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第三章 ドイツ軍人の少女
11話「ギャルゲーの親友枠」
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ナタリアが望六を除いて全員に階段から落ちたと言う言い訳を述べてその場を乗り切ると、それ以上の追求は誰もする事がなく雑談を交えながらの夕食が始まった。
そしてその雑談の中には望六達が居ない間に話していた翠嵐達が不機嫌になった理由の”部屋割り”も含まれていて、どうやら一樹の隣の部屋を獲得したのはシルヴィアであったらしいのだ。
だがそうなると翠嵐と月奈が黙っていないだろうと望六は思っていたのだが、ゴールデンウィーク中は三人が交代で部屋を使うという事で穏便に事が収まったらしい。
とどのつまりシルヴィアは初日を獲得したと言う訳だ。
「うーむ、しっかし……相変わらず翠嵐の様子が何処かよそよそしいな」
夕食のカツ丼を食べながら小声で呟くと望六は視界に映る彼女を見て色々と気になっていた。
それはここ最近の翠嵐の様子がおかしく時折、一樹を横目で見ては恍惚とした表情を浮かべて上の空のようなのだ。
これは流石に何かあっただろうと望六は見ていて確信すると同時に、一体何があったのだろうかという至極当然の疑問も浮かんだ。もし機会があれば翠嵐に事情を訊ねてみたいと彼は頭の片隅で考えながら丼に残ったカツと白米を平らげる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そして全員が夕食を食べ終えると明日の準備で色々とやらないといけない事が多々残っていて解散となった。望六もそのまま一樹達と共に寮へと戻ろうとしたのだが、ふと今日の分のビーストエナジーを切らしている事を思い出しコンビニに立ち寄ってから戻る事にした。
「いかんいかん。一日でも欠かすと体が不調になってしまうからな、ちゃんと買いに行かねばっ!」
一樹達にコンビニ寄ってから帰る事を告げると、望六はビーストエナジーを求めて小走りで向かった。この日はゴールデンウィーク前日ともあって、女子達が薄着で廊下に出て話し合っている様子が多く見られた。
主に白シャツの下から下着の色が見えたり、ショートパンツから生える艶かしい生足の数々。
それらの光景が合法的に見ることが許される事に、望六は心の中で感謝の念をWM学園に捧げた。
――そして小走りのままコンビニへと到着すると彼は一目散に飲み物が売っているコーナーへと向かい、ビーストエナジーという命の源を手にする事が出来た。
「よっし、今日はこれを飲んで一日の締めとするかな!」
右手に数本の缶を抱えて安堵の声を出すと、望六は会計を済ませるべくレジへと向かって歩き出した。だがしかし、そこで彼の視界には一人の女子がポテトチップスの置かれている棚を食い入るように見ている光景が映った。
「あれ……? もしかして翠嵐か?」
余りにも見覚えのある姿……というよりかはついさっき食堂で解散した筈の彼女だが、どうやらコンビニへと立ち寄っていたようだ。その様子を見るからに目当てはポテチと言った所だろう。
……だが望六はこれは好機だと捉える。何故ならこの場には彼女と自分しかいないのだ。
つまりは望六は今ここで翠嵐に一樹と何かあったのかと言う、ずっと気になっていた事が堂々と聞ける訳なのだ。
「お、おーい翠嵐!」
意を決して望六は彼女の元へと近づいて声を掛ける。
「んー、あれ? 望六じゃないか! どうしたんだ?」
彼の呼び声で翠嵐が棚から視線を外すと、そのまま振り返って軽い笑みを見せながら返してきた。望六はその笑みを見て自分がこれから行う事に少しだけ後ろめたさが生まれたが、どうしても真実を知りたくて彼女に視線を合わせながら近づいた。
「あ、いや実はな……。最近お前がずっと一樹の事を目で追っているようだったから何かあったのかなーって、ははっ」
いざ彼女と面と向かって言葉を発すると緊張感というものが全身から沸き立ってきて、頭が痒くなると望六は人差し指でぽいつと掻いた。
すると翠嵐は彼の言葉を聞いて笑顔から一変して複雑なものへと表情を変えていた。
「……やっぱり、望六は気づいちゃう……よね」
