聖十字騎士学院の異端児〜学園でただ1人の男の俺は個性豊かな女子達に迫られながらも、世界最強の聖剣を駆使して成り上がる〜

R666

文字の大きさ
上 下
7 / 12

7話「聖剣という名の女性にしか扱えない武器」

しおりを挟む
 ベアトリスに勝つために幼馴染のヒカリに聖剣の扱い方を教わろうと頼み込むが、彼女は責任という重圧に背中を押さえつけられているようで唇を噛み締めつつ迷いを顕にしていた。

「確かに実力差は明白だろうな。だけど勝負ってのは何も実力だけの世界じゃない。多少なりとも運が関わっている筈だ。それにヒカリは知ってるだろ? 俺が幸運の持ち主だってことを」

 彼女の表情はいまいち腑に落ちていない様子のものではあるが、それでもヒカリから聖剣を教わりたいが為に責任という名の重みを少しでも和らげる為に運という言葉を使用した。

 けれど勝負の世界なんぞ、ぼっちの俺に分かるわけもない。ただそれっぽい言葉を述べてみただけなのだ。だがそれが僅かにでもヒカリの重みを軽く出来るのであれば何の問題もない。

「ま、まあな。確かにお前は昔から人並み以上に運がいいのは事実だ。だけど……いや、分かった。これ以上は何も言わない。私がお前に聖剣の扱い方を教える。だがその代わり絶対にベアトリスには勝て。例え相手を殺すとしてもだ。いいな、分かったな?」

 聖剣を教えて勝たせるという重責を背負う覚悟をヒカリが見せると共に俺には相手を殺して人の命を奪うという責任を背負わせてくると、彼女の瞳は至って真剣そのものであり今ここで決断しなければならないもだと直感的に理解できた。
 
「ああ、絶対に勝つ! だからヒカリも頼むぜ!」

 親指を立てながら声に力を込めて言い放つが今の俺にとって命を奪うとか、そういう事はいまいち深く考えられなくて平和な日本で生活していた者にとってこの会話は現実味のないものであるのだ。恐らく試合が開始してベアトリスと剣を交えるまでは妙に心が浮いた感覚のままなのだろう。

「うむ、承知した。では早速今日の授業を終えたら特訓開始だぞ」

 どうやらヒカリは返事を聞いて納得したようでいつもの両腕を組む素振りを見せると、迅速な行動と言わんばかりに今日から特訓を始めると気合の篭る視線を向けて宣言をしていた。

「おう!」
 
 だがその提案は俺としては願ってもいないことであり、一刻も早く聖剣に触れたいと思っていたことから断る理由もなく賛成であった。
 これでまた一歩、自らの死を回避することが出来るのだから。


◆◆◆◆◆◆◆◆

 ヒカリから聖剣を学ぶという約束を無事に完了すると、そのあとは話を終えて教室へと戻ることとなった。ここ聖十字騎士学院の入学初日は普通に授業が行われるので、俺達のような学院の生徒達は初日から大忙しなのだ。

「全員席に着いたな? よろしい」

 一時間目が開始される前に俺を含めて一組の全員が席へと着くと、姉貴がタブレット端末のような物を教卓の中から取り出して卓上に置いたあと目視で全員が居るか確認しているようであった。

 しかし俺の視線はタブレット端末のような物に釘付けであり、教卓の上に置かれているそれは紛れもない日本で生活の一部ともなっていたタブレット端末そのものであるのだ。

 この世界は本当に文明レベルが桁違いにおかしい……。
 いや、色々と混ざり合っていると言うべきなのだろうか。

 聖剣という訳の分からない武器にタブレット端末とも呼べる最新の技術力が積む込まれた物。
 まるでファンタジーの概念と日本で生活していた頃の科学が融合したような世界だ。

 だがタブレット端末だけではないのだ。この国は普通にスマホのような物も普及していて、それは聞く所によると魔力を電力とし魔法を電波として通信を可能としているらしいのだ。
 
 無論だが俺もスマホは持っているしヒカリも持っている。だが今は授業中ゆえに取り出すことは不可能と言えるだろう。もしそんな所を姉貴に見られたら没収ならまだマシな方で、最悪の場合は破壊されて二度と持たされなくなるだろう。
 
