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第二章
12話「首狩神社へと到着」
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優司達が乗っている電車が予定通りの時刻に豊橋駅へと到着すると一行は電車を降りて、そのまま今度はバスへと乗り込んで首狩神社と言われている場所へと目指した。
「あとはこのバスに揺られていれば目的地に到着さ」
バスの座席に深く腰を掛けながら京一は言う。
「「はいっ!」」
二人は静かに頷くと優司は窓越しに見る初めて土地に色々と興味が惹かれた。しかもこの何処となく田舎のような雰囲気が感じられる豊橋という場所は、妙に気分が和むようで彼は青森に住んでいた頃が懐かしく思えた。
――それから早朝と言うこともあってかバスに乗っている客は数人ほどで、その多くがお年寄りであった。
優司はそんな光景を見て青森の地元でも高齢化が進んでいて、よく親友らと遊びに行く時にはバスを使っていたが、その時も今みたいにお年寄りが大勢乗っていた事を頭の中で思い浮かべると、ほんの少しだけ青森に帰りたいという欲が湧いた。
「……だめだな。変にホームシックになっちまう」
彼は今まで学園の授業に必死に食らいついていく事で頭がいっぱいであり、そのおかげで地元の事は考える余裕すらなかったが今ようやく一段落といった所まで来て余裕が生まれてしまったのだ。
「ん~? どうしたの優司? 緊張しているの?」
隣に座っている幽香が首を傾げながら顔を覗き込んでくる。
「いや……何でもない。ちょっと考え事をな」
彼にこんな弱気な姿は見せられないと優司は気持ちを新たに引き締め直した。
◆◆◆◆◆◆◆◆
あれからバスに揺られること四十分ほどで目的の場所に到着して京一が先頭でバスから降り始めると、この場所で降りる様子の乗客は彼ら三人だけであった。
バスにはまだ数人の乗客が席に座っているのだが皆一様に微動だにする気配すら無かった。
優司はそんな乗客達を横目にバスから降りると周辺は一面が木々に囲われていて砂利で作られた駐車場以外には特になにも目新しいものはなく、異様な静けさの影響で草木が風に揺れる音が大きく響き渡るぐらいである。
「んーっと、取り敢えずこの石階段を上った先に依頼主がいるみたいだから取り敢えず行こうか」
京一がスマホを取り出して何かを確認する素振りを見せて言ってくる。
「……は、はい」
幽香は目の前に広がる石階段を見上げながら呆然とした声を出していた。
優司もそれに釣られて階段の方へと顔を向けると彼と同じ声が出そうになったが、ぐっと喉の辺りで押し殺すと背後からはバスが発進したのか排気音とタイヤと砂利の擦れる音が聞こえた。
「いくぞ二人とも! この程度の階段なんて体育の授業と比べたら遥かに楽だろ?」
階段を前にして尻込みしている様子の二人を見て京一が意味有り気に笑みを浮かべて言う。
「え、ええまぁ。あれは人を殺す為の授業かとたまに思いますけどね……」
幽香がそれに反応して体育での授業を思い出したのか段々と気分が落ちていっているように伺える。
「ははっ、それは確かに言えてるな! だが俺が一年の頃は鉄平……いや筋肉ゴリラが体育の担当だったからな。その時は授業に耐えられず何名かは病院送りにされていたよ。あははっ!」
そんな彼の様子を見て京一は依然として笑顔を絶やさずに喋り続けると、その中には男子寮の寮長こと通称筋肉ゴリラの名があった。
さらに優司は彼の話しを聞いて、あの男が過去に体育の担当をしていた時期があったことに衝撃を覚えると心底その年に入学しなくて助かったと思わざる得なかった。
なんせ先輩の口振りから察するに恐らく真面な授業ではなかっただろうと思えるからだ。
「ま、まじっすか……。あの寮長が体育担当なんて地獄じゃないですか」
優司はそれらの思いを胸の内に留めると、先に階段を上っていく京一の背に視線を向けながら口を開く。
「まあ授業は厳しいものだったが、おかげで根性精神は身に付いたさ。逆に言えばそれぐらいしか得るものはなかったかな」
そう言うと彼の背には言葉では言い表しようのない悲壮感にも似た何か儚い雰囲気が滲んでいた。優司は何となくでそれの意味を悟ると、
「あーっ……」
という短くも空気が抜けたような弱気な声が漏れ出ていった。
――そしてそのあとは三人とも無言のまま階段を上りきると、優司の目の前には小奇麗な神社が建っていて漸く目的地である”首狩神社”という場所に着いた事を実感させた。
「こ、これがネットで噂になっていて今回の依頼の場所……首狩神社なのか……」
優司と同じことを思っていたのか隣では幽香が乱れた呼吸を整えようとしながらもその名を口にしていた。すると時を同じくして京一が神社のへと近づいて、
「すみませーん! 名古屋第一高等学園から来ました古本京一です! 誰か居ませんかー!」
と声を大きく出しながら自分達が来たことを中に居るはずの人物に告げていた。
