聖十字騎士学院の異端児〜学園でただ1人の男の俺は個性豊かな女子達に迫られながらも、世界最強の聖剣を駆使して成り上がる〜

R666

文字の大きさ
上 下
2 / 12

2話「入学経緯と質問責め」

しおりを挟む
 鐘の音が校内に鳴り響いたことでHRが終わりを迎えると今は小休憩の時間となり、各自がトイレに行ったり友達の輪を広げようと周りからは話し声が沢山聞こえてくる。

「はぁ……なんとか自己紹介という地獄の時間は乗り越えたな」

 漸く好奇な視線から僅かに解放されると溜息を漏らすが、それでも今現在僅かに視線を未だに向けてくる女子は多数いるのが現状だ。やはり女子しか居ない学院に男の俺が混ざるというのは異様な光景なのだろう。それも聖剣を学ぶ為のところなら尚更の筈だ。

「さて、取り敢えずヒカリのとこへと行くか。さっき俺の助けを無視した理由を聞かねばならんからな。まったく幼馴染が助けを求めているというのに、あんな冷たい反応はないだろ」

 彼女の席へと顔を向けつつ小言と呟くと、自己紹介の時に視線を逸らされた理由を知るためにも席を立ち上がろうとする。
 
「ねえねえ、ハヤト君が噂の唯一男子でありながら聖剣が使える人なの?」
「サクヤ様の弟って本当なんですか!?」
「彼女はいますか~?」

 だがしかし俺が席を立つと同時に四方八方から大勢の女子達が周りを取り囲むようにして現れると、好奇心に取り憑かれたような表情を浮かべながら質問責めをしてきた。

 俺が椅子から腰を中途半端に上げた状態でそれに遭遇すると自己紹介の時ほどではないが、これはこれで中々に緊張感が高まる。
 何故なら全員がしっかりと視線を合わせてきて、尚且つ距離感が異様に近いのだ。

 それはもう女子特有の甘い果実のような香りが俺の嗅覚に轟くほどに。一体この香りは何なのだろうか。もしかてこの世界にも香水のような類の物があるのかも知れないが、生憎俺はそういう物に興味がないので街に売っているのかどうかは分からない。

「あー、ごめん。一度に質問されても聞き取れないから一人ずつ頼めるかな?」

 ヒカリの席へと逸早く向かいたかったが周りに女体の壁が築き上げられると、これを容易に突破することは不可能だと判断して質問に答えるしか道は残されていなかった。
 
 しかし周りを女子達に取り囲まれて質問責めを受ける日がこようとは、こんな状況日本で生きていた頃では絶対にありえない光景だろう。なんせ生前の俺は根暗系ぼっち男子だったからだ。

「っ!? ご、ごめんなさい! 男の人と話すのが随分と久々の事だったから……。じゃ、じゃあ誰から質問する?」

 一人の女子が右手を口元に添えて謝ると直ぐに顔を左右に向けて質問者を尋ねていたが、その口振りから大凡この世界の事情が察せる事だろう。

「はいはーい! 私からしたいです! ずばりハヤト君は男性なのにどうして聖剣が扱えるんですか!」

 ノリと勢いが良さそうな女子が右手を高らかに挙げて質問をしてくる。

「んー、俺もよく分かんないというのが正直なところだな。あははっ」

 だがそれは当の本人でさえ、よく分かっていないので何とも答えることはできない。
 本当になんで女性にしか扱えない聖剣が扱えるのだろうか?
 
 もしかしたら本当の俺の性は女性なのかも知れない。
 ……いや、そんな馬鹿なことはないか。ちゃんと下半身には自慢の息子も健在だ。

「「「えっ……」」」

 俺の返事を聞いて女子達は呆気に取れたのか全員が目を点にさせて呟いていた。

「いやぁ、本当に分からないんだ。寧ろ俺が聞きたいぐらいだし、未だに自分自身を疑っているほどだ」

 そんな彼女らの姿を見ながら本当に自分が何も知らないという事を主張して伝えていく。
 けれどそれは紛れもない事実であり、この学院に俺が入学した経緯を話すとそれは二ヶ月ほどまで遡る事になる。


◆◆◆◆◆◆◆◆


 その日はヒカリが聖剣の適性度を図る為に学院へと向かうことになっていたのだ。
 俺は付き添いということで彼女に連れられて一緒に学院へと足を運ぶと、そこでは適性を図る女子達が大勢列をなしていたのだ。

