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第一章

22話「防衛戦ー中編ー!!」

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 俺達冒険者はミストルの街を守るべく、飛竜に向かってありったけの大砲やボウガンを放った。
 ユリアの話で飛竜の鱗は頑丈で硬化と事前に聞いていたから本当にダメージが入るのかどうか不安だったが、俺のこの考えは杞憂で終わったようだ。
 
「「「グギャァァア!!」」」
 前線を飛んでいた飛竜達は断末魔のような叫び声を上げると次々へと地上へと落下していった。

 よっし! この武器達なら飛龍なんて楽勝に勝てるぜ!
 あとは落ちていった飛竜達の鱗を剥ぎ取ってギルドで換金すれば、少しばかりの裕福な生活が期待できるッ!

「ユウキ! ボケっとするな! まだ前線部分が殺れただけだぞ!」
「そうですわ! まだ飛竜達は大量に居ますわ!」
 
 おっと……いけない、いけない。
 ユリアとパトリシアの言う通りだ! よくアニメとかの展開だと油断した所で一気に攻められるからな。
 
 俺は急いで横に置いてあったボウガンの替えの弾を装填する。
 このボウガン……威力は申し分ないが次弾装填に少々の時間を要する。
 主に俺の筋力がひ弱過ぎて時間が掛かってるだけだがな。

 よく周りを見るとボウガンを担当しているのは筋肉ムキムキの男達だけだ。
 俺みたいな体型の人達は皆、大砲の方を担当しているようだ。
 エリク達もそこに居る。

 てか、これをセッティングしたのヴィクトリア達だよな?
 ……って事は今の三人は俺より筋力があるって事か?
 まあ、パトリシアとは一度戦って分かってたいたし、ヴィクトリアに関しては大盾を片手で持てるようになっていたから納得がいくけども……まさかユリアも筋力ゴリラなのか?

 などと、俺が考えていると。
「うーん……これならもっと一気に倒したいですね」
 ヴィクトリアは腰に手を当てながらそんな事を呟いた。
「なぁ、頼むから変なこt「……あっそうだ! スキル『モア・アトラス』!」」
 俺はやっとボウガンの装填を終えると、ヴィクトリアが何かする前に注意しようとしたが……既に遅かった。
 
 有ろう事かこのバカ大盾使いは上位のヘイトスキルを使いやがったのだ。
 その結果、均等にバラけて飛んでいた飛竜達は一斉にこちらに向かって集まりだした。

「この大馬鹿野郎! せっかく良い感じに均等に飛んでいた飛竜を一箇所に集めやがって、どうすんだよ! おい見てたか!? 俺がボウガン装填するのに一分は掛かるんだぞ! そんな悠長な事してたら俺達はあっという間に飛竜に殺されるんだぞ!」
 俺はヴィクトリアに掴みかかり、飛龍とボウガンを交互に指差した。

 しかしヴィクトリアの表情はどこか余裕そうに見えた。
「フッ……大丈夫ですよ。なんせこっちには賢者のユリアが居るんですから! あとは大型魔法を群れにブチ込んでパパッと終わりです。ねっユリア!」
 ヴィクトリアはユリアに全てを擦り付けたようだ。
 で、擦り付けられたユリアはこう返した。
「あーっ。期待してくれるのは嬉しいんだが、オレは基本的に相手を瞬殺するような大型魔法なんて使ぞ? んなもん面白味もないし、そもそも使えてたらとっくに使ってるしな」
 ユリアは軽くバッサリとヴィクトリアの期待を切り捨てた。



「…………ど、どどど、どうしましう!?」
 今度はヴィクトリアが俺に掴みかかってくる。
「どうしましょう!? じゃねえんだよ! ちゃんと周りに聞いてから行動に移せよ! 冒険者の基本だぞ! 分かったか!!」
 
 まったく……。だがこれは逆を見ればある意味好機でもある。
 何故ならヘイトは俺達の方に向いている、つまり他の方には一体も居ない訳だ。
 ならば他の冒険者達は安全に弾を装填して狙えるという事だ。

 よし……となれば作戦は決まったな!

「おいヴィクトリア! お前のスキルで確かアレあったよな! 防御壁みたいなやつ!」
「ふぇ……? あ、ありますけど……それがどうして「いいからそれを俺達の周りに発動してくれ!」わ、分かりました! スキル『バリアーコート』!」
 俺は有無を言わさずにヴィクトリアに防御壁を周りに展開させた。

「ちょっと! これはなんですの!?」
「防御壁を貼られたらオレも魔法が使えないぞ!」
「少し辛抱してくれ! 今から他の皆に頼んでここを集中砲火してもらうようにする!」
 咄嗟の出来事にパトリシアとユリアも混乱していたが、俺がざっくり説明すると内容を察してくれたのか身構えていた。


 ……あとはエリク達にここを砲撃するように伝えないとな。
「おーい! エリク達ーー! ヘイトスキルで飛竜達を一箇所に纏めたからそっちでこっちを集中砲火してくれー!」

 大声で叫ぶとエリクや他の冒険者達も反応したようだ。
「やっぱりスキルだったか! 急に飛竜達がそっちに行って何事かと思ったぞ。……てか! そっちに向かって攻撃するのは良いけどお前達は大丈夫なのかーー!」
「心配するな! こっちは上位の防御壁魔法でガッチリ守ってある! だから思う存分打ち込んでくれーー!」
 俺達はスキルで守られている事をエリク達に伝えると、エリクは他の冒険者達に向かって。
「聞いたか皆! ユウキ達が身を呈して囮になってくれているおかげで飛竜は無防備だ! 後は俺達であの飛竜の群れを打ち落として終わりにするぞッ!」
「「「「おぉぉう!!」」」」