恐らく神社の中には今回の依頼主がいるのだろうと優司はその様子を黙って見ている。
「はいはーい、今行きますから少々お待ちを~」
少し経ってから中から返事が聞こえてくると、その声は女性のものである事が分かった。
「なんだと……!?」
そこで優司はもしかしてこの神社には巫女がいるのだろうかと一瞬考えるが何処をどう見ても余り賑わっているような感じもなく、言ってしまえば参拝客すら来ているのかどうか怪しい所である。
「お待たせしましたぁ。この神社の管理をしています市の職員の【野村玲子】と申します。この度は私の依頼を受けて下さり本当にありがとうございます」
神社の横側には普通に引き戸が付いていて黒色のビジネススーツを着た女性がそこから姿を現すと、ほんわかとした様子で優司達のもとへと駆け寄って来て彼女は自身が市の職員であることを告げて頭を下げた。その容姿から年齢は二十代後半の女性のように優司には見える。
「おっと、頭を上げて下さい。依頼をされたら受けるのは除霊師見習いの自分達としては当然の責務ですから。それと……貴女が市の職員という事はこの神社はもう神主は居ないんですか?」
彼女が頭を下げた事に京一はすかさず頭を上げるように言うと矢継ぎ早に神主の所在を訊ねる。
けれどその時、優司は彼が放っていた除霊師見習いという心構えのような言葉を耳にして全身に気が張っていく感覚を受けていた。
「は、はいそうですぅ。もうずっと神主不在で今では豊橋市がこの神社を管理しています」
玲子は頭を上げて京一の質問に答えると、どうやらこの神社は本当に神主が不在で神社としてはかなり罰当たりな事になっているらしい。
「なるほど。では次に依頼の内容を詳しく聞かせて貰えますか?」
表情を険しくさせて京一は頷くと流れるように今度は依頼内容を訪ねる。
その一切無駄のない行動に優司は目を見張って観察していると、
「はいっも、もちろんですぅ! ……えっとその……ここではアレですので中で話しましょう」
玲子が周囲を見渡したあと落ち着かない様子で神社の中へと入るように言ってきた。
「了解しました。ほら、いくぞ二人とも。これから中に入って依頼内容の確認だ」
彼女の言葉に返事をしてから京一が振り返って優司達に声を掛ける。見れば彼は先程までのおちゃらけたような軽い雰囲気は微塵もなく、表情は真剣そのもので声色も覇気が篭っているようである。
「「分かりました」」
優司と幽香はそんな真面目な京一を見て先程までのあの人は一体何処にいったのかと二人は互いに顔を見合わせて首を傾げたが、取り敢えず依頼内容の詳細を聞くことが先決であり言われた通りに神社の中へと入るべく足を進めるのであった。
「あとはこのバスに揺られていれば目的地に到着さ」
バスの座席に深く腰を掛けながら京一は言う。
「「はいっ!」」
二人は静かに頷くと優司は窓越しに見る初めて土地に色々と興味が惹かれた。しかもこの何処となく田舎のような雰囲気が感じられる豊橋という場所は、妙に気分が和むようで彼は青森に住んでいた頃が懐かしく思えた。
――それから早朝と言うこともあってかバスに乗っている客は数人ほどで、その多くがお年寄りであった。
優司はそんな光景を見て青森の地元でも高齢化が進んでいて、よく親友らと遊びに行く時にはバスを使っていたが、その時も今みたいにお年寄りが大勢乗っていた事を頭の中で思い浮かべると、ほんの少しだけ青森に帰りたいという欲が湧いた。
「……だめだな。変にホームシックになっちまう」
彼は今まで学園の授業に必死に食らいついていく事で頭がいっぱいであり、そのおかげで地元の事は考える余裕すらなかったが今ようやく一段落といった所まで来て余裕が生まれてしまったのだ。
「ん~? どうしたの優司? 緊張しているの?」
隣に座っている幽香が首を傾げながら顔を覗き込んでくる。
「いや……何でもない。ちょっと考え事をな」
彼にこんな弱気な姿は見せられないと優司は気持ちを新たに引き締め直した。
◆◆◆◆◆◆◆◆
あれからバスに揺られること四十分ほどで目的の場所に到着して京一が先頭でバスから降り始めると、この場所で降りる様子の乗客は彼ら三人だけであった。
バスにはまだ数人の乗客が席に座っているのだが皆一様に微動だにする気配すら無かった。
優司はそんな乗客達を横目にバスから降りると周辺は一面が木々に囲われていて砂利で作られた駐車場以外には特になにも目新しいものはなく、異様な静けさの影響で草木が風に揺れる音が大きく響き渡るぐらいである。
「んーっと、取り敢えずこの石階段を上った先に依頼主がいるみたいだから取り敢えず行こうか」
京一がスマホを取り出して何かを確認する素振りを見せて言ってくる。
「……は、はい」
幽香は目の前に広がる石階段を見上げながら呆然とした声を出していた。
優司もそれに釣られて階段の方へと顔を向けると彼と同じ声が出そうになったが、ぐっと喉の辺りで押し殺すと背後からはバスが発進したのか排気音とタイヤと砂利の擦れる音が聞こえた。
