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第一章 全てをやり直す
24話「魔王は連戦する」
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「いや……私は決して自体しない。折角みんなが推薦してくれたのだ。その気持ちを無下にすることはできない」
凛とした表情でサツキはそう言い切ると、どうやら彼女の中では下手に注目を浴びる事よりも、クラス連中から向けれた期待を裏切る事の方が堪えるらしい。
少し前でのサツキであれば、そんな目立つ事は絶対にやらないと首を大きく左右に振りながら答えていたことだろう。つまりこれは良くも悪くも僅かばかりの成長ということだ。
だがこれで本当に一度目の世界線と同様に彼女がクラス代表となる確率が増したと言える。
ならば俺としても、それを全力で阻止しなければならない。例えサツキに嫌われようとも。
しかし今更ながらに思うがメアリーの言葉は多分だが援護ではなく、ただの煽りなのかも知れないな。敢えて辞退という言葉に乗るように差し向けて、サツキの気持ちを焚きつけるという。
……ふっ、だとすれば詰まるところ俺を利用したということか。実に賢いやり口だな。
伊達に貴族令嬢という身分ではないという訳か。
しかしこれで尚の事クラス代表という席を賭けた戦いに身を投じなければならない。
その理由としては単純なものだ。仮にサツキとメアリーだけとなると必然的に、どちらがクラス代表となり来るべき日に凄惨な死を迎えることとなる。なんせ7代目魔王の狙いは勇者の証を持つ者を殺すことだからだ。
だからここは敢えて俺自身がクラス代表となることで惨劇を回避する必要があるのだ。
まあメアリーに関しては助ける通りも救う義理もないのだが、仲間が死ぬとサツキが悲しむからな。これは致し方ないことであろう。
けれどこの世界線では幾つものイレギュラーが既に発生していることから、7代目襲撃も一度目の時と同様に行われるかどうか不確定な部分はあるがな。
「うーん、三人ですと多いですからね。どうやってクラス代表を決めましょうか……」
ベリンダが眉を顰めながら軽く首を傾げると代表の決め方について思案している様子であった。
「それでしたら、わたくしに良い案がありますの。手っ取り早く実力で決めるのはどうでしょうか?」
するとそこへメアリーが静かに右手を上げて彼女に視線を向けながら妙案を伝えていた。
「それは……つまり決闘ということか?」
だがベリンダよりも先にサツキが両腕を組みながら口を開くと確信に迫るような事を聞き返していた。
確かに決闘ならば己の力量で全てが決まるが故に単純明快であろう。
だが仮にも俺は貴族三人の腕を軽く捻った者なのだがな。
その事実を承知の上で決闘の提案をするものか普通?
まったく、やはり貴族の考えることは理解に苦しむ。
「そうですの。その方がこの場に居る全員が納得できる手段かと。なんせ実力が高くなければクラス代表には相応しくありませんから」
手の甲を顎に当てながらメアリーが貴族らしく優雅に微笑むと、その表情の奥からは何処か余裕な雰囲気が感じ取れた。しかし彼女の口振りから察するに、やはり昨日俺が貴族連中を完膚なきまでに倒した事実を知らないように見受けられる。
仮にその事実を知り得ていたならば決闘などという無謀なことは提案しないであろう。
だがそれと同時に違和感も覚える。
このクラスに在籍していて、その事実を知らないというのは如何せん無理がある気がするのだ。
なんせ休み時間ごとに平民の連中が自慢気に恰も自分が手を下したかのように語るからだ。
ならばその話を耳にした上で何か俺に勝つ秘策があるとでも言うのか?