 まあそれでも適性を図らないと聖十字騎士学院には入学できないので、ヒカリは露骨に嫌そうな顔をして列に並んでいたがな。
 
 そうして体感時間で一時間ほど経過すると漸く自分達の番が回ってきて、ヒカリが適性を図り終えるとランクとしてはB判定であったのだ。聖剣のランクは全部で四段階あり、高ランク順に言うと【S、A、B、C】という感じになるらしい。

 そこで姉貴の話によると高いランクであれば、より質の良い聖剣が扱えて尚且つ聖剣としての能力も上がるらしいのだ。ちなみにそれ関連で言うと俺の姉貴の適性ランクはSで、それを聞けば自ずと最強の聖剣使いということが納得できるだろう。

 それから無事にヒカリの適性を図り終えたあと俺達は学院内を見学するべく歩いていたのだが、そこでふと学院の敷地に設置されている長椅子に聖剣らしき物が置かれている事に気が付いたのだ。
 
 しかもそれは見るからに忘れ物という感じが全体から醸し出ていて、恐らく授業を終えて一休みしていた時にそのまま置いていってしまったのだろう。
 例えるのならば傘を忘れるような感覚に近いのかも知れない。

 それで俺が忘れ物の聖剣を学院の教師に渡そうと思い、長椅子に近づいて剣を拾い上げたのだが……これがまずかった。
 
 男子たる者幾つ歳を超えても剣という物を手にすると鞘から引き抜いて振りたくなる衝動に駆られるのだ。つまりは好奇心に勝るものなし。
 
 その時の俺は『まあ、所詮は男だし聖剣なんて抜けないだろ』と思いながら柄の部分を握り締めて思っきり引き抜く動作をすると――――なぜだろうか。

 いとも容易く剣が鞘から抜けてしまい俺の全身には礼装と呼ばれる鎧のような物が一瞬の間に装着されると、不思議と体の奥底からは聖なる力が血流に沿って漲っていくのを感じたのだ。

 ……そう、俺は女性にしか扱えない聖剣を男子でありながら扱えてしまい世の中の常識をたった一日で変えてしまったのだ。その際に全貌を見ていたヒカリが口を大きく開けて一回も瞬きをせずに驚愕の表情を見せていたのが印象的で今でも鮮明に覚えている。

 だが俺が彼女の表情に気を取られていると運が悪いことに、そこでちょうど学院の教師らしき人物が聖剣を取りに来たらしく俺とばったり遭遇してしまったのだ。あとは言わずとも分かるだろう。

 そのまま俺は学院の教師に連行されて床に魔法陣が描かれた部屋に入れられると、そこで複数の女性に囲まれながら人類史初めてという言葉や人体実験がどうのこうと言われたのだ。

 だけどそこで学院で教師をしていた姉貴が逸早く駆けつけてくれると、よく分からないが他の女性陣と何か難しい事を五分ほど話したあと、その場で何故か俺が聖十字騎士学院に入学させられることが告げられたのだ。

 これは今現在でも理解が追いついていない部分があるのだが、どうにも後で詳しい事を姉貴から聞いたら男が聖剣を扱えるというのは前代未聞だと言うのは当然だが、それ故に隣国や他国が俺の身を狙いに来る可能性があるらしいのだ。

 なにぶん俺が初の男性聖剣使いであることから、その情報は貴重な物となるらしい。だからそういう経緯があって、この聖十字騎士学院で保護してもらう意味を込めて入学となったらしい。
 
 これで三年間は他国からの人攫いや人体実験や解剖に怯えなくて済むのだが、本当に俺如き人間を他国が狙ってくるのかどうかは疑問である。ちょっと大袈裟に考え過ぎじゃないだろうかと。

 けれどここパルメシル王国の学院には多くの現役聖剣使いが教師として働いていて戦力も高く、更にここは全寮制でもあることから衣食住が完璧に揃っていて何一つ不自由はない。
 まあ女子しか居ないから実際に寮生活がどうなるかは心配な部分ではあるが。

「えーっとそれで次に姉貴が本当に俺の姉なのかという質問だけど事実だぞ。というかこんなんで嘘をついてもしょうがないしな」

 これまでの入学経緯やその他諸々を思い出して頭の容量が越えそうになり、頭痛を誘発させると一旦考えるのを辞めて次の質問に答えるのであった。

 そして最後の彼女居るか居ないか質問は何処の世界でも共通のネタなのだろうか。
 普通に居ない歴=年齢と答えたが返しとしては間違っていないだろうか? 
 本当にああいう質問は何と返すべきなのか悩むから辞めて欲しい。こっちは元根暗ぼっちだぞ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

処理中です...