彼女はそう小さく答えると右手で左手の肘を触りながら気まずそうな雰囲気を出していた。
「い、言いたくない事だったら別に深くは聞かないぞ……?」
その様子を見てこれは深堀してはいけない事かと望六は判断して逃げ道を用意する。
「ううん、これはちゃんと言っておかないといけない事だから言うよ」
翠嵐は首を横に振ってそれを拒否した。そして神妙な面持ちで彼女は口を開くと、
「あ、あのね? 外出日の時に望六は居なかったから知らないのは当然だと思うんだけど、実はその日に色々とあったんだ」
視線を真っ直ぐと彼に向けながら真面目な声色で話し始めた。
望六は黙ってそれを聞いて頷く事しか出来なかったが、その話を聞くとここ最近の翠嵐の様子がおかしかったのも自然と納得が出来た。
……その肝心の内容だが、どうやら望六が寮部屋でナタリアとパンツ鑑賞会をしている間に一樹達の方ではひと悶着あったらしいのだ。
それは翠嵐にしては珍しくスカートという可愛らしい物を履いていたらしいのだが、普段からズボンで過ごしている彼女にとってそれは落ち着かないものであり、たまたま傍を通り掛かったチャラい男二人組に”似合ってない”と言われたらしいのだ。
そこで翠嵐はやっぱり自分は可愛い物は駄目なんだと思い、一人で学園に引き返そうとした際に一樹が颯爽と現れてチャラい男二人組に謝るように言って事なきを得たらしいのだ。そしてこの時、一樹が颯爽と現れた瞬間に翠嵐は心の奥で何かが弾けるような衝撃を受けたらしいのだ。
「――という訳なんだ。本当にごめん! アタシは望六の事も好きだけど、それは友達としてだとあの時分かったんだ。……だからその「いいよ、その先は言わなくて」……望六」
翠嵐は全てを話し終えると勢い良く頭を下げて謝罪の言葉を口にすると、次の言葉を言わせてはならないと彼は食い気味で言葉を遮った。
それを言わせてしまえば事実上……振られた事になってしまうからである。
「まあ、あれだけ目を輝かせて一樹を見ていたんだ。少なからずそんな可能性があることぐらい俺とて分かる。……だから敢えてこう言おう。翠嵐、お前の恋を俺は応援すると」
望六は翠嵐から関節的に振られたような精神的な痛みを受けると、冷や汗らしきものが頬を伝って落ちていくのが鮮明に分かった。
だがそれでも冷静を装いながら彼は口を動かして彼女の恋路を応援すると言い切る。
「ッ……あ、ありがとう。本当に自分勝手でごめんね。アタシは恋愛経験とかないから……とにかく二人に嫌われないようにとアタックする事しか分からなかったんだ」
翠嵐は一瞬だけ歯痒そうな顔を見せると、あの以上なほどの密着やアピールは全て嫌われない為であったらしく、それは彼女の不器用さの現れだったらしい。
だが望六は翠嵐が謝る事は特に何も無いと考えていて、少し優しくされただけで落ちるような自分ではないと自負しているのだ。それら諸々の事を含めて彼は口角を上げて口を開くと、
「ふっ、問題ないとも。だがまあ……一樹を狙うのであればライバルは多いが大丈夫か?」
彼女に対して一樹の周りには色恋沙汰に飢えた女子達が多数居る事をさり気なく伝えた。
「もちろん、アタシは何がなんでも一樹を手に入れるッ! 例え幼馴染や貴族が相手でもね!」
しかし翠嵐の気持ちは圧倒的な様子で、白い歯を見せながら自信に満ち溢れたような顔を向けながら返してきた。
「そうか、ならば頑張ってくれ。……んじゃ俺はそろそろ部屋に戻るから、また明日な!」
彼女の覚悟を見届けた望六は親指を立てながら精一杯の決め顔を作って声を出すと、これ以上この場に居ても話すことは何も無いと思い部屋に戻ると言って話を終わらせようとした。
「うんっ! また明日な望六!」
翠嵐が弾けるような笑みのまま右手を小さく左右に振りながら返事をすると、望六は静かに頷いて会計を手早く済ませたあと寮へと向かって歩き出した。しかし彼の心中は穏やかなものとは程遠く、右手に抱えている缶が握力で潰れ掛けるほどである。
「な、何なんだろうか。この告白もしていないのに振られたような気持ちは……」
一年寮へとたどり着いて廊下で独り言を漏らしながら歩く望六。心の中は複雑に色んな感情が絡み合っている状態だが、翠嵐の気持ちが知れた事は唯一良かった点と言えた。
