名の鎖に縛られていないか心配までしてくれているようであった。
「……そうか。本当にお前の両親は良い人達だな。羨ましいよ」
「んっ、秋空の両親だって優しくて良い人達だったよ! 私は今でもそれは忘れてないから!」
彼女は両手で拳を作ると自身の胸元辺りで小さく上下に振りながら、秋空に辛い過去を思い出させないようにか強めの口調で言い放っていた。これでも昔は剣刃の両親と彼の両親は一緒に出掛ける程に仲が良かったのだ。
「っ……ありがとうな」
秋空は彼女の言葉が心に刺さると言葉では到底言い表せようのない感情が込み上げてくる。
「本当のことだもん!」
依然として剣刃は頬を膨らませながら顔を合わせてくると、彼は目頭が熱くなるのを感じ取り顔を俯かせて目元を拭うのであった。
「「…………」」
そして秋空が顔を上げて彼女と目を合わせると次に一体何を話すべきかと思い悩んでしまい暫く無言の間が訪れた。
「あー……ところで、お前はもう荷物整理や諸々は終わったのか?」
流石に何も喋らずに互いに見つけ合う状態が続くと段々と気恥しさが増してきて、彼は頬を指で掻きながら何気ない質問をした。
「え、終わってないよ?」
真顔のまま首を傾げる剣刃。
「……は!?」
「だって直ぐに秋空と話したかったし!」
剣刃は彼と逸早く話すために荷物整理を放棄して居住区から抜け出して来たらしいが、それだと他の者達に見られた時に色々と面倒なのではと秋空は少なからず思う。
だがそれと同時に彼は両腕も組みながら、
「うーむ、考え方次第ではそれは上官の命令に背く行為なのでは?」
神妙な雰囲気を出しつつ核心を突くような言葉を呟いた。
「そ、そうなるのかな? あははっ……ごめんなさい! 許して!」
言われて気が付いたのか剣刃は表情を徐々に蒼白させていくと、最終的には苦い笑みを零しながら必死に謝罪の言葉を口にしていた。
「ふっ、別に咎めはしないさ。ここで話しているのを俺達だけの秘密にしておけば問題ないからな」
そんな彼女の様子を目の当たりにして秋空は鼻で笑うと特段問題事にしようと考えている訳ではなく、ここでの会話を誰にも気づかれなければ大丈夫だとして違反行為を不問とした。
「ほんと……? あ、ありがとうね!」
若干涙目になりながら剣刃は顔を勢い良く近づけてくると感謝の言葉を口にしていた。
「ああ気にするな。それよりもお前がガーディアンになった経緯や、これまでの話を聞かせてくれないか? 幼馴染として気になるんだ」
制帽を脱いで机の上に置くと秋空は自身の前髪を触りながら、幼馴染としてという部分を強調して言うと今まで出来事を尋ねた。純粋に気になるのだ。
彼女がどうしてガーディアンなんて言う危険な職業に手を出したのか。
「うん! もちろん良いよ! まずね、私がガーディアンに――――」
意外というよりかはあっさりと彼女は返事をすると瞳を輝かせながら秋空にガーディアンを目指した理由や、今まで何処の浮遊艦に乗艦していたのかと言うことを細かに話していくと、あっという間に時間は過ぎていくのであった。
「ふぅ……暫くはゆっくりとできそうだな。まあ荷物整理はしないといけないが……こうも多くのダンボールの山を見ると、やる気という感情が削がれていくのは何故だろうか」
そして提督室へと戻り秋空は革張りの椅子に腰を下ろして一息つこうとするが、自分が初めて使用する提督専用の部屋ということもあってか妙に落ち着かない感じがして気が休まらない。
恐らくだがダンボールの山が多くあり、それも原因の一端であろう。
しかし周りを見渡せばこの提督室はそれなりに部屋も広く、凝った装飾の類もそれほどなくて雰囲気的には二重丸と言ったところである。
それでも秋空としては気になる点が一つ有り右側の壁に掛け軸のような物が飾られているのだが、そこには『ガーディアンとの不純異性交遊は絶対に駄目っ!』という内容が無駄に達筆で書かれているのだ。
さらに目を凝らしてよく見ると彼が着任する前に、このシリウスで指揮をしていた前提督らしき名前もしっかりと記されていた。つまり前の提督がこの掛け軸を作り上げて置いていったのだろう、それに何の意味があるのか秋空には理解できないが。
「前提督は一体どんなガーディアン達と任務を共にしたのだ。しかもこれを残していく辺り、何かしらの強い意志を感じるが……。取り敢えず拝んでおく事にしよう。なにかご利益がありそうだし」
そう言いつつ彼は椅子を回転させて掛け軸の方へと体を向けると、両手を合わせて祈りを捧げるように念を送り込む。
――すると時見を見計らうようにして唐突にも提督室の扉が三回ノックされた。
「ん、誰だ? 入っていいぞ」
「はいっ大鳳軍曹です! 秘書官の件や色々とお話がありまして失礼させて頂きます!」
扉の奥から活気のある声で自らの名を告げて彼女はそのままドアノブを回して扉を開け放ち部屋へと入ろうとすると、秋空は提督として一応威厳のある姿勢を取ろうと机の上に両肘を置いて手を組みながら視線を向けた。
「それで俺に話とは一体なんだ? 大鳳?」
彼女が目の前まで歩み寄ると秋空は要件を尋ねる。
「……もう分かってるでしょ? 随分と時間が掛かっちゃったけど漸くまた会えたね。秋空!」
そう言いながら表情を緩めて剣刃は笑顔を見せつつ、彼の名前を口にして机へと手を乗せると顔を近づけてきた。
「また会えたね? ……ちょっま、待てよ? おいおい……もしかして大鳳お前は……」
