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第1章 少年立志編
第18話 鉄壁の護衛。
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「クリードさん。私が内密に運んでいる品物は命に換えても護らねばならぬもの。よろしければその護衛に加わって貰えないだろうか?」
ネルソンはクリードに願った。
「頼まれずとも賊が襲ってくれば斬り払うが……」
「それではこちらの気が済まない。失礼ながら雇主となれば安心も増すというもの」
護衛として雇われたとなれば、まさかにもクリードが逃げ出すことはないだろう。
「それにこうなると御者の2人にも危険が及びます。きちんと護衛を立てた上で、別料金をお支払いしないと」
それで、ステファノたちに聞こえるように話していた訳か。ステファノは納得した。
「ホッホッホ。遠慮せず、貰えるものは貰っておけ」
ガル師も後押しをした。
「そういうことであれば護衛として雇われよう。改めてよろしく願う」
報酬は10万ギルと決まった。ダールには危険料として1万ギルが支払われることになった。
ステファノにも同額を渡すと言われたが、断った。
「何故断るのかね?」
ネルソンの問にステファノはこう答えた。
「二つ名持ちが2人も護衛に付いていれば、俺への危険は無いでしょう。それよりネルソンさんにお願いがあります」
「願いとは何だね?」
ネルソンの声は優しかったが、目は油断なくステファノを観察していた。
「呪タウンでの働き口を紹介してくれませんか」
「働き口を探しているのか?」
「はい。伝手が無いもので」
「どんな仕事を探している?」
「本当は魔術師様の所に住み込みたいのですが、それが難しければ学者様か商会に住み込んで下働きが出来ないかと」
ステファノは自らの希望を口にした。
「ふむ。何故魔術師の所で働きたいのかね?」
ネルソンはステファノを値踏みするように見た。
「魔術の道に進みたいんです」
ステファノは正直に答えた。
「弟子入りしたいのかね?」
「それは無理でしょう。弟子の選別は厳しいと聞いてます」
魔術師の弟子といえばその家族か親族、貴族への個人教授、そして王立アカデミーでの教授に限られていた。
血筋が条件ではないアカデミーでさえ、貴族か魔術協会所属員の推薦が要る。これもまた狭き門だった。
「下働きをしながら信用を築き、いずれ魔術師様の所に紹介してもらえないかと」
「王立アカデミーへの入学は考えないのかね?」
20歳以下であれば、平民でも受験資格はあった。しかし、受験料はともかく入学金を貯めるのは並大抵のことではなかった。
「入学金と学費が払えません」
「そうか。ある程度の資産家でないと平民がアカデミーに入るのは難しいか」
自らが資産家であるだけに、ネルソンはそこまで考えていなかったようだ。
「ふむ。それではこうしたらどうかね。うちの商会でしばらく働いてもらう。その様子を見て私が納得できれば、然るべき奉公先へ紹介しよう」
「とてもありがたいお話です。しばらくとはどのくらいでしょうか?」
「そうだな。3ヵ月という所か」
「わかりました。旦那様がよろしければ是非働かせて下さい」
「よし。話は決まった。呪タウンまで気を緩めず、しっかり頼む」
2番目の街レイクシアには、その後何事もなく到着した。荷物を降ろし宿を取った後、ダール、ステファノ、クリードの3人は衛兵詰め所に向かった。盗賊の件を報告したのだ。
襲われた場所、盗賊の人数や様子、クリードが退治した有様などを聞き取られた。
「ふうむ。話だけではどこの盗賊か目星が付かんな」
衛兵長は腕組みをして唸った。
「あのー……」
「何だお前は?」
「こいつはあっしの助手をしているステファノといいやす」
ダールがステファノを紹介した。
「その助手が何を言いたい?」
「よろしければ賊の似顔絵を描きましょうか?」
「描けるのか、お前?」
何で御者の助手風情がそんな芸を身に着けているのかと言いたげであった。
ネルソンはクリードに願った。
「頼まれずとも賊が襲ってくれば斬り払うが……」
「それではこちらの気が済まない。失礼ながら雇主となれば安心も増すというもの」
護衛として雇われたとなれば、まさかにもクリードが逃げ出すことはないだろう。
「それにこうなると御者の2人にも危険が及びます。きちんと護衛を立てた上で、別料金をお支払いしないと」
それで、ステファノたちに聞こえるように話していた訳か。ステファノは納得した。
「ホッホッホ。遠慮せず、貰えるものは貰っておけ」
ガル師も後押しをした。
「そういうことであれば護衛として雇われよう。改めてよろしく願う」
報酬は10万ギルと決まった。ダールには危険料として1万ギルが支払われることになった。
ステファノにも同額を渡すと言われたが、断った。
「何故断るのかね?」
ネルソンの問にステファノはこう答えた。
「二つ名持ちが2人も護衛に付いていれば、俺への危険は無いでしょう。それよりネルソンさんにお願いがあります」
「願いとは何だね?」
ネルソンの声は優しかったが、目は油断なくステファノを観察していた。
「呪タウンでの働き口を紹介してくれませんか」
「働き口を探しているのか?」
「はい。伝手が無いもので」
「どんな仕事を探している?」
「本当は魔術師様の所に住み込みたいのですが、それが難しければ学者様か商会に住み込んで下働きが出来ないかと」
ステファノは自らの希望を口にした。
「ふむ。何故魔術師の所で働きたいのかね?」
ネルソンはステファノを値踏みするように見た。
「魔術の道に進みたいんです」
ステファノは正直に答えた。
「弟子入りしたいのかね?」
「それは無理でしょう。弟子の選別は厳しいと聞いてます」
魔術師の弟子といえばその家族か親族、貴族への個人教授、そして王立アカデミーでの教授に限られていた。
血筋が条件ではないアカデミーでさえ、貴族か魔術協会所属員の推薦が要る。これもまた狭き門だった。
「下働きをしながら信用を築き、いずれ魔術師様の所に紹介してもらえないかと」
「王立アカデミーへの入学は考えないのかね?」
20歳以下であれば、平民でも受験資格はあった。しかし、受験料はともかく入学金を貯めるのは並大抵のことではなかった。
「入学金と学費が払えません」
「そうか。ある程度の資産家でないと平民がアカデミーに入るのは難しいか」
自らが資産家であるだけに、ネルソンはそこまで考えていなかったようだ。
「ふむ。それではこうしたらどうかね。うちの商会でしばらく働いてもらう。その様子を見て私が納得できれば、然るべき奉公先へ紹介しよう」
「とてもありがたいお話です。しばらくとはどのくらいでしょうか?」
「そうだな。3ヵ月という所か」
「わかりました。旦那様がよろしければ是非働かせて下さい」
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「あのー……」
「何だお前は?」
「こいつはあっしの助手をしているステファノといいやす」
ダールがステファノを紹介した。
「その助手が何を言いたい?」
「よろしければ賊の似顔絵を描きましょうか?」
「描けるのか、お前?」
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