「決闘ですか……あまり気乗りはしませんが仕方ないですね。二人もそれで大丈夫ですか?」
ベリンダは決闘という言葉が好きではないのか少しだけ表情を沈ませるが、そのあと直ぐに視線を合わせて意思確認を問うてきた。実際のところ解決策がこれしかないのが現状なのだろう。
メアリーが先に実力証明という如何にも、このクラス連中が食いつきそうな餌を撒いたからだ。
これで決闘は駄目と言おうものなら更なる面倒事に発展する事は違いないだろう。
主に平民達が黙っていないだろうな。本当に俺が貴族を倒したばかりに今や下手な貴族共よりも質が悪いかも知れん。これは本格的に一度、全員に精神教育を施した方がいいだろう。今後のこともあるからな。
「分かりました。それで大丈夫です」
サツキは最初こそ決闘という提案に戸惑いの色を見せていたが、皆の期待を裏切らないという意思で跳ね除けたのか戦う覚悟を示した。
だがこれも平民達が間接的に彼女を苦しめていることに違いはないのだ。
故に元を正せば俺のせいで今の状況が生まれているとも言えるだろう。
とどのつまり、どう動いても世界は整合性を保とうとするということ。
そしてサツキが決闘に応じるのであるならば、俺の答えはとうの昔に決定している。
「ああ、俺もそれで問題ない」
こう答えるしか最初から選択肢はないのだ。
何が何でも運命を捻じ曲げて整合性という理すらも破壊して彼女を救うには。
「それではクラス代表は決闘で決めることとします。日程は……そうですね。早い方が良いと思いますので、今日の放課後とか大丈夫でしょうか?」
俺達の返答を聞いたあとベリンダは眉間に手を当てながら考え込むと、クラス代表を決めるのは早い方がいいとして今度は全員に視線を交互に向けて尋ねてきた。
けれどそれはこちらとしても嬉しい提案であり、悪戯に日にちを伸ばされるよりかは断然ましだ。
「ええ、大丈夫ですわ」
「私も問題ないです!」
メアリーとサツキが同時に返事をすると、そのあと全員の顔が俺の元へと注がれた。
「二人と同じく問題ない。だが会場は用意できるのか? 昨日の決闘でさえ結構無理を通した気がするのだがな」
とうの昔から決定していた返事を再度告げるが俺としては早急に決闘の場となる会場が用意できるかの方が気掛かりである。
昨日の決闘ですら貴族共の融通で借りれたようなものだからな。しかもそれが一度ならず二度までも、短期間でこのクラスだけが独占するのは些か厳しいのではないだろうか。
「だ、大丈夫の筈です! なんとしででも闘技場の使用許可を貰ってきます!」
そう言いながらベリンダは握り拳を胸元辺りで小さく作り上げて気合を見せていた。
その姿は若干覇気に欠けるものだが、それでも彼女は曲がりなりにも1-Aというクラス担任だ。
今はただベリンダという女性を信じるしかあるまい。
「あっ、そうだ。昨日の決闘という言葉で思い出したのですが、何故か色々と記憶があやふやで後ほど詳しいことを……」
急に思い出したようにベリンダが両手を叩くと昨日の決闘という面倒な話題を持ち出してきた。
恐らくこのままの流れでは事情聴取を受けることとなるだろう。
なんせ今日は例の貴族三人は欠席だからだ。
しかし昨日の決闘については俺としても話す訳にはいかない。
というより寧ろ説明することすらも面倒であるが故に、
「話しは纏まったな。では放課後を楽しみにしているぞ」
ベリンダが話の論点をすり替えたことで流れを両断した。そもそもクラス代表の件については放課後まで持ち越しなのだから、これ以上の話し合いは不要の筈だろう。
そしてそれだけ言い残して自分の席へと戻るべく足を進めるが、
「あ、ちょっとブラッドくん! まだ話は終わっていませんよ!」
背後からはベリンダの甲高い声が響き聞こえてくる。
まあそれに反応しては元も子もないとして無視するがそれとはまた別に、