 どうやらエリク達が向こう皆を纏めてくれたみいだな。
 あとはこっちは砲撃の衝撃に耐えるようにしとくか……。

 別にヴィクトリアのスキルを信用していない訳ではないんだが、如何せん怖いものは怖い。
 なにせ大量の砲撃がこちらに向かってくる訳だし、万が一この防御壁が割られたら俺達は仲良くここで死ぬことになる。
 
「おーいユウキ! 準備が整ったから砲撃するぞ! しっかり耐えてくれよぉーー!」
「おーう! そっちこそしっかりと倒してくれよ!」
 俺がエリクに言葉を返すと、向こうから大砲の砲撃音やボウガンの射出音が鳴り響いた。
 
 やがてそれらは飛龍に当たり俺達の目の前で爆発したり体を貫いたりした。
 逸れた砲弾が防御壁に当たったりすると何かが軋む音が聞こえてきたりして、ヴィクトリアが頭を抱えながら怯えていた。

「いやぁぁあ!! そんないっぱい攻撃されると防御壁割れちゃいます”ぅ”ぅ”う”! スキルを使った本人が言うのもアレですがこの防御壁ってどれだけの攻撃に耐えれるんですかぁぁ!? さっきからメシメシッって音が聞こえるんですけどォォ!!」
「チッ、さっきからうるさいぞ!」

 自分のスキルぐらい自身持てよ!
 こっちはコボルト退治の時にクロークスキルを信じ…………いや、辞めておこう。
 考えると不安になってくる……。



 しばらくヴィクトリアがギャーギャー叫んでいると。
「あら? 急に静かになりましたわ。砲撃が止んだんですの?」
「爆炎で何も見えないな……」

 砲弾の爆発音やらが鳴り止むとパトリシとユリアが辺りを見渡していた。
 だが、ユリアの言う通り爆炎で何も見えない状況だ。

 防御壁を解除すれば多少は視界が開けるのだが……今下手にここで防御壁を解除すると生き残りの飛竜に襲われるかも知れない。

 うーむ……。
 砲撃が止んだ今ならエリク達に声が届くか?

「おーい! エリクー! 飛竜達はどんな感じだーー?」
「おぉ! 生きてたかユウキ! お前達の周りに居た飛竜は一掃できたぞーー!」

 マジかよ……! よしよし!
 ヴィクトリアの間抜けな行動もたまには役に立つな!

「おいヴィクトリア! 無事に飛竜は全部討伐できたみたいだからスキル解除していいぞ」
「……ほ、本当に終わりました……? まだ飛竜が居たりとか言うオチはありません……よね?」
 どうやらヴィクトリアはあの砲撃の最中に飛竜が苦手になったらしい。
 
 そりゃまあ防御壁を必死に壊しにくるし、砲撃で飛龍の臓物は飛散するし、ボウガンで串刺しになるし、只管に飛竜の断末魔をこの防御壁内で聞いていたら苦手にもなるな。
 まあ、パトリシアとユリアは慣れているのかそんな事気にも止めてない様子だけど。

「エリク達が言うにはもう居ないらしいから安心しろ」
「な、なら良いんですけど……。スキル解除」
 ヴィクトリアが解除宣言すると薄黄色の防御壁がじわじわと周りから消えていく。

 そして視界が鮮明になり辺りを見渡すと、防御壁の外側は綺麗に飛龍達の鮮血で真っ赤に染まっていた。
 
「うわぁ……なんか腸みたいの落ちてる……」
「飛竜の腸詰は美味しいらしいぞ? まあ、オレは食べた事ないから知らんけど」
 横からユリアが要らない情報を教えてくれた。
 
「お、おっぇぇ……」
 すると横ではヴィクトリアが飛び散った肉片やらを見て隅っこで吐いていた。
「ヴィクトリアも冒険者ならこれぐらい慣れないとダメですわよ?」
「す、少しなら良いんですよ! 何ですかあれは! 肉片やら腸やらで小さな山ができてるじゃなっ! ……おぇぇぇ」
 パトリシアが優しく背中をさすっているとヴィクトリアが何かを言うとして再び吐いた。
 見てて忙しい奴だな。

 と、そんな事をしていると周りにはいつの間にか他の冒険者も集まっていた。
「よくやった! 君達の勇敢な行動のおかげでこちらの被害は少なくて済んだよ!」
「い、いえ……! そんな! 大した事はしてないですよ!」
「ハッハッハ! そんな謙遜すんなって!」
 どうやら俺達のパーティは他の冒険者達から見ると、必死の覚悟であの作戦に挑んだと思われているらしい。

 まったく、全然、そんな、覚悟何てしてないんだけどな。
 元はヴィクトリアのせいだし。

「さあ、無事に飛竜の討伐も終えたことだし! 皆でギルドで飲みまくるぞーー!!」
「「「「おおおおぅぅ!!!」」」」
 冒険者の一人が言うと皆はそれに賛同していた。
 もちろん俺も含まれている。

 しかし……その言葉はどこかにも聞こえるが気のせいだろうか?
 
 俺がそんな事を思ってしまったのがいけなかったのか、女性冒険者が空を指差してこう言ったのだ。
「待って! 何か大きい物体がこちらに向かって飛んできてる!」
「なにっ!?」
 その言葉に隣に居た男が双眼鏡らしきもので空を確認していた。
「あぁッ……これはヤバいぞ! あのデカい物体は飛竜共の親玉! ”爆風龍エリシン”だ!」

 …………チクショウ! やっぱりあれはフラグだったのか!!
 ごめんなさい皆!
 俺が余計な事を考えなければきっとそのエリシンとやらは来なかった筈だぁぁ……。
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