「いくぞ二人とも! この程度の階段なんて体育の授業と比べたら遥かに楽だろ?」
階段を前にして尻込みしている様子の二人を見て京一が意味有り気に笑みを浮かべて言う。
「え、ええまぁ。あれは人を殺す為の授業かとたまに思いますけどね……」
幽香がそれに反応して体育での授業を思い出したのか段々と気分が落ちていっているように伺える。
「ははっ、それは確かに言えてるな! だが俺が一年の頃は鉄平……いや筋肉ゴリラが体育の担当だったからな。その時は授業に耐えられず何名かは病院送りにされていたよ。あははっ!」
そんな彼の様子を見て京一は依然として笑顔を絶やさずに喋り続けると、その中には男子寮の寮長こと通称筋肉ゴリラの名があった。
さらに優司は彼の話しを聞いて、あの男が過去に体育の担当をしていた時期があったことに衝撃を覚えると心底その年に入学しなくて助かったと思わざる得なかった。
なんせ先輩の口振りから察するに恐らく真面な授業ではなかっただろうと思えるからだ。
「ま、まじっすか……。あの寮長が体育担当なんて地獄じゃないですか」
優司はそれらの思いを胸の内に留めると、先に階段を上っていく京一の背に視線を向けながら口を開く。
「まあ授業は厳しいものだったが、おかげで根性精神は身に付いたさ。逆に言えばそれぐらいしか得るものはなかったかな」
そう言うと彼の背には言葉では言い表しようのない悲壮感にも似た何か儚い雰囲気が滲んでいた。優司は何となくでそれの意味を悟ると、
「あーっ……」
という短くも空気が抜けたような弱気な声が漏れ出ていった。
――そしてそのあとは三人とも無言のまま階段を上りきると、優司の目の前には小奇麗な神社が建っていて漸く目的地である”首狩神社”という場所に着いた事を実感させた。
「こ、これがネットで噂になっていて今回の依頼の場所……首狩神社なのか……」
優司と同じことを思っていたのか隣では幽香が乱れた呼吸を整えようとしながらもその名を口にしていた。すると時を同じくして京一が神社のへと近づいて、
「すみませーん! 名古屋第一高等学園から来ました古本京一です! 誰か居ませんかー!」
と声を大きく出しながら自分達が来たことを中に居るはずの人物に告げていた。
恐らく神社の中には今回の依頼主がいるのだろうと優司はその様子を黙って見ている。
「はいはーい、今行きますから少々お待ちを~」
少し経ってから中から返事が聞こえてくると、その声は女性のものである事が分かった。
「なんだと……!?」
そこで優司はもしかしてこの神社には巫女がいるのだろうかと一瞬考えるが何処をどう見ても余り賑わっているような感じもなく、言ってしまえば参拝客すら来ているのかどうか怪しい所である。
「お待たせしましたぁ。この神社の管理をしています市の職員の【野村玲子】と申します。この度は私の依頼を受けて下さり本当にありがとうございます」
神社の横側には普通に引き戸が付いていて黒色のビジネススーツを着た女性がそこから姿を現すと、ほんわかとした様子で優司達のもとへと駆け寄って来て彼女は自身が市の職員であることを告げて頭を下げた。その容姿から年齢は二十代後半の女性のように優司には見える。
「おっと、頭を上げて下さい。依頼をされたら受けるのは除霊師見習いの自分達としては当然の責務ですから。それと……貴女が市の職員という事はこの神社はもう神主は居ないんですか?」
彼女が頭を下げた事に京一はすかさず頭を上げるように言うと矢継ぎ早に神主の所在を訊ねる。
けれどその時、優司は彼が放っていた除霊師見習いという心構えのような言葉を耳にして全身に気が張っていく感覚を受けていた。
「は、はいそうですぅ。もうずっと神主不在で今では豊橋市がこの神社を管理しています」
玲子は頭を上げて京一の質問に答えると、どうやらこの神社は本当に神主が不在で神社としてはかなり罰当たりな事になっているらしい。
「なるほど。では次に依頼の内容を詳しく聞かせて貰えますか?」
表情を険しくさせて京一は頷くと流れるように今度は依頼内容を訪ねる。
その一切無駄のない行動に優司は目を見張って観察していると、
「はいっも、もちろんですぅ! ……えっとその……ここではアレですので中で話しましょう」
玲子が周囲を見渡したあと落ち着かない様子で神社の中へと入るように言ってきた。
「了解しました。ほら、いくぞ二人とも。これから中に入って依頼内容の確認だ」
彼女の言葉に返事をしてから京一が振り返って優司達に声を掛ける。見れば彼は先程までのおちゃらけたような軽い雰囲気は微塵もなく、表情は真剣そのもので声色も覇気が篭っているようである。
「「分かりました」」
優司と幽香はそんな真面目な京一を見て先程までのあの人は一体何処にいったのかと二人は互いに顔を見合わせて首を傾げたが、取り敢えず依頼内容の詳細を聞くことが先決であり言われた通りに神社の中へと入るべく足を進めるのであった。
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