「それではサツキさん。同じ勇者の証を持つ者同士、悔いの残らない戦いが出来ることを願っています」
メアリーが貴族特有の華麗な言葉遣いを使用してサツキと互いに健闘と称えていた。
多分だがお互いに握手でもしているのだろう。
「ああ、こちらこそだ!」
そしてサツキの活気に満ちた声が聞こえてくると同時に俺は自分の席へと腰を落ち着かせた。
それから視線を前へと向けると、そこではやはり予想取りと言うべきだろうか、二人は互いに固い握手を交わしていた。
凛とした表情でサツキはそう言い切ると、どうやら彼女の中では下手に注目を浴びる事よりも、クラス連中から向けれた期待を裏切る事の方が堪えるらしい。
少し前でのサツキであれば、そんな目立つ事は絶対にやらないと首を大きく左右に振りながら答えていたことだろう。つまりこれは良くも悪くも僅かばかりの成長ということだ。
だがこれで本当に一度目の世界線と同様に彼女がクラス代表となる確率が増したと言える。
ならば俺としても、それを全力で阻止しなければならない。例えサツキに嫌われようとも。
しかし今更ながらに思うがメアリーの言葉は多分だが援護ではなく、ただの煽りなのかも知れないな。敢えて辞退という言葉に乗るように差し向けて、サツキの気持ちを焚きつけるという。
……ふっ、だとすれば詰まるところ俺を利用したということか。実に賢いやり口だな。
伊達に貴族令嬢という身分ではないという訳か。
しかしこれで尚の事クラス代表という席を賭けた戦いに身を投じなければならない。
その理由としては単純なものだ。仮にサツキとメアリーだけとなると必然的に、どちらがクラス代表となり来るべき日に凄惨な死を迎えることとなる。なんせ7代目魔王の狙いは勇者の証を持つ者を殺すことだからだ。
だからここは敢えて俺自身がクラス代表となることで惨劇を回避する必要があるのだ。
まあメアリーに関しては助ける通りも救う義理もないのだが、仲間が死ぬとサツキが悲しむからな。これは致し方ないことであろう。
けれどこの世界線では幾つものイレギュラーが既に発生していることから、7代目襲撃も一度目の時と同様に行われるかどうか不確定な部分はあるがな。
「うーん、三人ですと多いですからね。どうやってクラス代表を決めましょうか……」
ベリンダが眉を顰めながら軽く首を傾げると代表の決め方について思案している様子であった。
「それでしたら、わたくしに良い案がありますの。手っ取り早く実力で決めるのはどうでしょうか?」
するとそこへメアリーが静かに右手を上げて彼女に視線を向けながら妙案を伝えていた。
「それは……つまり決闘ということか?」
だがベリンダよりも先にサツキが両腕を組みながら口を開くと確信に迫るような事を聞き返していた。
確かに決闘ならば己の力量で全てが決まるが故に単純明快であろう。
だが仮にも俺は貴族三人の腕を軽く捻った者なのだがな。
その事実を承知の上で決闘の提案をするものか普通?
まったく、やはり貴族の考えることは理解に苦しむ。
「そうですの。その方がこの場に居る全員が納得できる手段かと。なんせ実力が高くなければクラス代表には相応しくありませんから」
手の甲を顎に当てながらメアリーが貴族らしく優雅に微笑むと、その表情の奥からは何処か余裕な雰囲気が感じ取れた。しかし彼女の口振りから察するに、やはり昨日俺が貴族連中を完膚なきまでに倒した事実を知らないように見受けられる。
仮にその事実を知り得ていたならば決闘などという無謀なことは提案しないであろう。
だがそれと同時に違和感も覚える。
このクラスに在籍していて、その事実を知らないというのは如何せん無理がある気がするのだ。
なんせ休み時間ごとに平民の連中が自慢気に恰も自分が手を下したかのように語るからだ。
ならばその話を耳にした上で何か俺に勝つ秘策があるとでも言うのか?