 だからそれだけは絶対に回避せねばならない。なんせ俺のスマホにはゲーム内で育てたアヒル大佐という名の可愛いアヒルを飼育しているからだ。故に絶対に破壊は無論のこと没収されることは死活問題となる。

「ではこれからお前達に聖剣についての知識を与える為に授業を行う。全員顔を前に向けろ。それと仮に授業中に居眠りするような者が一人でも出れば、連帯責任として全員に特別講義を実施するからな。そのつもりでいろよ?」

 教卓の上に置いていたタブレット端末を手にして全員に脅しとも言える言葉を投げかけると、それは決して冗談で口にしていることではないと弟の俺としては明確に認識出来る。
 姉貴はつまらない冗談を言うようなタイプではなく逆に冗談を言う人間も嫌いなのだ。

「サ、サクヤ様による……特別講義っ!」
「なんだが響きが良いわね!」
「個人講義とかはないのかなぁ……」

 しかしそれは逆効果だと言えるのか教室内では一部の女子達からマンツーマンの講義を熱望する声が所々から聞こえてくる。もしかして一組の女子は別の意味で強いのかも知れない。

「……んんっ、教科書の5ページを開け。まずは聖剣の使用について説明をする」

 恐らく姉貴にも先程の女子達の声は聞こえているであろうが無視するような仕草を見せると、そのまま教科書を開くように指示を出していた。

 そうして俺達は言われるがままに教科書を机の中から引き出すが、これは一体何かの間違いではないだろうか。教科書とはこれほどまでに分厚いものなのだろうか。

 学院が渡してきた教科書は広辞苑並みの大きさを誇っていて、場合によればこれで人を殺めることも可能かも知れない。主に本の角で後頭部を……。

「んだよ、まーた聖剣の扱い方を学ぶのかよ。だりぃ」
「しっ! そんなこと言っちゃ駄目だよ!」

 ふとそんな愚痴のような言葉とそれを宥めるような声が横の方から聞こえてきた。
 ちなみに俺の席は窓側の一番後ろで少し顔を横に向ければ学院の敷地が一望出来る場所である。
 そしてついでに言うとヒカリの席は対照的に廊下側の前の方で冬は寒そうな印象を受ける場所だ。

 しかしこんな一番後ろの席にまで小言を吐くような声が聞こえるということは、俺が顔を右に向ければ愚痴を漏らした張本人が誰か分かるのではないだろうか。
 そう思うと好奇心には抗えず姉貴に文句を吐き捨てた女子の顔を拝もうと顔を動かすが、

「ん……誰だ。今許可無しに口を開いた者は。私は一度もお前達に口を開いて喋っていいとは言ってないぞ」

 それよりも先に姉貴が比較的に静かな声色でそう告げてきた。だがその声は静かなものであるが本質は全く違うのだ。苛立ちを抑えている時に敢えて出てしまう声色であることを俺は知っている。

「「「…………」」」

 そしてその事については全員が本能的に察知することが出来たのか妙な緊張感が漂うと共に教室内は静寂に包まれた。

「だんまりか。ならば一々口を挟むな。お前が聖剣の扱い方を知っていようと他の者は知らないのだ。誰もがお前基準ではない。それを常に頭の片隅に置いておけ」

 初日の授業でいきなり姉貴から叱りの言葉を聞くことになろうとは予想だにしていなかったが、それでも確かに全員が聖剣の扱いを知っている訳ではないので正論と言えるだろう。
 現に俺はまったくもって知らないからな。

「それで全員教科書は開けたな。では聖剣についての説明を始める。ノートもしっかりと書いておけ。いつ何処がテストに出るか分からんからな。くくっ」

 不敵な笑みを浮かべつつテストのことを仄めかしてくると姉貴は矢継ぎ早に、タブレットを手にして操作を始めると日本では黒板と呼ばれる部分に幾つもの画像を表示させていた。

 どうやら俺が黒板だと思っていたのは液晶画面のようである。
 本当にこの世界の文明レベルは桁違いにおかしい。所々は中世のような雰囲気が感じられるというのに。

「まじかよ。筆記テストもあるのかよ……」

 だがそれよりも気にするべき点はテストがあるということだ。聖剣を使用した際の実技テストは聞いたことがあるのだが、まさか筆記まであるのは予想外だ。
 俺は生前の頃から筆記が苦手で良い結果を残せた試しがない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

処理中です...