そして彼は個人的に一樹と月奈の恋路を応援していたのだが彼女達と関わっていく上で今ではシルヴィアや翠嵐にも幸せになって欲しいと思えるほどで、望六はギャルゲーの親友枠は辛いものだと一人で頭を抱えるのだった。
そしてその雑談の中には望六達が居ない間に話していた翠嵐達が不機嫌になった理由の”部屋割り”も含まれていて、どうやら一樹の隣の部屋を獲得したのはシルヴィアであったらしいのだ。
だがそうなると翠嵐と月奈が黙っていないだろうと望六は思っていたのだが、ゴールデンウィーク中は三人が交代で部屋を使うという事で穏便に事が収まったらしい。
とどのつまりシルヴィアは初日を獲得したと言う訳だ。
「うーむ、しっかし……相変わらず翠嵐の様子が何処かよそよそしいな」
夕食のカツ丼を食べながら小声で呟くと望六は視界に映る彼女を見て色々と気になっていた。
それはここ最近の翠嵐の様子がおかしく時折、一樹を横目で見ては恍惚とした表情を浮かべて上の空のようなのだ。
これは流石に何かあっただろうと望六は見ていて確信すると同時に、一体何があったのだろうかという至極当然の疑問も浮かんだ。もし機会があれば翠嵐に事情を訊ねてみたいと彼は頭の片隅で考えながら丼に残ったカツと白米を平らげる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そして全員が夕食を食べ終えると明日の準備で色々とやらないといけない事が多々残っていて解散となった。望六もそのまま一樹達と共に寮へと戻ろうとしたのだが、ふと今日の分のビーストエナジーを切らしている事を思い出しコンビニに立ち寄ってから戻る事にした。
「いかんいかん。一日でも欠かすと体が不調になってしまうからな、ちゃんと買いに行かねばっ!」
一樹達にコンビニ寄ってから帰る事を告げると、望六はビーストエナジーを求めて小走りで向かった。この日はゴールデンウィーク前日ともあって、女子達が薄着で廊下に出て話し合っている様子が多く見られた。
主に白シャツの下から下着の色が見えたり、ショートパンツから生える艶かしい生足の数々。
それらの光景が合法的に見ることが許される事に、望六は心の中で感謝の念をWM学園に捧げた。
――そして小走りのままコンビニへと到着すると彼は一目散に飲み物が売っているコーナーへと向かい、ビーストエナジーという命の源を手にする事が出来た。
「よっし、今日はこれを飲んで一日の締めとするかな!」
右手に数本の缶を抱えて安堵の声を出すと、望六は会計を済ませるべくレジへと向かって歩き出した。だがしかし、そこで彼の視界には一人の女子がポテトチップスの置かれている棚を食い入るように見ている光景が映った。
「あれ……? もしかして翠嵐か?」
余りにも見覚えのある姿……というよりかはついさっき食堂で解散した筈の彼女だが、どうやらコンビニへと立ち寄っていたようだ。その様子を見るからに目当てはポテチと言った所だろう。
……だが望六はこれは好機だと捉える。何故ならこの場には彼女と自分しかいないのだ。
つまりは望六は今ここで翠嵐に一樹と何かあったのかと言う、ずっと気になっていた事が堂々と聞ける訳なのだ。
「お、おーい翠嵐!」
意を決して望六は彼女の元へと近づいて声を掛ける。
「んー、あれ? 望六じゃないか! どうしたんだ?」
彼の呼び声で翠嵐が棚から視線を外すと、そのまま振り返って軽い笑みを見せながら返してきた。望六はその笑みを見て自分がこれから行う事に少しだけ後ろめたさが生まれたが、どうしても真実を知りたくて彼女に視線を合わせながら近づいた。
「あ、いや実はな……。最近お前がずっと一樹の事を目で追っているようだったから何かあったのかなーって、ははっ」
いざ彼女と面と向かって言葉を発すると緊張感というものが全身から沸き立ってきて、頭が痒くなると望六は人差し指でぽいつと掻いた。
すると翠嵐は彼の言葉を聞いて笑顔から一変して複雑なものへと表情を変えていた。
「……やっぱり、望六は気づいちゃう……よね」
彼女はそう小さく答えると右手で左手の肘を触りながら気まずそうな雰囲気を出していた。
「い、言いたくない事だったら別に深くは聞かないぞ……?」
その様子を見てこれは深堀してはいけない事かと望六は判断して逃げ道を用意する。
「ううん、これはちゃんと言っておかないといけない事だから言うよ」