「決闘ですか……あまり気乗りはしませんが仕方ないですね。二人もそれで大丈夫ですか?」
ベリンダは決闘という言葉が好きではないのか少しだけ表情を沈ませるが、そのあと直ぐに視線を合わせて意思確認を問うてきた。実際のところ解決策がこれしかないのが現状なのだろう。
メアリーが先に実力証明という如何にも、このクラス連中が食いつきそうな餌を撒いたからだ。
これで決闘は駄目と言おうものなら更なる面倒事に発展する事は違いないだろう。
主に平民達が黙っていないだろうな。本当に俺が貴族を倒したばかりに今や下手な貴族共よりも質が悪いかも知れん。これは本格的に一度、全員に精神教育を施した方がいいだろう。今後のこともあるからな。
「分かりました。それで大丈夫です」
サツキは最初こそ決闘という提案に戸惑いの色を見せていたが、皆の期待を裏切らないという意思で跳ね除けたのか戦う覚悟を示した。
だがこれも平民達が間接的に彼女を苦しめていることに違いはないのだ。
故に元を正せば俺のせいで今の状況が生まれているとも言えるだろう。
とどのつまり、どう動いても世界は整合性を保とうとするということ。
そしてサツキが決闘に応じるのであるならば、俺の答えはとうの昔に決定している。
「ああ、俺もそれで問題ない」
こう答えるしか最初から選択肢はないのだ。
何が何でも運命を捻じ曲げて整合性という理すらも破壊して彼女を救うには。
「それではクラス代表は決闘で決めることとします。日程は……そうですね。早い方が良いと思いますので、今日の放課後とか大丈夫でしょうか?」
俺達の返答を聞いたあとベリンダは眉間に手を当てながら考え込むと、クラス代表を決めるのは早い方がいいとして今度は全員に視線を交互に向けて尋ねてきた。
けれどそれはこちらとしても嬉しい提案であり、悪戯に日にちを伸ばされるよりかは断然ましだ。
「ええ、大丈夫ですわ」
「私も問題ないです!」
メアリーとサツキが同時に返事をすると、そのあと全員の顔が俺の元へと注がれた。
「二人と同じく問題ない。だが会場は用意できるのか? 昨日の決闘でさえ結構無理を通した気がするのだがな」
とうの昔から決定していた返事を再度告げるが俺としては早急に決闘の場となる会場が用意できるかの方が気掛かりである。
昨日の決闘ですら貴族共の融通で借りれたようなものだからな。しかもそれが一度ならず二度までも、短期間でこのクラスだけが独占するのは些か厳しいのではないだろうか。
「だ、大丈夫の筈です! なんとしででも闘技場の使用許可を貰ってきます!」
そう言いながらベリンダは握り拳を胸元辺りで小さく作り上げて気合を見せていた。
その姿は若干覇気に欠けるものだが、それでも彼女は曲がりなりにも1-Aというクラス担任だ。
今はただベリンダという女性を信じるしかあるまい。
「あっ、そうだ。昨日の決闘という言葉で思い出したのですが、何故か色々と記憶があやふやで後ほど詳しいことを……」
急に思い出したようにベリンダが両手を叩くと昨日の決闘という面倒な話題を持ち出してきた。
恐らくこのままの流れでは事情聴取を受けることとなるだろう。
なんせ今日は例の貴族三人は欠席だからだ。
しかし昨日の決闘については俺としても話す訳にはいかない。
というより寧ろ説明することすらも面倒であるが故に、
「話しは纏まったな。では放課後を楽しみにしているぞ」
ベリンダが話の論点をすり替えたことで流れを両断した。そもそもクラス代表の件については放課後まで持ち越しなのだから、これ以上の話し合いは不要の筈だろう。
そしてそれだけ言い残して自分の席へと戻るべく足を進めるが、
「あ、ちょっとブラッドくん! まだ話は終わっていませんよ!」
背後からはベリンダの甲高い声が響き聞こえてくる。
まあそれに反応しては元も子もないとして無視するがそれとはまた別に、
「それではサツキさん。同じ勇者の証を持つ者同士、悔いの残らない戦いが出来ることを願っています」
メアリーが貴族特有の華麗な言葉遣いを使用してサツキと互いに健闘と称えていた。
多分だがお互いに握手でもしているのだろう。
「ああ、こちらこそだ!」
そしてサツキの活気に満ちた声が聞こえてくると同時に俺は自分の席へと腰を落ち着かせた。
それから視線を前へと向けると、そこではやはり予想取りと言うべきだろうか、二人は互いに固い握手を交わしていた。
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