彼女から放たれた言葉の意味を秋空は瞬時に考えると、前々から剣刃の声は何処で聞いたことのあるものだとして疑問だったのだが、今こうして改めて考えた事で彼の中では一つの可能性が見えた。
「そうだよ! 中学生の頃まで一緒に暮らしてた幼馴染の大鳳剣刃だよっ! もしかして今の今まで気づかなかったの?」
秋空が何かに気が付いた事を察したのか、彼女は自分を幼馴染だと公言して両手を机の上から離すと姿勢を正して今度は怪訝そうな顔を向けながらが視線を合わせてくる。
「い、いや……自己紹介の時に名前を聞いて一瞬考えた。けれど同姓同名だろうとして気に留めていなかったんだ。だがまさかお前がガーディアンになっていたとは……」
最初の自己紹介の時に剣刃の名前を聞いて彼はその可能性を一応疑いはしたのだ。
しかしそんな偶然なんて滅多にないだろうとして、秋空の中で自然と考えが消滅したのである。
「えへっ、そうでしょう! これでも凄く勉強して頑張ったんだからね! 髪色だって秋空の為に敢えて銀色にしてるんだから!」
彼女は昔と変わらず向日葵のように眩しい笑顔を浮かべると、自身の髪を主張するようにサイドアップで纏められている部分を近づけてきた。
「えっそうなのか? リキッドの副作用とかじゃなくてか?」
「うん、染めたの。私は体質のせいなのか、あまり副作用が出なかったから髪は茶色のままだよ」
どうやら剣刃の髪色はリキッドによる副作用ではなく、本当に人工的に染めているようである。
そしてリキッドの副作用がこうも現れてない者を見るのは秋空としては初めてで色々と興味深い。このシリウスに乗艦している他の者達は髪色や瞳が日本人離れしているから余計にだ。
「そうなのか……。にしてもこうしてお前と再び会えるとは思いもしなかったな。最後の別れがあんな感じだったし……」
秋空は家族を人型の自我を持つファーゲルに惨殺されて以来、幼馴染の家で数年間お世話になっていたのだが、ガーディアン育成学園の指揮官育成過程に入学が決定してからは最低限の挨拶を行い早々に家を出ていたのだ。
「お父さんとお母さんは別に怒ってないよ。ただ……復讐に取り憑かれたように生きるのだけは駄目だって」
彼が半ば無理やり家を飛び出した事に対して剣刃の両親は特に激怒している様子はなく、それよりも復讐という名の鎖に縛られていないか心配までしてくれているようであった。
「……そうか。本当にお前の両親は良い人達だな。羨ましいよ」
「んっ、秋空の両親だって優しくて良い人達だったよ! 私は今でもそれは忘れてないから!」
彼女は両手で拳を作ると自身の胸元辺りで小さく上下に振りながら、秋空に辛い過去を思い出させないようにか強めの口調で言い放っていた。これでも昔は剣刃の両親と彼の両親は一緒に出掛ける程に仲が良かったのだ。
「っ……ありがとうな」
秋空は彼女の言葉が心に刺さると言葉では到底言い表せようのない感情が込み上げてくる。
「本当のことだもん!」
依然として剣刃は頬を膨らませながら顔を合わせてくると、彼は目頭が熱くなるのを感じ取り顔を俯かせて目元を拭うのであった。
「「…………」」
そして秋空が顔を上げて彼女と目を合わせると次に一体何を話すべきかと思い悩んでしまい暫く無言の間が訪れた。
「あー……ところで、お前はもう荷物整理や諸々は終わったのか?」
流石に何も喋らずに互いに見つけ合う状態が続くと段々と気恥しさが増してきて、彼は頬を指で掻きながら何気ない質問をした。
「え、終わってないよ?」
真顔のまま首を傾げる剣刃。
「……は!?」
「だって直ぐに秋空と話したかったし!」
剣刃は彼と逸早く話すために荷物整理を放棄して居住区から抜け出して来たらしいが、それだと他の者達に見られた時に色々と面倒なのではと秋空は少なからず思う。
だがそれと同時に彼は両腕も組みながら、
「うーむ、考え方次第ではそれは上官の命令に背く行為なのでは?」
神妙な雰囲気を出しつつ核心を突くような言葉を呟いた。
「そ、そうなるのかな? あははっ……ごめんなさい! 許して!」
言われて気が付いたのか剣刃は表情を徐々に蒼白させていくと、最終的には苦い笑みを零しながら必死に謝罪の言葉を口にしていた。
「ふっ、別に咎めはしないさ。ここで話しているのを俺達だけの秘密にしておけば問題ないからな」
そんな彼女の様子を目の当たりにして秋空は鼻で笑うと特段問題事にしようと考えている訳ではなく、ここでの会話を誰にも気づかれなければ大丈夫だとして違反行為を不問とした。
「ほんと……? あ、ありがとうね!」
若干涙目になりながら剣刃は顔を勢い良く近づけてくると感謝の言葉を口にしていた。
「ああ気にするな。それよりもお前がガーディアンになった経緯や、これまでの話を聞かせてくれないか? 幼馴染として気になるんだ」
制帽を脱いで机の上に置くと秋空は自身の前髪を触りながら、幼馴染としてという部分を強調して言うと今まで出来事を尋ねた。純粋に気になるのだ。
彼女がどうしてガーディアンなんて言う危険な職業に手を出したのか。
「うん! もちろん良いよ! まずね、私がガーディアンに――――」
意外というよりかはあっさりと彼女は返事をすると瞳を輝かせながら秋空にガーディアンを目指した理由や、今まで何処の浮遊艦に乗艦していたのかと言うことを細かに話していくと、あっという間に時間は過ぎていくのであった。
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