翠嵐は首を横に振ってそれを拒否した。そして神妙な面持ちで彼女は口を開くと、
「あ、あのね? 外出日の時に望六は居なかったから知らないのは当然だと思うんだけど、実はその日に色々とあったんだ」
視線を真っ直ぐと彼に向けながら真面目な声色で話し始めた。
望六は黙ってそれを聞いて頷く事しか出来なかったが、その話を聞くとここ最近の翠嵐の様子がおかしかったのも自然と納得が出来た。
……その肝心の内容だが、どうやら望六が寮部屋でナタリアとパンツ鑑賞会をしている間に一樹達の方ではひと悶着あったらしいのだ。
それは翠嵐にしては珍しくスカートという可愛らしい物を履いていたらしいのだが、普段からズボンで過ごしている彼女にとってそれは落ち着かないものであり、たまたま傍を通り掛かったチャラい男二人組に”似合ってない”と言われたらしいのだ。
そこで翠嵐はやっぱり自分は可愛い物は駄目なんだと思い、一人で学園に引き返そうとした際に一樹が颯爽と現れてチャラい男二人組に謝るように言って事なきを得たらしいのだ。そしてこの時、一樹が颯爽と現れた瞬間に翠嵐は心の奥で何かが弾けるような衝撃を受けたらしいのだ。
「――という訳なんだ。本当にごめん! アタシは望六の事も好きだけど、それは友達としてだとあの時分かったんだ。……だからその「いいよ、その先は言わなくて」……望六」
翠嵐は全てを話し終えると勢い良く頭を下げて謝罪の言葉を口にすると、次の言葉を言わせてはならないと彼は食い気味で言葉を遮った。
それを言わせてしまえば事実上……振られた事になってしまうからである。
「まあ、あれだけ目を輝かせて一樹を見ていたんだ。少なからずそんな可能性があることぐらい俺とて分かる。……だから敢えてこう言おう。翠嵐、お前の恋を俺は応援すると」
望六は翠嵐から関節的に振られたような精神的な痛みを受けると、冷や汗らしきものが頬を伝って落ちていくのが鮮明に分かった。
だがそれでも冷静を装いながら彼は口を動かして彼女の恋路を応援すると言い切る。
「ッ……あ、ありがとう。本当に自分勝手でごめんね。アタシは恋愛経験とかないから……とにかく二人に嫌われないようにとアタックする事しか分からなかったんだ」
翠嵐は一瞬だけ歯痒そうな顔を見せると、あの以上なほどの密着やアピールは全て嫌われない為であったらしく、それは彼女の不器用さの現れだったらしい。
だが望六は翠嵐が謝る事は特に何も無いと考えていて、少し優しくされただけで落ちるような自分ではないと自負しているのだ。それら諸々の事を含めて彼は口角を上げて口を開くと、
「ふっ、問題ないとも。だがまあ……一樹を狙うのであればライバルは多いが大丈夫か?」
彼女に対して一樹の周りには色恋沙汰に飢えた女子達が多数居る事をさり気なく伝えた。
「もちろん、アタシは何がなんでも一樹を手に入れるッ! 例え幼馴染や貴族が相手でもね!」
しかし翠嵐の気持ちは圧倒的な様子で、白い歯を見せながら自信に満ち溢れたような顔を向けながら返してきた。
「そうか、ならば頑張ってくれ。……んじゃ俺はそろそろ部屋に戻るから、また明日な!」
彼女の覚悟を見届けた望六は親指を立てながら精一杯の決め顔を作って声を出すと、これ以上この場に居ても話すことは何も無いと思い部屋に戻ると言って話を終わらせようとした。
「うんっ! また明日な望六!」
翠嵐が弾けるような笑みのまま右手を小さく左右に振りながら返事をすると、望六は静かに頷いて会計を手早く済ませたあと寮へと向かって歩き出した。しかし彼の心中は穏やかなものとは程遠く、右手に抱えている缶が握力で潰れ掛けるほどである。
「な、何なんだろうか。この告白もしていないのに振られたような気持ちは……」
一年寮へとたどり着いて廊下で独り言を漏らしながら歩く望六。心の中は複雑に色んな感情が絡み合っている状態だが、翠嵐の気持ちが知れた事は唯一良かった点と言えた。
そして彼は個人的に一樹と月奈の恋路を応援していたのだが彼女達と関わっていく上で今ではシルヴィアや翠嵐にも幸せになって欲しいと思えるほどで、望六はギャルゲーの親友枠は辛いものだと一人で頭を抱えるのだった。
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